アイサンテクノロジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイサンテクノロジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイサンテクノロジーは東京証券取引所スタンダードおよび名古屋証券取引所メインに上場しています。測量・不動産向けのソフトウェア開発等を行う公共事業と、自動運転の社会実装や高精度三次元地図等を手掛けるモビリティ・DX事業を展開しています。直近の業績は各事業の好調により大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、アイサンテクノロジー株式会社の有価証券報告書(第56期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイサンテクノロジーってどんな会社?


測量システムや高精度三次元地図等のソフトウェア開発と販売、および自動運転関連事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1970年に設立され総合事務機器販売を開始しました。1992年にアイサンテクノロジーへ社名変更し、2004年にジャスダックへ上場しました。その後、主力となる測量CADシステムの発売や自動運転向けの高精度三次元地図事業に参入し、2023年には三菱商事と共同でA-Driveを設立しました。

現在の従業員数は連結で197名、単体で162名体制です。筆頭株主は創業関係者である個人の加藤清久氏で、第2位は三菱電機、第3位は資本・業務提携関係にあるKDDIとなっています。

氏名 持株比率
加藤清久 10.50%
三菱電機 6.63%
KDDI 5.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は加藤淳氏が務めています。また、社外取締役の比率は約33.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
加藤淳 代表取締役社長 1987年同社入社。マーケティング本部長や経営企画室長などを経て、2017年6月より現職。
細井幹広 取締役公共ビジネスグループ本部長 1992年同社入社。R&Dセンター部長や研究開発知財本部長などを経て、2024年4月より現職。
佐藤直人 取締役モビリティ・DXビジネスグループ本部長 1996年同社入社。MMS事業本部長やスリード代表取締役社長などを経て、2024年4月より現職。
曽我泰典 取締役経営管理本部長 1995年同社入社。エーティーラボ監査役や経営管理本部副本部長などを経て、2019年6月より現職。


社外取締役は、久野誠一氏(元あずさ監査法人パートナー)、梅田靖氏(元富士通Japan執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「公共セグメント」「モビリティ・DXセグメント」および「その他」事業を展開しています。

(1) 公共セグメント


測量・不動産市場をターゲットとし、測量土木関連ソフトウェア(「WingneoINFINITY」等)や三次元点群処理ソフトウェアのほか、測量計測機器の販売、土地・河川などの各種測量請負を提供しています。

測量業者等からソフトウェアのライセンス料や保守サービス料、測量機器の販売代金、測量業務の請負代金を受け取ります。運営は主にアイサンテクノロジーのほか、子会社の三和などが担っています。

(2) モビリティ・DXセグメント


自動車・MaaS関連市場や自治体などをターゲットに、MMS(高精度三次元モービルマッピングシステム)計測機器の販売、高精度三次元地図データベースの構築、自動運転システムの実証実験請負などを提供しています。

自治体や交通事業者、パートナー企業等から、機器の販売代金や自動運転の実証実験請負代金、地図データベースの構築費用を受け取ります。運営は主にアイサンテクノロジーや子会社のスリード、A-Driveなどが行っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、自社保有の不動産に係る賃貸事業を展開しています。

テナント等からオフィスビルなどの不動産賃貸収入を受け取るモデルです。本事業の運営は主にアイサンテクノロジーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が42億円から76億円へと順調に拡大しています。経常利益も3億円から8億円へと増加し、利益率も6.0%から10.0%に向上するなど、成長基盤の強化と収益性の改善が着実に進んでいることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 42億円 45億円 55億円 62億円 76億円
経常利益 3億円 3億円 5億円 4億円 8億円
利益率(%) 6.0% 7.4% 8.3% 7.2% 10.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 2億円 4億円 2億円 4億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益も拡大しています。また、売上総利益率が向上していることに加え、増収効果により販売費及び一般管理費の増加を吸収しており、営業利益率も改善傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 62億円 76億円
売上総利益 23億円 29億円
売上総利益率(%) 37.4% 38.7%
営業利益 4億円 8億円
営業利益率(%) 7.2% 10.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が7億円(構成比33%)、役員報酬が3億円(同12%)、販売促進費が2億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


