※本記事は、SBIホールディングス株式会社の有価証券報告書(第28期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. SBIホールディングスってどんな会社?
同社は、証券、銀行、保険などを中核とする金融サービスや投資事業を展開する世界的にもユニークな総合金融グループです。
■(1) 会社概要
同社は1999年にベンチャー・キャピタル事業を目的に設立されました。2000年に株式上場し、2005年に現在のSBIホールディングスへ商号変更しました。2006年にソフトバンクグループとの資本関係を解消し独立しました。2021年にはSBI新生銀行を子会社化するなど、積極的な事業拡大を続けています。
同社の従業員数は連結で18,669名、単体で389名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位には事業提携関係にある三井住友フィナンシャルグループ、第3位には同じく資本業務提携関係にあるNTTが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.48% |
| 三井住友フィナンシャルグループ | 8.35% |
| NTT | 8.35% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性16名、女性3名の計19名で構成され、女性役員比率は15.8%です。代表取締役会長兼社長は北尾吉孝氏が務めています。社外取締役比率は36.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 北尾吉孝 | 代表取締役会長兼社長 | 1974年野村證券入社。ソフトバンク常務等を経て、1999年より同社代表取締役社長。2022年より現職。 |
| 髙村正人 | 代表取締役副社長 | 1992年三和銀行入行。2005年イー・トレード証券(現SBI証券)入社、2013年同社社長。2019年より現職。 |
| 朝倉智也 | 代表取締役副社長 | 1989年北海道拓殖銀行入行。1998年モーニングスターに入社し、2004年同社社長。2025年より現職。 |
| 日下部聡恵 | 常務取締役 | 1995年公認会計士登録。新日本監査法人を経て2007年同社入社。2025年より現職。 |
| 松井真治 | 取締役 | 1981年三井物産入社。2000年ソフトバンク・ファイナンス入社。2006年SBI損保設立準備社長等を経て現職。 |
| 椎野充昭 | 取締役 | 1996年日興證券入社。日本オラクル等を経て2007年同社入社。2023年より現職。 |
| 奥山真史 | 取締役 | 2005年コベルコ建機入社。米国弁護士を経て2014年同社入社。2025年より現職。 |
| 西川保雄 | 取締役 | 2001年ソフトバンク・テクノロジー入社。2005年同社入社。同社経理部長等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、竹中平蔵(元経済財政政策・郵政民営化担当大臣)、鈴木康弘(元セブン&アイ・ホールディングス取締役)、伊藤博(元マーシュジャパン代表取締役)、竹内香苗(フリーアナウンサー)、福田淳一(元財務事務次官)、末松広行(元農林水産事務次官)、越智隆雄(元内閣府副大臣)です。
2. 事業内容
同社グループは、「金融サービス事業」「資産運用事業」「PE投資事業」「暗号資産事業」「次世代事業」を展開しています。
■(1) 金融サービス事業
証券関連事業、銀行事業、保険事業を中核とした多様な金融関連事業を国内外で展開しています。幅広い個人・法人顧客に対して、証券取引、預金・融資、各種保険などの金融サービスを総合的に提供しています。
主に口座開設者や融資先の顧客から得られる取引手数料、金利収益、保険料などが収益源です。運営はSBI証券、SBI新生銀行、SBI損害保険、SBI生命保険などの各子会社が担っています。
■(2) 資産運用事業
投資信託の設定、募集、運用などの投資運用や投資助言、および金融商品の情報提供等を行っています。個人投資家から機関投資家まで幅広い顧客層の資産形成ニーズに対応する多様な金融商品を提供しています。
主に顧客の運用資産残高に応じた信託報酬や投資助言手数料、および情報提供サービスに伴う利用料などが収益源です。事業の運営はSBIアセットマネジメントグループやSBIグローバルアセットマネジメントなどの子会社が行っています。
■(3) PE投資事業
国内外のIT、フィンテック、AI・ビッグデータ、ブロックチェーン、バイオ関連のベンチャー企業等への投資に関する事業を展開しています。次世代の成長産業を担う有望なスタートアップ企業を対象としています。
出資先企業への投資に伴うキャピタルゲインや、運営する投資事業組合等からのファンド管理報酬が主な収益源です。事業の運営はSBIキャピタルマネジメントやSBIインベストメントなどの子会社が主体となって行っています。
■(4) 暗号資産事業
暗号資産(仮想通貨)の交換や取引サービスを提供する暗号資産交換業等を行っています。個人および法人の顧客向けに、暗号資産の売買、カストディ(保管)、および関連する金融サービスを提供しています。
暗号資産の売買に伴うスプレッド(価格差)や取引手数料、および法人向けビジネスから得られる収益が主な収入源です。事業の運営はSBI VCトレードやB2C2 LTDなどの子会社が担っています。
■(5) 次世代事業
5-ALA(5-アミノレブリン酸)を利用した医薬品・健康食品の開発・販売を行うバイオ・ヘルスケア事業のほか、Web3関連、再生可能エネルギー、人材、メディアなど先進的な分野での事業を展開しています。
各製品の販売収益やサービス利用料、Web3事業で獲得するバリデータ報酬などが収益源です。運営はSBIファーマ、SBIアラプロモ等の子会社のほか、マイナビなどの関連会社を通じて行われています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、収益は継続的に拡大しており、直近の2026年3月期には大幅な増収を達成しています。利益面では年度ごとに一時的な変動があるものの、直近2期間では税引前利益、当期利益ともに過去最高水準を更新し、利益率も大きく改善するなど、力強い成長軌道を描いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 7,636億円 | 9,570億円 | 12,105億円 | 14,437億円 | 18,966億円 |
| 税引前利益 | 4,127億円 | 1,021億円 | 1,416億円 | 2,823億円 | 5,167億円 |
| 利益率(%) | 54.0% | 10.7% | 11.7% | 19.6% | 27.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3,669億円 | 354億円 | 872億円 | 1,621億円 | 4,276億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の連結損益を見ると、売上収益は前期から大きく伸長し、大幅な増収を実現しています。同社は金融事業を主体としているため一般的な企業とは利益構造が異なりますが、全体の事業規模が急拡大していることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 14,437億円 | 18,966億円 |
