※本記事は、日本ラッド株式会社 の有価証券報告書(第54期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本ラッドってどんな会社?
創業50年以上の歴史を持つ独立系SIerであり、ハードウェア技術とソフトウェア開発を融合した産業向けソリューションを強みとしています。
■(1) 会社概要
同社は1971年にシステムハウスとして設立され、1991年に通産省SI企業の認定を受けました。1999年に株式を店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しています。2018年には台湾のAdvantech社と資本業務提携を締結し、産業用IoT分野での連携を強化しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
2025年3月31日現在、同社(単体)の従業員数は280名です。筆頭株主は資本業務提携先である台湾の産業用PC大手Advantech社であり、第2位は代表取締役社長の大塚隆之氏、第3位は個人株主の阿久津裕氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ADVANTECH CO., LTD. | 16.08% |
| 大塚隆之 | 14.28% |
| 阿久津裕 | 7.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は大塚隆之氏が務めています。社外取締役比率は40.0%(2名/5名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大塚 隆 之 | 代表取締役社長 | マカフィー、EMCジャパン(現デル・テクノロジーズ)を経て2018年に同社入社。IoTソリューション事業部等を経て2023年6月より現職。 |
| 須 澤 通 雅 | 取締役最高技術責任者 | 東燃、ザクソングループ等を経て2009年に同社入社。取締役プロダクトマーケティング事業本部長、代表取締役社長を経て2023年6月より現職。 |
| 埜 口 晃 | 取締役エンタープライズソリューション本部長 | 1989年に同社入社。オープンシステム事業部長、第一ソリューション事業部長、執行役員を経て2018年6月より現職。 |
社外取締役は、松田章良(岩田合同法律事務所弁護士)、劉蔚廷(Advantech Co., Ltd.取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンタープライズソリューション事業」および「IoTインテグレーション事業」を展開しています。
■(1) エンタープライズソリューション事業
主に企業向けの業務アプリケーションシステム開発、導入コンサルティング、クラウドサービスなどを提供しています。幅広い業種のIT化支援を行うほか、ビジネスデータ分析を行うBIツールやセキュリティ系パッケージソフトウェアの販売・導入支援、AIソリューションの開発も手掛けています。
収益は、顧客企業からのシステム受託開発費、コンサルティング料、パッケージ製品の販売・保守料などから構成されます。また、仮想化基盤に特化したクラウドサービスによる利用料収入も得ています。運営は主に日本ラッドが行っています。
■(2) IoTインテグレーション事業
IoT技術を活用したソリューション開発、組込み系システム開発、映像関連機器システムの販売などを行っています。具体的には、医療機関向けシステム、緊急車両向け車載情報システム、産業用・ネットワーク機器向けの組込みシステムなどを手掛けています。
収益は、IoTソリューションの開発費、ハードウェアおよびシステム製品の販売代金、保守サービス料などが主な源泉です。独自のIoTプラットフォームを活用したサービス提供も行っています。運営は主に日本ラッドが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで成長しており、30億円台前半から44億円規模まで拡大しています。利益面でも、過去には赤字の時期もありましたが、直近では黒字基調が定着し、経常利益率も改善傾向にあります。特に直近2期は増収増益を維持しており、収益性が高まっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 30.1億円 | 33.1億円 | 35.6億円 | 39.8億円 | 43.6億円 |
| 経常利益 | -1.0億円 | 0.8億円 | 1.4億円 | 3.2億円 | 3.9億円 |
| 利益率(%) | -3.3% | 2.3% | 4.0% | 8.1% | 9.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.8億円 | 0.2億円 | 1.4億円 | 3.3億円 | 4.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の傾向を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しており、売上総利益率は23.6%から25.6%へと改善しています。営業利益率も向上しており、本業の収益力が高まっていることが分かります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 39.8億円 | 43.6億円 |
| 売上総利益 | 9.4億円 | 11.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.6% | 25.6% |
| 営業利益 | 2.7億円 | 3.2億円 |
| 営業利益率(%) | 6.7% | 7.3% |
コスト構造を見ると、売上原価においては労務費が最も大きく、原価全体の54.0%を占めています。次いで外注加工費が20.8%、材料費が18.9%となっています。販売費及び一般管理費においては、給料及び手当が約2.7億円(構成比33%)で最も大きく、次いで地代家賃が約0.9億円(同11%)、役員報酬が約0.9億円(同11%)となっています。
■(3) セグメント収益
エンタープライズソリューション事業は、大口顧客の駆け込み需要やBI事業の伸長により微増収・増益となりました。IoTインテグレーション事業は、産業用IoTや医療分野での受注増により大幅な増収増益を達成しました。全社的に収益性が向上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| エンタープライズソリューション事業 | 23.8億円 | 24.1億円 | 3.6億円 | 3.8億円 | 15.8% |
