クリップコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クリップコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、学習塾「螢雪ゼミナール」等の教育事業やサッカー教室等のスポーツ事業を展開しています。2025年3月期は売上高が前期並みを維持したものの、営業利益は前期比96.1%減と大幅な減益となり、最終損益は赤字に転落しました。一方で自己資本比率は87.6%と高い水準を維持しています。


※本記事は、株式会社クリップコーポレーション の有価証券報告書(第44期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クリップコーポレーションってどんな会社?


学習塾の運営やサッカー教室の展開を主力とする企業です。地域密着型の教育・スポーツサービスを提供しています。

(1) 会社概要


1981年に設立され、コンピュータ学習機器の販売を開始しました。1982年に学習塾の運営本部を新設し、1994年にはサッカー教室の展開を開始しました。1996年には飲食事業へ進出し、2004年にジャスダック証券取引所(現・東証スタンダード)へ株式を上場しました。その後も子会社化等を通じ事業を拡大しています。

2025年3月31日時点の従業員数は連結186名、単体101名です。筆頭株主は同社に飲食店の営業権を譲渡した経緯を持つ平和堂で、第2位は駐車場運営等を行う日本駐車場開発です。

氏名 持株比率
平和堂 27.32%
日本駐車場開発 10.53%
十六銀行 3.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長は井上憲氏です。社外取締役比率は10.0%です。

氏名 役職 主な経歴
井上憲氏 代表取締役会長 1980年平和堂代表取締役。1982年同社入社、代表取締役。2022年6月より現職。
井上信氏 代表取締役社長 2006年平和堂取締役。2021年同社入社。2024年6月より現職。
岡田高志 代表取締役常務管理部マネージャー 1992年同社入社。2020年取締役管理部マネージャー。2024年6月より現職。
井上壽美子 取締役新規事業部マネージャー 1966年朝日ビル建物管理入社。1989年同社入社、取締役新規事業部マネージャー就任。
橋本学 取締役相談役 1983年同社入社。取締役社長室長、常勤監査役等を経て、2020年6月より現職。
三輪智明 取締役 1989年同社入社。経営企画室長、教育事業部リーダー等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、岸剛史(岸保産業株式会社代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「教育事業」、「スポーツ事業」、「飲食事業」、「生涯教育事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 教育事業


小・中学生および高校生を対象とした学習塾の運営を行っています。生徒および保護者が主な顧客となります。

収益は、生徒からの月謝や講習料等です。運営は主にクリップコーポレーション、子会社の螢雪ゼミナール、アクシス、セア教育研究所が行っています。

(2) スポーツ事業


幼児および小学生を対象としたサッカー教室の運営を行っています。地域の公園やグラウンド等を利用して活動しています。

収益は、会員である生徒からの会費等です。運営は主にクリップコーポレーションが行っています。

(3) 飲食事業


添加物・保存料を使用しない弁当の宅配事業を展開しています。健康志向の顧客に対して直接販売を行っています。

収益は、顧客への弁当販売代金です。運営は主にクリップコーポレーションが行っています。

(4) 生涯教育事業


就労継続支援事業、ボイストレーニング教室、韓国語教室等を行っています。多様な学習ニーズを持つ個人が対象です。

収益は、利用者からの利用料や授業料等です。運営は主に子会社の螢雪ゼミナール、日本体験センターが行っています。

(5) その他


バスケット教室事業、農業事業、不動産事業等を行っています。農業事業では「体験と学習」の場としての役割も担っています。

収益は、教室の会費、農産物の販売、不動産賃貸収入等です。運営はクリップコーポレーションおよびCLIP FIRST LINK LTD.PTE.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は30億円前後で推移しており、大きな変動はありません。一方、利益面では2022年3月期をピークに減少傾向にあり、2025年3月期には当期純損失を計上しています。利益率も低下傾向にあり、収益性の改善が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 32億円 32億円 29億円 30億円 30億円
経常利益 2.2億円 3.2億円 1.8億円 0.6億円 0.4億円
利益率(%) 6.8% 10.0% 6.3% 2.0% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.9億円 2.2億円 1.1億円 0.9億円 -0.8億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高はほぼ横ばいですが、売上原価の増加により売上総利益が減少しています。営業利益は前期の0.5億円から当期は0億円台へと大幅に縮小しました。コスト増が利益を圧迫している状況が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 30億円 30億円
売上総利益 8.6億円 8.1億円
売上総利益率(%) 28.5% 26.7%
営業利益 0.5億円 0.0億円
営業利益率(%) 1.5% 0.1%


