※本記事は、株式会社田谷の有価証券報告書(第52期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 田谷ってどんな会社?
同社は「美容師法」に基づき全国規模で美容室を経営し、併せてヘアケア商品等の販売を行っています。
■(1) 会社概要
1975年に美容室経営を目的としてビューティショップ田谷を設立したのが同社の始まりです。1983年に営業を譲り受けて現在の田谷へと商号を変更し、事業を拡大しました。1997年に日本証券業協会に株式を店頭登録し、1999年に東京証券取引所市場第二部、2001年には同市場第一部への上場を果たしました。
現在の単体従業員数は490名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主はティーズで、第2位は外国法人のINTERACTIVE BROKERS LLC、第3位はL&Y貿易となっています。多様な株主構成のもとで事業を展開しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ティーズ | 14.48% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC(常任代理人 インタラクティブ・ブローカーズ証券) | 9.62% |
| L&Y貿易 | 8.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役会長兼社長は田谷和正氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田谷 和正 | 代表取締役会長兼社長 | 1988年日本旅行入社。1991年同社入社。1997年常務取締役を経て2003年代表取締役社長に就任。2016年代表取締役会長(CEO)を経て2025年8月より現職。 |
| 保科 匡邦 | 取締役顧問 | 1981年同社入社。1995年常務取締役、2003年取締役副社長等を歴任。2016年代表取締役社長(COO)に就任し2019年より営業本部長を兼任。2022年6月より現職。 |
| 中村 正二 | 取締役執行役員 | 1995年同社入社。2017年執行役員九州支社長、2022年執行役員営業本部長等を経て取締役に就任。2023年に直営事業本部長を務め、2026年4月より現職。 |
| 新藤 和久 | 取締役執行役員 | 1996年同社入社。2006年執行役員第六事業部長、2016年取締役兼執行役員人事部長等を歴任。2022年取締役執行役員人事総務本部長を経て2026年4月より現職。 |
| 中西 一也 | 取締役 | 1984年美容室ラ・フェ開業。アルティスト等の設立を経て、美容協同組合dupa CSO副代表やABAアジアビューティーアカデミー理事等を務める。2026年3月より現職。 |
| 上原 俊晴 | 取締役(常勤監査等委員) | 1979年同社入社。1999年取締役クレージュ営業部長、2014年専務取締役執行役員技術教育部長等を歴任。2021年専務執行役員営業本部長等を経て2022年6月より現職。 |
社外取締役は、田島克夫氏(公認会計士田島事務所設立・税理士)、勇亜衣子氏(Dr.TOUHI AGAクリニック開院・医師)です。
2. 事業内容
同社グループは、「美容施術」「商品」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 美容施術
同社は、全国に展開する美容室において、国家資格を有する美容師によるカット、カラー、パーマ等の美容施術サービスを提供しています。直営店舗に加え、フリーランス型サロンも運営し、多様化する顧客のニーズやライフスタイルに合わせた高品質なサービスを幅広い層に向けて展開しています。
収益は、顧客が来店して美容施術の全工程が完了した際に受け取るサービス提供の対価から成り立っています。また、独自や他社のポイントプログラムを通じた施策も取り入れており、これらの事業の運営は主に同社が行っています。
■(2) 商品
美容室の店舗内やオンラインショップを通じて、顧客の髪質やニーズに合ったヘアケア商品や化粧品、美容家電などの販売を行っています。美容施術と連動してプロ仕様の商品を提供することで、顧客のホームケアをサポートしています。
収益は、店舗での商品販売やインターネット通販での販売代金として顧客から受け取る対価で構成されています。インターネット販売においては、商品の出荷時点で収益を認識しており、これらの販売事業も同社が運営主体となっています。
■(3) その他
美容施術や商品販売の事業に加えて、美容業界向けの講習、セミナーの開催や、ヘアショーなどのイベント運営を行っています。美容技術の向上や情報発信を通じて業界全体の発展に貢献する活動を展開しています。
収益は、講習やセミナーへの参加者、イベントの協賛企業などから受け取る参加費や収入から成り立っています。教育機能や情報発信力を活かしたこれらの事業も、同社が運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の単体業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は減少傾向が続いていますが、事業構造改革や経費削減の効果もあり、営業利益や経常利益は直近で黒字転換を果たしています。一方で、店舗閉鎖等に伴う特別損失の計上により当期利益はマイナスとなっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 65億円 | 60億円 | 58億円 | 54億円 | 51億円 |
| 経常利益 | -11億円 | -6億円 | -0.3億円 | 425万円 | 0.3億円 |
| 利益率(%) | -17.0% | -10.0% | -0.5% | 0.1% | 0.7% |
