※本記事は、日本ラッドの有価証券報告書(第55期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本ラッドってどんな会社?
システム受託開発やIoTソリューションの提供を通じ、情報化社会の基盤構築を担うIT企業です。
■(1) 会社概要
同社は1971年にシステムハウスとして設立されました。1999年に店頭登録、2004年にジャスダック上場を経て、2022年にスタンダード市場へ移行しています。近年は2018年のADVANTECH CO., LTD.との資本業務提携や、2025年のOne's Houseの子会社化など、M&Aや提携を通じて事業基盤の強化を積極的に進めています。
従業員数は連結で299名、単体で285名です。筆頭株主は事業提携先であるADVANTECH CO., LTD.で、第2位は代表取締役社長の大塚隆之氏、第3位は個人の阿久津裕氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ADVANTECH CO., LTD. | 16.09% |
| 大塚隆之 | 14.29% |
| 阿久津裕 | 7.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は大塚隆之氏が務めており、社外取締役比率は40.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大塚隆之 | 代表取締役社長 | 元デル・テクノロジーズ勤務。同社執行役員兼IoTソリューション副事業部長等を経て、2023年6月より現職。 |
| 須澤通雅 | 取締役最高技術責任者 | 元グリッド・ソリューションズ取締役。同社代表取締役社長を経て、2023年6月より現職。 |
| 埜口晃 | 取締役エンタープライズソリューション本部長 | 同社オープンシステム事業部長、第一ソリューション事業部長等を歴任し、2018年6月より現職。 |
社外取締役は、松田章良(岩田合同法律事務所)、劉蔚廷(ADVANTECH CO., LTD.取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンタープライズソリューション事業」および「IoTインテグレーション事業」を展開しています。
■エンタープライズソリューション事業
各種システムの受託開発や導入コンサルティングをはじめ、業務アプリケーション、AIソリューション、クラウドサービス等を提供し、幅広い業種のIT化を支援しています。近年は生成AIなどの技術革新に対応し、AIを活用した高生産性・高付加価値型の開発モデルへの転換を進めています。
収益源は顧客からのシステム受託開発費や技術者の派遣料、クラウドサービスの利用料などです。運営は主に日本ラッドおよび子会社のOne's Houseが行っています。
■IoTインテグレーション事業
ハードウェアを起点としたシステム製品の開発販売、IoTプラットフォームサービス、医療情報システムや映像関連機器の構築などを展開しています。独自のプラットフォーム「Dereva」などを活用し、製造業向けDX事業を軸に顧客の設備運用やデータ活用の高度化に貢献しています。
収益源は、システム構築に伴うハードウェアやソフトウェアの販売代金、システム開発費、車載セキュリティシステム等のロイヤリティ収入などです。運営は主に日本ラッドが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期の業績は売上高が計上され、当期利益は前事業年度まで順調に拡大していましたが、直近では構造転換への先行投資や一部不採算案件の影響などにより減益となりました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | - | 41億円 |
| 経常利益 | - | - | - | - | 2億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | 5.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.2億円 | 1億円 | 3億円 | 4億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益構成を見ると、売上総利益および営業利益ともに減少傾向にあり、利益水準が低下しています。これは労働集約型のシステム開発モデルからの脱却を図る中での先行投資や人材獲得コストの増加が影響しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | 41億円 |
| 売上総利益 | 11億円 | 9億円 |
| 売上総利益率(%) | - | 21.9% |
| 営業利益 | 3億円 | 2億円 |
| 営業利益率(%) | - | 4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2.3億円(構成比30.7%)、支払手数料が0.9億円(同12.2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
エンタープライズソリューション事業では新規案件の引き合いが強く、人員の最適配置を進めています。IoTインテグレーション事業は製造業向けDX関連の引き合いが急増し、安定的な収益基盤の構築に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| エンタープライズソリューション事業 | - | 24億円 |
| IoTインテグレーション事業 | - | 17億円 |
| 連結(合計) | - | 41億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
先端テクノロジーを活用したIoT、AI、DXプロダクト・プラットフォームを通じて情報化社会の基盤構築を行い、経済の発展と活力ある豊かな社会の実現に貢献することを経営の基本方針として掲げています。
■(2) 企業文化
半世紀以上にわたって培ってきたソフトウェアエンジニアの育成ノウハウを活かし、創業以来常に志してきた「未知への挑戦で社会に還元する」ことを大切にしています。多様性を価値とし、すべての社員が自分自身を表現し最高のパフォーマンスを発揮できる環境づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年4月から2027年3月の3か年を対象とした中期経営計画において、最終年度である2027年3月期に以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:42億円
* 営業利益:3億円
* 経常利益:3億円
* 当期純損益:3億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「“人”で稼ぐから“アセット”で稼ぐ企業への構造変換」を基本方針とし、日本の製造業DXを進めるデータハンドラーへの進化を目指します。選択と集中による高付加価値領域への人員配置、独自プラットフォーム「Dereva」などを中核としたノウハウのアセット化、およびM&Aなど将来成長に向けた戦略的投資を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社の最大の資産は高度な技術力を持つ人材であると考え、教育と育成を通じて社員のスキルを強化し、最新の技術トレンドに対応できる組織づくりを進めています。また、時差勤務や在宅勤務などの働き方の選択肢を提供し、透明性と納得感のある人事制度へ再構築することで次世代リーダーの輩出を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.6歳 | 13.3年 | 5,741,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 89.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 87.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 112.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の採用人数(6名)、男女の平均継続勤続年数の差(16%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) AI・クラウド技術等の革新への対応
急速な技術革新が進む中、最新技術への対応や新技術の習得に遅れをとった場合、提供するサービスの陳腐化を招き、競合他社に対する競争力が低下することで業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) ITエンジニアの確保と育成
労働市場における人材不足が常態化しており、高度な技術力を持つ優秀なエンジニアの確保と育成が計画通りに進まない場合、開発規模の縮小や受注機会の喪失につながる可能性があります。
■(3) システム開発における不採算案件の発生
受託開発において、契約時点での見積り精度のブレや予見不能な仕様変更、開発期間の長期化等により想定以上の原価が発生し、不採算案件となった場合、同社の収益性に影響を与える可能性があります。



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