TDCソフト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TDCソフト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する独立系システムインテグレーターです。金融・公共・法人向けのシステム開発やITコンサルティングを展開しています。2025年3月期の連結業績は、企業のDX投資需要を背景に全分野が好調に推移し、売上高・各利益ともに過去最高を更新する増収増益となりました。


※本記事は、TDCソフト株式会社 の有価証券報告書(第72期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. TDCソフトってどんな会社?


創業60年以上の歴史を持つ独立系SIerです。金融や公共分野の大規模システム開発に強みを持ちます。

(1) 会社概要


同社は1963年に設立され、計算センター業務からスタートしました。1988年にシステムインテグレータ認定を取得し、2001年に東京証券取引所市場第二部へ上場、翌2002年には同市場第一部へ指定替えとなりました。2017年に現在の商号へ変更し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。

2025年3月31日現在の従業員数は連結で2,300名、単体で2,064名です。筆頭株主は有限会社野﨑事務所で、第2位は日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)、第3位はTDC社員持株会となっており、創業家関連と資産管理機関、従業員持株会が上位を占めています。

氏名 持株比率
有限会社野﨑事務所 13.10%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.00%
TDC社員持株会 8.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長は小林裕嘉氏が務めています。社外取締役比率は26.7%です。

氏名 役職 主な経歴
橋本 文雄 代表取締役会長 1970年同社入社。総務部長、営業本部長、代表取締役副社長などを経て、2009年6月より現職。
小林 裕嘉 代表取締役社長 1989年同社入社。経営企画本部長、ITインテグレーション事業本部長などを経て、2019年6月より現職。
小田島 吉伸 取締役 1983年同社入社。金融システム事業本部担当、TDCフューテック代表取締役社長などを経て、2024年4月よりグループビジネス本部長等を務める。
高瀬 美佳子 取締役 1997年サン・ジャパン入社。同社システム開発本部長などを経て、2025年4月より法人分野担当等を務める。
河合 靖雄 取締役 1989年同社入社。金融システム事業本部長、経営企画本部長などを経て、2025年4月より金融ビジネスデザイン事業本部長を務める。
北川 和義 取締役 1991年同社入社。ソリューション事業本部長などを経て、2024年4月より営業分野担当、コンサル分野担当等を務める。
大垣 剛 取締役 1988年同社入社。管理本部長、TDCフューテック代表取締役副社長などを経て、2024年4月よりコーポレート分野担当を務める。
熊田 稔 取締役 1997年同社入社。デジタルテクノロジー本部長などを経て、2025年4月よりコーポレート統括本部長等を務める。


社外取締役は、桑原茂(元東京ガスiネット常務取締役)、中川順三(元コムシステクノ代表取締役社長)、川崎久実子(医療法人社団生光会理事・産業医)、倉本昌和(元ドコモ・ビジネスネット取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システム開発」事業の単一セグメントですが、提供サービスの内容により「ITコンサルティング&サービス」「金融ITソリューション」「公共法人ITソリューション」「プラットフォームソリューション」の4分野で事業を展開しています。

(1) ITコンサルティング&サービス


顧客のDX推進に向けたIT戦略やシステム化構想の立案、技術コンサルティング、アジャイル開発等の教育サービスなどを提供しています。また、自社開発のクラウドアプリケーションやBI/DWH、ERP/CRM等のソリューションサービスも手掛けています。

収益は、コンサルティングフィーや教育サービス料、システム導入に伴う対価、クラウドサービスの利用料などから得ています。運営は主にTDCソフトが行っています。

(2) 金融ITソリューション


銀行、クレジット、保険などの金融業向けに、システム化構想から設計、開発、保守まで統合的なITソリューションを提供しています。長年の実績に基づく業務ノウハウを活かし、ミッションクリティカルなシステムの構築を支援しています。

収益は、顧客である金融機関からのシステム開発委託費や保守運用費などから得ています。運営は主にTDCソフトが行っています。

(3) 公共法人ITソリューション


流通、製造、サービス業などの一般法人や、官公庁・自治体などの公共分野向けに、システムの企画・設計・開発・保守を提供しています。物流システムや販売管理システムなど、多岐にわたる業務システムを手掛けています。

収益は、顧客企業や官公庁からのシステム開発委託費や保守運用費などから得ています。運営は主にTDCソフトが行っています。

(4) プラットフォームソリューション


ITインフラの環境設計、構築、運用支援、ネットワーク製品開発などを提供しています。クラウド基盤の構築やネットワークインテグレーションなど、システムの土台となるインフラ領域を支えています。

