菱友システムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

菱友システムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダード市場に上場し、システム開発やエンジニアリングサービスを提供する三菱重工グループの情報サービス企業です。直近の業績は、主要顧客である三菱重工向けの案件が堅調に推移し、売上高は前期比15.4%増、経常利益は同35.4%増と大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社菱友システムズ の有価証券報告書(第57期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 菱友システムズってどんな会社?


三菱重工グループのIT企業として、システム開発や運用保守、エンジニアリング解析などを展開しています。

(1) 会社概要


1968年にシンコー計算サービスとして設立され、1972年に菱友計算へ商号変更しました。2004年に現在の菱友システムズへ商号変更するとともにジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。2017年には本社を現在の東京都港区芝浦へ移転し、2022年の東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

同社の従業員数は連結で2,017名、単体で1,254名です。筆頭株主は同社の主要顧客でもある親会社の三菱重工業で、第2位は従業員による持株会である菱友社員持株会、第3位は光通信となっています。

氏名 持株比率
三菱重工業 31.22%
菱友社員持株会 21.87%
光通信 5.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長執行役員は安井譲氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
安井 譲 代表取締役社長執行役員 三菱重工業にてICTソリューション本部副本部長などを歴任。2021年に同社入社後、インダストリーソリューション事業部長を経て、2023年6月より現職。
荻野 純 取締役副社長執行役員 1979年同社入社。エンジニアリングソリューション事業部長、航空宇宙エンジニアリング・ソリューション事業部長などを歴任し、2024年7月より現職。
石田 真悟 取締役(常勤監査等委員) 株式会社三菱銀行(現三菱UFJ銀行)出身。同行練馬支店支店長などを経て2020年に同社へ出向し、内部統制室長を歴任。2023年6月より現職。


社外取締役は、内田晋(日本情報通信参与)、前田真由美(三菱重工業総合研究所業務部次長)、賀谷浩志(賀谷浩志公認会計士事務所代表)、谷川桃太郎(三菱重工業グローバル財務部主席部員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報サービス」および「その他」事業を展開しています。

同社グループは情報サービスの単一セグメントで事業を行っています。主なサービス内容は、情報通信システムの設計・開発・運用・保守、システム関連機器の販売、工業製品等の設計・解析・シミュレーション、および各種情報処理サービスです。顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援やセキュリティサービスの提供も行っています。

収益は主に、顧客に対するシステムの受託開発費用、保守・運用サービス料、機器販売代金、およびエンジニアリングサービス料から得ています。主要な顧客は親会社である三菱重工業であり、売上高の過半数を占めています。運営は主に同社が行い、連結子会社の菱友システム技術などが連携して事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は316億円から428億円へと順調に拡大しており、特に直近の伸びが顕著です。利益面でも、経常利益は23億円から49億円へと倍増しており、利益率も7.3%から11.4%へと向上しています。増収に伴い利益も着実に積み上がっており、収益性の向上が継続していることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 316億円 303億円 331億円 371億円 428億円
経常利益 23億円 25億円 27億円 36億円 49億円
利益率(%) 7.3% 8.2% 8.2% 9.7% 11.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 14億円 17億円 22億円 32億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は21.1%から21.6%へと改善しており、営業利益率は9.7%から11.3%へと上昇しました。売上の伸びがコストの増加を上回り、効率的な利益創出ができていることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 371億円 428億円
売上総利益 78億円 92億円
売上総利益率(%) 21.1% 21.6%
営業利益 36億円 48億円
営業利益率(%) 9.7% 11.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が15億円(構成比34%)、その他が10億円(同23%)を占めています。研究開発費は1億円(同3%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は情報サービスの単一セグメントですが、主要顧客である三菱重工向けの案件を中心に受注が堅調です。システム開発や解析・設計関連の受注が拡大したことで、売上高、利益ともに前期を上回る結果となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
情報サービス 371億円 428億円 36億円 48億円 11.3%
連結(合計) 371億円 428億円 36億円 48億円 11.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を投資と借入返済や配当に回す健全型と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 41億円 30億円
投資CF -28億円 -21億円
財務CF -9億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、顧客に最適なサービスを提供し社会の発展に貢献すること、技術力の強化と経営改革により時代に即応した魅力ある会社を実現すること、そして社員の能力と創造力を尊重し闊達なコミュニケーションで総合力を発揮することを経営理念として掲げています。これらを通じ、社会から信頼され必要とされる企業集団を目指しています。

(2) 経営文化


同社は、「常に品質の向上と技術力の強化に努め、顧客に最適なサービスを提供し続ける」姿勢を重視しています。また、社員の能力と創造力を尊重し、闊達なコミュニケーションを通じて組織としての総合力を発揮することを大切にする企業文化を持っています。品質管理の徹底や技術者育成を推進し、顧客との深い信頼関係の構築に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は2025年4月から2028年3月までの3か年計画として、2025年度中期経営計画「顧客と並走する菱友」を策定しました。主体的な技術力・サービス価値の向上に取り組み、顧客ニーズを先取る営業を推進することで事業拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「顧客と並走する菱友」の実現に向け、新ビジネスの立ち上げ、既存顧客の深耕・接点の拡大、人の価値向上、業務運営体制の強化、菱友グループ強化・最適化の5つを注力課題としています。特にAIやセキュリティ等の新領域拡大や、解析・設計事業の多角化、高度技術者の育成に注力する方針です。

* 2026年3月期業績予想:売上高425億円
* 2026年3月期業績予想:営業利益48億円
* 2026年3月期業績予想:経常利益49億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「“人”の価値を高める」経営を推進し、高度技術者の育成やキャリアに応じた教育による質的な人材確保と、採用強化やリスキリングによる量的な確保の両面に取り組んでいます。また、考課制度の改正やエンゲージメント向上施策を通じ、社員が能力を発揮できる環境整備と人的資本経営の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.0歳 19.2年 7,584,139円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.8%
男女賃金差異(正規雇用) 76.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 61.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、経済産業省ITスキル標準スキル熟達度レベル3以上取得者数(513名)、全労働者に占める女性労働者の割合(14.1%)、離職率(3.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客のIT投資動向


同社の業績は主要顧客である三菱重工をはじめとする企業のIT投資動向に影響を受けます。経済情勢の変化等により顧客のIT予算が削減されたり投資ニーズが急変したりした場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新規顧客の獲得や新領域の拡大により影響の低減を図っています。

(2) システム開発に関するリスク


システム開発においては、開発規模の大型化や技術の高度化により難易度が増しています。作業遅延によるコスト増や納入後の不具合修正が発生した場合、採算悪化や損害賠償につながる可能性があります。同社はプロジェクト管理体制の強化や見積り段階での管理徹底により、品質向上とリスク低減に努めています。

(3) 人材の確保及び育成


事業拡大には高度な技術力を持つ人材の確保と育成が不可欠です。AIやDX等の新領域を含め、必要な人材を十分に確保できない場合、競争力や業績に影響が出る可能性があります。同社は採用強化に加え、教育制度の充実や働き方改革、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。