| 当期利益 | 4億円 | -8億円 | -2億円 | -0.6億円 | -2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が減少する中で、売上総利益の減少幅を抑え、さらに販売費及び一般管理費を削減したことで営業利益の大幅な増益を達成しています。本部の業務効率化による人件費等の抑制が寄与しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 54億円 | 51億円 |
| 売上総利益 | 8億円 | 8億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.5% | 16.2% |
| 営業利益 | 389万円 | 0.4億円 |
| 営業利益率(%) | 0.1% | 0.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が2.8億円(構成比36%)、役員報酬が0.8億円(同10%)を占めています。また、売上原価においては、美容施術に伴う労務費が23億円(同53%)、地代家賃が8億円(同18%)と高い割合を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントであるため、売上区分ごとの傾向を分析します。全体的な入客数の減少に伴い美容施術売上が低下していますが、客単価の増加やリブランディング効果により収益性の改善に努めています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 美容施術 | 48億円 | 45億円 |
| 商品 | 6億円 | 5億円 |
| その他 | 0.9億円 | 1億円 |
| 合計 | 54億円 | 51億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態(積極型)となっています。企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.0%で、市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.7億円 | 0.7億円 |
| 投資CF | -2億円 | -2億円 |
| 財務CF | 1億円 | 5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「すべての人に夢と希望を与え社会に貢献する」という企業理念を掲げています。美容という手段を用いて人々を美しくすることを最大のテーマとし、美容師の技術力、創造力、感性およびサービスを高めることで、顧客に寄り添った事業展開を目指しています。
■(2) 企業文化
徹底した現場第一主義を貫いており、「顧客満足」「株主満足」「社員満足」「社会満足」の4つの満足を追求することを企業の社会的使命と捉えています。多様化するニーズに応え、常に新しい価値を創出しようとする文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
「ビューティブランドプラットフォームへの進化」をテーマに掲げ、美容室チェーンからビューティブランドプラットフォーム企業への進化を目指しています。2027年3月期の目標として以下の数値を掲げています。
・売上高:52億円
・営業利益:0.4億円
・経常利益:0.4億円
・当期純利益:0.1億円
・期末美容室数:65店
■(4) 成長戦略と重点施策
既存の直営美容室事業を収益基盤としつつ、人材戦略とDX戦略による「成長戦略」および新規収益源の創出による「拡大戦略」を推進しています。教育体系の高度化による生産性向上や、M&Aを活用した地域サロンへのプラットフォーム提供などに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最重要資本と位置付け、多様な働き方への対応や教育・育成体制の強化に取り組んでいます。フリーランス型サロンを活用して柔軟な働き方を選択できる環境を整えるとともに、独自システムの再構築により美容師の技術力や接客力を高め、長期的に活躍できる組織づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 35.1歳 | 12.6年 | 4,100,684円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.8% |
| 男性育児休業取得率 | 25.0% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 63.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 101.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材確保と教育の遅延
美容師の採用や教育研修が計画通りに進まない場合、または顧客からの支持が高い人材が大量に離職した場合、サービスの質の維持が困難となり、事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 店舗賃貸借先への依存
店舗形態として賃借物件やインショップ物件が多く、デベロッパー等との取引の継続性が重要です。相手先の事業継続が危ぶまれる事態が生じた場合、店舗の撤退や営業継続不能に陥るリスクがあります。
■(3) 美容業界の過当競争と環境変化
美容室のオーバーストア状態による過当競争や人口減少による客数の減少が続いており、季節要因や天候不順、資材不足や物価高騰などの外部環境の変化が収益性に影響を与える可能性があります。



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