※本記事は、株式会社アルゴグラフィックス の有価証券報告書(第41期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アルゴグラフィックスってどんな会社?
自動車や半導体業界等の製造業を主要顧客とし、ITを活用した設計・開発支援ソリューションを提供する専門企業です。
■(1) 会社概要
同社は1985年に設立され、1998年に株式を店頭登録、2005年に東証一部へ上場しました。M&Aや組織再編を通じて事業を拡大しており、2004年に株式会社ジーダットを買収してEDA事業へ本格参入、2008年には株式会社HPCソリューションズを完全子会社化しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証プライム市場に上場しています。
現在の従業員数は連結1,166名、単体550名です。筆頭株主は住友商事グループの中核IT企業であるSCSK株式会社で、第2位には資産管理を行う信託銀行が名を連ねています。また、第7位には同社代表取締役会長の藤澤義麿氏がランクインしており、主要な事業パートナーと創業・経営陣が安定的に株式を保有する構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| SCSK | 21.79% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.82% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.17% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長執行役員(CEO)は藤澤義麿氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤澤 義麿 | 代表取締役会長執行役員(CEO) | 1985年同社入社。常務、専務を経て2000年代表取締役社長就任。2007年より代表取締役会長(CEO)。複数のグループ会社代表取締役を歴任し、現職。 |
| 尾崎 宗視 | 代表取締役社長執行役員(COO) | 1989年日本アイ・ビー・エム入社。2005年同社入社。執行役員、取締役常務執行役員などを経て、2015年より現職。 |
| 長谷部 邦雄 | 取締役専務執行役員管理本部長 | 1984年伯東入社。2010年同社入社。ヒューリンクス取締役、同社取締役常務執行役員などを経て、2022年より現職。 |
| 石川 清志 | 取締役常務執行役員技術本部長 | 1986年同社入社。1999年執行役員、2005年取締役執行役員を経て、2014年より現職。システムプラネット代表取締役社長を兼務。 |
| 中村 隆夫 | 取締役常勤監査等委員 | 1974年小野田セメント入社。日本アイ・ビー・エム等を経て2005年同社入社。執行役員管理部長、監査役を経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、藤井孝藏(東京理科大学客員教授)、郷みさき(ケイ・エヌ・ティー代表取締役)、楢林知樹(元キヤノン販売ITサービス販売推進本部長)、有岡宏(元総務省自治大学校長)、井戸理恵子(多摩美術大学非常勤講師)です。
2. 事業内容
同社グループは、「PLM事業」および「EDA事業」を展開しています。
■(1) PLM事業(PLMソリューション)
製品の企画から廃棄に至る全工程を管理するPLM(Product Lifecycle Management)ソリューションを提供しています。自動車、航空機、電機等の製造業に対し、ダッソー・システムズ社の3次元CAD「CATIA」などの設計システムや、CAE(解析)、CAM(生産準備)、PDM(情報管理)といった応用技術を販売しています。
収益は、主に顧客企業からのソフトウェアライセンス販売、導入支援、開発サービス等の対価として得ています。運営は主にアルゴグラフィックスが行っており、AIS北海道やCAD SOLUTIONS等の子会社も連携してサービスを提供しています。
■(2) PLM事業(システム構築支援)
顧客企業のITインフラ構築を支援する事業です。グローバル展開やビッグデータ処理、業務効率化に対応するため、多様なハードウェア・ソフトウェア製品を組み合わせ、クラウドやHPC(High Performance Computing)クラスターなどの先端技術を活用した最適なシステム環境を構築・提供しています。
収益は、サーバーやPCクラスター等のハードウェア販売およびシステム構築にかかる対価として、製造業をはじめとする幅広い業界の顧客から得ています。運営は主にアルゴグラフィックスが担い、HPC分野ではHPCソリューションズが専門的な技術を提供しています。
■(3) PLM事業(HW販売に付帯する保守・その他)
PLMソリューションおよびシステム構築支援で提供したハードウェアに関する保守サービスを行う事業です。機器導入後も顧客と積極的にコミュニケーションを図り、きめ細やかなサポートを提供することで、システムの安定稼働と顧客満足度の向上を支援しています。
収益は、ハードウェアの保守契約に基づくサービス料として顧客から継続的に受領しています。運営はアルゴグラフィックスおよびグループ各社が行っており、販売後のアフターサービスとして収益基盤の一角を担っています。
■(4) EDA事業(EDAソリューション)
半導体や電気回路の設計作業を自動化・支援するEDA(Electronic Design Automation)分野の事業です。大規模集積回路や液晶ディスプレイ等の電子部品、微細加工部品を設計するための電子系CADソフトウェアを自社開発し、販売、サポート、コンサルテーションを行っています。
収益は、自社開発ソフトウェアのライセンス販売、保守サポート、受託開発費として、半導体メーカーや電子部品メーカー等から得ています。運営は、同社子会社である株式会社ジーダットが主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、利益ともに右肩上がりの成長トレンドを描いています。特に直近では売上高が前期比で大きく伸長し、経常利益も100億円の大台を突破しました。利益率も13%〜16%台と高い水準を維持しており、収益性を保ちながら事業規模を拡大させる堅実かつ力強い成長が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 434億円 | 462億円 | 533億円 | 595億円 | 695億円 |
| 経常利益 | 60億円 | 69億円 | 82億円 | 97億円 | 109億円 |
