さくらケーシーエス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

さくらケーシーエス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

さくらケーシーエスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、金融機関、地方公共団体、一般事業法人向けにシステム構築や運用管理などの総合的な情報サービスを提供する企業です。直近の業績は売上高238億円、経常利益16億円と、主力のシステム構築案件や機器販売の増加により増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、株式会社さくらケーシーエスの有価証券報告書(第58期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. さくらケーシーエスってどんな会社?


金融、公共、産業の幅広い分野でシステム構築から運用まで手がける総合情報サービス企業です。

(1) 会社概要


1969年に神戸コンピューターサービスとして設立されました。1971年に神戸銀行(現三井住友銀行)や富士通の資本・経営参加を受け、1992年に現在のさくらケーシーエスに商号変更しています。2000年には大阪証券取引所市場第二部に上場し、2014年には子会社を統合するなど事業基盤を強化してきました。

現在の従業員数は連結で1056名、単体で961名です。筆頭株主は事業会社の三井住友銀行で、第2位は三井住友ファイナンス&リース、第3位に富士通Japanが名を連ねており、同社グループおよび富士通グループと緊密な取引関係や資本提携関係を維持しています。

氏名 持株比率
三井住友銀行 28.51%
三井住友ファイナンス&リース 17.67%
富士通Japan 13.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表者は取締役社長の加藤貴紀氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤貴紀 取締役社長(代表取締役)兼 社長執行役員 1989年太陽神戸銀行入行。三井住友銀行名古屋営業部長、執行役員ホールセール統括部長、常務執行役員グローバルコーポレートバンキング本部副本部長などを経て、2023年同社副社長執行役員に就任。2024年より現職。
白川利彦 取締役兼 執行役員フェロー技術開発担当 1985年同社入社。金融システム部長、執行役員公共システム二部長、上席執行役員事業推進本部長、常務執行役員業務管理本部長兼データセンター長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、乗鞍良彦(乗鞍法律事務所所長)、吉井満隆(神戸国際会館代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金融関連部門」「公共関連部門」「産業関連部門」事業を展開しています。

金融関連部門


金融機関を対象に、情報化ニーズに対する企画段階からのシステム構築、システム機器販売、システム運用管理などの総合的な情報サービスを提供しています。主に三井住友フィナンシャルグループ向けのビジネスを着実に成長させています。

アプリケーション・ソフトウェアの受託開発やシステム運用管理の対価として収益を得ています。事業の運営はさくらケーシーエスが主体となり、子会社のKCSソリューションズもデータ処理の委託業務などを担っています。

公共関連部門


地方公共団体などの顧客を対象に、システム構築や運用管理などの情報サービスを展開しています。自治体情報システムの標準化案件や機器更新案件などを順調に進め、公害補償システムなどの自社ソリューション開発にも注力しています。

システム構築の受託開発費やパッケージソフトの販売費、クラウドサービスやBPOサービスなどの運用管理費から収益を得ています。事業の運営はさくらケーシーエスが行っています。

産業関連部門


一般事業法人向けの顧客を対象に、システムの企画から構築、運用管理までを幅広く提供しています。SAPビジネス案件によるシステム構築や、システム基盤やネットワーク環境などのデジタル基盤に関する設計・構築なども手がけています。

システム構築費、システム運用管理に伴うアウトソーシング費、各種コンピューター機器の販売代金から収益を得ています。事業の運営は主にさくらケーシーエスが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期の連結業績は、売上高が220億円台から230億円台へと堅調に推移しています。経常利益も9億円から16億円へと継続的に成長し、利益率も3%台から6%台後半へと改善が進んでおり、収益力の向上が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 248億円 236億円 228億円 225億円 238億円
経常利益 9億円 10億円 12億円 15億円 16億円
利益率(%) 3.5% 4.4% 5.3% 6.6% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 8億円 9億円 11億円 12億円

