TDCソフト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TDCソフト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TDCソフトは東京証券取引所プライム市場に上場し、ITコンサルティングや金融業向けのシステム開発から運用・管理までの一貫したサービスを提供する企業です。直近の業績は、企業のDX投資拡大を背景に高付加価値事業が伸長し、増収増益を達成しています。先端技術の獲得や人材育成に注力し、持続的な成長を目指しています。


※本記事は、TDCソフト株式会社の有価証券報告書(第73期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. TDCソフトってどんな会社?


システム開発から運用・管理まで一貫したITソリューションを提供する独立系システムインテグレーターです。

(1) 会社概要


1963年に設立され、1967年にシステムソフトウェア開発事業を開始しました。1990年にNTTデータ通信(現NTTデータグループ)のビジネスパートナーとなり、2001年に東京証券取引所市場第二部、翌年第一部に上場しました。2017年に現社名に変更し、2022年にプライム市場へ移行しています。

現在の従業員数は連結で2,473名、単体で2,203名です。筆頭株主は創業者一族等の資産管理会社である有限会社野﨑事務所で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は自社の社員持株会となっています。

氏名 持株比率
有限会社野﨑事務所 13.20%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.70%
TDC社員持株会 8.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
小林裕嘉 代表取締役社長関西支社担当 1989年入社、2016年経営企画本部長、2018年取締役執行役員を経て、2019年より現職。
小田島吉伸 取締役グループ経営担当グループビジネス本部長 1983年入社、2004年金融システム事業本部営業推進部長、2011年取締役執行役員を経て、2015年より現職。
高瀬美佳子 取締役システム開発本部担当 サン・ジャパン代表取締役社長等を経て2013年入社。2016年取締役執行役員を経て、2017年より現職。
河合靖雄 取締役金融分野担当法人分野担当金融決済システム事業本部長 1989年入社、2004年金融システム事業部長。2006年執行役員を経て、2007年より現職。
熊田稔 取締役イノベーション&テクノロジー分野担当コンサルティング分野担当R&D推進室担当人事・労務分野担当デジタルテクノロジー本部長コーポレート統括本部長 兼務 1997年入社、2016年クラウド&サービス事業部長。2019年執行役員を経て、2024年より現職。
村上知也 取締役金融分野担当公共分野担当金融システム事業本部長公共・社会基盤システム事業本部長スマートSI推進室長 兼務 1995年入社、2019年執行役員。2024年上席執行役員を経て、2025年より現職。
梶保夫 取締役営業分野担当ソリューション分野担当セールス&マーケティング本部長 NTTデータ通信等を経て2024年入社。2025年執行役員を経て、同年より現職。
尾崎集一 取締役コーポレート分野担当管理本部長 日本興業銀行等を経て2023年入社。2024年管理本部長を経て、2025年より現職。


社外取締役は、中川順三(元コムシステクノ社長)、川崎久実子(産業医)、倉本昌和(元NTTドコモ理事)、山本裕子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システム開発」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) ITコンサルティング&サービス


顧客のDX推進に向けたIT戦略やシステム化構想の立案、技術コンサルティング、最新技術の教育サービス、自社開発のクラウドアプリケーションの提供、BI/DWH、ERP/CRM等のソリューションサービスを提供しています。

これらのサービスを通じて、企業からコンサルティング料やシステムの導入支援料、サブスクリプション型のクラウドサービス利用料などを収益として受け取っています。事業の運営は同社が主体となって行っています。

(2) 金融ITソリューション


銀行や保険会社などの金融業向けに、システム化構想から設計、開発、保守に至るまで統合的なITソリューションを提供しています。専門性の高い金融業務に関する知見を活かし、顧客の事業基盤を支える重要なシステム構築を担っています。

主な収益源は、システム開発の受託に伴う開発費用や、稼働後のシステム保守・運用管理に伴う継続的なサービス料です。事業の運営は同社が中心となり、プロジェクトに応じた技術力を提供しています。

(3) 公共法人ITソリューション


流通業、製造業、サービス業などの民間企業から、官公庁や教育機関といった公共機関に向けて、システム化構想、設計、開発、保守などの統合的なITソリューションを提供しています。幅広い業界のニーズに対応したシステム開発を行っています。

顧客からは、システム開発の受託費用や保守・運用にかかるサービス料を収益として得ています。事業の運営は同社が担い、鉄鋼業や食品業界、官公庁向けの開発案件などを数多く手掛けています。

(4) プラットフォームソリューション


ITインフラの環境設計、構築、運用支援をはじめ、ネットワーク製品の開発やネットワークインテグレーションなどを提供しています。クラウド関連のインフラ構築など、システムの基盤となる重要な環境の整備を支援しています。

