※本記事は、株式会社ユー・エス・エスの有価証券報告書(第46期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユー・エス・エスってどんな会社?
ユー・エス・エスは、中古車オークションの運営を中核とし、車両の買取販売やリサイクル事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1980年に愛知自動車総合サービスとして設立され、1982年に名古屋でオートオークション会場を開設しました。1995年に現在のユー・エス・エスへ商号を変更し、1999年に名証二部へ上場、翌2000年には東証一部および名証一部への上場を果たしました。近年は他会場の子会社化や新規事業に注力しています。
同社グループの従業員数は連結で1,211名、単体で725名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に金融機関であるステートストリートバンクアンドトラストカンパニー、第3位は日本カストディ銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.36% |
| ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー505001(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 7.00% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)を安藤之弘氏、代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)を瀬田大氏が務めています。社外取締役の比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安藤之弘 | 代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO) | 1982年同社取締役、1995年取締役副社長を経て、2006年代表取締役社長に就任。2012年に代表取締役会長兼社長を務めた後、2019年より現職。 |
| 瀬田大 | 代表取締役社長兼最高執行責任者(COO) | 2004年同社執行役員、2006年代表取締役副社長を経て、2019年より現職。USSサポートサービスやアビヅの代表取締役社長も兼務。 |
| 山中雅文 | 取締役副社長統括本部長 | 2000年同社統括本部財務部長、2004年取締役を経て、2016年より現職。リプロワールドやラビット・カーネットワークの代表取締役社長も兼務。 |
| 池田浩照 | 常務取締役 | 2001年同社名古屋事業本部業務部長、2006年常務取締役を経て、各会場長を歴任。2024年より現職。ユー・エス物流の代表取締役社長も兼務。 |
社外取締役は、西島悦子(元三井不動産商業マネジメント執行役員)、高橋尚男(元本田技術研究所取締役専務執行役員)、曽和信子(元日本アイ・ビー・エム・サービス代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「オートオークション」「中古自動車等買取販売」「リサイクル」および「その他」事業を展開しています。
■オートオークション
中古自動車や中古二輪車を取り扱う事業者を会員とするオートオークションおよびバイクオークションの運営を行っています。また、専用端末やインターネットを通じたオークション接続サービス、情報サービス、車両の陸送取次や会員向け金融サービスも提供しています。
収益源は、オークション開催時の出品手数料、成約手数料、落札手数料などです。事業の運営は同社のほか、ユー・エス物流、USSサポートサービス、ジャパンバイクオークションなどの子会社が行っています。
■中古自動車等買取販売
一般の消費者等から中古自動車や事故現状車を買取り、販売する事業を展開しています。「ラビット」ブランドでの中古自動車買取専門店の展開や、事故車の買取販売を行っています。
収益源は、買い取った中古自動車および事故現状車の販売による代金です。運営は子会社であるラビット・カーネットワークおよびリプロワールドが行っています。
■リサイクル
廃自動車や金属スクラップ等のリサイクル事業、および設備やプラントの処分元請事業を展開しています。環境に配慮した資源の有効活用に貢献しています。
収益源は、回収した資源の売却代金や、プラント等の解体・処分工事の受注による代金です。事業の運営は子会社であるアビヅおよびSMARTが行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、一般消費者向けのオートローン事業や、太陽光発電システムによる売電事業などを展開しています。
収益源は、オートローンの利用に伴う手数料収入や売電収入です。事業の運営は同社のほか、USSサポートサービスなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高および利益ともに右肩上がりで成長を続けています。特に売上高は800億円台から1000億円を突破し、経常利益率も50%を超える非常に高い水準を維持しています。主力事業の好調が全体の業績拡大を力強く牽引していることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 815億円 | 888億円 | 976億円 | 1040億円 | 1139億円 |
| 経常利益 | 424億円 | 445億円 | 497億円 | 549億円 | 606億円 |
| 利益率(%) | 52.0% | 50.1% | 50.9% | 52.8% | 53.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 294億円 | 294億円 | 323億円 | 372億円 | 407億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、各利益項目も順調に拡大しています。売上総利益率は60%台、営業利益率は50%台と高水準を維持しており、付加価値の高いビジネスモデルが確立されています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1040億円 | 1139億円 |