(2) 損益計算書


売上高が225億円から238億円へ増加したことに伴い、売上総利益も63億円から69億円へと拡大しています。営業利益は14億円と横ばいであり、営業利益率は約6%で安定的に推移しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 225億円 238億円
売上総利益 63億円 69億円
売上総利益率(%) 27.7% 28.8%
営業利益 14億円 14億円
営業利益率(%) 6.1% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が21億円(構成比39%)、福利厚生費が6億円(同11%)、賞与引当金繰入額が5億円(同9%)を占めています。売上原価においても従業員賞与などが含まれており、人件費関連の比重が高い構成となっています。

(3) セグメント収益


金融関連部門は三井住友フィナンシャルグループ向け投資案件により増収増益となりました。公共関連部門は自治体向け標準化案件が進捗し好調に推移しています。産業関連部門もSAPビジネス案件が寄与し、全セグメントで堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
金融関連部門 61億円 65億円 13億円 14億円 22.1%
公共関連部門 69億円 71億円 11億円 14億円 19.4%
産業関連部門 96億円 101億円 20億円 21億円 20.3%
連結(合計) 225億円 238億円 14億円 14億円 5.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4億円 11億円
投資CF -64億円 -18億円
財務CF -6億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「IT価値を提供することにより、社会・顧客の発展に貢献する」「変化に対応できる強靭な企業体質を構築し、企業価値の向上を図る」「個人価値を自ら向上させ、組織貢献できる社員に活躍の場を提供する」を掲げています。社会や顧客からの信用を獲得し、持続的な会社の繁栄と社員の成長を目指す姿勢を明確にしています。

(2) 企業文化


社員一人ひとりが自ら学び成長する風土の醸成に取り組んでいます。業績への貢献度や変革へのチャレンジ行動の成果に基づく公正な評価や処遇を推進しており、部門や職種を超えた社員の交流イベントを通じて各分野での知見が共有されるなど、多様な人材がいきいきと活躍できる企業文化の構築を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2026年度から2028年度までの新中期経営計画において、2031年度のROE8.0%達成を目安として100億円規模の積極的な成長投資を行い、株価純資産倍率(PBR)1倍以上への引き上げを目指しています。

* ROE:8.0%(2031年度目安)
* 戦略的成長投資:3年間で100億円
* 株主資本配当率(DOE):3.5~4.0%

(4) 成長戦略と重点施策


AI利活用によるビジネスモデルの変革を前提とした事業ポートフォリオの変革と、人的資本経営の進化に取り組んでいます。高収益が期待できるソリューションビジネスやセキュリティ・デジタル基盤ビジネスへの積極的な投資とリソースシフトを推進し、システム開発における生成AIの活用などで飛躍的な生産性と品質の向上を実現します。

* 売上高:280億円(2029年3月期目標)
* 営業利益:19億円(同上)
* 営業利益率:6.8%(同上)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業戦略を実現する源泉として人材を位置づけ、多様な人材の採用・育成・リスキリングを通じて一人ひとりの付加価値と組織全体の生産性向上を図ります。年齢や経験年数に関係なく誰もがやりがいと成長を実感できる人事評価制度へと見直し、持続的な企業価値向上の源泉となる人材への投資と処遇改善を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.8歳 20.9年 7,447,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.8%
男性育児休業取得率 88.9%
男女賃金差異(全労働者) 72.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 45.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、部長級に占める女性の割合(8.3%)、連結売上高セキュリティ投資比率(0.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報セキュリティに関するリスク


顧客への情報サービス提供にあたり、個人情報や機密情報を含む情報資産を預かっています。不正アクセスやサイバー攻撃、システム障害や人的ミス等によって情報が流出した場合、損害賠償請求や信用失墜につながり、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の取引先の動向に関するリスク


三井住友フィナンシャルグループおよび三井住友銀行、富士通Japanを含む富士通グループは、同社グループの大口かつ安定した取引先です。両グループの業績や情報化投資の動向が変化した場合、同社グループの事業展開や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(3) システム構築業務に関するリスク


主力事業であるシステム構築において、顧客からの要求が複雑化・大型化・短納期化する傾向にあります。仕様変更や想定外の不具合などにより、顧客と合意した品質や納期が未達成となったりコストが増加したりして不採算化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。