田 谷 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 田 谷 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する、美容室チェーンの大手企業です。「TAYA」「Shampoo」等のブランドで全国に直営美容室を展開し、美容施術およびヘアケア商品の販売を行っています。直近の決算では減収となりましたが、営業利益・経常利益は黒字転換を果たしました。最終損益は赤字が継続しています。


※本記事は、田谷 の有価証券報告書(第51期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 田谷ってどんな会社?


美容室「TAYA」ブランドを中心に全国展開する企業です。国家資格を持つ美容師による施術サービスのほか、自社ブランドを含むヘアケア商品の販売も手がけています。

(1) 会社概要


同社は1975年に「株式会社ビューティショップ田谷」として設立され、美容室経営を開始しました。1997年に日本証券業協会へ株式を店頭登録し、1999年には東京証券取引所市場第二部へ上場、2001年には同市場第一部へ指定替えとなりました。その後、2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

同社に連結子会社はなく、単体での従業員数は527名です。筆頭株主は有限会社ティーズであり、第2位は個人株主、第3位は自動車教習所を運営する事業会社となっています。

氏名 持株比率
有限会社ティーズ 32.99%
田谷 千秋 3.05%
株式会社赤城自動車教習所 2.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役会長は田谷和正氏、代表取締役社長執行役員は中村隆昌氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田谷 和正 代表取締役会長 1988年日本旅行入社。1991年同社入社。取締役クレージュサロン営業部長などを経て2003年代表取締役社長に就任。2016年より現職。
中村 隆昌 代表取締役社長執行役員 1996年同社入社。執行役員経営企画部長、管理本部長などを歴任。2022年4月取締役執行役員を経て同年6月より現職。
保科 匡邦 取締役顧問 1981年同社入社。専務取締役営業本部長、代表取締役社長(COO)などを歴任。2022年より現職。
中村 正二 取締役執行役員 1995年同社入社。執行役員九州支社長、営業本部長を経て、2023年4月より直営事業本部長。
新藤 和久 取締役執行役員 1996年同社入社。人事部長、人事総務本部長などを経て、2025年4月よりフリーランス・FC事業本部長。
上原 俊晴 取締役(常勤監査等委員) 1979年同社入社。専務執行役員営業本部長などを歴任し、2022年より現職。


社外取締役は、田島克夫(公認会計士・税理士)、勇亜衣子(医師・AGAクリニック院長)です。

2. 事業内容


同社は、美容事業の単一セグメントですが、「美容施術」「商品」「その他」の区分で事業を展開しています。

(1) 美容施術事業


「TAYA」「Shampoo」「MICHEL DERVYN」等のブランドで展開する美容室において、顧客に対しカット、パーマ、カラー等の美容サービスを提供しています。国家資格を有する美容師が施術を行い、多様化する顧客ニーズに対応しています。

収益は、来店した顧客から支払われる施術料金等から得ています。運営は主に田谷が行っています。

(2) 商品販売事業


美容室店舗およびECサイトにおいて、顧客に合ったヘアケア商品や化粧品等の販売を行っています。自社開発のプライベートブランド商品や、サロン専売品などを取り扱っています。