顧客からインフラ構築のプロジェクト費用や、構築後の運用支援に係る継続的な手数料を受け取ることで収益を確保しています。保険、運輸、エネルギー関連企業などを対象に、同社が事業を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高・利益ともに一貫して右肩上がりの成長を続けています。企業の旺盛なIT投資需要を背景にシステム開発案件が堅調に推移し、高付加価値なサービスの拡大によって利益率も着実に向上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 309億円 352億円 397億円 444億円 484億円
経常利益 31億円 37億円 43億円 49億円 54億円
利益率(%) 10.0% 10.5% 10.7% 11.0% 11.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 23億円 29億円 33億円 37億円

(2) 損益計算書


増収に伴い売上総利益と営業利益も順調に拡大しています。事業拡大に向けた人材投資や先端技術の獲得など将来を見据えた積極的な投資を実施していますが、高付加価値事業の伸長によって安定した利益率を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 444億円 484億円
売上総利益 95億円 98億円
売上総利益率(%) 21.4% 20.3%
営業利益 48億円 52億円
営業利益率(%) 10.7% 10.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が12億円(構成比26%)、賞与引当金繰入額が3億円(同7%)を占めています。売上原価の主な内訳は、外注費が205億円(売上原価の56%)、給与及び賞与が120億円(同33%)となっています。

(3) セグメント収益


同社グループはシステム開発の一体的なサービスを提供しているため、「システム開発」の単一セグメントとして事業を展開しています。あらゆる分野で企業のDX投資が進み、売上高は堅調に推移しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
システム開発 444億円 484億円
連結(合計) 444億円 484億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスであることから、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 30億円 27億円
投資CF - -32億円
財務CF -11億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.4%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「最新の情報技術を提供し、お客様の繁栄に寄与するとともに、社員の生きがいを大切にし、社会と共に発展することを目指します」という企業理念を掲げています。また、「情報通信技術で社会とお客様の繁栄に寄与し、最も信頼されるパートナー企業となる」ことを経営ビジョンとしています。常に顧客に近い位置で真のニーズを共に考え、解決案を提案して実現する企業を目指しています。

(2) 企業文化


1962年の創業以来、「自主自立の精神」を重視した経営を続けています。多様な人材がそれぞれの特性を活かし、意欲的に仕事に取り組める組織風土や働き方の仕組みづくりを推進する「Smart Work構想」を掲げており、社員一人ひとりがお互いを尊重し合い、付加価値を生み出せる組織文化の醸成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度から新たに中期経営計画「Be a Visionary System Integrator」を開始しました。社会課題が複雑化する中、一歩先の未来に向けた先見性を磨き、長期的な成長の実現に邁進することを目標としています。目標とする経営指標としては、成長性と収益性の拡大による企業価値向上を重視しています。

* 売上高
* 営業利益
* 自己資本利益率(ROE)

(4) 成長戦略と重点施策


専門性・知見の多角化と高度化に加え、顧客の価値に繋げる提案力の向上を基本戦略としています。事業戦略、投資戦略、人材戦略を重点戦略に定め、ネットワーク・セキュリティ、UX、AIなどの先端要素技術の獲得に投資を行っています。

* 多様な顧客のITニーズに対応するサービス・製品開発の推進
* 人事制度刷新による育成システムや教育施策の強化
* 多様な人材がより意欲的に仕事に取り組める働き方の仕組みや環境作り

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最大の競争力の源泉と位置づけ、経営戦略上の最重点課題として多様な人材の確保と育成に取り組んでいます。社員の成長を通じて自己実現と継続的な企業価値向上を目指す育成方針を掲げています。また、人材開発フレームワーク「TDC Smart Career Education Programs」を策定し、キャリアの体系化や年間を通じた学習機会の確保を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.8歳 10.5年 6,200,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.2%
男性育児休業取得率 84.8%
男女賃金差異(全労働者) 79.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 30.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員一人当たりの平均研修・研鑽時間(26時間)、40歳以上の人間ドック受診率(目標:100%)、ストレスチェック受検率(目標:95%以上)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT需要の変化と価格競争の影響

国内のIT需要は増加基調にあるものの、景気悪化による顧客の投資減少や、競合との激しい価格競争が生じた場合、サービスの陳腐化を招き業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 知的財産権侵害リスク

クラウドサービスやシステム開発業務において第三者のプログラムを利用する際、意図せず第三者の特許権や著作権等の知的財産権を侵害したとして、サービス提供の差し止めや損害賠償請求を受けるリスクがあります。

(3) コンピューター設備への影響

同社グループが保有するコンピューター設備において、災害や停電、不正アクセス、コンピューターウイルス等の被害が発生し、システム開発やサービスが遅延・中断することで業績に影響が生じる可能性があります。

(4) 投資活動の不確実性

新規事業の立ち上げや事業拡大を目的とした資本提携、企業買収、子会社設立において、経営環境の変化等により投資先の事業が想定通りの成果を得られず、損失の発生や追加の資金拠出が必要となるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。