クリップコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クリップコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クリップコーポレーションは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、学習塾の運営やサッカー教室を中心とした教育・スポーツ事業を展開しています。直近の業績では、少子化や生徒数減少の影響を受け減収となり、営業赤字・最終赤字を計上していますが、新規教室の開設などによる収益回復を目指しています。


※本記事は、株式会社クリップコーポレーションの有価証券報告書(第45期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クリップコーポレーションってどんな会社?


教育事業とスポーツ事業を中心に、学習塾やサッカー教室を展開する企業です。

(1) 会社概要


1981年にコンピュータ学習専用機器の販売を開始し、1982年に学習塾の運営をスタートしました。その後、1994年にサッカー教室を展開するスポーツ事業、1996年に飲食事業(現在の弁当宅配)へ進出しました。2004年にジャスダックに上場し、現在は螢雪ゼミナールなどを連結子会社化し事業を拡大しています。

従業員数は連結で200名、単体で113名です。筆頭株主は創業者関連会社の平和堂で、第2位は駐車場事業等を展開する事業会社の日本駐車場開発、第3位は十六銀行となっています。

氏名 持株比率
平和堂 27.32%
日本駐車場開発 12.39%
十六銀行 3.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は井上信氏が務めています。社外取締役比率は10.0%です。

氏名 役職 主な経歴
井上憲 代表取締役会長 大倉建設等を経て1980年平和堂設立、代表取締役就任。1982年同社入社、代表取締役就任。日本体験センターや螢雪ゼミナールの代表取締役を経て、2022年6月より現職。
井上信 代表取締役社長 2006年5月平和堂取締役に就任。2021年10月同社に入社し、社長室長に就任。2022年6月代表取締役に就任し、2024年6月より現職。
岡田高志 代表取締役常務 1992年8月同社に入社し、管理部経理係リーダーやマネージャー代行を歴任。2020年6月取締役管理部マネージャーに就任し、2024年6月より現職。
井上壽美子 取締役新規事業部マネージャー 朝日ビル建物管理を経て、1989年5月同社に入社し、取締役新規事業部マネージャーに就任。以来、長年にわたり現職。
橋本学 取締役相談役 日昭産業やハルモ代表取締役を経て、1983年5月同社入社。取締役社長室長や常勤監査役などを歴任し、2020年6月より現職。
三輪智明 取締役 1989年4月同社入社。運営本部リーダーや経営企画室長、取締役を歴任。2024年1月教育事業部リーダーとなり、同年6月より現職。


社外取締役は、岸剛史(岸保産業代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「教育事業」「スポーツ事業」「飲食事業」「生涯教育事業」および「その他」事業を展開しています。

教育事業


小・中学生および高校生を対象とした学習塾の運営を行っています。農業体験等の体験型学習も取り入れ、各家庭への個別訪問による提案活動などを通じて他塾との差別化を図り、より質の高い教育サービスの提供に努めています。

収益は、生徒からの月謝売上および講習売上、ならびに教材費などのその他売上が主な柱です。運営は同社および連結子会社の螢雪ゼミナール、アクシス、セア教育研究所が行っています。

スポーツ事業


幼児や小学生を対象としたサッカー教室の運営を行っています。地域の公園やグラウンドを利用してスクールを展開し、新規スクールの出店と積極的な生徒募集活動を通じて事業の拡大を図っています。

収益は、生徒から受け取る月謝や入会時のユニフォーム代などが主な構成要素となります。この事業の運営は同社が単独で行っています。

飲食事業


添加物や保存料を使用しない弁当の宅配事業を行っています。顧客の健康に配慮したサービスを提供していますが、長期にわたる不採算部門と認識しており、今後のあり方を慎重に検討しています。

収益は、顧客に弁当を直接販売することによる売上で構成されています。運営は同社が行っています。

生涯教育事業


就労継続支援事業やボイストレーニング教室、韓国語教室などを展開しています。営業力とサービス力の強化を通じて、事業規模の拡大と安定的な利益確保を目指しています。

収益は、各教室や施設を利用する顧客からの受講料やサービス利用料から得ています。運営は螢雪ゼミナール、日本体験センター、1.Varsが行っています。

その他


現金商売や会員ビジネスを基本方針とし、バスケット教室事業、農業事業、不動産事業などを展開しています。グループ全体の活性化と人材活用を目的として、複数の新規事業に取り組んでいます。