収益は、顧客への商品販売代金から得ています。運営は主に田谷が行っています。

(3) その他


上記に含まれない事業として、講習、セミナー、ショー等の開催や運営を行っています。美容技術や知識の普及活動などが含まれます。

収益は、講習会やセミナーの参加費、ショーの開催収入等から得ています。運営は主に田谷が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績推移です。売上高は減少傾向にあり、特に2021年3月期から大きく規模が縮小しています。利益面では赤字計上が続いていましたが、2025年3月期においては経常利益が僅かながら黒字転換を果たしました。当期純利益については依然として損失計上が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 68億円 65億円 60億円 58億円 54億円
経常利益 -13億円 -11億円 -6億円 -0.3億円 0.0億円
利益率(%) -18.9% -17.0% -10.0% -0.5% 0.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -10億円 4億円 -8億円 -2億円 -0.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を見ると、売上高は減少しましたが、営業利益および経常利益は黒字化しました。店舗閉鎖等の構造改革を進めた結果、売上総利益率は改善傾向にあります。特別損失として店舗閉鎖損失や固定資産除却損等を計上したため、最終損益は赤字となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 58億円 54億円
売上総利益 8億円 8億円
売上総利益率(%) 14.3% 15.5%
営業利益 -0.2億円 0.0億円
営業利益率(%) -0.4% 0.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が約3.0億円(構成比約36%)、広告宣伝費が約0.9億円(同約11%)を占めています。また、売上原価(美容施術)のうち、労務費が約24億円(構成比約56%)、地代家賃等の経費が約17億円(同約39%)を占めています。

(3) セグメント収益


美容施術および商品の売上はいずれも減少傾向または微増にとどまりました。美容施術は店舗閉鎖や客数減少の影響を受け減収となりましたが、商品販売はEC販売等の強化により増加しました。その他売上は講習会等の実施により増加しています。なお、同社は単一セグメントのため利益情報は開示されていません。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
美容施術 53億円 48億円
商品 5億円 6億円
その他 0.6億円 0.9億円
連結(合計) 58億円 54億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業の営業活動による収支がマイナスとなり、投資活動でも支出が超過していますが、財務活動で資金を調達している「勝負型」の状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -0.3億円 -0.7億円
投資CF -0.1億円 -2億円
財務CF -0.7億円 1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されておらず市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は20.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「すべての人に夢と希望を与え社会に貢献する」という企業理念を掲げています。美容という手段を用いて人々を美しくすることを最大のテーマとし、美容師の技術力、創造力、感性及びサービスを高め、徹底した現場第一主義を貫くことを方針としています。

(2) 企業文化


同社は、「顧客満足」「株主満足」「社員満足」「社会満足」の4つの満足の追求を企業の社会的使命と捉え、経営活動を進めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期経営計画『TAYA BX PROJECT』をブラッシュアップさせ、2026年3月期に向けた重点施策を遂行しています。次年度における数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:51.8億円
* 営業利益:0.5億円
* 経常利益:0.5億円
* 当期純利益:0.2億円
* 期末美容室数:64店舗

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、「リブランディングの更なる推進」「フリーランス事業の確立」「本部構造の改革」を重点施策としています。店舗リニューアルによる収益向上、フリーランス美容師の定着と新規出店、本部のスモール化による効率化と販管費削減を推進し、黒字化と安定的な収益体質の構築を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材」を最も重要な経営資源と捉えています。多様な働き方を実現するため、フリーランスブランド「ano」の創設や出店加速、外国人美容師の採用などを進めています。また、給与制度の見直しやキャリアパスの充実により、「美のプロフェッショナル人材」の育成と定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 34.4歳 12.0年 3,936,683円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.7%
男性育児休業取得率 20.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.1%
男女賃金差異(正規雇用) 69.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 81.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 美容師人材の確保に関するリスク


同社の事業展開には国家資格を有する美容師の採用が不可欠です。原則として正社員を採用し育成を行っていますが、人材採用や教育研修が計画通りに進まない場合、事業展開や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、顧客支持の高い美容師が大量に離職した場合も同様の影響が懸念されます。

(2) 店舗運営における外部環境リスク


売上高は季節要因により変動する傾向がありますが、冷夏や暖冬、台風等の天候不順や疫病の蔓延が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、店舗の多くは賃借物件であるため、貸主等の事情により撤退や営業継続不能となるリスクもあります。

(3) 継続企業の前提に関する事象


同社は営業黒字を回復したものの、安定的な利益計上には至っておらず、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。リブランディングやフリーランス事業の確立、本部構造改革等の施策を進めるとともに、金融機関からの支援や新株予約権による資金調達等で対応していますが、事業進捗や資金調達状況によっては資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。