#記事タイトル:エフアンドエム転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社エフアンドエム の有価証券報告書(第35期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エフアンドエムってどんな会社?
個人事業主や中小企業を対象に、経理代行や公的支援制度の活用、人事労務クラウドの提供を行う企業です。
■(1) 会社概要
同社は1990年にフラワーメッセージとして設立され、1992年に現在の主力事業の一つである記帳代行事業を開始しました。1995年には総務コンサルティング事業を開始し、中小企業支援の基盤を固めています。2000年には大証ナスダック・ジャパン(現東証スタンダード)へ株式を上場しました。その後も事業を拡大し、2024年には会計ソフト大手の弥生と資本業務提携契約を締結するなど、バックオフィス支援領域での地位を確立しています。
現在の従業員数は連結931名、単体812名です。大株主構成については、筆頭株主は創業者の資産管理会社であるモリナカホールディングス、第2位は投資事業有限責任組合、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| モリナカホールディングス | 43.60% |
| UH Partners 2 | 6.04% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.25% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名、計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は森中一郎氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森中 一郎 | 代表取締役社長 | 1990年同社設立とともに代表取締役社長に就任。2024年よりモリナカホールディングス代表取締役を兼務。創業以来トップとして経営を牽引。 |
| 小林 裕明 | 専務取締役 | 1991年入社。エフアンドエムクラブ事業本部長、アウトソーシング事業本部長などを歴任し、2011年より現職。営業統括を管掌。 |
| 奥村 美樹江 | 常務取締役 | 1990年入社。取締役、常勤監査役を経て2023年常務取締役就任。2025年よりコーポレート・ガバナンス担当。 |
| 田辺 利夫 | 取締役 | 1992年入社。アウトソーシング事業本部長、管理本部長、常勤監査役などを歴任。2016年よりアカウンティングサービス事業を担当。 |
| 原田 博実 | 取締役 | 2001年入社。管理本部長、マーケティング統括本部長などを歴任。2025年よりビジネススクール事業部事業部長。 |
| 小橋 英治 | 取締役 | 1996年入社。エフアンドエムクラブ事業部長、事業開発本部本部長などを経て、2018年より経営サポート事業本部本部長。 |
| 上枝 康弘 | 取締役 | 1998年入社。SR STATION事業部本部長、エフアンドエムネット社長などを歴任。2024年より現職。 |
| 本橋 信次 | 取締役(監査等委員) | 2000年エフアンドエムネット入社、同社社長・会長を経て、2023年より同社取締役(監査等委員)。 |
社外取締役は、大野長八(大野アソシエーツ代表)、宗吉勝正(元高松国税局長)、山本浩二(大阪学院大学経営学部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アカウンティングサービス事業」「コンサルティング事業」「ビジネスソリューション事業」「不動産賃貸事業」「システム開発事業」および「その他」事業を展開しています。
■アカウンティングサービス事業
生命保険営業職員などの個人事業主および小規模企業を対象に、経理代行を中心とした会計サービスを提供しています。確定申告に関する知識不足や事務負担の解消を支援しています。
収益は、会員顧客から受け取る月額固定のサービス利用料が主となります。また、税理士事務所からの業務受託による収益もあります。運営は主にエフアンドエムが行っています。
■コンサルティング事業
中堅・中小企業の総務経理部門に対し、情報提供サービス「エフアンドエムクラブ」の運営、ISO・プライバシーマーク認証取得支援、補助金申請支援などを行っています。
収益は、会員企業からの月会費や、補助金申請支援における成功報酬などからなります。また、商品仕入販売による収益も含まれます。運営は主にエフアンドエムが行っています。
■ビジネスソリューション事業
士業(税理士・公認会計士・社会保険労務士)および一般企業向けに、コンサルティングやITソリューションを提供しています。主なサービスには「経営革新等支援機関推進協議会」の運営や、人事労務クラウドソフト「オフィスステーション」シリーズの販売があります。
収益は、協議会の月会費や、「オフィスステーション」のライセンス利用料(サブスクリプション型および一時点での販売)からなります。運営は主にエフアンドエムが行っています。
■不動産賃貸事業
同社が所有するオフィスビルの賃貸を行っています。大阪本社ビルなどの一部を外部テナントへ賃貸しています。
収益は、テナントから受け取る賃貸料収入です。運営はエフアンドエムが行っています。
■システム開発事業
グループ向けのシステム開発を中心に事業を展開しています。主力の「オフィスステーション」シリーズの開発などを担っています。
収益は、システム開発案件の対価として受け取ります。運営は連結子会社のエフアンドエムネットが行っています。
■その他
パソコン教室の本部運営およびフランチャイズ(FC)指導事業などを行っています。シニア層などを対象としたパソコン教室を展開しています。
収益は、加盟教室からのロイヤリティや直営教室の授業料などからなります。運営はエフアンドエムが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は拡大基調にあります。売上高は82億円から171億円へと倍増しており、特に直近の2025年3月期は前期比で大幅な増収となりました。経常利益も増加傾向にあり、20億円台後半で推移しています。当期純利益も安定して黒字を計上しており、15億円以上の水準を維持しています。利益率も15%前後と高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 82億円 | 109億円 | 127億円 | 149億円 | 171億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 23億円 | 26億円 | 21億円 | 27億円 |
| 利益率(%) | 15.2% | 20.8% | 20.6% | 14.4% | 16.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 17億円 | 20億円 | 17億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は60%台後半で安定的に推移しており、高付加価値なサービスモデルであることがうかがえます。営業利益については、販売費及び一般管理費の増加を吸収し、2025年3月期には27億円と前期を上回る結果となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 149億円 | 171億円 |
| 売上総利益 | 98億円 | 116億円 |
