IDホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

IDホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する情報サービス企業です。システム運営管理やソフトウェア開発、ITインフラ構築、セキュリティ事業等を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高363億円(前期比11.0%増)、経常利益39億円(同35.0%増)となり、4期連続で過去最高益を更新する増収増益でした。


※本記事は、株式会社IDホールディングス の有価証券報告書(第57期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. IDホールディングスってどんな会社?


システム運営管理やソフトウェア開発、セキュリティ等のITサービスを幅広く提供する独立系企業です。

(1) 会社概要


1969年に設立され、1998年に株式を店頭登録、2004年にJASDAQへ上場しました。2014年には東京証券取引所市場第一部へ指定替えとなり、2019年に持株会社体制へ移行して現在の商号に変更しています。2025年にはグループ内事業会社の再編を行い、サービス提供体制の強化を図っています。

同グループの連結従業員数は2,226名、単体では142名です。大株主構成については、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で11.74%を保有しています。第2位は株式会社エイ・ケイで9.10%、第3位は外国法人等で6.88%を保有しており、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 11.74%
エイ・ケイ 9.10%
PERSHING-DIV. OF DLJ SECS. CORP.(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店) 6.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性5名の計11名で構成され、女性役員比率は45.4%です。代表取締役社長兼グループ最高経営責任者は舩越真樹氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
舩越 真樹 代表取締役社長兼グループ最高経営責任者 1995年同社入社。取締役、副社長を経て2006年社長就任。2023年6月より現職。
山川 利雄 代表取締役副社長 2001年同社入社。総務部長、取締役、常務、専務を経て2013年副社長就任。2020年6月より現職。
高橋 かおり 取締役兼専務執行役員 2009年同社入社。グループ人事部長、執行役員、常務執行役員を経て2022年専務執行役員。2023年6月より現職。


社外取締役は、中村あや(元アマゾンジャパン本部長)、西川理恵子(慶應義塾大学名誉教授)、白畑尚志(元あらた監査法人代表社員)、Thomas Owsley Rodes(Kaname Capital共同創業者)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システムマネジメント」「ソフトウェア開発」「ITインフラ」「サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育」および「その他」事業を展開しています。

(1) システムマネジメント


ITシステムの運営・管理、オペレーション業務を提供しています。顧客は金融、公共、製造業など多岐にわたり、長期間にわたるサポート実績があります。

収益は、顧客である企業からの業務委託料やサービス利用料などが主な源泉です。運営は主に株式会社IDデータセンターマネジメントや海外子会社が行っています。

(2) ソフトウェア開発


システム化計画、設計開発、運用保守、プロジェクト管理支援業務を行っています。公共や金融関連顧客向けのシステム開発などを手掛けています。

収益は、顧客からの開発受託費や保守運用費などが源泉となります。運営は主に株式会社インフォメーション・ディベロプメントや海外子会社が行っています。

(3) ITインフラ


ITプラットフォームの設計、構築、運用、保守業務を提供しています。クラウド環境の構築やネットワーク基盤の整備などが含まれます。

収益は、顧客からのインフラ構築費用や運用保守費用が源泉です。運営は主に株式会社IDデータセンターマネジメントが行っています。

(4) サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育


セキュリティ製品の販売、システム構築・運用、業務改革やプロジェクト管理に関するコンサルティングおよびトレーニング業務を提供しています。

収益は、製品販売代金、コンサルティングフィー、トレーニング受講料などが源泉です。運営は主に株式会社インフォメーション・ディベロプメントや株式会社DXコンサルティング等が行っています。

(5) その他


ネットワークセキュリティ製品等の販売、事務代行、人材採用・トレーニング、海外での外食事業等を行っています。

収益は、製品販売代金やサービス提供料などが源泉です。運営はINFORMATION DEVELOPMENT AMERICA INC.や株式会社ID AI Factory等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。利益面でも、経常利益および当期利益は毎期増加しており、利益率も改善が続いています。特に直近の2025年3月期は大幅な増益を達成しており、成長基調が継続していることが分かります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 258億円 278億円 311億円 327億円 363億円
経常利益 16億円 19億円 25億円 29億円 39億円
利益率(%) 6.0% 6.9% 8.1% 8.8% 10.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 11億円 14億円 18億円 24億円

(2) 損益計算書


前期と当期の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率も改善しており、収益性が向上しています。営業利益および営業利益率についても前期を上回る結果となっており、本業の儲ける力が強まっていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 327億円 363億円
売上総利益 72億円 87億円
売上総利益率(%) 21.9% 23.9%
営業利益 28億円 38億円
営業利益率(%) 8.5% 10.4%