全社売上高の成長を牽引しているのは、モビリティ・DXセグメントです。自動運転技術の実証実験や高精度三次元地図の整備が堅調に推移し、増収に貢献しました。また、公共セグメントも測量用ソフトウェアや関連機器の販売が好調で、各セグメントともに着実な拡大を見せています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
公共セグメント 26億円 33億円
モビリティ・DXセグメント 37億円 43億円
その他 0.1億円 0.1億円
連結(合計) 62億円 76億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も61.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「知恵で地理空間情報のイノベーションを実行し社会資本の豊かな発展に貢献する。」という経営理念を掲げています。社会資産の豊かな発展に貢献することをミッションとし、測量ソフトウェアから自動運転に必要とされる高精度三次元地図まで、トータルでのソリューションを実現する国内唯一の企業としての役割を果たしていく方針です。

(2) 企業文化


行動指針として「お客様(顧客満足度の追求)」「社員(豊かな創造力と自主性の発揮)」「株主(バランス経営による安定した利益還元)」「地域社会(事業と雇用創出及び納税)」を重視しています。「知恵」「実行」「貢献」という社是のもと、社員一人ひとりが活き活きと特性を活かし、変化・変革に主体的に挑戦し続ける企業文化の醸成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


「Development & Evolution」のスローガンを掲げる中期経営計画(2024年4月〜2027年3月)を推進しています。最終年度となる2027年3月期には、前中期経営計画に実施した投資を収益に転換し、資本コストを意識した経営にも取り組む計画です。

* 売上高:80億円
* 営業利益:8.5億円
* 売上高営業利益率:10%

(4) 成長戦略と重点施策


持続的成長の基礎となる製品・ソリューションの開発力強化や、自動運転に係る技術とノウハウを収益に変えることを重点施策としています。公共セグメントでは新規製品のリリースで安定収益を確保し、モビリティ・DXセグメントでは自動運転の社会実装を本格化させるとともに、高精度三次元技術を基盤とした新たな3D DX分野を事業の柱として独立させる成長戦略を描いています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大の源泉を人材と位置づけ、社員一人ひとりが活躍できる環境づくりを推進しています。新卒やキャリア採用を通じて多様な人材を確保し、継続的なスキルアップを実現するための階層別教育や専門性の高い研修プログラムを整備しています。また、テレワークやスーパーフレックスタイム制度などを導入し、多様な働き方と従業員エンゲージメントの向上を支援する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.0歳 12.5年 6,894,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.8%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.3%
男女賃金差異(正規雇用) 80.0%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※非正規雇用労働者の男女賃金差異は該当者がいない等の理由により記載されていません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 測量用ソフトウェア市場への依存と環境変化


同社グループの主力は測量設計業や土地家屋調査士業向けのCADシステムの開発・販売であり、公共事業に係る予算や執行状況、および関連する法規制の影響を強く受けます。そのため、定期的なアップデートや新たなサービスの提供による市場競争力の維持に努めていますが、十分な対応が取れない場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 自動運転の社会実装に向けた安全性リスク


自動運転技術を活用した社会実装事業において、センサーの誤検知やサイバー攻撃、操作過誤などによる重大な事故が発生した場合、事業の発展や目標達成に大きな影響を与える可能性があります。これに対し、同社はリスク評価の定量化を行うデジタルリスクアセスメントの提供や、パートナー企業と連携した安全性の確認に注力しています。

(3) ビジネスパートナー関係と市場競争


特定のサプライヤや業務提携先との強力なパートナー関係を基盤としていますが、経営環境の変化により関係が弱体化するリスクがあります。また、自動運転の分野において海外事業者が参入し市場の勢力図が一新された場合、独自のノウハウや実績を活かしたサービスの開発や高精度三次元地図の利活用を進められなければ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。