エフアンドエム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エフアンドエム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エフアンドエムは東証スタンダード市場に上場し、個人事業主向けの記帳代行や中堅・中小企業向けの管理部門支援、人事労務クラウド「オフィスステーション」などを展開しています。直近の業績では売上高、各利益ともに大きく増加して増収増益の堅調なトレンドを示し、企業のバックオフィス効率化支援で成長を続けています。


※本記事は、株式会社エフアンドエムの有価証券報告書(第36期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エフアンドエムってどんな会社?


同社は事業者のバックオフィス業務の効率化を支援するサービスを中心に展開する企業です。

(1) 会社概要


1990年に大阪府で設立され、1992年に記帳代行事業を開始しました。1995年には総務コンサルティング事業をスタートさせ、2000年に株式を上場しました。2016年に人事労務クラウドソフト「オフィスステーション」事業を開始し、2022年に東証スタンダード市場へ移行しています。

従業員数は連結で990名、単体で860名です。筆頭株主は事業会社であるモリナカホールディングスで、第2位は投資ファンド、第3位にはエフアンドエム従業員持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
モリナカホールディングス 43.60%
UHPartners2投資事業有限責任組合 7.50%
エフアンドエム従業員持株会 4.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。
代表取締役社長は森中一郎氏です。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
森中一郎 代表取締役社長 1990年同社設立、代表取締役社長に就任。エフアンドエムネット取締役等を経て現職。
奥村美樹江 常務取締役コーポレート・ガバナンス担当 1990年同社入社。内部監査室室長、常勤監査役、管理本部管掌などを経て現職。
田辺利夫 取締役 1992年同社入社。アウトソーシング事業本部長、常勤監査役などを歴任し現職。
原田博実 取締役 2001年同社入社。管理本部長、マーケティング統括本部長などを経て現職。
小橋英治 取締役 1996年同社入社。事業開発本部本部長、経営サポート事業本部本部長などを経て現職。
上枝康弘 取締役 1998年同社入社。アウトソーシング事業本部長、エフアンドエムネット代表取締役社長などを経て現職。
本橋信次 取締役(監査等委員) 2000年エフアンドエムネット入社。同社代表取締役社長などを経て現職。


社外取締役は、大野長八(大野アソシエーツ代表)、宗吉勝正(宗吉勝正税理士事務所所長)、山本浩二(大阪学院大学経営学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アカウンティングサービス事業」「コンサルティング事業」「ビジネスソリューション事業」「不動産賃貸事業」「システム開発事業」および「その他」事業を展開しています。

アカウンティングサービス事業


個人事業主および小規模企業を対象に、記帳代行を中心とした会計サービスを提供しています。生命保険営業職員向けの確定申告サポートなどを通じ、アプリを活用した手続きのオンライン化も推進しています。

収益源は会員顧客からの月額固定のサービス利用料や、税理士事務所からの業務受託料です。運営は同社が行っています。

コンサルティング事業


中堅・中小企業向けに管理部門支援サービス「エフアンドエムクラブ」や、ISO・プライバシーマークの認証取得支援、各種補助金の受給申請支援、資金繰り改善計画の策定支援、講師派遣型研修などを提供しています。

収益源は会員企業からの月額固定のサービス利用料や、補助金申請支援の成功報酬などです。運営は同社が行っています。

ビジネスソリューション事業


士業向けのコンサルティングサービスと、企業・士業向けのITソリューションを提供しています。主に人事労務クラウドソフト「オフィスステーション」シリーズの開発と販売が主力となっています。