収益は、会員からの利用料や不動産の賃貸収入などから構成されています。運営は同社およびCLIP FIRST LINK PTE.LTD.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は32億円規模から29億円へと減少傾向にあります。少子化による生徒数の減少などが影響し、経常利益も減少傾向が続いており、当期は経常損失を計上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 32億円 29億円 30億円 30億円 29億円
経常利益 3億円 2億円 1億円 0.4億円 -0.1億円
利益率(%) 10.0% 6.3% 2.0% 1.4% -0.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 1億円 2億円 1億円 1億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しており、売上原価の減少幅がそれに追いつかず、売上総利益率が低下しています。販売費および一般管理費の削減に努めていますが、営業損失を計上する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 30億円 29億円
売上総利益 8億円 7億円
売上総利益率(%) 26.7% 25.3%
営業利益 0.0億円 -0.4億円
営業利益率(%) 0.1% -1.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が0.9億円(構成比12%)、役員報酬が0.8億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


教育事業は生徒数の減少により減収となっています。スポーツ事業や飲食事業も同様に売上が減少していますが、生涯教育事業は規模拡大により大きく増収を果たしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
教育事業 23億円 23億円
スポーツ事業 3億円 2億円
飲食事業 2億円 1億円
生涯教育事業 0.6億円 1億円
その他 2億円 1億円
連結(合計) 30億円 29億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、本業が低迷し、事業の見直しが迫られる「事業検討型」の状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -0.9億円 -0.0億円
投資CF -0.5億円 0.0億円
財務CF -1.3億円 -1.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-1.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「自ら考え、自ら決断し、自ら行動する人づくりに貢献しよう」という創業当初からのビジョンを掲げています。また、同社グループの使命として「収益性、社会性、教育性」を挙げ、企業規模の拡大と発展を通じて社会的責任を果たし、株主や投資家に報いることを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


「企業は、そこに参加する社員一人ひとりの自己実現の場である」という考え方を基本としています。年齢、性別、国籍に関係なく、すべての従業員がそれぞれの個性と能力を最大限に発揮し、やりがいを持って働きながら成長し続ける職場環境の構築を重視する企業文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


株主に対する利益還元と将来の設備投資に資する内部留保の確保、そして資産の効率運用を行うため、自己資本利益率(ROE)10%以上の達成を目標として掲げ、経営に取り組んでいます。

- 自己資本利益率(ROE):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長と収益確保に向け、新市場の開拓(新規拠点開設やM&A検討)、固定費の削減(教室閉鎖の基準明確化や給与体系見直し)、収支第一主義の徹底の3点を基本戦略としています。教育事業では農業体験等の拡充や個別訪問による差別化を図り、不採算部門の整理と新規事業への積極的な投資を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「サービス提供の主体である人材を育成し、社員一人ひとりの自己実現を支援する」という人材育成方針を掲げています。経営理念を共有できる有能な人材を確保するため新卒・中途採用を積極的に行い、多様性のある組織集団を目指すとともに、従業員の役割や成果に応じた公正な評価と処遇を実現するための人事評価制度の再構築を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.0歳 7.7年 3,782,176円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員のうち女性の比率(20.4%)、役員のうち女性の比率(10.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化による長期的な市場縮小リスク


同社の主要事業である学習塾やスポーツクラブは子どもを対象とした事業であるため、長期的には少子化の影響により対象市場が縮小し、生徒数の確保が困難になることで業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 他社との競合や制度変更による短期的な変動リスク


営業地域における同業他社の進出や、雇用状況の悪化に伴う生徒数の減少が生じた場合、収益が低下する可能性があります。また、学習指導要領の変更によって教材や指導内容の修正に伴う追加費用が発生し、利益を圧迫するリスクがあります。

(3) 出店・退店政策に関するリスク


採算性を重視し利益が見込めない教室は閉鎖する方針ですが、出店条件に合致する物件がない場合は出店計画が遅れる可能性があります。また、賃貸人の事由による予期せぬ退店や、賃貸人の倒産による入居保証金が回収不能となるリスクがあります。

(4) スポーツ教室における施設利用のトラブル


サッカー教室を地域の公園やグラウンドで開催しているため、他の公園利用者や近隣住民との間でトラブルが生じる可能性があります。解決に長期間を要する場合、教室の一時休止や移転・閉鎖を余儀なくされ、生徒数減少につながるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。