| 売上総利益 | 1,504億円 | 91億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.4% | 0.5% |
■(3) セグメント収益
主力の金融サービス事業は、SBI新生銀行やSBI証券などの好調により大幅な増収増益となり、全体の業績を強力に牽引しています。また、次世代事業が黒字転換を果たすなど、既存の金融事業の安定的な成長と新領域の業績貢献が同時に進展しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 金融サービス事業 | 11,741億円 | 15,825億円 | 1,973億円 | 4,250億円 | 26.9% |
| 資産運用事業 | 338億円 | 416億円 | 54億円 | 86億円 | 20.7% |
| PE投資事業 | 1,408億円 | 1,583億円 | 953億円 | 820億円 | 51.8% |
| 暗号資産事業 | 808億円 | 896億円 | 212億円 | 212億円 | 23.7% |
| 次世代事業 | 307億円 | 562億円 | -99億円 | 220億円 | 39.1% |
| 消去又は全社 | -165億円 | -316億円 | -270億円 | -421億円 | - |
| 連結(合計) | 14,437億円 | 18,966億円 | 2,823億円 | 5,167億円 | 27.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金を将来の成長に向けた積極的な投資に回しつつ、外部からの資金調達も活用する積極型の傾向を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は28.0%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も28.0%でいずれも市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 15,087億円 | 16,948億円 |
| 投資CF | -10,605億円 | -11,356億円 |
| 財務CF | 4,459億円 | 4,427億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、全ての役職員が共有する規範として「5つの経営理念」を掲げています。「正しい倫理的価値観を持つ」「金融イノベーターたれ」「新産業クリエーターを目指す」「セルフエボリューションの継続」「社会的責任を全うする」であり、社会正義に照らして正しい事業を行い、革新的技術で金融に変革を与えることを目指しています。
■(2) 企業文化
持続的に成長する企業グループであり続けるため、継承すべき企業文化のDNAとして4つの価値観を重視しています。常にチャレンジし続ける「起業家精神を持ち続けること」、「スピード重視」の意思決定と行動、過去の成功体験にとらわれず「イノベーションを促進すること」、環境の変化を敏感に察知して「自己進化し続けること」です。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、創業30周年となる2029年3月期を見据え、中長期的な経営戦略を推進しています。企業価値のさらなる向上を目指し、当面の株主還元としては、配当金総額に自己株式取得額を加えた総還元額を、金融サービス事業における特殊要因を除いた税引前利益の30%程度とすることを目標として定めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の持続的成長に向けた三大戦略目標として、1つ目にグループの完全なAIドリブン化を断行し、AIエージェントによる最適な金融行動の提案を目指します。2つ目にオンチェーン化に向けた組織変革を通じて次世代の金融サービスを提供します。3つ目にネオメディア生態系を新たに構築し、国内外の顧客基盤を飛躍的に拡大させます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人的資源を最も価値ある戦略的資源と捉え、持続的な企業価値向上の実現に向けて人材価値の最大化に取り組んでいます。経営理念や企業文化を体現できる人材を育成し、成長領域を支える専門人材やマネジメント人材、グローバル人材の確保・育成を進めています。データに基づく人材の可視化と最適配置も推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.3歳 | 5.7年 | 10,065,718円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 26.9% |
| 男性育児休業取得率 | 38.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 51.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍社員比率(38.4%)、従業員一人当たりの年間研修時間(14.49時間)、管理職に占める中途採用社員の割合(88.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 複数事業領域への事業展開に伴う課題
同社グループは金融分野や非金融分野の多岐にわたる業種の企業で構成されています。多様な事業環境における変化をモニタリングし、適切な経営資源の配分を行う必要がありますが、事業運営の複雑化により期待されるシナジー効果が十分に発揮されない場合、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) インターネットビジネスに関するリスク
同社の事業は主にインターネットなどの非対面チャネルを通じてサービスを提供しています。システム障害によるサービス中断や、不正アクセスによる個人情報の漏洩等のセキュリティ問題が発生した場合、顧客離れや損害賠償責任が生じ、グループ全体の評判低下や業績悪化につながるリスクがあります。
■(3) 新規事業への参入やM&Aに係る不確実性
新たな産業の育成や積極的なM&Aによる業容拡大を進めていますが、対象企業との統合プロセスにおいて予期せぬコスト増加や人材流出が生じるリスクがあります。また、新規事業が計画通りの収益を上げられない場合や、関連する法的規制に抵触した場合には、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。



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