エックスネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エックスネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場する、資産運用管理システム「XNETサービス」の提供を行う企業です。金融機関や機関投資家向けに、独自構築したシステムを月額利用料モデルで提供しています。直近の決算では、自己株式取得に伴うコスト増やスポット案件の減少などにより、前期比で減収減益となっています。


※本記事は、株式会社エックスネットの有価証券報告書(第34期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エックスネットってどんな会社?


資産運用業界向けのアウトソーシングサービス「XNETサービス」を主力とし、システムと業務運用の両面を支援するITサービス企業です。

(1) 会社概要


1991年に設立され、「XNETサービス」を開始しました。2000年に大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場へ上場し、2004年には東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2009年にNTTデータの連結子会社となりましたが、2024年5月に自己株式取得を実施し、同社との資本提携を解消しました。現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、新たな業務提携へと移行しています。

同社の従業員数は単体で201名です。筆頭株主は法人サービス等を手掛ける光通信で、第2位は投資事業組合と思われるUH Partners 2、第3位は個人株主です。かつて親会社であったNTTデータグループは、資本関係の解消により親会社ではなくなりました。

氏名 持株比率
光通信 14.80%
UH Partners 2 9.20%
小林 親一 5.90%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は茂谷武彦氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
茂谷 武彦 代表取締役社長 1984年野村證券入社。1992年同社入社。2000年執行役員、2003年取締役、2013年常務取締役を経て2014年より現職。
坂本 洋介 常務取締役 1984年ヤマト運輸入社。共同通信社等を経て1994年同社入社。2000年執行役員、2003年取締役を経て2013年より現職。
新島 毅 常務取締役 1996年千葉興業銀行入社。2002年同社入社。チーフマネジャー、執行役員、取締役を経て2022年より現職。
荻田 正陽 取締役 1988年日本電信電話入社。NTTデータ金融システム事業本部部長、NTTデータ・フィナンシャルテクノロジー取締役等を経て2016年より現職。


社外取締役は、中嶋悦子(NTTデータ金融イノベーション本部シニア・スペシャリスト)、丸山浩司(元横浜銀行執行役員)、鈴木行生(日本ベル投資研究所代表取締役)、武山芳夫(デンヨー取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「XNETサービス」および「機器販売等」事業を展開しています。

(1) XNETサービス


機関投資家や金融機関向けに、資産運用管理システムをクラウド型のサービスとして提供しています。主な顧客は生損保、信託銀行、投信投資顧問会社などで、有価証券のフロント(受発注)、ミドル(分析)、バック(管理)業務や、融資管理、信託管理などを支援します。

料金は、複数の顧客が同一のシステムを利用する「Application Outsourcing」というコンセプトに基づき、月額のサービス利用料として受け取っています。運営は主にエックスネットが行っています。また、システム提供だけでなく、顧客の業務を代行するBPO(Smart Outsourcing)サービスや、システムの運用保守を行うAMOサービスも提供しています。

(2) 機器販売等


XNETサービスを利用するために必要なコンピュータ機器などを顧客に販売しています。原則として顧客が自社で機器を用意しますが、同社に対して機器の導入も合わせて希望する場合に対応しています。

収益は、機器の販売代金として顧客から受け取っています。運営はエックスネットが行っています。ただし、XNETサービスの導入先に限定した付随的なビジネスであり、利益率も低いため、事業としてのウェイトは低くなっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績推移です。売上高は50億円台前半から半ばで推移しており、安定したビジネスモデルであることがうかがえます。利益面では、経常利益率が15%〜20%弱と高い水準を維持していますが、直近の2025年3月期は減収減益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 50.4億円 54.2億円 53.6億円 55.5億円 53.0億円
経常利益 7.2億円 10.0億円 9.9億円 11.0億円 8.5億円
利益率(%) 14.3% 18.4% 18.4% 19.8% 16.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.8億円 7.2億円 6.9億円 7.4億円 5.8億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益が減少しています。売上総利益率は30%前後を維持していますが、営業利益率はやや低下しました。これは、人件費やシステム関連費用などの固定費的な性質を持つコストの影響や、積極的な採用活動によるコスト増などが要因と考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 55.5億円 53.0億円
売上総利益 17.0億円 15.0億円
売上総利益率(%) 30.6% 28.4%
営業利益 10.7億円 8.6億円
営業利益率(%) 19.2% 16.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.8億円(構成比43%)、支払手数料が1.2億円(同19%)を占めています。売上原価においては、労務費が17.4億円(構成比46%)、外注費が11.7億円(同31%)を占めており、システム開発・運用に関わる人件費や委託費がコストの大部分を構成しています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、サービス品目別の売上状況について分析します。主力のアプリケーションサービスは微増しましたが、AMO・SOサービスがスポット案件からの撤退等により減少しました。機器販売等は大幅に縮小しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
XNETサービス(アプリケーション) 38.3億円 38.4億円
XNETサービス(AMO・SO) 17.1億円 14.6億円
機器販売等 0.1億円 0.0億円
連結(合計) 55.5億円 53.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

