※本記事は、セントラルスポーツ株式会社 の有価証券報告書(第55期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. セントラルスポーツってどんな会社?
1969年の創業以来、日本におけるフィットネスクラブのパイオニアとして、全国でスポーツクラブ事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1969年に創業し、翌1970年に設立されました。1983年には日本で初めて「フィットネスクラブ」の名称を使用した施設を開設するなど業界を牽引してきました。2000年に店頭登録を行い、2004年には東証一部(現プライム市場)へ上場を果たしました。現在は全国に直営・受託合わせ250店舗のネットワークを構築しています。
同社グループの従業員数は連結で934名、単体で837名です。筆頭株主は創業家が代表を務めるセントラルトラスト株式会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業者である後藤忠治氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| セントラルトラスト | 30.71% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.72% |
| 後藤 忠治 | 5.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長 執行役員は後藤聖治氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 後藤 忠治 | 取締役会長(代表取締役) | 1964年大丸入社。1969年セントラルスポーツクラブ創業。1977年同社代表取締役社長、2014年より現職。 |
| 後藤 聖治 | 取締役社長執行役員(代表取締役) | 1995年三菱商事入社。1998年同社入社。常務、専務、副社長を経て2014年より現職。 |
| 松田 友治 | 取締役常務執行役員 | 1983年同社入社。人事部長、経営企画室長、執行役員、常務取締役を経て2022年より現職。 |
| 鶴田 一彦 | 取締役 執行役員 | 2003年同社入社。マーケティング部長、新規事業開発部長等を歴任。2024年より新規開発部担当として現職。 |
| 河本 勝 | 取締役(監査等委員) | 1980年同社入社。総務部長、経営企画室長、執行役員人事部長等を歴任。2019年より現職。 |
社外取締役は、岩﨑厚宏(税理士、岩崎経営研究所代表)、原田睦巳(順天堂大学大学院教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「スポーツクラブ経営事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) フィットネス部門
直営店舗において、マシンジム、スタジオ、プール、温浴施設などを利用できる「フィットネス会員」向けのサービスを提供しています。会員の健康維持・増進を目的とした施設運営を行っています。
収益は主に会員からの月会費や利用料収入から成ります。運営は主にセントラルスポーツが行い、一部の子会社も店舗運営を担っています。
■(2) スクール部門
直営店舗において、子供向けのスイミング、体育、ダンスなどの各種スクールや、大人向けのスポーツスクールを展開しています。「0歳から一生涯の健康づくり」を具現化する中核事業の一つです。
収益は主にスクール会員からの会費収入です。運営はセントラルスポーツが主体となり、専門の指導員によるプログラムを提供しています。
■(3) 業務受託部門
民間企業や地方自治体が保有するスポーツ施設の運営を受託しています。同社のノウハウとスタッフを活用し、施設の管理運営や指導業務を行っています。
収益は施設オーナーである企業や自治体から受け取る委託料や運営収入です。運営はセントラルスポーツが行い、公共スポーツ施設や民間スポーツ施設の活性化を支援しています。
■(4) プロショップ部門
直営店舗内のショップにおいて、スポーツ用品やサプリメント、関連グッズなどの販売を行っています。また、クラブ内の自動販売機や催事販売も含まれます。
収益は会員や施設利用者への商品販売による売上です。運営はセントラルスポーツが行い、運動効果を高めるための商品提供を行っています。
■(5) その他
会員向けの旅行企画・販売を行うツーリズム事業や、自社所有施設の賃貸事業、外部への商品販売、システム販売などを行っています。
収益は旅行代金、不動産賃貸料、外部販売収入などです。運営はセントラルスポーツおよび関連会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は回復・増加傾向にあり、コロナ禍の影響からの持ち直しが続いています。一方、利益面では光熱費や人件費などのコスト増の影響を受け、経常利益は変動が見られます。当期純利益は安定して黒字を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 360億円 | 403億円 | 436億円 | 454億円 | 466億円 |
| 経常利益 | 8億円 | 26億円 | 13億円 | 22億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | 2.1% | 6.4% | 3.1% | 4.8% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -21億円 | 13億円 | 7億円 | 12億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加しましたが、売上総利益および営業利益は減少しました。これは、売上原価や販管費の増加が売上の伸びを上回ったためです。コスト構造の変化により、利益率が低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 454億円 | 466億円 |