| 売上総利益率(%) | 65.9% | 67.9% |
| 営業利益 | 21億円 | 27億円 |
| 営業利益率(%) | 14.3% | 15.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が26億円(構成比30%)、支払手数料が10億円(同11%)を占めています。売上原価においては、人件費やシステム関連費用が含まれています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収となりました。特にビジネスソリューション事業は売上・利益ともに2割以上の伸びを示し、成長を牽引しています。アカウンティングサービス事業とコンサルティング事業も会員数の増加により増収増益を達成しました。システム開発事業はグループ内開発が中心のため外部売上は小さいものの、内部売上を含めた稼働は高まっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| アカウンティングサービス事業 | 44億円 | 49億円 | 13億円 | 16億円 | 32.7% |
| コンサルティング事業 | 59億円 | 66億円 | 13億円 | 17億円 | 25.1% |
| ビジネスソリューション事業 | 41億円 | 51億円 | 5億円 | 7億円 | 13.2% |
| 不動産賃貸事業 | 1.1億円 | 1.1億円 | 0.3億円 | 0.3億円 | 26.9% |
| システム開発事業 | 2.4億円 | 2.9億円 | 0.8億円 | 0.4億円 | 13.8% |
| その他 | 0.6億円 | 0.6億円 | 0.05億円 | 0.05億円 | 8.1% |
| 調整額 | - | - | -11億円 | -13億円 | - |
| 連結(合計) | 149億円 | 171億円 | 21億円 | 27億円 | 15.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
エフアンドエムは、会員制ビジネスを主軸に、アカウンティングサービス事業やコンサルティング事業などを展開しています。
同社の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上、流動負債の増加などにより増加しました。投資活動では、有形固定資産や無形固定資産、投資有価証券の取得による支出が主な要因で、資金を使用しました。財務活動では、配当金の支払いがあったものの、自己株式の処分による収入により、使用額は前年同期比で減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 33億円 | 37億円 |
| 投資CF | -24億円 | -29億円 |
| 財務CF | -5億円 | -2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「サービスの水道哲学」を企業哲学として掲げています。これは、顧客の多様なニーズを的確に捉え、リーズナブルな価格で報酬以上の価値を提供することを基本理念とするものです。事業者のバックオフィス業務の効率化と改善を使命とし、特に情報不足による不利益を受けやすい個人事業主や中堅・中小企業に注力して支援を行っています。
■(2) 企業文化
「関わる全ての人と企業を物心両面で豊かにする」という目標を掲げ、全社員が愛される人物となることを目指しています。また、教育方針として「他社で3年で学ぶことを1年でマスターする」を掲げており、社員一人ひとりの早期成長を促す文化があります。社員が能力開発を続けることがサービス品質と経営成績の向上につながると考え、人材育成を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は収益力の向上を最優先課題とし、ストック型ビジネスモデルを基盤とした持続的な成長を目指しています。客観的な指標として売上高営業利益率や売上高原価率の変動要因分析を重視するとともに、契約継続率を重要な指標としています。具体的な数値目標の記載はありませんが、営業機会の増強とトップラインの引き上げを図る方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、既存チャネル(地域金融機関、税理士等)の深耕と新規チャネルの開拓を進めています。また、AIやITツールの活用による業務効率化とローコストオペレーションを推進し、属人的スキルに依存しないサービス体制を構築します。特にビジネスソリューション事業では、「オフィスステーション」シリーズの認知度向上、機能開発、カスタマーサクセス強化によるLTV(顧客生涯価値)向上に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「他社で3年で学ぶことを1年でマスターする」という方針のもと、圧倒的な成長環境を提供しています。新卒採用では書類選考を行わず、面接での対話を重視して人物本位で採用を行っています。育成面では、内定者研修から始まり、年次別・階層別研修やメンター制度などを整備し、社員の早期戦力化と人間性の涵養を支援しています。また、成果を正当に評価する仕組みや働きやすい環境づくりにも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.7歳 | 6.8年 | 7,718,500円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.3% |
| 男性育児休業取得率 | 61.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 62.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 37.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(71.7%)、総合職の男女賃金差異(87.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要事業の対象マーケットについて
アカウンティングサービス事業の主要顧客である生命保険営業職員数は増減を繰り返しており、将来的な減少が懸念されています。また、コンサルティング事業の顧客である中小企業は厳しい経営環境にあり、国の支援策の縮小などが業績に影響を与える可能性があります。ビジネスソリューション事業では市場拡大が追い風ですが、競争環境の変化等への対応が必要です。
■(2) 海外での業務委託について
同社グループでは、データ入力作業の一部を中国・シンセンの企業に委託しています。そのため、現地の法律変更、社会的混乱、テロ、戦争等のカントリーリスクが内在しており、これらの事象が発生した場合、サービスの円滑な提供が困難になり、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 個人情報の管理について
サービス提供において多数の個人情報や機密情報を取り扱っているため、外部からの不正アクセスや内部要因による情報漏洩のリスクがあります。万が一情報流出が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜により、経営成績や財政状態に重大な影響を与える可能性があります。



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