エックスネットは、安定した事業活動を通じて継続的に資金を生み出しています。営業活動によるキャッシュ・フローは、事業の成長を支えるための投資活動に充てられ、一部は財務活動にも活用されています。投資活動では、事業基盤強化のための設備投資や資産取得が行われています。財務活動においては、資金調達や返済など、経営戦略に基づいた資金繰りが行われています。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物は安定的に推移しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 14.4億円 8.4億円
投資CF -4.2億円 12.6億円
財務CF -2.5億円 -36.8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社はパーパスとして「資産運用業界に新しい価値を生み出し、社会の今と未来を支える」を掲げています。資産運用管理ソリューション「XNETサービス」の提供を通じて業界の課題解決に貢献し、よりよい社会基盤を作ることを目指しています。ミッションには「資産運用業界の業務の先生になる」「資産運用業界の更なるコストダウンを実現する」を据え、ワンストップ・ソリューション・カンパニーとしての地位確立を図っています。

(2) 企業文化


同社は「三方よし→四方よし」の実現をビジョンとして掲げています。「買い手よし(資産運用業界)」「売り手よし(同社)」「世間よし(日本経済・国民)」に加え、これら3者全員に対する「未来よし」を加えた概念です。また、顧客とコラボレーションしながらサービスを発展させ、「資産運用業界のエコシステム・オーケストレーター」として、他社システムとも共生しながら価値を提供する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を最終年度とする中期経営計画において、安定的な収益基盤である「コア売上高」の拡大を重視しています。具体的には以下の数値目標を掲げています。

* コア売上高:50億円
* 営業利益率:15.0%以上
* ROE:8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、アプリケーションサービス、AMOサービス(運用受託)、SOサービス(業務受託)の3つを柱とするプロダクトミックスの構築を推進しています。特にSOサービスを第2の柱として成長させる方針です。また、NTTデータグループとの資本提携解消により経営の独立性を確保しつつ、協力関係は継続します。今後は「新生エックスネット」として、積極的な投資や株主還元を行い、企業価値向上を目指します。

* スチュワードシップ・ソリューション等の戦略サービスの展開
* 生損保向け融資管理およびSOサービスの拡大
* 「稼ぐ力」と「使う力」を磨き上げるための投資と株主還元

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「プロフェッショナルな人財への成長」を掲げ、資産運用業界で選ばれ続けるサービスの創造を目指しています。研修のみならず、社風や文化を理解する人材の積極採用を重視しており、業界のベテラン、育休後の復職者、元社員の再雇用などを推進しています。また、社員の働きがいと働きやすさを両立させるため、生産性向上を意識した「成果実現改革」を実施し、制度や慣行の見直しを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.0歳 8.9年 8,059,486円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、3年以内離職率(16.2%)、中途採用者管理職比率(100%)、有給休暇取得率(90.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT技術への対応


提供するサービスは特定のハードウェアやOS等での稼働を前提としていますが、技術革新に伴う環境の変化に対応するため、常時アプリケーションの改編を行っています。IT技術の大幅な変更への対応が必要となった場合、投資額の増大やサービス提供の遅延が発生する可能性があります。

(2) システム不具合の発生


アプリケーションの不具合を完全にゼロにすることは困難であり、品質管理に努めているものの不具合が発生するリスクがあります。これにより損害賠償請求や修正作業費用の増大が生じる可能性があります。また、情報セキュリティに関しても対策を講じていますが、情報漏洩が発生した場合は業績や信用に影響を与える可能性があります。

(3) 顧客の金融機関偏重


顧客の大半を金融機関が占めており、金融業界の業務変更や制度変更、再編などの影響を受ける可能性があります。制度変更への対応はビジネス機会でもありますが、金融機関の統廃合等により顧客数が減少した場合、経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。