収益は、顧客からのインフラ構築費用や運用支援料、製品販売代金などから得ています。運営は主にTDCソフトが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は273億円から444億円へと右肩上がりで成長を続けています。経常利益も26億円から49億円へと順調に拡大しており、利益率も10%前後から約11%へと向上傾向にあります。増収に伴い利益もしっかりと確保する、安定した成長軌道にあることが分かります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 273億円 309億円 352億円 397億円 444億円
経常利益 26億円 31億円 37億円 43億円 49億円
利益率(%) 9.4% 10.0% 10.5% 10.7% 11.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 20億円 23億円 29億円 33億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は20.4%から21.4%へ改善し、営業利益率も9.6%から10.7%へと上昇しました。販管費も増加していますが、増収効果と利益率の改善により、営業利益は前期比で大きく伸長しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 397億円 444億円
売上総利益 81億円 95億円
売上総利益率(%) 20.4% 21.4%
営業利益 38億円 48億円
営業利益率(%) 9.6% 10.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が12億円(構成比25%)、賞与引当金繰入額が4億円(同7%)を占めています。売上原価の内訳では、外注費が185億円(売上原価総額の56%)、労務費が130億円(同40%)を占めており、システム開発における人件費と外注費のウェイトが高い構造となっています。

(3) セグメント収益


全分野において前期比増収となりました。特に「ITコンサルティング&サービス」はクラウド関連案件が好調で14.9%増、「プラットフォームソリューション」もインフラ構築案件が堅調で13.2%増と高い伸びを示しました。主力の「金融ITソリューション」や「公共法人ITソリューション」も安定して成長しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ITコンサルティング&サービス 68億円 78億円
金融ITソリューション 176億円 194億円
公共法人ITソリューション 106億円 120億円
プラットフォームソリューション 47億円 53億円
連結(合計) 397億円 444億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、将来の事業拡大に向けた積極的な投資を継続しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、増収効果により堅調に推移しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、新技術獲得やマーケティング活動への投資が限定的であったため、ほぼ均衡しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等によりマイナスとなりました。これらの結果、現金及び現金同等物の残高は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 30億円 30億円
投資CF -3.0億円 -0.0億円
財務CF -14億円 -11億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「わが社は、最新の情報技術を提供し、お客様の繁栄に寄与するとともに、社員の生きがいを大切にし、社会と共に発展することを目指します。」という企業理念を掲げています。また、経営ビジョンとして「情報通信技術で社会とお客様の繁栄に寄与し、最も信頼されるパートナー企業となる」ことを目指しています。顧客に近い位置で課題を共有し、解決案を提案・実現する姿勢を重視しています。

(2) 企業文化


同社は創業以来、「自主自立の精神」を大切にしています。また、パーパスとして「世の中をもっとSmartに」を掲げ、多様な人材が意欲的に働ける環境作りを目指す「Smart Work構想」を推進しています。社員一人ひとりが強みを発揮し、会社と個人が共に成長できる関係性を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は2025年度から開始する中期経営計画「Be a Visionary System Integrator」を策定しました。社会課題が複雑化する中、未来に向けた先見性を磨き、優れた技術とサービスを提供することで、顧客にとって唯一無二の存在となり、長期的な成長を目指すとしています。

(4) 成長戦略と重点施策


「Be a Visionary System Integrator」の実現に向け、事業戦略、投資戦略、人財戦略を重点戦略としています。技術分野ではセキュリティ、UXD、ネットワーク、データエンジニアリング等の要素技術の獲得や、サービス・製品開発への投資を推進します。人財分野ではブランディング、育成システムの強化、働きやすい環境づくり等へ投資を行い、専門性や提案力の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最大の競争力の源泉と位置付け、多様な人材の確保と育成に注力しています。「TDC Smart Career Education Programs」という人財開発フレームワークを策定し、社員の「なりたい自分」の実現を後押ししています。また、独自の「アルゴリズム社内認定制度」を通じて学習意欲を喚起するなど、自律的なキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.0歳 10.7年 6,199,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.9%
男性育児休業取得率 75.6%
男女賃金差異(全労働者) 79.9%
男女賃金差異(正規雇用) 80.1%
男女賃金差異(非正規) 30.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェック受検率(94.0%)、40歳以上の人間ドック受診率(63.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報サービス産業における経営環境の変化及び価格競争等の影響


国内のIT需要はDX投資等により増加基調ですが、景気低迷時には顧客の投資が減少し業績に影響する可能性があります。また、激しい競争環境下で競合他社との競争激化や技術革新によるサービスの陳腐化が進んだ場合、価格競争や競争力低下を招くリスクがあります。

(2) 人財の確保や育成


同社の事業運営において、優秀な人材の確保と育成は極めて重要です。IT業界全体で人材不足が続く中、必要な人材を十分に確保・育成できなかった場合、将来の成長や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定の顧客への依存


同社グループの売上高において、日本電信電話株式会社グループ、日本アイ・ビー・エム株式会社グループ、富士通株式会社グループ等への比率が高くなっています。これら主要顧客の事業方針の変更やIT投資の動向によっては、同社の経営成績に影響を与える可能性があります。

(4) システム開発サービスにおける見積違い及び納期遅延等の発生可能性


システム開発において、開発期間の短期化や機能の複雑化により、当初想定以上の工数が発生し、採算が悪化する可能性があります。また、納期遅延や納品後の不具合が発生した場合、損害賠償請求や信用の失墜を招き、業績に影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。