※本記事は、株式会社さくらケーシーエスの有価証券報告書(第57期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. さくらケーシーエスってどんな会社?
金融機関や官公庁、一般企業向けに、システム開発から運用・保守、機器販売までを一貫して提供する総合情報サービス企業です。
■(1) 会社概要
1969年に神戸コンピューターサービスとして設立され、データ入力等の業務を開始しました。その後、1973年の合併を経て事業を拡大し、2000年に大阪証券取引所市場第二部へ上場しました。2014年には子会社を統合してKCSソリューションズとするなど体制を強化し、2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。
連結従業員数は1,042名、単体では946名体制です。筆頭株主は、その他の関係会社である三井住友銀行で、第2位は主要株主の三井住友ファイナンス&リース、第3位は主要株主の富士通Japanです。同社グループは、三井住友フィナンシャルグループにおいて総合情報サービス会社と位置付けられ、緊密な関係にあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井住友銀行 | 28.51% |
| 三井住友ファイナンス&リース | 17.67% |
| 富士通Japan | 13.84% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表者は取締役社長の加藤貴紀氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加藤 貴 紀 | 取締役社長(代表取締役)兼 社長執行役員 | 1989年太陽神戸銀行入行。三井住友銀行執行役員、常務執行役員などを歴任。2023年さくらケーシーエス副社長執行役員を経て、2024年4月より現職。 |
| 白 川 利 彦 | 取締役兼 執行役員フェロー技術開発担当 | 1985年さくらケーシーエス入社。金融システム部長、執行役員公共システム二部長、常務執行役員業務管理本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、乗鞍良彦(弁護士・乗鞍法律事務所所長)、吉井満隆(バンドー化学取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「金融関連部門」「公共関連部門」「産業関連部門」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 金融関連部門
銀行などの金融機関を主な顧客とし、システムの企画段階から開発、運用管理、機器販売までを提供しています。具体的には、勘定系や情報系システムのアプリケーション開発、システム基盤の構築などを行っています。
収益は、顧客からのシステム構築や運用管理の受託対価、機器販売代金などから得ています。主要な取引先には三井住友フィナンシャルグループが含まれ、同グループ向けの取引が中心となっています。運営は主にさくらケーシーエスが行っています。
■(2) 公共関連部門
地方公共団体を対象に、住民情報系や内部情報系システムの開発・導入、運用サポートなどを行っています。自治体業務の効率化や住民サービスの向上を支援するソリューションを提供しています。
収益は、地方公共団体からのシステム開発費、パッケージソフトの利用料や保守料、BPOサービス等の対価から得ています。運営は主にさくらケーシーエスが行っています。
■(3) 産業関連部門
製造・流通・サービス業などの一般事業法人向けに、基幹業務システムや情報系システムの構築、ERPパッケージの導入支援などを提供しています。また、データセンターを活用したクラウドサービスやハウジングサービスも展開しています。
収益は、一般企業からのシステム開発費、クラウドサービスやデータセンターの利用料、システム機器の販売代金などから得ています。運営は主にさくらケーシーエスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は減少傾向にありますが、利益面では改善が進んでいます。特に当期は、売上高が減少した一方で、経常利益および当期純利益は過去最高益を更新しました。利益率も年々上昇しており、収益性の向上が顕著です。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 247億円 | 248億円 | 236億円 | 228億円 | 225億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 9億円 | 10億円 | 12億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | 3.6% | 3.5% | 4.4% | 5.3% | 6.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 6億円 | 8億円 | 9億円 | 18億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微減となりましたが、売上総利益は増加し、売上総利益率は2.6ポイント改善しています。営業利益も増益となり、営業利益率は1.2ポイント上昇しました。原価低減や高収益案件へのシフトが進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 228億円 | 225億円 |
| 売上総利益 | 57億円 | 63億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.1% | 27.7% |
| 営業利益 | 11億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 4.9% | 6.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が20億円(構成比40%)、福利厚生費が5億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の状況を見ると、公共関連部門が増収となり、利益面でも大きく伸長しました。一方、産業関連部門は減収となりましたが、収益性の高い案件獲得により利益は微増を維持しました。金融関連部門は微増収増益となり、堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 金融関連部門 | 69億円 | 70億円 |
