菱友システムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

菱友システムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

菱友システムズは東証スタンダード市場に上場し、三菱重工グループを主要顧客として情報通信システムの開発や解析・設計などの情報サービス事業を展開する企業です。直近の業績は企業の旺盛なIT投資需要を背景にシステム開発が堅調に推移し、増収および各段階利益で増益を達成、事業拡大を継続しています。


※本記事は、株式会社菱友システムズの有価証券報告書(第58期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 菱友システムズってどんな会社?


三菱重工グループを主要顧客とし、情報通信システムの開発や解析・シミュレーションを提供する企業です。

(1) 会社概要


1968年に電子計算機による計算業務等の受託を目的として設立されました。1972年に現社名へ変更後、データエントリ事業やシステム開発事業などを譲受し事業を拡大しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しで東証スタンダード市場へ移行しています。2026年には網屋と資本業務提携を締結し、セキュリティビジネスの拡大を図っています。

現在の従業員数は連結で2,006名、単体で1,246名の体制です。筆頭株主は事業会社である三菱重工業であり、同社は持分法適用会社となっています。第2位株主は菱友社員持株会であり、従業員による安定的な持株比率を有しています。

氏名 持株比率
三菱重工業 31.21%
菱友社員持株会 20.43%
加藤 眞人 2.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長執行役員は安井譲氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
安井 譲 代表取締役社長執行役員 1985年三菱重工業入社。原子力事業本部やICTソリューション本部の要職を歴任し2021年同社入社。執行役員、常務執行役員を経て2023年より現職。
笠間 晴人 取締役執行役員 1987年同社入社。システム開発部長やビジネスソリューション事業部長等を経て、2018年執行役員就任。ICTクリエーションセンター長等を経て2026年より現職。
石田 真悟 取締役(常勤監査等委員) 1991年三菱銀行入行。法人業務や支店長を歴任後、2020年同社へ出向し内部統制室主幹部員。2021年同社入社、内部統制室長を経て2023年より現職。


社外取締役は、宇田茂雄(元日本アイ・ビー・エム取締役執行役員)、前田真由美(三菱重工業総合研究所業務部次長)、賀谷浩志(元EY新日本有限責任監査法人シニアパートナー)、谷川桃太郎(三菱重工業グローバル財務部主席部員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報サービス」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 情報通信システムの設計・開発および運用・保守


同社の中核事業として、顧客の経営課題や事業課題を解決するための最適なITソリューションを提供しています。主に情報通信システムの設計、開発、運用および保守を手掛けるほか、システム関連機器の販売も行っています。大規模なシステム開発から保守・運用まで、一貫したサービスを企業向けに展開しています。

収益は、顧客との請負契約や準委任契約に基づく開発や運用保守の対価、およびシステム機器等の販売代金として受け取ります。親会社である同社のほか、菱友システム技術や菱友システムビジネスなどの連結子会社がそれぞれの得意領域において事業を運営しています。

(2) 工業製品等の設計、解析・シミュレーションおよび情報処理サービス


システム開発と並ぶ主力事業として、工業製品の流体解析や構造解析、電磁場解析などの専門的な解析・シミュレーション業務を展開しています。また、AI技術の活用や情報セキュリティに関する新サービスの提供など、デジタル領域の高度なニーズに対応する各種情報処理サービスも提供しています。

収益は、顧客からの解析・設計業務の受託費用や、情報処理サービスなどの利用料・作業委託料として受け取ります。主力顧客である三菱重工業向けを中心に強固な基盤を持ち、同社のほか、菱友システム技術や菱友システムサービスなどの連結子会社が事業を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、企業のクラウドシフトやDX推進に向けたIT投資需要を取り込み、売上高は一貫して右肩上がりで成長しています。経常利益も毎年増加しており、利益率も8%台から13.0%へと大きく改善するなど、収益力の着実な向上が伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 303億円 331億円 371億円 428億円 432億円
経常利益 25億円 27億円 36億円 49億円 56億円
利益率(%) 8.2% 8.2% 9.7% 11.4% 13.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 17億円 22億円 32億円 36億円

