※本記事は、SBIグローバルアセットマネジメント株式会社の有価証券報告書(第28期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. SBIグローバルアセットマネジメントってどんな会社?
投資信託の運用と評価・分析情報の提供を両輪とする、SBIグループの資産運用事業の中核企業です。
■(1) 会社概要
1998年3月に金融情報提供を目的に設立され、2000年6月に大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場へ上場しました。2005年にSBIホールディングスが親会社となり、2012年にはSBIアセットマネジメントを子会社化して運用事業へ本格進出しました。2023年3月には米国モーニングスター社へのブランド返還に伴い現商号へ変更し、持株会社体制へ移行しています。
連結従業員数は119名、単体では8名が在籍しています。筆頭株主は親会社のSBIアセットマネジメントグループ(52.60%)で、第2位はかつてのライセンス契約先である米国モーニングスター社(9.80%)、第3位は資産管理業務を行う信託銀行(4.00%)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| SBIアセットマネジメントグループ | 52.60% |
| MORNINGSTAR, INC. | 9.80% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は朝倉智也氏が務めています。取締役会の過半数を社外取締役が占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 朝倉 智也 | 代表取締役社長 | 1989年北海道拓殖銀行入行。メリルリンチ日本、ソフトバンクを経て1998年同社入社。2004年代表取締役社長に就任し、SBIアセットマネジメント等のグループ各社代表を歴任。2012年より現職。 |
| 北尾 吉孝 | 取締役 | 1974年野村證券入社。1995年ソフトバンク常務取締役。1999年SBIホールディングス代表取締役社長に就任。現在は同社代表取締役会長兼社長としてグループ全体を統括。2012年より現職。 |
社外取締役は、大鶴基成(弁護士・元東京地検特捜部長)、ビリー・ウェード・ワイルダー(元日興アセットマネジメント社長)、山澤光太郎(元大阪取引所副社長)、堀江明弘(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アセットマネジメント事業」および「ファイナンシャル・サービス事業」を展開しています。
■(1) アセットマネジメント事業
投資信託の設定、募集、運用および投資助言を行っています。主な商品は、公募追加型株式投資信託や私募の債券型投資信託です。顧客は、資産形成を行う個人投資家や、地方銀行を中心とした金融機関等の機関投資家です。
収益源は、運用資産残高に基づいて受け取る信託報酬や、投資助言に対する報酬です。運営は主にSBIアセットマネジメントや、米国で債券運用を行うCarret Asset Management LLCなどの子会社が行っています。
■(2) ファイナンシャル・サービス事業
金融・経済情報の収集・分析を行い、ウェブサイトやレポートを通じて顧客に提供しています。具体的には、「Wealth Advisor」ブランドでのファンド分析、株価情報配信、資産運用セミナーの開催、投資信託比較分析ツールの提供などを行っています。
収益源は、金融機関等からのデータ提供料、ウェブサイト上の広告料、セミナー協賛金などです。運営は主に子会社のウエルスアドバイザーが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面でも、経常利益は安定的に推移しており、高い利益率を維持しています。第26期(2023年3月期)の当期純利益が突出していますが、これはブランド返還に伴う一時的な要因が含まれている可能性があります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 75億円 | 81億円 | 87億円 | 101億円 | 116億円 |
| 経常利益 | 22億円 | 24億円 | 25億円 | 25億円 | 26億円 |
| 利益率(%) | 28.8% | 29.6% | 28.1% | 24.8% | 22.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 28億円 | 55億円 | 16億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、売上総利益も順調に伸びています。営業利益率は20%前後と高い水準を維持していますが、販管費の増加により利益率はわずかに低下傾向にあります。事業拡大に伴うコスト増を吸収しながら増益を達成しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 101億円 | 116億円 |
| 売上総利益 | 52億円 | 57億円 |
| 売上総利益率(%) | 51.5% | 49.3% |
| 営業利益 | 21億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | 20.8% | 19.6% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が14億円(構成比40.5%)、役員報酬が5億円(同16.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
アセットマネジメント事業が大幅な増収増益となり、全社の成長を牽引しています。一方、ファイナンシャル・サービス事業は減収減益となりました。アセットマネジメント事業の売上構成比が高まっており、収益の柱としての重要性が増しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| アセットマネジメント事業 | 82億円 | 98億円 | 18億円 | 21億円 | 21.8% |