販売費及び一般管理費のうち、その他が1.9億円(構成比24%)、給料及び手当が1.4億円(同17%)を占めています。売上原価については内訳の詳細記載がありません。

(3) セグメント収益


主力の教育事業は生徒数の減少により減収減益となりました。スポーツ事業は減収ながらも増益を確保しています。飲食事業、生涯教育事業、その他事業はいずれも営業損失(セグメント損失)を計上しており、教育事業とスポーツ事業で全体の利益を支える構図となっていますが、全社費用等を吸収しきれず全体の利益水準は低くなっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
教育事業 24億円 23億円 1.2億円 0.6億円 2.8%
スポーツ事業 3.1億円 2.9億円 0.1億円 0.2億円 5.4%
飲食事業 1.7億円 1.5億円 -0.5億円 -0.4億円 -
生涯教育事業 0.2億円 0.6億円 -0.1億円 -0.3億円 -
その他 1.7億円 2.0億円 -0.2億円 -0.1億円 -
調整額 - - - - -
連結(合計) 30億円 30億円 0.5億円 0.0億円 0.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、内部資金または借入により運転資金および設備投資資金を調達する方針です。

営業活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度に資金を得たのに対し、当連結会計年度は資金を使用しました。これは主に、棚卸資産の増加や法人税等の支払額があったことによるものです。投資活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度に比べて使用した資金が減少しました。これは主に、前年同期にあった事業譲受による支出が当連結会計年度はなかったことによるものです。財務活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度より使用した資金が減少しました。これは主に、配当金の支払額があったことによるものです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2.0億円 -0.9億円
投資CF -1.9億円 -0.5億円
財務CF -2.5億円 -1.3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、収益性、社会性、教育性を使命として掲げています。企業規模の拡大に伴い社会的責任が増大すると考え、社会的信用と知名度の向上、優秀な人材確保、財務体質の強化を通じて発展することを目指しています。また、「自ら考え、自ら決断し、自ら行動する人づくりに貢献しよう」というビジョンを持っています。

(2) 企業文化


収支第一主義を掲げ、収支バランスやキャッシュフローの考え方を徹底しています。また、成果に見合った給与体系や教室単位での生産性レベルの向上を重視し、固定費の削減や効率的な運営を推進する文化があります。「体験と学習」を中心に置き、農業体験等を通じた実践的な学びも重視しています。

(3) 経営計画・目標


株主還元と将来の投資のため、自己資本利益率(ROE)10%以上の達成を目標としています。また、各事業部門において、売上回復や利益確保、規模拡大を目指した具体的な取り組みを進めています。

* 自己資本利益率(ROE):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


新市場の開拓、固定費の削減、収支第一主義を基本戦略としています。教育事業では農業体験等の拡充による差別化と新規出店、スポーツ事業では新規スクール出店と生徒募集の徹底を図ります。また、新規事業進出やM&Aも成長の一つの手段として積極的に検討し、グループ全体の活性化を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


サービス提供の主体である人材を育成し、社員一人ひとりの自己実現を支援することを方針としています。経営理念を共有できる有能な人材を新卒・中途問わず採用し、年齢・性別・国籍に関係なく活躍できる職場環境の構築を目指しています。また、成果に見合った給与体系の導入も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.6歳 8.7年 3,654,201円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役員のうち女性の比率(10.0%)、従業員のうち女性の比率(17.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 長期的な変動要因


主要事業である教育事業とスポーツ事業はともに子供を対象としているため、長期的には少子化の影響を受ける可能性があります。市場の縮小が続くなか、事業の継続的な成長に影響を及ぼす恐れがあります。

(2) 他社競合等、短期的な変動要因


同業他社の進出や地域の雇用状況悪化により生徒数が減少した場合、業績に影響が出る可能性があります。また、学習指導要領の変更に伴う教材の修正費用が発生し、利益を圧迫するリスクもあります。

(3) 出店・退店政策


不採算教室の閉鎖や、条件に合う物件が見つからず出店計画が変更になることで、業績見通しに影響が出る可能性があります。また、賃貸人の事情による退店や倒産に伴い、入居保証金等が回収できなくなるリスクも認識しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。