| 公共関連部門 | 64億円 | 69億円 |
| 産業関連部門 | 95億円 | 87億円 |
| 連結(合計) | 228億円 | 225億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
さくらケーシーエスは、投資有価証券の取得や本社ビル改修に伴う設備投資により、投資活動における資金流出が大きくなりました。営業活動では、前期に回収した売上債権の反動減がありましたが、プラスの資金を生み出しました。財務活動では、リース債務の返済や配当金の支払いが主な資金流出要因となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 30億円 | 4億円 |
| 投資CF | -5億円 | -64億円 |
| 財務CF | -5億円 | -6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、IT価値の提供を通じて社会・顧客の発展に貢献し、信頼を得ることを目指しています。また、変化に対応できる強靭な企業体質を構築して企業価値の向上を図るとともに、社員が自ら価値を高め、組織に貢献できる活躍の場を提供し、社員の成長を促すことを経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、サステナビリティ基本方針において、SMBCグループの一員として方針に沿いつつ、IT業界に属する企業として重要度の高い課題に取り組む姿勢を示しています。情報サービスの提供を通じて社会貢献と飛躍を目指し、100年企業に向けた事業活動を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2023年4月から2026年3月までの中期経営計画に取り組んでおり、最終年度の数値目標として以下を掲げています。
* ROE(自己資本利益率):3.5%~4.0%
* 配当性向(連結):30~40%を目安とした安定配当
* 情報セキュリティ及びサイバーセキュリティインシデント発生件数:0件
* 連結売上高セキュリティ投資比率:0.5%以上
* 部長級に占める女性の割合:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、情報セキュリティの確保を前提に、収益力の大幅な向上と投資サイクルの確立によるサステナブルな成長を目指しています。具体的には、セキュリティ強化、収益基盤の維持・強化、デジタル基盤ビジネス等の拡大、人材への投資、社内インフラ投資の5項目に重点的に取り組んでいます。
* 2025年度は「次期中期経営計画への繋ぎ、布石の1年」と位置づけ、以下の成長施策に取り組みます。
* SAPビジネスへのリソース投入やビジネスポートフォリオの再構築。
* 中途採用の拡大やプロフェッショナル育成による人材の確保・育成。
* 開発標準プラットフォームの利用や生成AI導入によるものづくり力の強化。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材を持続的成長の源泉と位置づけ、処遇改善や健康経営、ダイバーシティ推進、ワーク・ライフ・バランスの強化に取り組んでいます。また、教育・研修を充実させ、社員のキャリア形成に向けた意識改革や環境整備を進め、心身ともに健康で働きがいを持って活躍できる職場づくりに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.8歳 | 21.0年 | 6,955,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 7.8% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 88.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 72.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 75.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 56.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報セキュリティに関するリスク
個人情報や機密情報を含む情報資産を扱っているため、サイバー攻撃やシステム障害、人的ミス等による情報流出が発生した場合、損害賠償や信用失墜により業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、情報セキュリティ委員会での協議やプライバシーマークの取得、ISO認証の維持などの対策を講じています。
■(2) 環境変化に伴う顧客の投資動向
顧客の情報化投資は景気や社会情勢、法規制等の影響を受けるため、これらが変動することで業績に影響が出る可能性があります。リスク軽減のため、新規開拓やストックビジネスの強化による経営の安定化、内部留保の充実による財務体質の維持に努めています。
■(3) 特定の取引先の動向
三井住友フィナンシャルグループ等のSMBCグループや、富士通Japan等の富士通グループが大口取引先であるため、両グループの業績や投資動向が同社の業績に影響を与える可能性があります。これに対し、一般民需分野の強化や新技術・新領域への参入により、特定の取引先への依存度を軽減する方針です。
■(4) システム構築業務に関するリスク
システム構築案件において、顧客要求の複雑化や短納期化等により、品質・納期が守れずコストが増加し、不採算化する可能性があります。これに対し、見積検討会やシステム案件協議会による受託判断、専任組織による不採算予兆の早期発見・対応など、管理体制を強化しています。



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