| 売上総利益 | 648億円 | 715億円 |
| 売上総利益率(%) | 62.3% | 62.8% |
| 営業利益 | 542億円 | 598億円 |
| 営業利益率(%) | 52.1% | 52.6% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が28億円(構成比24%)、のれん償却額が5億円(同5%)、減価償却費が5億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力セグメントであるオートオークション事業が売上の大部分を占めており、堅調な伸びを示しています。また、リサイクル事業も2割以上の増収となっており、グループ全体の売上高成長に貢献しています。中古自動車等買取販売事業は前年並みの水準で推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| オートオークション | 818億円 | 897億円 |
| 中古自動車等買取販売 | 127億円 | 125億円 |
| リサイクル | 84億円 | 103億円 |
| その他 | 11億円 | 14億円 |
| 連結(合計) | 1040億円 | 1139億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金で投資を行い、さらに借入金の返済や株主還元を行う「健全型」のキャッシュ・フローとなっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 382億円 | 439億円 |
| 投資CF | -60億円 | -213億円 |
| 財務CF | -300億円 | -384億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.1%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「公正な市場の創造、会員との共生、消費者への奉仕、株主への還元、社員の尊重、地域への貢献」を企業理念として掲げ、中古車流通総合企業として社会に貢献し、お客様や社会に信頼される企業を目指しています。
■(2) 企業文化
会社の経営の基本方針として「Challenge to Next Stage」を掲げています。社会に貢献できる中古車流通総合企業、お客様や社会に信頼される企業、グループ総合力により変化に対応できる企業を目指し、将来のグループを担う自立した人材を育成するとともに、株主を重視した経営を行うという価値観を重んじています。
■(3) 経営計画・目標
自己資本当期純利益率(ROE)を重要な経営指標とし、中期的に20%以上の水準を目指しています。また、連結配当性向を60%以上、2026年3月期から2028年3月期までの総還元性向100%以上を目標に掲げています。さらに、中長期の経営目標としてオートオークション市場シェア50%の達成を目指しています。
* ROE:20%以上
* 連結配当性向:60%以上
* 総還元性向:100%以上(2026年3月期〜2028年3月期)
* オートオークション市場シェア:50%
■(4) 成長戦略と重点施策
オートオークション市場シェア50%達成に向け、事業ポートフォリオを見直し、オートオークション事業へ集中投資します。主要拠点での会場新築建替えや最新鋭のセリシステム導入、デジタル化の推進による会員利便性向上と業務効率化を進めます。また、周辺事業の再構築やM&A、他業種連携も機動的に推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、将来を担う自立した人材の育成を経営方針に掲げています。新入社員教育から管理職向け研修、車両検査員の教育まで幅広く実施し、能力を最大限発揮できる環境を整えています。また、性別や年齢に関わらない公平な登用や、業務効率化による長時間労働の削減など、働きやすい職場づくりにも力を入れています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.4歳 | 13.0年 | 7,697,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.6% |
| 男性育児休業取得率 | 61.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 71.7% |
| 男女賃金差異(有期労働者) | 64.8% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(63.3%)、障がい者雇用率(2.73%)、離職率(7.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 会員の確保と出品車両の調達
オートオークション事業は会員の参加と車両の調達に大きく依存しています。競合他社による優位なサービスの提供や、大口出品業者の動向変化などにより、十分な出品台数や会員を確保できなくなった場合、最適な規模でのオークション開催が困難となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 急激な技術革新と市場の変化
インターネットを通じたオークション情報の提供など、技術革新と顧客ニーズの変化が激しい環境にあります。電子商取引技術の高度化に適応できない場合や、多額のシステム投資負担が生じた場合、さらには国内自動車流通市場の成熟や競争激化が進んだ場合、成長性や収益性が低下するリスクがあります。
■(3) 情報システムへの依存と情報管理
オークション運営におけるデータのバックアップなどの対策を講じていますが、システムに障害が発生した場合は業務に大きな支障をきたす恐れがあります。また、会員情報を多数保有しているため、万一情報漏洩が発生した際には同社の信用が失墜し、事業活動に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。