販売費及び一般管理費のうち、その他が17億円(構成比34%)、給料手当及び賞与が14億円(同29%)を占めています。売上原価については、労務費や外注費などの詳細な内訳金額は記載されていませんが、主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


各サービス区分において売上が増加しています。特にITインフラ分野は大幅な増収増益となり、利益率も高い水準です。主力のシステムマネジメントやソフトウェア開発も堅調に推移し、サイバーセキュリティ分野も成長しています。全体としてすべての領域で収益性が向上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
システムマネジメント 146億円 151億円 32億円 36億円 23.9%
ソフトウェア開発 116億円 125億円 21億円 25億円 20.2%
ITインフラ 29億円 42億円 8.0億円 13億円 30.3%
サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育 33億円 40億円 10億円 13億円 31.8%
その他 3.3億円 4.7億円 0.5億円 -0.2億円 -
連結(合計) 327億円 363億円 72億円 87億円 23.9%


※利益は売上総利益を表示しています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCF状況は、本業で稼いだ資金(営業CF+)をもとに、借入金の返済や配当支払い(財務CF-)を行いつつ、将来のための投資(投資CF-)も実施している「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 14億円 36億円
投資CF -2.3億円 -23億円
財務CF -4.3億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「IDentity」という経営理念のもと、顧客ニーズに合った付加価値の高い情報サービスを提供し、情報化社会に貢献することを基本方針としています。また、「私たちはWaku-Wakuする未来創りに参加します」というミッションの実現に向けて努力することを掲げています。

(2) 企業文化


「Waku-Wakuする未来創り」への参加を掲げ、自律思考を促進する文化の醸成を目指しています。また、多様性と人権を尊重し、プロフェッショナル人材が輝けるよう、社員の「なりたい」「やりたい」を実現するための環境づくりや、創造力と変革力の強化を支援する風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を初年度とする3か年の中期経営計画「Next 50 Episode Ⅲ "JUMP!!!"」を策定しています。最終年度である2028年3月期の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:440億円
* 営業利益:57億円
* 営業利益率:13.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「高収益モデルへのシフト」と「カルチャーの革新」を軸に、サービスポートフォリオ戦略や人的資本投資などを推進します。注力領域(コンサルティング、ITインフラ、サイバーセキュリティ)での事業拡大や、基盤領域での高収益化を目指します。

* サービスポートフォリオ戦略:注力領域への人材シフトやアップスキル、ビジネスパートナーとの協業強化、ニアショア・オフショア体制の強化。
* 顧客接点の確立:マーケティング&ビジネス機能の新設によるプロアクティブな営業アプローチ。
* M&A戦略:注力領域とのシナジーが高い企業を対象としたM&Aおよび資本業務提携の推進。
* グローバル戦略:日系企業の海外進出サポートやグローバル人材の育成。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」を重要な財産と位置づけ、卓越した技術力と人間力を兼ね備えた人材の育成を目指しています。社員の「なりたい」「やりたい」を実現する環境を提供し、長期キャリアビジョンに沿った機会提供や自律思考の促進を支援します。また、多様性を尊重し、ワークライフバランス推進や健康経営を通じてエンゲージメント向上を図ります。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.9歳 12.3年 6,082,275円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 38.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.3%
男女賃金差異(正規雇用) 68.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 74.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、DX技術者(1,638名)、女性比率(24.0%)、障がい者雇用率(2.59%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化について


DX関連投資やデータセンター需要は堅調ですが、先端技術への対応遅れや経済情勢によるIT投資減退が経営に影響する可能性があります。同社は事業会社統合によるシナジー創出や中期経営計画の推進により、高付加価値分野への対応強化とビジネスモデル変革を図り、これらの変化に対応しています。

(2) 企業買収について


M&Aによる事業拡大を戦略としていますが、計画通りに進まない場合の減損処理等が業績に影響する可能性があります。これに対し、専門家によるデューディリジェンスの実施や、買収後のモニタリングを通じてリスク回避に努めています。

(3) グローバル事業について


海外展開において、経済動向や法規制、政情不安等が業績に影響を及ぼす可能性があります。グローバル統括部による状況把握やリスク管理委員会での検証を行い、リスク低減に取り組んでいます。ミャンマー拠点は政情不安により営業を終了しましたが、影響は軽微です。

(4) 人材確保について


優秀な人材の確保・育成が不十分な場合、競争力低下により業績に影響する可能性があります。国内外での採用強化や継続的なトレーニング、人的資本投資によるアップスキルを推進し、社員エンゲージメント向上に注力することで人材の定着と成長を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。