※本記事は、株式会社ファルコホールディングス の有価証券報告書(第38期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ファルコホールディングスってどんな会社?
臨床検査受託を中核に、調剤薬局や医療ICT事業を展開する企業です。関西エリアを地盤としています。
■(1) 会社概要
同社は、1962年設立の関西医学検査センターを母体とし、1988年に実質上の存続会社である旧ファルコ・バイオシステムズを設立しました。2004年に東証二部へ上場し、翌2005年に一部指定を受けました。2010年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しました。2023年10月には、東証の市場区分再編に伴いスタンダード市場へ移行しています。
現在の連結従業員数は1,062名(単体3名)です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は資本業務提携先である事業会社(ビー・エム・エル)、第3位は持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 10.28% |
| 株式会社ビー・エム・エル | 9.66% |
| ファルコホールディングス従業員持株会 | 3.98% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長 社長執行役員は安田 忠史氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安田 忠史 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1995年同社入社。経営企画、経理、戦略業務などの要職を経て、2017年代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。 |
| 松原 宣正 | 代表取締役副社長執行役員 | 1989年同社入社。総務、戦略業務、ファーマ事業などを担当し、2019年代表取締役専務。2023年6月より現職。 |
| 福井 崇史 | 取締役専務執行役員ゲノム事業室長 | 2002年同社入社。バイオメディカル事業部長、ゲノム事業室長などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 河田 與一 | 取締役常務執行役員臨床事業室長 | 1992年同社入社。臨床検査本部長、臨床事業室長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 郷田 哲夫 | 取締役経営企画室長 | 2016年同社入社。臨床営業本部長、ICT事業室長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 井田 匡洋 | 取締役(監査等委員) | 2001年ファルコバイオシステムズ九州入社。グループ会社の総務部長などを経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、髙井 晶治(公認会計士)、勝山 武彦(公認会計士・税理士)、高坂 佳郁子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「臨床検査事業」「調剤薬局事業」「ICT事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 臨床検査事業
各地の病院や診療所から血液や尿などの臨床検体検査を受託し、検査結果を報告するサービスを提供しています。また、体外診断用医薬品の製造・販売や卸売、医療情報システムの販売なども行っています。
収益は、医療機関等からの検査受託料や医薬品の販売代金から得ています。運営は、検査受託や製造販売をファルコバイオシステムズが、医薬品卸売をアテストが主に行っています。
■(2) 調剤薬局事業
処方箋に基づく調剤を行う調剤薬局の運営を行っています。地域医療との連携を進め、高齢者施設や在宅医療への対応も強化しています。
収益は、患者への薬剤提供および調剤技術料などの対価として、社会保険診療報酬支払基金や患者から得ています。運営は主にファルコファーマシーズおよびチューリップ調剤が行っています。
■(3) ICT事業
電子カルテシステムなどの医療情報システムの開発・販売を行っています。診療所向けのクラウド型レセプト支援サービスや、中小規模病院向けのクラウド型電子カルテなどを提供しています。
収益は、医療機関へのシステム販売代金や、システム利用に伴う保守サービス料などから得ています。運営は主にメディサージュが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は430億円から500億円の範囲で推移しています。2022年3月期に売上高500億円、経常利益58億円と高い水準を記録した後、減収減益となりましたが、直近の2025年3月期は増収増益に転じています。利益率は5%〜11%の間で変動しており、安定した黒字経営を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 436億円 | 500億円 | 469億円 | 430億円 | 433億円 |
| 経常利益 | 29億円 | 58億円 | 33億円 | 23億円 | 25億円 |
| 利益率(%) | 6.5% | 11.6% | 7.1% | 5.3% | 5.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 26億円 | 23億円 | 19億円 | 22億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増し、売上総利益および営業利益ともに増加しました。売上原価率や販管費率に大きな変動はなく、安定した収益構造を維持しています。特に営業利益率は前期の5.0%から5.4%へと改善しており、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 430億円 | 433億円 |
| 売上総利益 | 129億円 | 134億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.0% | 30.8% |
| 営業利益 | 22億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が40億円(構成比36%)、租税公課が12億円(同11%)を占めています。売上原価の内訳データはありません。
■(3) セグメント収益
臨床検査事業は受託数の増加や業務効率化により増収増益となりました。ICT事業はシステム販売が好調で大幅な増収増益を達成しています。一方、調剤薬局事業は店舗数の減少や薬価改定の影響を受け、減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 臨床検査事業 | 260億円 | 264億円 | 15億円 | 16億円 | 6.0% |
| 調剤薬局事業 | 160億円 | 155億円 | 10億円 | 8億円 | 5.3% |
| ICT事業 | 11億円 | 15億円 | 1億円 | 4億円 | 24.3% |
| 連結(合計) | 430億円 | 433億円 | 22億円 | 23億円 | 5.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業の儲けを示す営業CFがプラス、将来への投資を示す投資CFがマイナス、借入返済や配当支払いを示す財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で投資や株主還元を行っている健全型企業と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 34億円 | 26億円 |
| 投資CF | -14億円 | -12億円 |
| 財務CF | -45億円 | -21億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人々の健康を支え、いい人生を提供すること、イノベーションを通して人々の健康を支え、幸せでいい人生を送っていただけるための土台となること」を使命としています。健康を支えるインフラを提供し、さまざまなサービスを絶えず展開することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、環境問題、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮などを「行動指針(ESG5箇条)」として定め、従業員に周知しています。コンプライアンスの遵守や社会に共感を得られる行動をとることを重視し、社会課題の解決に取り組む姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は長期ビジョン「FALCO VISION 2030」および中期経営計画「FALCO INNOVATION 2026」を策定しています。2026年度までを事業構造の転換推進期と位置づけ、以下の数値目標を掲げています。
* 自己資本利益率(ROE):8%以上
* 営業利益:28億円
* 当期純利益:20億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「事業構造の転換」を掲げ、基盤事業の変革と成長事業の拡大を推進しています。臨床検査事業では集荷体制の強化と業務効率化、調剤薬局事業では高齢者施設向けモデルの確立を進めます。成長事業として、ゲノム事業でのNIPTや検査キットの拡大、ICT事業での医療DX推進による顧客基盤確立に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様な人材の採用強化、次世代リーダーの早期登用と育成、デジタル人材の育成に取り組んでいます。また、多様で柔軟な働き方の選択やシニア人材の活躍推進など、働きやすい環境の整備を進め、イノベーション促進と労働生産性の向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 55.7歳 | 32.0年 | 6,726,884円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.0% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 77.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 88.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 臨床検査事業の法的規制
臨床検査事業は「臨床検査技師等に関する法律」等による規制を受けています。衛生検査所の設備や管理組織等において法令違反が生じ、営業停止や許可取消となった場合、同社グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 調剤薬局事業に対する法的規制
調剤薬局事業は「医薬品医療機器等法」や「健康保険法」等による許認可や指定を必要とします。万一、法令違反により営業停止や取消処分を受けた場合、店舗運営ができなくなり、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 診療報酬点数の改定
臨床検査に係る診療報酬点数は厚生労働省により決定され、引き下げが慣例となっています。今後も診療報酬点数が引き下げられた場合、収益性が低下し、臨床検査事業の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 薬価並びに調剤報酬の改定
調剤薬局事業に係る薬価および調剤報酬も公的に決定されます。今後の改定により薬価や調剤報酬が引き下げられた場合、調剤薬局事業の収益性が低下し、業績に影響を与える可能性があります。



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