(2) 損益計算書


当期はシステム開発や解析・設計関連を中心に安定的に案件を受注し、増収を達成しました。売上増加に加え、大規模システム開発におけるプロジェクト管理の徹底や業務効率化が奏功し、売上総利益率および営業利益率ともに改善を見せています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 428億円 432億円
売上総利益 92億円 100億円
売上総利益率(%) 21.6% 23.1%
営業利益 48億円 55億円
営業利益率(%) 11.3% 12.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が17億円(構成比37%)、その他が11億円(同24%)、従業員賞与が6億円(同13%)を占めています。売上原価については、労務費が100億円(構成比40%)、外注費が80億円(同32%)となっています。

(3) セグメント収益


同社グループは情報サービスの単一セグメントであるため、事業全体の売上推移となります。AIや情報セキュリティ分野での新サービス提供、既存顧客の深耕、業務運営体制の強化などの重点施策が順調に進捗し、堅調な売上の拡大を牽引しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
情報サービス 428億円 432億円
連結(合計) 428億円 432億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 30億円 40億円
投資CF -21億円 -16億円
財務CF -9億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も68.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客様に最適のサービスを提供し、事業活動を通じて社会の発展に貢献する」「技術力の強化と経営の改革を図り、時代に即応した魅力ある会社の実現に努める」「社員の能力と創造力を尊重し、闊達なコミュニケーションで総合力を発揮する」という理念を掲げ、社会から信頼され必要とされる企業集団を目指しています。

(2) 企業文化


ITを活用して顧客の経営課題や事業課題を解決するための最適なソリューションを提供するとともに、社会課題に取り組むことを通じて持続的な社会の実現に貢献する「サステナビリティ基本方針」を重視しています。社員の能力と創造力を尊重し、闊達なコミュニケーションで総合力を発揮する文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


2025年度を初年度とする3か年の中期経営計画「顧客と並走する菱友」を推進しています。主体的に技術力・サービス価値の向上に取り組み、顧客ニーズを先取る営業を積極的に推進することで、顧客における同社の価値向上を目指しています。

* 売上高:450億円
* 営業利益:54.5億円
* 経常利益:56.5億円
* 売上高経常利益率:12.6%

(4) 成長戦略と重点施策


競争環境の変化や技術革新に対応するため、中期経営計画に基づき事業拡大に向けた取り組みを加速させています。AIや情報セキュリティ等の分野における新ビジネスの立ち上げ、既存顧客の深耕、採用強化やリスキリングによる「人」の価値向上、および外部リソース活用等による業務運営体制の改革に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な企業価値の実現に向け、「“人”の価値を高める」ことを基本方針としています。「採る・辞めない・育てる」企業像を確立するため、高度技術者の育成やキャリア選択に応じた教育を通じた質的確保と、採用強化やリスキリングによる量的確保を推進し、個人のスキルを可視化して適材適所の配置を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.2歳 19.3年 7,823,033円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.5%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.2%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 74.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ITスキル標準レベル3以上取得者数(550名)、自己都合退職率(2.1%)、有給休暇取得率(76.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム開発に関するリスク


新規開発案件の増加や規模の大型化、顧客要求の高度化により、開発の難易度が増大しています。作業遅延によるコスト増や納入後の不具合対応等が発生した場合、大幅な採算悪化や損害賠償が生じる可能性があります。これに対し、入口管理の徹底やプロジェクト管理体制の強化でリスク低減を図っています。

(2) 事業拡大に伴う戦略リスク


今後新たな分野へ事業を拡大していく過程において、既存の事業では想定していなかった技術、業界慣行、法規制その他の新たなリスクへの対応が必要となる可能性があります。取締役会での闊達な議論を通じてリスクを明確にし、対象分野へ進出する是非について迅速かつ適切な意思決定に努めています。

(3) 人材の確保及び育成


同社の事業は人材に大きく依存しており、一定水準以上の技術力を持った人材の確保と育成が不可欠です。高度な技術者や優秀なプロジェクトマネージャー等の十分な確保や育成が計画通りに進まない場合、受注機会の喪失や競争力の低下を招き、業績や事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。