早稲田アカデミー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

早稲田アカデミー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

早稲田アカデミーは、東京証券取引所プライム市場に上場する教育企業です。首都圏を中心に、小学生から高校生を対象とした進学学習指導塾を運営しています。直近の業績は、塾生数の増加や価格改定効果により、売上高は351億円(前期比6.7%増)、経常利益は36億円(同22.0%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社早稲田アカデミー の有価証券報告書(第51期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 早稲田アカデミーってどんな会社?


同社は、首都圏を中心に小学生から高校生を対象とした進学塾を展開する教育企業です。「本気でやる子を育てる」という教育理念のもと、難関校への高い合格実績を強みとしています。

(1) 会社概要


1975年に学習指導サークルとして創業し、1976年に「早稲田大学院生塾」として発足しました。1985年に現社名へ変更し、組織的な展開を加速させました。その後、2012年に東証一部(現プライム市場)銘柄に指定され、2024年には幼児教育を行う幼児未来教育を完全子会社化するなど、事業領域を拡大しています。

連結従業員数は1,103名、単体では1,038名です。筆頭株主は同業で東進ハイスクールなどを運営するナガセで、第2位は創業者の河端真一氏、第3位は九州を地盤とする学習塾の英進館です。同業他社や創業者が大株主に名を連ねています。

氏名 持株比率
ナガセ 18.93%
河端 真一 9.96%
英進館 9.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名、計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は山本豊氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
山本 豊 代表取締役社長 1987年入社。早稲田校校長、運営部長、取締役運営本副本部長などを経て、専務取締役運営本部長兼営業戦略部長を務めた後、2020年3月より現職。
伊藤 誠 取締役専務執行役員経営推進本部長教務本部管掌 1994年入社。大学受験部長、野田学園代表取締役社長などを歴任。常務取締役経営推進本部長兼人材開発部長などを経て、2025年4月より現職。
相澤 好寬 取締役執行役員教育事業本部長兼第六事業部長 1995年入社。上福岡校校長、城西ブロック長などを歴任。教育事業本部副本部長兼第二事業部長などを経て、2022年3月より現職。
千葉 崇博 取締役執行役員運営本部長兼デジタルソリューション部長 2005年入社。小学課長、教務本部長などを歴任。執行役員運営本部長兼営業戦略部長、集学舎代表取締役社長を経て、2025年1月より現職。
河野 陽子 取締役(常勤監査等委員) 1982年入社。総務部長、専務取締役管理本部長などを歴任。取締役常務執行役員管理本部長を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、川又政治(元OBERON SOFTWARE,INC.取締役社長/CEO)、三谷和歌子(田辺総合法律事務所パートナー弁護士)、原口昌之(英和法律事務所代表弁護士)、布施木孝叔(元新日本監査法人代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「教育関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 進学学習指導事業


首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城)において、小学1年生から高校3年生までを対象とした進学学習指導を行っています。難関校合格を目指す集団指導塾のほか、個別指導ブランドの展開も行っています。

収益は主に生徒からの授業料や講習会費、入塾金等から成り立っています。運営は同社が主体となり、直営校舎を展開するほか、個別指導部門ではフランチャイズ方式での運営も行っています。

(2) 子会社事業(予備校・幼児教育・海外校等)


医歯薬系専門予備校、低年齢層向けの学習指導、幼児教室、および海外(ロンドン、ニューヨークなど)での日本人子女向け学習指導を行っています。

収益は各サービス利用者からの授業料等です。運営は、野田学園(予備校)、水戸アカデミー・集学舎(学習塾)、幼児未来教育(幼児教室)、および海外現地法人がそれぞれ担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は毎期着実に増加しており、成長トレンドが継続しています。経常利益も売上高の伸長に伴い増加傾向にあり、利益率も4%台から10%台へと大幅に改善しています。当期純利益についても右肩上がりで推移しており、収益性が高まっていることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 255億円 286億円 307億円 329億円 351億円
経常利益 11億円 18億円 24億円 30億円 36億円
利益率(%) 4.2% 6.4% 7.9% 9.0% 10.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 12億円 16億円 21億円 24億円

