SBIホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SBIホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する総合金融グループです。証券・銀行・保険等の金融サービス事業を中核に、資産運用、投資、暗号資産、次世代事業を展開しています。2025年3月期は、全セグメントでの収益拡大や投資事業の黒字転換などが寄与し、連結収益・税引前利益ともに過去最高を更新する増収増益となりました。


※本記事は、SBIホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第27期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. SBIホールディングスってどんな会社?


インターネットを主軸とした証券・銀行・保険などの金融サービス事業に加え、投資や暗号資産、バイオ関連などの多角的な事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1999年にベンチャー・キャピタル事業を目的に設立され、2000年にナスダック・ジャパン、2002年に東証一部へ上場しました。2006年にソフトバンクグループから完全独立し、2008年にSBI証券を完全子会社化しました。その後、2021年に新生銀行(現SBI新生銀行)、2022年にアルヒ(現SBIアルヒ)を子会社化するなど、M&Aを通じて事業基盤を拡大しています。

同社の従業員数は連結19,156名、単体351名です。大株主構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行で、第2位には資本業務提携関係にある三井住友フィナンシャルグループが名を連ねています。第3位も資産管理を行う信託銀行となっており、創業者の北尾吉孝氏は第7位の株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 14.72%
株式会社三井住友フィナンシャルグループ 8.91%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 6.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性3名の計18名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役会長兼社長は北尾吉孝氏です。社外取締役比率は38.9%です。

氏名 役職 主な経歴
北尾 吉孝 代表取締役会長兼社長 1974年野村證券入社。1995年ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)常務。1999年同社設立に伴い代表取締役社長に就任。現在はSBI証券、SBI新生銀行などグループ各社の役員も兼務。
髙村 正人 代表取締役副社長 1992年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2005年イー・トレード証券(現SBI証券)入社。2013年同社社長就任。2019年より現職。SBIファイナンシャルサービシーズ社長等を兼任。
朝倉 智也 取締役副社長 1989年北海道拓殖銀行入行。モーニングスター(現SBIグローバルアセットマネジメント)社長等を経て、2022年より現職。SBIアセットマネジメントグループ社長等を兼任。
日下部 聡恵 常務取締役 1991年太田昭和監査法人入所。公認会計士。2007年同社入社。SBI証券常務、SBI VCトレード取締役等を経て、2022年より現職。グループのリスク管理・コンプライアンスを管掌。
山田 真幸 取締役 1987年総合法令入社。米国NY州弁護士。ソフトバンク・ファイナンス法務部等を経て、2004年同社入社。法務コンプライアンス部長等を歴任。2025年より監査役から取締役に就任。
松井 真治 取締役 1981年三井物産入社。ベリトランス社長、SBIベネフィット・システムズ社長等を経て、2023年より現職。SBIオートサポート、SBI Africaなどの代表取締役を兼任。
椎野 充昭 取締役 1996年日興證券入社。日本オラクルを経て2007年同社入社。コーポレート・コミュニケーション部長等を歴任し、2023年より現職。SBIノンバンクホールディングス代表取締役等を兼任。


社外取締役は、佐藤輝英(BEENOS創業者)、竹中平蔵(慶應義塾大学名誉教授)、鈴木康弘(デジタルシフトウェーブ社長)、伊藤博(マーシュジャパン社長)、竹内香苗(フリーアナウンサー)、福田淳一(元財務事務次官)、末松広行(元農林水産事務次官)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金融サービス事業」「資産運用事業」「投資事業」「暗号資産事業」「次世代事業」の5つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 金融サービス事業


証券、銀行、保険を中心とした金融商品・サービスを国内外の個人・法人顧客に提供しています。SBI証券によるオンライン証券サービス、住信SBIネット銀行やSBI新生銀行による銀行サービス、SBI損害保険やSBI生命保険による保険商品などが含まれます。