| 利益率(%) | 13.8% | 15.0% | 15.4% | 16.3% | 15.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 40億円 | 45億円 | 54億円 | 65億円 | 74億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上原価や販管費も増加していますが、増収効果がこれらを上回っており、営業利益率などの収益性は依然として高水準を維持しています。事業規模の拡大とコストコントロールのバランスが取れた経営状況と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 595億円 | 695億円 |
| 売上総利益 | 160億円 | 179億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.9% | 25.7% |
| 営業利益 | 92億円 | 102億円 |
| 営業利益率(%) | 15.4% | 14.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が33億円(構成比44%)、福利厚生費が6億円(同8%)を占めています。売上原価においては、商品仕入や外注費などが主な内訳となっています。
■(3) セグメント収益
主力のPLMソリューションは自動車関連のIT投資需要を取り込み堅調に推移しました。システム構築支援は、半導体関連業界の活発な設備投資や高度なITインフラ需要を背景に、売上が約45%増と大幅に伸長しました。一方、EDA事業は微減となりましたが、全体としてはPLM事業の成長が業績を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| PLM事業 | 575億円 | 675億円 | 89億円 | 99億円 | 14.7% |
| EDA事業 | 21億円 | 20億円 | 3億円 | 3億円 | 12.8% |
| 調整額 | -0億円 | -1億円 | -億円 | -億円 | -% |
| 連結(合計) | 595億円 | 695億円 | 92億円 | 102億円 | 14.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も66.1%と高く、いずれも市場平均を上回る良好な水準です。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは社是として「お客様、従業員そして社会とともに成長する」を掲げています。先進的なプロダクトおよびサービスの提供を通じて持続的な企業価値向上を目指すとともに、人々の幸せと持続可能な未来社会の実現に貢献することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は「サステナビリティ基本方針」のもと、誰もが住みやすい安心・安全な社会の実現に貢献することを目指しています。実効性・透明性・信頼性の高いガバナンス体制を構築し、全てのステークホルダーと責任ある対話を行い、信頼関係を築くことを重視する文化を持っています。また、人材を「資本」と捉え、社員一人ひとりが価値を発揮できる多様性に富んだ組織づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年度から2027年度の新たな3カ年中期経営計画では、2030年ビジョンに向けたマテリアリティ(重要課題)への取り組みを掲げています。具体的な数値目標として、高水準の利益率の維持や、サステナブルな成長に向けたKPIの設定などが盛り込まれていますが、本記事作成時点の有価証券報告書では詳細な数値目標の記載箇所が限定的であるため、定性的な方針を中心としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、主要顧客である自動車・半導体関連業界への深耕に加え、先端技術研究部を中心とした新商品・新技術の発掘に注力しています。具体的には、AI、IoT、クラウド、ディープラーニング等の先端技術を取り込んだソリューション開発や、デジタルツイン、VR・ゲーミングノウハウを持つ企業の買収などを通じて技術力を強化しています。また、北海道北見市におけるデータセンターの建設(2026年3月竣工予定)を進め、将来の事業基盤の確立と地域社会への貢献を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を経営の中長期成長の源泉となる「資本」と捉えています。専門的で高付加価値な技術や資格を有する人材の確保・育成を重要課題とし、報酬改善や教育投資を積極的に行っています。エンジニアの人材ポートフォリオを明確化し、OFF-JTやOJTの強化、リスキリングを推進するとともに、健康経営やダイバーシティ&インクルージョンを通じて、社員が能力を最大限発揮できる環境づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.6歳 | 13.2年 | 7,667,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外給与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.6% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 70.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、温室効果ガス排出量(759.01t-CO2 ※2021年度実績)、温室効果ガス削減率目標(2021年度比50%削減 ※2030年度目標)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定産業への依存リスク
同社グループの顧客は製造業が中心であり、特に自動車関連および半導体関連業界の売上高比率が高い状況にあります。そのため、これらの主要顧客業界における景気動向や設備投資意欲の減退、生産調整などが生じた場合、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材の確保・育成に関するリスク
事業推進において人的資源への依存度が高く、AIやクラウド等の先端技術に対応できる高度なスキルを持つ人材の確保・育成が重要課題です。人材獲得競争が激化する中で、優秀な技術者の確保が想定通りに進まない場合や、賃金水準の上昇により人件費が大きく増加した場合、サービス品質の低下や業績への影響が生じる可能性があります。
■(3) 商品価値と技術革新への対応リスク
同社のソリューションはダッソー・システムズ社のソフトウェア等を中核としており、当該製品の競争力低下や、同社自身が先端技術への対応に遅れた場合、競争力を失う恐れがあります。技術革新の速い業界において、常に新しい商品や技術を発掘・分析し、顧客ニーズに適合させ続けることができなければ、将来的な事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。



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