| ファイナンシャル・サービス事業 | 19億円 | 18億円 | 3億円 | 1億円 | 7.9% |
| 調整額 | -0.1億円 | -0.1億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 101億円 | 116億円 | 21億円 | 23億円 | 19.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
SBIグローバルアセットマネジメントは、市場環境の変化に対応し、インデックスファンドの拡充やオルタナティブ資産を活用した商品の開発に注力しています。
同社の営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益の計上と法人税等の支払により、収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却・償還による収入が新規取得による支出を上回り、収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払やリース債務の返済により、支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 88億円 | 20億円 |
| 投資CF | -55億円 | 4億円 |
| 財務CF | -21億円 | -20億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「投資家主権の確立」を根本的な使命とし、「投資家の皆様の資産形成に役立つ」ことを事業目的としています。アセットマネジメント事業の拡大と、中立・客観的立場からの金融情報の提供を通じて、金融を中心とした情報社会に不可欠な企業グループとして成長することを目指しています。
■(2) 企業文化
「顧客中心主義」を徹底し、投資家にとって真に有益な商品や情報を提供することを重視しています。また、SBIグループ共通の理念である「公益は私益にも繋がる」という考えのもと、政府の方針にも沿った事業展開を推進することで、社会への貢献と自社の成長の両立を図る文化があります。
■(3) 経営計画・目標
具体的な数値目標は公表されていませんが、中長期的には「貯蓄から投資へ」という国の政策トレンドを追い風に、運用資産残高の飛躍的な拡大を目指しています。特に、2025年3月末時点で約6.7兆円に達している運用資産残高をさらに伸ばし、業績成長につなげる方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
アセットマネジメント事業とファイナンシャル・サービス事業を「車の両輪」として収益基盤を拡大します。アセットマネジメントでは、低コストなインデックスファンドや高配当などの特徴あるファンドを投入し、新NISA需要を取り込みます。また、暗号資産ファンドの開発も検討します。ファイナンシャル・サービスでは、金融機関と連携した投資教育やセミナーを強化し、「Wealth Advisor」ブランドの浸透を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
高度な専門性が求められるファンドマネージャー等の人材確保において、プロフェッショナルとしての職歴に加え、人間性を重視した採用を行っています。多様性の確保を最重要課題と位置づけ、女性や外国人の管理職登用を積極的に進めています。また、仕事と家庭の両立支援など職場環境の整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 53.5歳 | 7.8年 | 7,884,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.7% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.3% |
※男性育児休業取得率については、対象となる男性社員がいなかったため「-」としています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、業務執行取締役および執行役員のうち女性の割合(7.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 株式市況および市場金利の変動
アセットマネジメント事業の主な収益源である信託報酬は、運用資産残高に連動します。そのため、国内外の株式市況や金利、為替の変動により運用資産の評価額が下落した場合、収益が減少する可能性があります。同社は商品ラインナップの多様化やヘッジ取引等でリスク低減を図っていますが、市場環境の急変は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) ファンドの運用成績と資金流出
運用するファンドが期待通りの成績を達成できない場合、投資家からの解約増加や新規資金流入の停滞を招く恐れがあります。特に、地域金融機関などの大口顧客の動向は運用残高に大きな影響を与えます。運用成績の悪化は、ブランドイメージの低下や信託報酬の減少を通じて、同社の財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 「のれん」の減損リスク
同社はM&Aを積極的に行っており、2025年3月末時点で約16億円の「のれん」を計上しています。買収した事業の収益性が当初の計画を下回り、投資回収が見込めなくなった場合、減損損失を計上する必要があります。これにより、同社の財政状態および経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。



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