収益は、証券取引の委託手数料や金融収益、銀行業務における貸出金利息や為替手数料、保険料収入などから構成されています。運営は、SBI証券、SBI新生銀行、SBI損害保険、SBI生命保険、SBI貯蓄銀行(韓国)などの連結子会社および持分法適用会社が行っています。

(2) 資産運用事業


投資信託の設定・募集・運用、投資助言、金融情報の提供などを行っています。個人投資家向けの公募投資信託や、金融機関向けの私募投資信託などを提供し、顧客の資産形成を支援しています。

収益は、投資信託の運用報酬(信託報酬)や投資助言手数料、金融情報の提供対価などが主な源泉です。運営は、SBIグローバルアセットマネジメント、SBIアセットマネジメントなどのグループ会社が行っています。

(3) 投資事業


国内外のベンチャー企業等への投資を行っています。フィンテック、ブロックチェーン、AIなどの革新的技術を持つ企業や、成長性の高い未上場企業を主な投資対象としています。

収益は、保有する株式等の売却益(キャピタルゲイン)、投資事業組合の管理・運営に伴う管理報酬や成功報酬、および保有有価証券の公正価値評価に伴う評価益などです。運営は、SBIインベストメント、SBIキャピタルマネジメントなどのグループ会社が行っています。

(4) 暗号資産事業


暗号資産の交換・取引サービスや、システムの提供などを行っています。個人顧客向けの取引所運営に加え、暗号資産のマーケットメイカー業務や、デジタルアセット関連の技術開発なども手掛けています。

収益は、暗号資産の売買に伴うスプレッド収益や取引手数料、システム提供に伴う利用料などが主な源泉です。運営は、SBI VCトレード、B2C2 Limitedなどのグループ会社が行っています。

(5) 次世代事業


バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業として、5-ALA(5-アミノレブリン酸)を利用した医薬品・健康食品の開発・販売や、Web3関連事業、再生可能エネルギー事業などを展開しています。

収益は、健康食品や化粧品の製品販売収入、医薬品のライセンス収入、電力販売収入などから構成されています。運営は、SBIファーマ、SBIアラプロモ、SBIバイオテックなどのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間において、売上収益は継続的に増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は大幅な増収となりました。税引前利益は2022年3月期に大きく伸長した後、一時減少しましたが、2025年3月期には再び高い水準まで回復しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 5,411億円 7,636億円 9,570億円 12,105億円 14,437億円
税引前利益 1,404億円 4,127億円 1,021億円 1,416億円 2,823億円
利益率(%) 25.9% 54.0% 10.7% 11.7% 19.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 811億円 3,669億円 354億円 872億円 1,621億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上収益は約1.2倍に拡大しました。これに伴い売上総利益も大幅に増加し、利益率も改善しています。コスト面では費用が増加しているものの、増収効果が上回り、利益拡大に寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 12,105億円 14,437億円
売上総利益 604億円 1,504億円
売上総利益率(%) 5.0% 10.4%


販売費及び一般管理費のうち、その他が1,651億円(構成比37%)、人件費が1,442億円(同33%)を占めています。売上原価においては、その他が1,182億円(構成比42%)、業務委託費が896億円(同32%)となっています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となり、特に投資事業と暗号資産事業の収益が大幅に拡大しました。利益面でも投資事業が黒字転換したほか、金融サービス事業と暗号資産事業が大きく伸長し、全体業績を牽引しました。次世代事業は増収ながら赤字幅が拡大しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
金融サービス事業 10,941億円 12,022億円 1,729億円 2,254億円 18.7%
資産運用事業 294億円 338億円 48億円 54億円 16.1%
投資事業 255億円 1,127億円 -177億円 672億円 59.6%
暗号資産事業 571億円 808億円 84億円 212億円 26.3%
次世代事業 266億円 307億円 -50億円 -99億円 -32.4%
その他 - - - - -
調整額 -224億円 -165億円 -219億円 -270億円 -
連結(合計) 12,105億円 14,437億円 1,416億円 2,823億円 19.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、バイオ・ヘルスケア、Web3、再生可能エネルギーなど多角的な事業を展開しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、顧客預金の増加や社債・借入金の調達により収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の取得が主な支出要因となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債発行による収入が支出を上回り、収入超過となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 13,457億円 15,087億円
投資CF -651億円 -10,605億円
財務CF 292億円 4,459億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「正しい倫理的価値観を持つ」「金融イノベーターたれ」「新産業クリエーターを目指す」「セルフエボリューションの継続」「社会的責任を全うする」の5つを経営理念として掲げています。社会正義に照らして正しいかどうかを判断基準とし、革新的技術による金融変革や新産業の創造、社会貢献を通じて企業価値の極大化を追求しています。

