※本記事は、株式会社ユー・エス・エスの有価証券報告書(第45期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユー・エス・エスってどんな会社?
同社は、国内の中古車流通市場において圧倒的なシェアを持つオートオークション会場の運営を主力とする企業です。
■(1) 会社概要
1980年に愛知自動車総合サービスとして設立され、1982年に名古屋会場を開設しました。1995年に現社名へ変更後、1999年に名証二部、2000年に東証一部へ上場を果たしました。その後も規模拡大を続け、2017年にはジェイ・エー・エーを子会社化し、業界内での地位を盤石なものとしています。
連結従業員数は1,175名、単体では695名です。大株主構成を見ると、筆頭株主および第2位、第3位はいずれも資産管理業務を行う信託銀行等の金融機関となっています。なお、上位株主には創業家出身の役員やその関連団体も名を連ねており、安定的な株主基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 16.83% |
| ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー505001 | 6.57% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 5.76% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名(社外)の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)は安藤之弘氏、代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)は瀬田大氏が務めています。取締役における社外取締役の比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安藤 之弘 | 代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO) | 1982年同社取締役就任。専務、副社長を経て2006年社長に就任。2019年より現職。 |
| 瀬田 大 | 代表取締役社長兼最高執行責任者(COO) | 2004年同社執行役員。取締役、副社長を経て2019年より現職。ユー・エス・エスサポートサービス等の社長を兼務。 |
| 山中 雅文 | 取締役副社長統括本部長 | 2000年同社財務部長。取締役、常務、専務を経て2016年より現職。リプロワールド等の社長を兼務。 |
| 池田 浩照 | 常務取締役 | 2001年同社業務部長。取締役、常務取締役としてシステム本部長や各会場長を歴任。2024年より現職。 |
社外取締役は、髙木暢子(公認会計士)、本田信司(元武田薬品工業専務)、笹尾佳子(元東電パートナーズ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「オートオークション」「中古自動車等買取販売」「リサイクル」および「その他」事業を展開しています。
■(1) オートオークション
中古自動車取扱事業者を会員とするオートオークションの運営を行っています。衛星TVやインターネットを通じた接続サービス、中古車情報サービスも提供するほか、中古二輪車のオークションも手掛けています。
会員である中古自動車販売業者等から、出品手数料、成約手数料、落札手数料などを受け取ることで収益を得ています。運営は同社のほか、子会社のユー・エス物流が陸送手配等を、ジャパンバイクオークションがバイクオークションを担当しています。
■(2) 中古自動車等買取販売
一般消費者等からの中古自動車の買取販売および事故現状車の買取販売を行っています。「ラビット」ブランドでの店舗展開を含みます。
車両の売却代金が主な収益源です。運営は、連結子会社のラビット・カーネットワークが中古自動車買取販売を、リプロワールドが事故現状車の買取販売を行っています。
■(3) リサイクル
廃自動車や金属スクラップのリサイクル事業、および設備・プラントの処分元請事業を行っています。
リサイクル資源や金属スクラップの販売代金、プラント処分の受託料等が収益となります。運営は、連結子会社のアビヅがリサイクル事業を、SMARTがプラント処分事業を行っています。
■(4) その他
上記セグメントに含まれない事業として、太陽光発電による売電事業や、一般消費者向けのオートローン事業等を行っています。
売電収入やローン手数料等が収益源です。運営は同社が売電事業を、子会社のユー・エス・エスサポートサービス等がオートローン事業を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高、経常利益ともに一貫して右肩上がりの成長を続けています。特に利益率は50%前後という極めて高い水準を維持しており、高収益体質であることがうかがえます。当期においても増収増益を達成し、過去最高の業績となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 749億円 | 815億円 | 888億円 | 976億円 | 1,040億円 |
| 経常利益 | 370億円 | 424億円 | 445億円 | 497億円 | 549億円 |
| 利益率(%) | 49.4% | 52.0% | 50.1% | 50.9% | 52.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -52億円 | 294億円 | 294億円 | 323億円 | 372億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に伸長しています。利益率も高い水準を維持しており、効率的な事業運営が継続されていることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 976億円 | 1,040億円 |
| 売上総利益 | 590億円 | 648億円 |
| 売上総利益率(%) | 60.5% | 62.3% |
