ファルコホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファルコホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファルコホールディングスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、臨床検査事業、調剤薬局事業、ICT事業を展開する医療総合サービス企業です。直近の業績は、売上高が436億円、経常利益が27億円と増収増益を達成しています。事業構造の転換を推進し、持続的な成長と収益基盤の確立を目指しています。


※本記事は、株式会社ファルコホールディングスの有価証券報告書(第39期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ファルコホールディングスってどんな会社?


同社は臨床検体検査の受託や調剤薬局の運営、医療情報システムの開発・販売を展開する医療総合サービス企業です。

(1) 会社概要


同社は1962年に設立された関西医学検査センターを母体とし、1988年にファルコ・バイオシステムズとして設立されました。1997年に大証二部などに上場し、2005年に東証・大証一部に指定されました。2014年には現在のファルコホールディングスへ商号変更し、持株会社体制へ移行しています。

同社の従業員数は連結で1,037名、単体で4名です。筆頭株主は資本業務提携先であるビー・エム・エルで、第2位は資産管理業務などを行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は自社の従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
ビー・エム・エル 9.84%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.01%
ファルコホールディングス従業員持株会 4.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長社長執行役員は安田忠史氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
安田 忠史 代表取締役社長社長執行役員 1995年ファルコバイオシステムズ入社。同社経理部長、経営企画本部長、専務取締役企画管理本部長などを経て、2018年より同社代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。
福井 崇史 取締役副社長執行役員ゲノム事業室長 2002年ファルコバイオシステムズ入社。同社バイオメディカル事業部長、常務取締役などを歴任。2025年6月より同社取締役副社長執行役員ゲノム事業室長、メディサージュ代表取締役社長。
河田 與一 取締役常務執行役員臨床事業室長 1992年ファルコバイオシステムズ入社。同社臨床検査部長、常務取締役臨床検査本部長、代表取締役社長などを歴任。2023年6月より同社取締役常務執行役員臨床事業室長。
郷田 哲夫 取締役経営企画室長 2016年ファルコバイオシステムズ入社。同社常務執行役員臨床営業本部長、専務取締役などを歴任。2023年同社取締役執行役員ICT事業室長を経て、2024年6月より現職。
大馬 久幸 取締役執行役員ファーマ事業室長 2007年ファルコバイオシステムズ入社。メディサージュ常務取締役管理本部長などを経て、2025年同社取締役執行役員ファーマ事業室長、ファルコファーマシーズ代表取締役に就任。
黒田 修平 取締役執行役員管理室長IR室長ICT事業室副室長 2012年メディサージュ入社。同社経理部長、取締役などを経て、2024年同社執行役員管理室長。2025年8月より同社取締役執行役員管理室長兼IR室長兼ICT事業室副室長。
島田 圭 取締役執行役員ICT事業室長ゲノム事業室副室長 2005年ファルコバイオシステムズ入社。メディサージュICT事業本部営業ユニット長などを経て、2025年6月より同社取締役執行役員ICT事業室長兼ゲノム事業室副室長に就任。


社外取締役は、髙井晶治(髙井晶治公認会計士事務所代表)、磯田光男(弁護士法人三宅法律事務所代表社員)、高坂佳郁子(色川法律事務所社員弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「臨床検査事業」、「調剤薬局事業」および「ICT事業」を展開しています。

臨床検査事業


各地の病院や診療所などから臨床検体検査を受託するほか、体外診断用医薬品などの製造・販売、医療情報システムの販売や卸売を行っています。さらに、ゲノム医療における遺伝学的検査や個別化医療にも対応しています。

収益は主に医療機関などからの臨床検査の受託料や試薬の販売代金として得ています。運営は主にファルコバイオシステムズが担い、アテストが体外診断用医薬品などの卸売事業を行っています。

調剤薬局事業


患者から応需した処方箋に基づく調剤薬局の運営を行っています。高齢者施設向けの新たなビジネスモデルの確立や在宅医療への対応、オンライン服薬指導などICTを活用したサービスも提供しています。

収益は主に調剤サービスの提供と薬剤の販売対価として得ています。運営は主にファルコファーマシーズおよびチューリップ調剤が担当し、地域医療と連携したかかりつけ薬局としての役割を担っています。

ICT事業


医療DXの推進を見据え、診療所向けのクラウド型レセプト総合支援サービスや、中小規模病院向けのクラウド型電子カルテなど、医療情報システムの開発と販売を行っています。