| IoTインテグレーション事業 | 16.0億円 | 19.4億円 | 3.4億円 | 4.4億円 | 22.7% |
| 調整額 | -0.1億円 | -0.3億円 | -4.3億円 | -5.0億円 | - |
| 連結(合計) | 39.8億円 | 43.6億円 | 2.7億円 | 3.2億円 | 7.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
日本ラッドは、IoTインテグレーション事業の好調により、売上高が増加しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、利益計上等によりプラスとなりましたが、売上債権の増加等により前事業年度より減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、本社移転に伴う設備投資等により使用超過となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により使用となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.8億円 | 1.4億円 |
| 投資CF | -4.4億円 | -1.8億円 |
| 財務CF | -1.7億円 | -0.3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、先端テクノロジーを活用したIoT、AI、DXプロダクト・プラットフォームを通じて情報化社会の基盤構築を行い、経済の発展と活力ある豊かな社会の実現に貢献することを経営の基本方針としています。また、高コスト効率・高品質・高付加価値のトータルソリューションを提案し続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「企業のホームドクターたれ」を社是とし、顧客ニーズを迅速かつ的確につかむことを重視しています。また、創業以来常に志してきた「未知への挑戦」を社会に還元する姿勢や、先端技術と高度人材への先行投資を継続し、サステナブルな成長を目指す文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2024年4月から2027年3月までの中期経営計画を策定しています。「“人”で稼ぐから“アセット”で稼ぐ企業への構造変換」を基本方針とし、2027年3月期における数値目標を以下の通り設定しています。
* 売上高:42.1億円
* 営業利益:2.95億円
* 経常利益:3.45億円
* 当期純利益:3.15億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、SIで培ったノウハウを活かし、プロダクトアセット主導の収益体制への転換を進めています。具体的には、大口案件への人員集中による収益力強化、IoT/DX領域でのノウハウのプロダクト化(Derevaプラットフォーム等)、およびM&Aを含めた戦略的投資による技術・人材の獲得を重点施策としています。
* 選択と集中による収益力強化:人材ローテーションと高付加価値領域への配置
* ノウハウのアセットへの昇華:属人性のノウハウ化とプロダクト開発へのリソース投入
* 将来成長に向けた戦略的投資:M&Aによるグループ拡大と技術獲得
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、エンジニアの技術力を全社的に引き上げるため、人材ローテーションやプロダクト開発要員化を進めています。また、多様な開発環境に対応可能なエンジニアの育成や、資格取得支援を通じたキャリア形成を推進し、新卒・中途採用の強化とともに働きやすい職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.6歳 | 13.5年 | 5,705,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.4% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 88.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 86.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 138.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の採用人数(2名)、男女の平均継続勤続年数の差(11%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術革新への対応に関するリスク
AIやクラウド等の技術革新が激しく、保有技術の陳腐化により競争力が低下する可能性があります。同社は新技術習得やソリューション構築に努めていますが、市場ニーズの変化や技術動向への対応が遅れた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材確保及び人材育成に関するリスク
顧客ニーズへの対応には人材確保が重要であり、同社はハイブリッド体制の構築等に注力しています。しかし、IT業界の人材不足や流動性の高さにより、適切な人材を十分に確保・育成できない場合、開発規模の縮小等により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 事業環境の変化に伴うリスク
IT業界における技術の高度化や価格競争の激化が進む中、顧客の投資動向の変動や想定以上の価格競争が発生した場合、販売価格の低下により業績に影響が出る可能性があります。また、転職市場の活況下で魅力的な就労環境を整備できない場合、人材確保に支障をきたす恐れがあります。
■(4) システム開発業務に関するリスク
受託開発における見積り精度の問題や仕様変更、不具合等により、コスト増や工期遅延が発生する可能性があります。同社はプロジェクト管理を徹底していますが、不採算案件が発生した場合、経営成績に悪影響を与える可能性があります。



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