早稲田アカデミー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

早稲田アカデミー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

早稲田アカデミーは東京証券取引所プライム市場に上場し、首都圏を中心に小中高生向けの進学塾を展開する教育企業です。個別指導や医歯薬系予備校、海外校なども手掛けています。直近の業績は、少子化の中でも難関校への圧倒的な合格実績を背景に塾生数が順調に推移し、売上高および各段階利益ともに増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社早稲田アカデミーの有価証券報告書(第52期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 早稲田アカデミーってどんな会社?


進学塾の運営を中心とした教育関連事業を展開し、難関校合格を目指す指導に特徴があります。

(1) 会社概要


1975年に開始された学習指導サークルを前身とし、1976年に早稲田大学院生塾として発足しました。1999年の株式店頭登録を経て、2012年に東京証券取引所市場第一部銘柄に指定され、2022年にはプライム市場へ移行しました。近年は個別指導分野の強化や、幼児教室運営会社の完全子会社化など事業領域を拡大しています。

同社グループの従業員数は連結で1,109名、単体で1,044名です。大株主については、筆頭株主が東進ハイスクールなどを展開する事業会社のナガセで、第2位は個人の河端真一氏、第3位は学習塾を運営する英進館となっています。

氏名 持株比率
ナガセ 18.84%
河端真一 10.45%
英進館 9.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は山本豊氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
山本豊 代表取締役社長 1987年同社入社。運営部長などを歴任し、2020年より現職。
伊藤誠 取締役専務執行役員経営推進本部長教務本部管掌 1994年入社。野田学園、幼児未来教育などの社長を兼任し、2025年より現職。
相澤好寬 取締役執行役員教育事業本部長兼第六事業部長 1995年入社。ブロック長などを歴任し、2022年より現職。
千葉崇博 取締役執行役員運営本部長 2005年入社。中学受験部長等を経て、集学舎社長を兼任。2025年より現職。
河野陽子 取締役(常勤監査等委員) 1982年入社。総務部長、管理本部長などを歴任し、2023年より現職。


社外取締役は、川又政治(元TIS常勤監査役)、三谷和歌子(弁護士)、原口昌之(弁護士・公認会計士)、布施木孝叔(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「教育関連事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 進学学習指導(集団指導・個別指導)


主に小学1年生から高校3年生までを対象とした進学学習指導のほか、英語教育等を提供しています。首都圏で直営校舎を展開するほか、個別指導部門である早稲田アカデミー個別進学館においてはフランチャイズ方式での運営も行い、難関上位校の志望校合格をサポートしています。

収益源は、塾生や保護者からの授業料、講習会費、合宿費、および入塾金や教材費などです。運営は主に早稲田アカデミーが行っているほか、千葉県内では集学舎、茨城県内では水戸アカデミーがそれぞれの地域に密着した学習指導事業を展開しています。

(2) 特化型予備校および海外事業など


中高生・高卒生を対象とした医歯薬系専門の大学受験予備校や、1歳から6歳までの未就学児を対象とした幼児教室を提供しています。さらに、イギリスのロンドンやアメリカのニューヨーク州において、日本人子女向けの進学塾も展開しています。