収益は主に医療機関などからのシステムの販売代金や導入後の保守サービス料、クラウド提供サービス料として得ています。運営は主にメディサージュが担当し、新たな機能開発とサービスの価値向上に取り組んでいます。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は430億円から500億円の範囲で安定して推移しています。経常利益は一時的に減少した局面がありましたが、直近2期間は連続して増益となっており、収益性の改善が進んでいます。利益率も直近では6.2%まで回復傾向にあることが読み取れます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 500億円 469億円 430億円 433億円 436億円
経常利益 58億円 33億円 23億円 25億円 27億円
利益率(%) 11.6% 7.1% 5.3% 5.8% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 23億円 19億円 22億円 20億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となりましたが、売上総利益は増加し、売上総利益率も改善しています。これに伴い、営業利益および営業利益率も前期を上回り、本業の収益力が着実に向上していることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 433億円 436億円
売上総利益 134億円 138億円
売上総利益率(%) 30.8% 31.7%
営業利益 23億円 25億円
営業利益率(%) 5.4% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が41億円(構成比36%)、租税公課が12億円(同10%)、消耗品費が11億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力の臨床検査事業とICT事業が増収となっています。特にICT事業はシステム契約数の増加により順調に売上を伸ばしています。一方で、調剤薬局事業は薬価改定や店舗数の減少などの影響により微減となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
臨床検査事業 264億円 267億円
調剤薬局事業 155億円 152億円
ICT事業 15億円 17億円
連結(合計) 433億円 436億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 26億円 29億円
投資CF -12億円 -20億円
財務CF -21億円 -20億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も70.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人々の健康を支え、いい人生を提供すること、イノベーションを通して人々の健康を支え、幸せでいい人生を送っていただけるための土台となること」を使命とし、「健康を支えるインフラを提供すること、さまざまなサービスを絶えず展開し、人々の健康を支えるインフラを提供すること」を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、企業活動を通じて顧客や株主、従業員をはじめとするステークホルダーに「いい人生を送っていただけること」に存在価値があると考えています。環境問題や人権の尊重、従業員の健康や労働環境への配慮などを「行動指針」(ESG5箇条)として定め、社内に周知し企業倫理の確立を図っています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「FALCO INNOVATION 2026」において、収益性と資本効率の向上に向けた具体的な中期経営目標を設定しています。また、配当による株主還元の一層の強化を図るため、株主還元に関する指標を設けています。

* 自己資本利益率(ROE)8%以上
* 営業利益28億円
* 当期純利益20億円
* 連結純資産配当率(DOE)5%

(4) 成長戦略と重点施策


長期ビジョン「FALCO VISION 2030」に基づき、事業構造の転換による持続的成長可能な収益基盤の確立を目指しています。具体的には、臨床検査事業での業務効率化や調剤薬局事業における施設向けの新たなビジネスモデルの確立を推進します。さらに、ゲノム事業でのNIPTなどの市場拡大や、ICT事業での医療DX推進を重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


イノベーションを促進し労働生産性を向上するため、多様な人材の採用強化、次世代リーダーの育成、働きやすい環境の整備に取り組んでいます。具体的には、ゲノム・ICTなどの専門人材の確保やデジタル人材の育成、多様で柔軟な働き方の選択やシニア人材の雇用確保を見据えた人事制度の構築を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 55.7歳 31.5年 7,529,698円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 77.7%
男女賃金差異(全労働者) 72.6%
男女賃金差異(正規雇用) 76.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 89.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サイバーセキュリティに関するリスク


事業運営にあたって、医療関連情報や顧客データなどの重要な情報を保有・管理しています。サイバー攻撃によって重大なインシデントが発生し、情報漏えいやデータの毀損、システムの停止などが生じた場合、同社グループの事業活動や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 臨床検査事業および調剤薬局事業の法的規制


臨床検査事業は「臨床検査技師等に関する法律」、調剤薬局事業は「医薬品医療機器等法」などの法的規制を受けています。万一、法令違反によって営業停止や許認可の取消処分を受けた場合、同社グループの信用が低下し、経営活動に重大な支障をきたす恐れがあります。

(3) 診療報酬および薬価・調剤報酬の改定


同社が実施する臨床検査の診療報酬点数や、調剤薬局事業に関わる薬価および調剤報酬は、関連法規に基づいて国が決定しています。医療費抑制政策などを背景に、将来的にこれらの報酬や点数が引き下げられた場合、同社グループの収益性が低下するリスクがあります。

(4) 検査過誤および調剤過誤の発生


臨床検査や処方箋調剤において、検査過誤や調剤過誤を防止するためシステム導入や精度管理体制を整え、細心の注意を払っています。しかし、万一過誤による健康被害や訴訟などが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償責任が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。