ジャストシステム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジャストシステム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライムに上場するソフトウェア開発企業です。「スマイルゼミ」等の個人向け事業と、「JUST.DB」等の法人向け事業を展開しています。第44期は新商品・サービスの貢献により、売上高は446億円(前期比8.7%増)、営業利益は180億円(同5.8%増)の増収増益となりました。


※本記事は、株式会社ジャストシステムの有価証券報告書(第44期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジャストシステムってどんな会社?


徳島発のソフトウェア開発企業で、日本語ワープロ「一太郎」や通信教育「スマイルゼミ」等を展開しています。

(1) 会社概要


1979年に創業し、1981年に設立されました。1985年に日本語ワードプロセッサ「一太郎」を発売し、国内PCソフト市場を牽引。2009年にキーエンスと資本・業務提携契約を締結しました。2012年には通信教育「スマイルゼミ」を開始し、主力事業へと成長させています。2022年の東証市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。

同グループの従業員数は連結297名、単体289名です。筆頭株主は事業会社で電子応用機器大手のキーエンスで、第2位は創業者の重田康光氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
キーエンス 43.96%
重田 康光 7.30%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は関灘 恭太郎氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
関灘 恭太郎 代表取締役社長 2000年キーエンス入社。2009年同社取締役、事業企画部長、経営企画室長を経て、2016年3月より現職。
田食 雅行 取締役 2006年同社入社。コンシューマ事業部長等を経て、2020年6月よりソリューションストラテジー事業部長として現職。
三木 雅之 取締役 1998年キーエンス入社。2009年同社取締役就任。2016年より最高開発責任者を務め、2024年3月よりキーエンス取締役グローバルIT推進グループ長を兼務し現職。


社外取締役は、栗原 学(栗原公認会計士事務所代表)、緑川 芳江(三浦法律事務所パートナー)、長澤 克治(元Nomura Holding America Inc. Managing Director)、熊谷 勉(元伊勢丹執行役員)、五十嵐 透(キーエンス経理グループ長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「個人向け事業」および「法人向け事業」を展開しています。

個人向け事業

幼児から高校生向け通信教育「スマイルゼミ」や、日本語入力システム「ATOK Passport」、ワープロソフト「一太郎」などを提供しています。主な顧客は一般消費者です。

収益は主に通信教育の会費、ソフトウェアのライセンス料やサブスクリプション利用料から得ています。運営は主に同社および海外子会社のJUSTSYSTEMS AMERICA, INC.等が行っています。

法人向け事業

ノーコードクラウドデータベース「JUST.DB」や営業支援クラウド「JUST.SFA」、オフィス統合ソフト「JUST Office」等を提供しています。民間企業や官公庁、教育機関が顧客です。

収益はクラウドサービスの利用料やソフトウェアのライセンス販売から得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は400億円台前半で安定的に推移していましたが、直近で増加傾向にあります。経常利益は170億円から190億円規模を維持しており、経常利益率は40%を超える非常に高い収益性を誇っています。当期純利益も100億円以上を継続的に確保しており、堅実な成長を続けています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 412億円 417億円 420億円 410億円 446億円
経常利益 152億円 173億円 192億円 174億円 182億円
利益率(%) 36.9% 41.5% 45.8% 42.4% 40.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 109億円 121億円 134億円 129億円 111億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しました。売上総利益率は約78%と極めて高い水準を維持しています。営業利益率も40%台と高収益体質が継続しており、効率的な事業運営が行われていることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 410億円 446億円
売上総利益 324億円 348億円
売上総利益率(%) 79.1% 78.1%
営業利益 170億円 180億円
営業利益率(%) 41.6% 40.5%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が95億円(構成比57%)、従業員給料及び手当が14億円(同8%)を占めています。売上原価では、労務費や経費などの固定費的な要素が含まれています。

(3) セグメント収益


個人向け事業、法人向け事業ともに増収となりました。特に法人向け事業は「JUST.DB」等のクラウドサービスが好調で、2桁成長を記録しています。個人向け事業も「スマイルゼミ」等の貢献により堅調に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
個人向け事業 291億円 309億円
法人向け事業 119億円 136億円
連結(合計) 410億円 446億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)をもとに、余資の運用や成長投資(投資CFマイナス)を行い、配当支払い等(財務CFマイナス)も実施する「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 131億円 150億円
投資CF -86億円 -271億円
財務CF -13億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、個人・法人向けに幅広く商品・サービスを提供できる強みを活かし、継続的かつ安定的に収益を確保できる体制を整備することを重視しています。商品・サービスを通じて顧客や社会の発展に資することで、株主、顧客、市場、社員が求める企業価値を総合的に高めていくことを経営方針としています。

(2) 企業文化


「成長し続ける企業体質」の構築を掲げています。変化の激しいIT業界において、組織の活性化と人材戦略の強化拡充を進め、常に変化し成長することを重視しています。また、スピードを意識した新商品の企画・開発や、将来に向けた積極的な成長投資を実行する行動様式を持っています。

(3) 経営計画・目標


具体的な中期経営計画としての数値目標は公表していませんが、「継続的な増収増益」を目指しています。経営指標の中でも特に「1人当たりの営業利益額」の継続的な拡大を重視しており、生産性の向上に強いこだわりを持って経営を行っています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存商品の機能強化による顧客満足度の向上と、新商品・サービスの企画・開発による顧客層の拡大を両輪としています。特に組織の活性化と人材戦略の強化拡充を優先課題とし、スピード感を持って事業拡大と企業価値向上に取り組む方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人材を積極的に採用し、社員一人ひとりが課題の本質をとらえて次の「あたりまえ」を創造し続けられるよう育成することを基本方針としています。最適な人員配置、各種研修や資格補助制度、目標管理制度や報酬制度などを通じて、高い当事者意識を持ち、常に変化・成長し続けられる環境構築に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.0歳 13.8年 14,321,260円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 52.4%
男女賃金差異(正規) 69.1%
男女賃金差異(非正規) 87.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントサーベイ肯定的回答率(77.9%)、1人当たりの営業利益額(6,072万円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境におけるリスク

ソフトウェアビジネスは固定費率が高く、利益変動性が大きい特徴があります。売上減少時の減益幅が大きくなる可能性があります。また、技術革新による保有技術の陳腐化や、新商品・サービスの市場投入後の販売低迷などが、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(2) 人材確保に関するリスク

急速な技術革新に対応可能な技術者や、市場競争力のある人材の継続的な確保が必要です。採用や育成が計画通りに進まない場合、事業運営に支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報システムに関するリスク

多数の個人情報や機密情報を保持しているため、セキュリティ対策を講じていますが、サイバー攻撃やシステム障害等により情報の漏洩や消失が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 大株主との関係性

筆頭株主であるキーエンスは同社の発行済株式の約44%を保有しています。両社の独立性は確保されていますが、キーエンスの経営方針や議決権保有比率に大きな変更があった場合、同社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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