| 営業利益 | 489億円 | 542億円 |
| 営業利益率(%) | 50.1% | 52.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が27億円(構成比25.2%)、のれん償却額が5億円(同5.1%)を占めています。売上原価についても、具体的な内訳の数値データは提供されていません。
■(3) セグメント収益
主力のオートオークション事業が売上・利益ともに増加し、全体を牽引しています。中古自動車等買取販売事業も増収ですが、利益は若干減少しました。リサイクル事業は売上・利益ともに減少しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| オートオークション | 751億円 | 818億円 |
| 中古自動車等買取販売 | 114億円 | 127億円 |
| リサイクル | 105億円 | 84億円 |
| その他 | 6億円 | 11億円 |
| 連結(合計) | 976億円 | 1,040億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で稼いだ資金を元に、借入金の返済や株主還元を行いつつ、必要な投資も実施している健全型(営業+、投資-、財務-)です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 472億円 | 382億円 |
| 投資CF | -26億円 | -60億円 |
| 財務CF | -282億円 | -300億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「公正な市場の創造、会員との共生、消費者への奉仕、株主への還元、社員の尊重、地域への貢献」を企業理念として掲げています。中古車流通総合企業として社会に貢献し、顧客や社会から信頼される企業を目指しています。
■(2) 企業文化
「Challenge to Next Stage」を経営の基本方針とし、中古車流通業界をリードする総合企業への変革を目指しています。グループ総合力による変化への対応、自立した人材の育成、株主重視の経営などを指針として掲げ、公正かつ透明性の高い運営を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期的な経営目標として、オートオークション市場シェア50%の達成を掲げています。また、資本効率を重視し、以下の数値を目標として設定しています。
* 自己資本当期純利益率(ROE):中期的に20%以上
* 連結配当性向:60%以上
* 総還元性向:100%以上(2026年3月期から2028年3月期まで)
■(4) 成長戦略と重点施策
オートオークション事業への集中投資を進め、市場シェア50%の達成を目指します。主要会場の新築建替えや最新鋭セリシステムの導入、ヤード拡張などの大規模な成長投資を実行するほか、DX推進による利便性向上と業務効率化を図ります。周辺事業についても、オークション事業との相乗効果を追求し、安定的な収益基盤の構築を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
将来のグループを担う自立した人材の育成を掲げ、社員が能力を最大限発揮できる環境整備に努めています。新たな人事制度の導入や教育・研修制度の充実を図るとともに、雇用機会や待遇における公平性を重視しています。特に女性活躍推進に向けた研修や、管理職への登用目標を設定するなど、多様性の確保にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.9歳 | 13.4年 | 7,329,000円 |
※平均年間給与は、賞与および基準外給与を含めています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.9% |
| 男性育児休業取得率 | 38.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 62.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、車両検査員資格3級以上資格保有者数(291名)、女性の役職者登用(9.4%)、有給休暇取得率(61.4%)、障がい者雇用率(2.47%)、月間平均残業時間(30.0時間)、離職率(5.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場全体の成長の限界
国内の自動車流通市場は成熟しており、成長余地は限定的と考えられます。競合他社との競争激化や、自動車メーカー等による新たな流通形態の構築などが進んだ場合、同グループの市場シェア拡大が困難になり、成長性や収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) オークション会員の確保
事業にとって会員の勧誘と確保は重要ですが、競合他社が優れたサービスを提供したり、同社の評判が悪化したりした場合、会員確保に支障が生じる可能性があります。また、大口出品業者が他の販路を選択した場合、出品台数や成約率に影響を与えるおそれがあります。
■(3) 出品車両の調達依存
オートオークション事業は出品車両の調達に大きく依存しており、特に大口出品業者からの供給が重要です。手数料体系の変更などにより大口業者の出品台数が減少したり、車両供給自体が不足したりした場合、最適な規模でのオークション開催ができず、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) システム障害と情報管理
管理業務は統括本部で集中管理されており、システム障害が発生した場合、業務に支障をきたす可能性があります。また、会員情報には個人情報が含まれているため、万が一漏洩した場合には信用の失墜につながり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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