(2) 損益計算書


前期と当期を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率も向上しており、本業の収益力が高まっています。増収効果が利益増に直結しており、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 329億円 351億円
売上総利益 99億円 109億円
売上総利益率(%) 30.2% 31.1%
営業利益 29億円 35億円
営業利益率(%) 8.8% 10.1%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が14億円(構成比20%)、給与手当が13億円(同17%)を占めています。売上原価においては、労務費が122億円(構成比51%)、教材費等が42億円(同18%)を占めており、教育サービス業特有の人件費比率の高さが見られます。

(3) セグメント収益


各部門ともに生徒数の増加や単価改定等により増収となっています。特に小学部は売上規模が大きく、全体を牽引しています。利益に関してはセグメント別の開示がないため、売上高のみの記載となります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
小学部 195億円 210億円
中学部 117億円 121億円
高校部 16億円 17億円
その他 2億円 3億円
連結(合計) 329億円 351億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 36億円 39億円
投資CF -24億円 -13億円
財務CF -8億円 -21億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業時より「本気でやる子を育てる」という教育理念と、「目標に向かって真剣に取り組む人間の創造」という経営理念を掲げています。学力向上や志望校合格だけでなく、物事に本気で取り組む姿勢やチャレンジ精神、問題を解決し困難をやり抜く力を持った子供たちの育成を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、学力向上・志望校合格という進学塾としての「本来価値」に加え、前向きな人生を歩む素地や豊かな人生を送る礎となる姿勢と能力を身につけさせる独自の付加価値を「ワセ価値(本質価値)」と称し、重視しています。教育理念の実践を通じて、社会課題の解決と持続可能な社会の実現に資する人材育成に貢献する文化があります。

(3) 経営計画・目標


「子どもたちの未来を育む独自の価値を提供し続け教育企業No.1を目指す」という企業目標の実現に向け、中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)を推進しています。経営上の目標達成状況を判断する指標として連結売上高・連結経常利益の達成度を設定し、収益性の指標として「売上高経常利益率」10%超の安定的確保を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


「合格実績戦略」として、難関上位校への合格実績伸長によりブランド力と集客力を高め、業容拡大を図る方針です。具体的には、サービス品質向上による顧客満足度の向上、コア事業の強化、大学受験部門や幼児教育などの成長領域における収益基盤の創出、組織体制の構築に注力しています。

* 東進衛星予備校ネットワーク、東進中学NETへの加盟による大学受験部門の強化
* 幼児未来教育の完全子会社化による未就学児領域への参入
* 個別指導ブランドの早期100校体制確立
* DX推進によるICTを活用した新規サービスの開発

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「本気でやる子を育てる」理念の実践者を育成するため、人材の確保・育成・定着を最重要課題としています。内部リクルートの強化や採用手法の改善による人材確保、データに基づく適正配置、研修制度の再構築による育成強化に取り組んでいます。また、報酬制度の充実や働きやすい職場環境の整備を通じて、職員のエンゲージメント向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.7歳 9.3年 5,706,775円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.9%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 47.7%
男女賃金差異(正規雇用) 65.5%
男女賃金差異(非正規) 55.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、内部リクルート入社率(25.8%)、正社員の有給休暇取得率(64.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化と経営戦略


学習塾業界は少子化による学齢人口減少の影響を受けています。同社は難関上位校への合格実績伸長による差別化や、少子化が緩やかな首都圏での展開により成長を目指していますが、少子化の進行や難関校受験ニーズの低下が起きた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材の確保及び育成


質の高い教育サービスの提供と事業拡大には、優秀な人材の確保と育成が不可欠です。採用環境の変化により必要な人員を確保できない場合や、人材育成が計画通りに進まない場合、サービス品質の低下や経営計画の遅延を招き、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


事業における情報システムへの依存度が高まる中、サイバー攻撃やシステム障害のリスクがあります。対策を講じていますが、万が一、個人情報の漏洩や業務の中断が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により、財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。