収益源は「経営革新等支援機関推進協議会」等の士業向け月額利用料や、「オフィスステーション」のライセンス料です。運営は同社が行っています。

不動産賃貸事業


同社が所有するオフィスビルの賃貸を行っており、安定した収益を確保するための事業基盤として機能しています。

収益源は入居テナントからの不動産賃貸収益です。運営は同社が行っています。

システム開発事業


「オフィスステーション」シリーズを中心とした、同社が販売する商品などのグループ内向けシステムの開発を行っています。

収益源は主にグループ企業からのシステム開発料です。運営は子会社のエフアンドエムネットが行っています。

その他


パソコン教室の本部運営およびフランチャイズ指導事業などを展開しています。

収益源は受講生からの料金や加盟店舗からの指導料などです。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は一貫して増加を続けており、事業規模が順調に拡大しています。経常利益も一時的な踊り場はあったものの全体として増加傾向にあり、利益率も10%台後半の高い水準を維持して高収益な事業構造を実現しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 109億円 127億円 149億円 171億円 208億円
経常利益 23億円 26億円 21億円 27億円 39億円
利益率(%) 20.8% 20.6% 14.4% 16.1% 18.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 19億円 16億円 18億円 28億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い売上総利益も順調に増加しており、高い総利益率を確保しています。営業利益も前年から大きく伸長し、営業利益率も向上していることから、成長と収益性の両立が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 171億円 208億円
売上総利益 116億円 141億円
売上総利益率(%) 67.9% 67.6%
営業利益 27億円 39億円
営業利益率(%) 15.9% 18.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が28億円(構成比27%)、支払手数料が12億円(同12%)、賞与が11億円(同11%)を占めています。売上原価の主な内訳としても、事業拡大に伴う外注費や業務委託料などが含まれています。

(3) セグメント収益


主力となる3事業が揃って増収を果たしています。特にコンサルティング事業とビジネスソリューション事業が売上の拡大を強く牽引しており、システム開発事業を含めた各事業がグループ全体の成長に大きく貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
アカウンティングサービス事業 49億円 55億円
コンサルティング事業 66億円 82億円
ビジネスソリューション事業 51億円 65億円
不動産賃貸事業 1.1億円 1.1億円
システム開発事業 2.9億円 4.2億円
その他 0.6億円 0.6億円
連結(合計) 171億円 208億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も74.7%でいずれも市場平均を上回っています。本業の営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 37億円 52億円
投資CF -29億円 -37億円
財務CF -2億円 -6億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、事業者のバックオフィス業務の効率化と改善を使命とし、持続可能な成長を支援することを掲げています。日本の事業者の99%を占める個人事業主や中堅・中小企業に注力し、情報不足による不利益を解消するための取り組みを積極的に進めることで、わが国経済の活性化に寄与することを目指しています。

(2) 企業文化


企業哲学である「サービスの水道哲学」を基本理念としています。これは顧客の多様なニーズを的確に捉え、リーズナブルな価格で報酬以上の価値を提供することを意味します。この哲学に基づき、全社員が愛される人物となることを目指し、「関わる全ての人と企業を物心両面で豊かにする」という目標を重視しています。

(3) 経営計画・目標


収益力の向上を最優先課題と認識し、売上高営業利益率や売上高原価率の変動要因の分析を重視しています。また、全社的にストック型ビジネスモデルを基盤として事業を展開しているため、契約継続率を重要な指標として捉え、持続的な成長を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


金融機関や専門家との連携によるチャネルの深耕を図るとともに、AIの積極活用による業務効率化と利益率向上に取り組んでいます。また、「オフィスステーション」シリーズ等の高付加価値なサービスの開発を継続し、全社的なサービス体制の追求とカスタマーサクセスの強化により顧客満足度の向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「他社で3年で学ぶことを1年でマスターする」という教育方針のもと、社員が圧倒的なスピードで成長できる環境を整えています。若手にも大きな裁量を与えて当事者意識を育むとともに、育児との両立支援や有給休暇の取得促進、成果を正当に評価する仕組みの構築など、長期的に活躍できる職場づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.3歳 7.3年 7,993,678円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.4%
男性育児休業取得率 73.1%
男女賃金差異(全労働者) 62.1%
男女賃金差異(正規雇用) 62.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 39.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年間有給休暇取得割合(81.7%)、総合職の男女賃金差異(88.5%)、アソシエイト職の男女賃金差異(90.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要事業の対象マーケットの変化


生命保険会社営業職員の増減や中小企業の経営環境変化など、主要な顧客層を取り巻くマクロ環境が業績に影響する可能性があります。行政の支援規模の縮小やIT投資の動向もサービスの需要に影響を及ぼすリスクとなります。

(2) 海外への業務委託に関するリスク


記帳処理などのデータ入力作業の一部を中国・深圳の企業に委託しています。予期せぬ法規制の変更やテロ、戦争などの社会的混乱が生じた場合、サービスの円滑な提供が困難になり業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 個人情報の管理とセキュリティリスク


事業の特性上、顧客の個人情報や機密情報をサーバー等で管理しています。セキュリティ対策を講じていますが、不正アクセスなどにより情報の流出が生じた場合、損害賠償や社会的信用の失墜につながるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。