※本記事は、株式会社アルゴグラフィックスの有価証券報告書(第42期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アルゴグラフィックスってどんな会社?
製造業向けのPLMソリューションを中心にシステム構築等を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1985年2月にアルゴグラフィックスとして設立されました。その後、事業規模の拡大にともない2004年に東証二部、翌2005年に東証一部への上場を果たしています。M&Aを通じたグループの拡張にも積極的であり、2004年にジーダット、2017年にシステムプラネット、直近の2024年にはワイドソフトデザインを完全子会社化するなど、継続的に技術力やサービスの強化を図っています。
従業員数は連結で1,198名、単体で586名です。大株主は、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位が同じく信託業務の日本カストディ銀行(信託口)、第3位が海外投資ファンドのBBH FOR FIDELITY LOW-PRICED STOCK FUNDとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.21% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.29% |
| BBH FOR FIDELITY LOW-PRICED STOCK FUND(常任代理人 三菱UFJ銀行) | 3.87% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長執行役員(CEO)の藤澤義麿氏と、代表取締役社長執行役員(COO)の尾崎宗視氏が代表を務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤澤義麿 | 代表取締役会長執行役員(CEO) | 1985年同社入社。2000年代表取締役社長などを経て、2007年より現職。 |
| 尾崎宗視 | 代表取締役社長執行役員(COO) | 1989年日本アイ・ビー・エム入社。2005年同社入社。2015年より現職。 |
| 長谷部邦雄 | 取締役専務執行役員管理本部長 | 1984年伯東入社。2010年同社入社。2022年より現職。 |
| 石川清志 | 取締役常務執行役員技術本部長 | 1986年同社入社。1999年執行役員などを経て、2014年より現職。 |
| 松井義雄 | 取締役常勤監査等委員 | 1977年赤井電機入社。1987年同社入社。ヒューリンクス取締役を経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、藤井孝藏(元宇宙航空研究開発機構教授)、郷みさき(ケイ・エヌ・ティー代表取締役)、楢林知樹(元キヤノン販売ITサービス販売推進本部長)、有岡宏(地方債協会理事長)、井戸理恵子(ゆきすきのくに代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「PLM事業」および「EDA事業」を展開しています。
■(1) PLM事業
製造業の製品企画から廃棄までの全工程を包括的に管理する「PLMソリューション」や、先端技術を活用した「システム構築支援」などを提供しています。フランスのダッソーシステムズ社が開発した3次元CADシステムなどを主力製品とし、自動車や電機などの製造業を営む企業の設計・生産部門や研究開発部門向けにソフトウェアおよびハードウェアの販売・サポートを行っています。
主な収益源は、ソフトウェアの使用権付与やハードウェア製品の販売代金、およびエンジニアによるサポートサービスの提供料です。運営は同社を中心に、子会社のAIS北海道やアルゴビジネスサービス、ヒューリンクス、システムプラネットなどが各専門分野に特化したビジネスを展開しています。
■(2) EDA事業
半導体や電気回路の設計作業を自動化・支援するための「EDAソリューション」を単一の区分として展開しています。大規模集積回路や液晶ディスプレイなどの電子部品、微細加工部品を設計するための電子系CADソフトウェア製品を自社で開発し、半導体関連企業に向けて販売やコンサルテーションを行っています。
主な収益源は、自社開発したソフトウェアライセンスの販売代金、エンジニアによる保守サービスの提供料、および顧客ごとの受託開発に伴う収益です。本事業の運営は、EDAソリューションの開発・販売に特化している子会社のジーダットが中心となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において、売上高は右肩上がりで持続的な成長を遂げています。これに伴い経常利益も順調に拡大し、利益率は一貫して15%以上の高い水準を維持しています。当期には有価証券売却等による特別利益が大きく寄与し、当期利益が大幅に増加しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 462億円 | 533億円 | 595億円 | 695億円 | 715億円 |
| 経常利益 | 69億円 | 82億円 | 97億円 | 109億円 | 114億円 |
| 利益率(%) | 15.0% | 15.4% | 16.3% | 15.7% | 16.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 45億円 | 54億円 | 63億円 | 72億円 | 195億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加とともに、売上総利益と営業利益も着実に伸長しています。システムエンジニアの稼働率の向上などにより、売上総利益率および営業利益率はいずれも前期から改善傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 695億円 | 715億円 |
| 売上総利益 | 179億円 | 188億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.7% | 26.3% |
| 営業利益 | 102億円 | 107億円 |
| 営業利益率(%) | 14.7% | 15.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が35億円(構成比43%)、福利厚生費が7億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力となるPLM事業は自動車関連ビジネスの堅調なIT投資需要を背景に、売上高が着実に拡大しています。一方のEDA事業もデバイス設計委託ビジネスが伸長し、安定した売上を維持しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| PLM事業 | 675億円 | 695億円 |
| EDA事業 | 20億円 | 20億円 |
| 連結(合計) | 695億円 | 715億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社の直近のキャッシュ・フローは、営業CFと投資CFがプラスで財務CFがマイナスとなる改善型の傾向を示しています。営業利益や資産売却等で得た資金を用いて、株主還元等の財務活動を進める局面にあることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 65億円 | 47億円 |
| 投資CF | -2億円 | 129億円 |
| 財務CF | -23億円 | -214億円 |
企業の収益力を測るROEは36.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.3%となり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、社是として「お客様、従業員そして社会とともに成長する」を掲げています。先進的なプロダクトおよびサービスの提供を通じて持続的な企業価値の向上を目指すとともに、人々の幸せと持続可能な未来社会の実現に貢献することを経営の基本方針として事業を展開しています。
■(2) 企業文化
同社は、人的資本経営への取り組みを通じて社員一人ひとりが価値を発揮できる、多様性に富んだ組織づくりを重視しています。ダイバーシティ&インクルージョンや健康経営を推進し、多様性を尊重して働きがいのある職場を構築することで、事業環境の変化へダイナミックに対応していく企業文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2025年度から2027年度を対象とする「3カ年中期経営計画」を策定し、2030年ビジョンの実現に向けた経営を推進しています。持続的な企業価値の向上に向けて、成長投資と財務規律の両立を図りながら、事業ポートフォリオの最適化を進めることを中長期的な目標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、設計DX・製造DXを中核としたワンストップDXソリューションの提供を強みとし、付加価値の高い事業モデルへの転換を戦略に掲げています。具体的には、AIを活用した予測・分析ソリューションの展開や、データセンター等を基盤としたハイブリッドIT環境の拡充に注力し、新規市場や顧客の開拓を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本経営を重要な戦略と位置づけ、社員一人ひとりが最大限のパフォーマンスを発揮できる体制の構築を目指しています。エンジニア等の専門人材をコンサルティングやスペシャリスト等に分類して育成し、報酬水準の引き上げやリスキリング、健康経営の推進を通じたウェルビーイングの実現に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.3歳 | 13.0年 | 8,064,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 74.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 74.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製造業のIT投資動向に対する依存
同社グループの顧客は自動車産業などの製造業が中心となっており、製造業向けの売上高比率が高い状況にあります。そのため、他産業における顧客開拓を進めているものの、製造業におけるIT設備投資の規模が市況変動等により縮小された場合には、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 主要仕入先の経営方針変更による影響
同社は、主力製品である3次元設計システムを中心に、仕入先であるフランスのダッソーシステムズ社などの製品を取り扱っています。そのため、主要な仕入先の経営方針が大幅に変更された場合や、当該製品の市場評価が変化した場合には、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。



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