(2) 企業文化


持続的成長のために継承すべきDNAとして、「起業家精神を持ち続けること」「スピード重視の意思決定と行動」「イノベーションを促進すること」「自己進化し続けること」の4つを掲げています。創業以来の「顧客中心主義」を徹底し、「企業生態系」の形成とシナジー追求、革新的技術への信奉を通じて、社会課題の解決と公益の実現を目指しています。

(3) 経営計画・目標


創業30周年となる2029年3月期に向けた新中期ビジョンを策定しています。顧客基盤や事業資産、資金調達力、生態系を活用し、飛躍的な成長の実現を目指します。

* グループ顧客基盤:1億件
* 連結税引前利益:5,000億円
* 連結税引前利益に占める海外事業の割合:30%
* ROE:15%

(4) 成長戦略と重点施策


新中期ビジョンの達成に向けて、証券顧客基盤の拡大、SBI新生銀行を中心とした地域金融機関との連携強化、海外事業の収益比率向上、およびデジタル資産・メディア領域での生態系構築を推進します。

* グループ証券口座数3,000万の早期達成
* SBI新生銀行を中核とする「第4のメガバンク構想」の推進
* 海外事業の税引前利益をグループ全体の3割相当に引き上げ
* デジタルスペース生態系の構築とネオメディア領域への進出

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「有為な人材」の育成と確保を重視し、人間性を重視した採用を行っています。性別・国籍・学歴を問わず多様な人材を登用し、SBI大学院大学などを活用した研修で専門性と人間力を磨きます。また、360度評価による公正な処遇、キャリアオープン制度や資格取得支援などを通じ、従業員の挑戦と自己実現を支援する環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.4歳 5.7年 9,769,403円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 26.0%
男性育児休業取得率 20.8%
男女賃金差異(全労働者) 60.2%
男女賃金差異(正規) 66.4%
男女賃金差異(非正規) 41.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍社員比率(37.0%)、女性採用者数(1,138人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 複数事業領域展開に伴う課題


金融・非金融の多岐にわたる事業を展開しており、各分野の規制や市場動向に対応する必要があります。多数のグループ企業や上場子会社を抱え、効果的なガバナンスやシナジー発揮が困難になる可能性があります。

(2) インターネットビジネス特有のリスク


事業の多くがインターネット等の非対面チャネルに依存しており、システム障害やサイバー攻撃によるサービス停止、情報漏洩が発生した場合、損害賠償や信頼失墜に繋がる可能性があります。また、技術革新への対応遅れが競争力低下を招く恐れがあります。

(3) システム障害と情報セキュリティ


システムは事業の根幹であり、障害やサイバー攻撃、不正アクセス等は業務停止や情報流出を引き起こす可能性があります。これにより、損害賠償負担や信頼低下、行政処分の対象となるリスクがあります。

(4) 事業再編と業容拡大に伴う不確実性


M&Aを含む事業拡大を進めていますが、適切な対象が見つからない、統合が困難である、期待した成果が得られない等の可能性があります。海外展開においては、為替変動や現地の規制、カントリーリスクの影響を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。