アイサンテクノロジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイサンテクノロジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード・名証メイン上場のアイサンテクノロジーは、測量ソフト開発や自動運転支援を行う企業です。当期はモビリティ・DX事業が牽引し売上高62億円と増収を達成しましたが、人財投資等のコスト増により純利益は減益となりました。自動運転の社会実装に向けた先行投資を加速させています。


※本記事は、アイサンテクノロジー株式会社 の有価証券報告書(第55期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイサンテクノロジーってどんな会社?


測量・土木向けソフトウェアの開発販売を祖業とし、現在は自動運転支援や3次元地図技術に強みを持つ企業です。

(1) 会社概要


1970年に設立され、1984年には測量CADシステム「WING」を発売し事業基盤を築きました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たし、近年は自動運転分野へ注力しています。2016年にはダイナミックマップ基盤企画(現ダイナミックマッププラットフォーム)を共同設立し、2023年には三菱商事と共にA-Driveを設立するなど、M&Aや提携を通じて事業領域を拡大しています。

連結従業員数は179名、単体では145名体制です。大株主構成を見ると、筆頭株主は創業家出身の加藤清久氏であり、第2位は総合電機メーカーの三菱電機、第3位は通信大手のKDDIとなっており、事業パートナーが大株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
加藤 清久 10.52%
三菱電機 6.64%
KDDI 5.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は加藤淳氏が務めています。なお、社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤 淳 代表取締役社長 1987年入社。取締役経営企画室長、管理部管掌、MMS事業本部長などを歴任し、2017年より現職。
細井 幹広 取締役公共ビジネスグループ本部長 1992年入社。R&Dセンター部長、執行役員、取締役研究開発知財本部長などを経て、2024年より現職。
佐藤 直人 取締役モビリティ・DXビジネスグループ本部長 1996年入社。MMS事業本部部長、スリード代表取締役社長などを経て、2024年より現職。
曽我 泰典 取締役経営管理本部長 1995年入社。執行役員経営管理本部副本部長を経て、2019年より現職。


社外取締役は、久野誠一(公認会計士・久野誠一公認会計士事務所代表)、梅田靖(元富士通Japan執行役員公共・金融営業本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「公共セグメント」「モビリティ・DXセグメント」および「その他」事業を展開しています。

(1) 公共セグメント


測量・不動産市場を主たるターゲットとし、測量土木関連ソフトウェアや三次元点群処理ソフトウェアの開発・販売、測量計測機器の販売を行っています。また、土地・河川・海洋に関する各種測量業務も提供しています。

収益は、ソフトウェアや計測機器の販売代金、保守サービス料、測量業務の請負代金などから得ています。運営は主にアイサンテクノロジーが行うほか、子会社の秋測や三和などが事業を担っています。

(2) モビリティ・DXセグメント


自動車関連やMaaS関連市場、自治体、土木・建設分野をターゲットとし、MMS(モービルマッピングシステム)計測機器の販売や、三次元計測・解析業務、高精度三次元地図データベース構築、自動運転システムの構築などを提供しています。

収益は、機器販売代金、計測・解析業務や自動運転実証実験の請負代金などから得ています。運営はアイサンテクノロジーに加え、A-Driveやスリードなどの子会社が連携して事業を展開しています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸業を行っています。

収益は、保有する不動産の賃貸料収入から得ています。運営はアイサンテクノロジーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりを続けており、特に直近の2025年3月期は62億円に達しています。利益面では、2024年3月期に大きく伸長した後、2025年3月期は投資等の影響もあり当期純利益が減少しましたが、全体としては事業拡大の傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 36億円 42億円 45億円 55億円 62億円
経常利益 2.4億円 2.5億円 3.3億円 4.6億円 4.5億円
利益率(%) 6.8% 6.0% 7.4% 8.3% 7.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.7億円 1.6億円 2.1億円 4.1億円 2.9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の55億円から62億円へと増加しました。一方、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。営業利益は前期と同水準を維持していますが、営業利益率は低下しており、事業拡大に伴うコスト増の影響が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 55億円 62億円
売上総利益 21億円 23億円
売上総利益率(%) 37.5% 37.4%
営業利益 4.5億円 4.5億円
営業利益率(%) 8.2% 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が6.4億円(構成比34%)、その他費用が5.4億円(同29%)を占めています。売上原価においては、製品や外注費などのコストが含まれています。

(3) セグメント収益


公共セグメントは主力製品の堅調な推移があるものの、利益は減少しました。一方、モビリティ・DXセグメントは売上・利益ともに大きく伸長し、自動運転関連や高精度三次元地図事業の成長が業績を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
公共セグメント 26億円 26億円 4.2億円 3.5億円 13.8%
モビリティ・DXセグメント 28億円 37億円 2.8億円 4.4億円 12.1%
その他 0.1億円 0.1億円 0.1億円 0.1億円 61.7%
調整額 0.2億円 0.2億円 - - -
連結(合計) 55億円 62億円 4.5億円 4.5億円 7.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「知恵」「実行」「貢献」を社是とし、「知恵で地理空間情報のイノベーションを実行し社会資本の豊かな発展に貢献する」ことを経営理念として掲げています。この理念のもと、地理空間情報の技術を通じて社会インフラの発展に寄与する事業活動を行っています。

(2) 企業文化


同社は、「顧客満足度の追求」「豊かな創造力と自主性の発揮」「バランス経営による安定した利益還元」「事業と雇用創出及び納税」を行動指針として定めています。顧客、社員、株主、地域社会といったステークホルダーを重視し、創造性と自主性を重んじる風土があります。

(3) 経営計画・目標


2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「Development & Evolution」を推進しています。前中期経営計画での投資を収益に転換し、持続的な成長を目指しています。

* 2027年3月期 売上高:80億円
* 2027年3月期 営業利益:8.5億円
* 売上高営業利益率:10%

(4) 成長戦略と重点施策


公共セグメントでは新規製品・サービスのリリースによる安定収益の確保を目指し、モビリティ・DXセグメントでは自動運転の社会実装本格化とDX事業への挑戦を掲げています。また、人的資本経営を推進し、積極的な採用と育成を行う方針です。

* コア事業(公共セグメント)の競争力強化と収益基盤構築
* モビリティ・DXセグメントの事業の柱としての自立化
* 人財獲得と育成への投資集中
* 資本コストを意識した経営の実践

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大には社員の成長が不可欠と考え、階層別教育や専門性の高い研修を実施しています。また、多様な人財が活躍できる環境整備として、フレックスタイム制やテレワークなどを導入し、従業員エンゲージメントの向上にも取り組んでいます。新卒・キャリア採用を通じて人財確保に注力する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.7歳 12.8年 6,532,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 10.8%
男性労働者の育児休業取得率 50.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 75.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 81.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 83.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材確保に関するリスク


販売、開発、技術、間接部門など全ての部門において「人財」が収益の源泉ですが、少子高齢化による人財獲得競争の激化が進んでいます。事業に必要な労働力を確保できない場合、将来の財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術・法令・規制の変化への対応


急速な技術進化や法令改正への対応は競争力の源泉ですが、対応が遅れた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に生成AIの普及など技術革新への対応や、適切な資源投下が重要視されています。

(3) 世界経済・為替変動リスク


国内市場が中心ですが、物価高騰や為替変動が顧客の投資意欲に影響を与える可能性があります。特にモビリティ・DXセグメントの顧客である自動車産業は世界経済の影響を受けやすく、投資予算抑制のリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。