※本記事は、株式会社ベクターホールディングスの有価証券報告書(第38期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ベクターホールディングスってどんな会社?
ICT事業と新たに開始したAIインフラ関連事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1989年に設立され、1995年にPC用ソフトウェアのダウンロードサイトを開設しました。2000年に株式上場を果たし、2023年にベクターホールディングスへ商号変更しています。2025年には再生可能エネルギー事業等から撤退し、新たにAIインフラ事業への投資を開始するなど、事業の選択と集中を進めています。
現在の従業員数は連結で23名、単体で23名です。筆頭株主はQUETTA合同会社で、第2位はT's International、第3位は創業や事業に関わる個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| QUETTA合同会社 | 20.73% |
| T's International | 13.68% |
| 中村 哲也 | 8.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は岩井美和子氏が務め、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩井 美和子 | 代表取締役社長 | 燦キャピタルマネージメント総務部長を経て、2023年同社に入社し法務・IR部長に就任。管理本部長、代表取締役副社長を経て2026年1月より現職。 |
| 菅原 聡子 | 取締役 | 古久根建設、君津化学工業を経て2002年同社に入社。事業推進室グループ長、事業サポート部部長、企画・販売部副部長を歴任し、2025年6月より現職。 |
| 前田 晶子 | 取締役 | 1992年日本航空に入社し、その後通訳業に従事。ジョーコーポレーション取締役、プロビデンス取締役を務め、2026年6月より現職。 |
社外取締役は、竹村滋幸(元ANAホールディングス専務取締役執行役員)、菅原貴与志(元ANAホールディングス上席執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ICT事業」「AI関連事業」および「その他の事業」を展開しています。
■ICT事業
パソコン用ソフトウェアのダウンロード販売やサイト広告の販売、電子契約サービス「ベクターサイン」の提供を行っており、一般消費者や企業を主な顧客としています。
収益源は、販売代金や広告料、サービス利用料です。この事業の運営は同社が行っています。
■AI関連事業
2025年度から新規参入した事業であり、高性能サーバーを用いた演算リソースのレンタルやAI関連サービスの提供を行っています。
収益源は、CUE Group等からの演算リソースのレンタルに伴う利用料です。運営は同社および子会社のVector Fund1が行っています。
■その他の事業
子会社等を通じて再生可能エネルギー事業やその他の新規事業を行っていましたが、2025年6月に子会社の全株式を譲渡し、当該事業から撤退しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間は売上高が1.6億円前後で横ばいに推移していますが、経常利益および当期利益は継続して赤字を計上しています。既存事業の立て直しと新規事業への投資が交錯する中、利益面での苦戦が続いていますが、赤字幅は改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1.6億円 | 1.6億円 | 1.6億円 |
| 経常利益 | -8.2億円 | -5.7億円 | -6.6億円 |
| 利益率(%) | -513.8% | -349.3% | -422.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -8.8億円 | -7.9億円 | -5.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期と同水準を維持し、売上総利益は改善して売上総利益率が上昇しています。しかし、事業展開に伴う販売費及び一般管理費が利益を上回る状態が続いており、営業赤字となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1.6億円 | 1.6億円 |
| 売上総利益 | 1.3億円 | 1.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 79.2% | 99.9% |
| 営業利益 | -5.7億円 | -5.9億円 |
| 営業利益率(%) | -354.1% | -379.0% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が2.8億円(構成比38%)、給料手当及び賞与が1.7億円(同23%)、役員報酬が1.2億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ICT事業は電子契約サービスの登録社数増加などにより増収となりました。当期から新設されたAI関連事業は、高性能サーバーの演算リソースレンタルにより新たに売上を計上しています。一方、その他の事業は子会社の売却により大幅な減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ICT事業 | 1.0億円 | 1.1億円 |
| AI関連事業 | - | 0.5億円 |
| その他の事業 | 0.6億円 | 0.0億円 |
| 連結(合計) | 1.6億円 | 1.6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字ですが、新株発行や新株予約権の行使など財務活動によって資金を調達し、将来の成長に向けたAIインフラ等への投資を積極的に継続している状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.9億円 | -6.2億円 |
| 投資CF | 1.6億円 | -3.4億円 |
| 財務CF | 0.9億円 | 13.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-86.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ICT社会の基盤を支える総合AIインフラ企業」を経営ビジョンとして掲げています。高性能サーバーの導入やブランドの再定義を通じて、当社の社会的役割を果たすとともに新たなサービスを創出し、事業基盤の強化と収益機会の拡大を目指しています。
■(2) 企業文化
同社の力の源泉は人材であるという認識のもと、従業員一人ひとりの自律的なキャリア構築を支援しています。組織に不足するスキルの獲得を促すとともに、新しいことへ挑戦する姿勢そのものを称える企業文化の醸成を重視しています。
■(3) 成長戦略と重点施策
不採算事業の整理を進める一方で、新たな収益の柱としてAI関連サービスに注力し、高性能サーバーの演算リソースをレンタルする事業を展開しています。また、既存のICT事業においては、電子契約サービス「ベクターサイン」の登録者数獲得や、ソフトウェアのダウンロード販売等のインターネットビジネスを相互連携させることで収益の増加を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員の自律的なキャリア構築を支援し、挑戦する姿勢を称える企業文化の醸成や、年齢や性別に関係なく多様な人材が活躍できる環境と仕組みの整備を進め、意欲をもって活躍する活力ある組織の構築を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.6歳 | 9.1年 | 6,271,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 69.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※「男性育児休業取得率」および「男女賃金差異(パート・有期労働者)」は、該当者がいない等の理由により記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネット通信回線及びサーバー機器等のトラブル
ICT事業は全てインターネット上で展開しているため、自然災害等による大規模な通信回線の遮断やシステムトラブルが発生した場合、顧客へのサービス提供ができなくなり、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) データベースと個人情報の保護
ファイアウォール等のセキュリティ対策やJISQ15001に適合した個人情報保護体制を構築していますが、不測の事態によるデータやクレジットカード情報の漏洩などがあった場合、信用低下や損害賠償の発生により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 継続企業の前提に関する重要事象等
営業損失および営業キャッシュ・フローのマイナスが継続しており、継続企業の前提に重要な疑義が生じる状況が存在しています。AI関連事業への参入による演算リソースレンタル等の新たな収益の柱の育成と、既存事業の相互連携により改善を図っています。



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