| 売上総利益 | 59億円 | 54億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.1% | 11.7% |
| 営業利益 | 27億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 5.8% | 4.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与・手当が9億円(構成比25%)、雑費が6億円(同18%)を占めています。売上原価については、人件費や施設維持のための修繕費、光熱費などが主な構成要素です。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、部門別の売上動向を見ると、主力のフィットネス部門が増収となり全体を牽引しました。プロショップ部門やその他部門も好調に推移した一方、スクール部門と業務受託部門は微減となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| フィットネス部門 | 218億円 | 230億円 |
| スクール部門 | 148億円 | 147億円 |
| 業務受託部門 | 65億円 | 64億円 |
| プロショップ部門 | 11億円 | 12億円 |
| その他 | 11億円 | 13億円 |
| 連結(合計) | 454億円 | 466億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**パターン:健全型**
本業の営業活動でキャッシュを稼ぎ出し、その範囲内で投資や借入金の返済を行っています。財務体質は健全です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 31億円 | 21億円 |
| 投資CF | -12億円 | -20億円 |
| 財務CF | -26億円 | -22億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは『0歳から一生涯の健康づくりに貢献する』を経営理念として掲げています。すべての世代の健康に寄与するサービスの提供を通じて、誰もが笑顔で暮らせるウェルネス社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「現在価値の最大化による顧客満足度の向上」を目標に掲げ、接客力、指導力、施設美化の強化に注力する文化があります。また、安心・安全で快適な施設運営を重視し、現場スタッフの教育やサービス品質の向上に取り組む姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
安定した経営基盤の維持と持続的な成長を目指し、財務強化の観点から以下の数値を重要な経営指標として掲げています。
* 自己資本比率:51%以上
* 売上高経常利益率:8.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
基幹事業であるスクールおよびフィットネス事業の収益力向上に加え、イベントやツーリズム事業、オンラインサービスの拡充を進めています。また、地域や教育分野との連携による新たな事業展開や、社会課題解決に資するサービス提供を通じて、新たな価値創造と収益確保を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「感動(顧客満足度)」と「幸せ(従業員満足度)」を重視した「サービスプロフィットチェーン」の概念を取り入れ、健康経営を推進しています。教育面では「ビジネスアスリートシステム」による段階的な研修や、企業内大学「セントラル大学・大学院」を通じて、専門知識やマネジメント能力の向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.8歳 | 16.8年 | 5,626,047円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.0% |
| 男性育児休業取得率 | 41.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 81.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 74.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自然災害・新型感染症等の影響
大規模な地震や台風などの自然災害、あるいは感染症の拡大が発生した場合、店舗の臨時休業やイベント・ツアーの中止を余儀なくされる可能性があります。これにより、休業期間中の売上減少や対応費用の発生など、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 収益構造及び業績の変動
スポーツクラブ運営は人件費や賃借料などの固定費負担が大きいビジネスモデルです。市場環境の変化や競合他社の出店などにより計画通りの集客ができない場合、収益確保や初期投資の回収に想定以上の時間を要し、業績が変動する可能性があります。
■(3) 有利子負債への依存
店舗出店には敷金・保証金や内装設備への多額の資金が必要です。同社はこれらを金融機関からの借入等で賄っているため、総資産に占める有利子負債の比率が高くなる傾向があります。金利上昇などの金融環境の変化が、支払利息の増加を通じて業績に影響を与える可能性があります。



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