収益源は、各対象となる生徒や児童、保護者からの授業料や教材費などです。医歯薬系予備校の野田クルゼは野田学園が、幼児教室のサン・キッズは幼児未来教育が運営しています。また、海外事業はWASEDA ACADEMY UKおよびWASEDA ACADEMY USAがそれぞれ運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加を続けており、直近5年間で順調な成長を見せています。経常利益および当期純利益も毎期連続して増益を達成しており、利益率も6%台から10%台へと着実に向上し、高い収益性を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 286億円 307億円 329億円 351億円 377億円
経常利益 18億円 24億円 30億円 36億円 40億円
利益率(%) 6.4% 7.9% 9.0% 10.3% 10.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 15億円 21億円 24億円 25億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い、売上総利益と営業利益も増加しています。売上総利益率は31〜32%台で安定して推移しており、営業利益率も10%台を確保するなど、効率的な利益創出が図られています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 351億円 377億円
売上総利益 109億円 122億円
売上総利益率(%) 31.1% 32.4%
営業利益 35億円 40億円
営業利益率(%) 10.1% 10.5%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が15億円(構成比18%)、給与手当が14億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは教育関連事業の単一セグメントですが、少子化の中でも小学部が全体を牽引し、塾生数が堅調に推移したことや、一部商品の価格改定効果により、売上および利益ともに増加しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
教育関連事業 351億円 377億円 35億円 40億円 10.5%
連結(合計) 351億円 377億円 35億円 40億円 10.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で事業用資産への投資を行い、余剰資金で配当金の支払いや借入の返済等を進める「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 39億円 42億円
投資CF -13億円 -4.2億円
財務CF -21億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.2%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業時から継承してきた「本気でやる子を育てる」という教育理念と「目標に向かって真剣に取り組む人間の創造」という経営理念を掲げています。学力向上と志望校合格の実現にとどまらず、果敢に挑戦するチャレンジ精神や、困難にあっても本気で粘り強くやり抜く力を身につけた子どもたちの育成を目指しています。

(2) 企業文化


進学塾としての本来価値である「学力向上・志望校合格」と、教育理念の実践によって前向きな人生を歩む素地となる姿勢や能力を身につけさせる独自の付加価値「ワセ価値」を両輪として提供する文化があります。日本の未来を支える優秀な人材育成に寄与し、教育企業としての社会的使命を果たすことを重視しています。

(3) 経営計画・目標


企業目標「子どもたちの未来を育む独自の価値を提供し続け民間教育企業No.1を目指す」の実現に向け、2026年5月に中期経営計画を策定しています。連結売上高・連結経常利益の達成度や塾生数の動向を重要な指標とし、以下の収益性指標の維持を目標として掲げています。

* 連結売上高経常利益率 10%超
* ROE 15%超

(4) 成長戦略と重点施策


生徒の本気を引き出す授業で実績を高め、市場支持を拡充する「合格実績戦略」を推進しています。事業戦略として「標準校舎のさらなる伸長」「大学受験部門と個別指導部門の強化」「インオーガニック領域の拡充促進」の3本柱を掲げ、「人的資本戦略」「DX戦略」「財務戦略」を支えとして業容拡大と企業価値向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の採用・育成への投資を経営上の最重要課題と位置付けています。教育理念や学習体験への共感度が高く、定着が期待できる人材を確保するため、内部リクルートの強化や採用手法の充実に注力しています。また、教育・研修制度や報酬制度を充実させ、職員の「価値提供力」と「帰属意識・満足度」の向上につなげています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.2歳 9.7年 6,112,860円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.9%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 50.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 63.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 58.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、内部リクルート入社率(51.2%)、正社員の有給休暇取得率(64.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化と競争激化


少子化による学齢人口の減少や入試の平易化により、通塾率の低下や需要縮小のリスクがあります。難関上位校への合格実績を伸長させることで差別化を図っていますが、少子化が想定以上に進行した場合や、難関校受験指導へのニーズが低下した場合には、塾生数の減少等により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材の確保および育成


質の高い教育サービスを継続的に提供するためには、人材の確保・育成が重要課題です。採用環境の急激な変化等により必要な要員が十分に確保できない場合や、人材育成が計画どおりに進捗しなかった場合には、経営計画の遂行が遅延し、教育サービスの質が低下することで業績に悪影響を与えるおそれがあります。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


事業活動において情報システムへの依存度が高まっており、サイバー攻撃やコンピュータウイルス等の脅威に対するリスクがあります。セキュリティ対策や従業員教育を実施していますが、深刻なシステム障害が発生した場合、個人情報の漏洩や業務中断による信頼失墜を招き、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 他社との業務提携やフランチャイズ契約


四谷大塚との提携塾契約や、ナガセとの東進衛星予備校ネットワーク加盟契約などを結んでいます。契約更新に支障はないと認識していますが、万一契約が更新されなかった場合には、代替サービスの提供や新しいカリキュラムへの移行に時間を要し、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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