ドリームインキュベータ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ドリームインキュベータ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、事業創造支援を行うビジネスプロデュース事業と、スタートアップ投資を行うインキュベーション事業を展開しています。直近の業績は、ビジネスプロデュース事業の拡大等により増収となり、利益面でも各段階利益で黒字転換を達成しています。


※本記事は、株式会社ドリームインキュベータ の有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ドリームインキュベータってどんな会社?


同社は、大企業向けの事業創造支援や戦略策定を行うビジネスプロデュース事業と、国内外のスタートアップ企業への投資育成を行うインキュベーション事業を展開しています。

(1) 会社概要


2000年に事業戦略策定と実行支援を中核としたインキュベーション事業を目的として設立され、営業を開始しました。2002年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2005年には同市場第一部へ市場変更を果たしました。その後、ベトナムやインドでの投資事業を開始し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

同社の連結従業員数は214名、単体では191名です。筆頭株主は資本業務提携を結んでいる広告代理店大手の電通グループで、第2位は同様に提携関係にある地方銀行グループの山口フィナンシャルグループです。

氏名 持株比率
電通グループ 23.17%
山口フィナンシャルグループ 22.19%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 4.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.0%です。代表取締役社長は三宅 孝之氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
三宅 孝之 代表取締役社長 通商産業省(現経済産業省)、A.T.カーニーを経て同社入社。執行役員、取締役を経て2021年6月より現職。
細野 恭平 取締役副社長 海外経済協力基金(現国際協力銀行)を経て同社入社。アジア担当マネージングディレクター、執行役員等を経て2021年6月より現職。
原田 哲郎 取締役(監査等委員) 日本生命保険を経て同社入社。執行役員、取締役、代表取締役CEO等を歴任し、アイペットHD取締役等を経て2023年6月より現職。


社外取締役は、藤田 勉(元シティグループ証券取締役副会長)、小松 百合弥(元株式会社ドワンゴ執行役員CFO)、宇田 左近(ビジネス・ブレークスルー大学副学長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ビジネスプロデュースセグメント」および「ベンチャー投資セグメント」を展開しています。

ビジネスプロデュースセグメント


大企業を主な顧客とし、新規事業の創出や成長戦略の立案・実行支援を行う戦略コンサルティング、M&A支援などを提供しています。また、社会課題解決のための官民連携スキームであるソーシャルインパクトボンド(SIB)を活用したファンド運営も手掛けています。

収益は、顧客企業からのコンサルティングフィーやアドバイザリー手数料、ファンド運営に伴う管理報酬等から得ています。運営は主にドリームインキュベータが行うほか、海外拠点のDream Incubator (Vietnam) Joint Stock Company等が事業を展開しています。

ベンチャー投資セグメント


国内外のスタートアップ企業等に対する投資育成を行っています。自己資金による投資のほか、投資事業組合を通じたファンド運営も行い、投資先企業の成長支援を通じてキャピタルゲインの獲得を目指しています。

収益は、保有する営業投資有価証券の売却益や、投資事業組合からの管理報酬・成功報酬等から構成されます。運営は、DI Pan Pacific Inc.、DI投資合同会社、DIインドデジタル投資組合などのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績を見ると、売上高は変動があるものの、当期は前期比で増加しています。利益面では、前期に大きく落ち込み損失を計上しましたが、当期は経常利益、当期純利益ともに黒字転換を果たしています。利益率は改善傾向にあり、収益性の回復が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 278億円 356億円 301億円 54億円 62億円
経常利益 -10億円 0.4億円 12億円 -20億円 3億円
利益率(%) -3.5% 0.1% 4.1% -37.0% 4.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -13億円 -0.8億円 121億円 -17億円 3億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が大幅に拡大しています。前期は営業損失でしたが、当期は売上総利益の増加が販売費及び一般管理費の増加を吸収し、営業利益を確保しています。収益構造が改善し、黒字化を達成しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 54億円 62億円
売上総利益 5億円 29億円
売上総利益率(%) 8.4% 47.4%
営業利益 -20億円 3億円
営業利益率(%) -36.6% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が10億円(構成比39%)、役員報酬が2億円(同6%)を占めています。売上原価については、前期に多額の営業投資有価証券評価損を計上していましたが、当期はその影響が縮小しています。

(3) セグメント収益


ビジネスプロデュースセグメントは顧客基盤の拡大により増収増益となり、安定した収益源となっています。ベンチャー投資セグメントは、投資先の売却(トレードセール)等により増収となり、前期の巨額赤字から黒字転換を果たしました。全社的な利益改善に両セグメントが寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ビジネスプロデュース 50億円 55億円 10億円 11億円 19.3%
ベンチャー投資 3億円 7億円 -19億円 3億円 40.2%
調整額 - - -10億円 -11億円 -
連結(合計) 54億円 62億円 -20億円 3億円 4.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ドリームインキュベータは、ベンチャー投資セグメントにおいてスタートアップ企業等への投資育成を行い、中期経営計画に基づいたトレードセールによるキャピタルゲインを実現しました。

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、ベンチャー投資セグメントでのトレードセール及びファンド分配により収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の償還により収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いにより支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -75億円 12億円
投資CF 82億円 3億円
財務CF -48億円 -23億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「社会を変える 事業を創る。」をミッションに掲げ、「挑戦者が一番会いたい人になる。」ことをビジョンとしています。事業の創出・育成を目的とした“The Business Producing Company”として、新しい産業の創出や持続可能な社会形成に取り組んでいます。

(2) 企業文化


新しい事業を創るためには「構想し、戦略を立て、仲間を集め、挑戦する」ことが必要であるとし、そのプロセス全体において常に「枠を超える。」ことを最も大切なバリューとして掲げています。プロフェッショナルとしての個人の矜持と規律を持ちつつ、顧客や社会のために挑戦し続ける姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、ビジネスプロデュース事業の継続的な成長を重視しており、規模と収益性のバランスを意識した数値目標を掲げています。

* 売上高:5年で2倍(年平均成長率15%)
* 営業利益率:5年後に15%以上
* ROE:5年後に15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


ビジネスプロデュース事業に経営資源を集中し、既存事業の変革支援や伴走・実行支援まで領域を拡大する方針です。産業レベルの構想やビジネスエコサイクル創りを活用し、顧客の成長を加速させる仕組みづくりに取り組みます。また、人材育成の強化や仕組みの充実、継続的な採用活動により、優秀なビジネスプロデューサーの確保を進めていきます。

* 翌連結会計年度のビジネスプロデュース事業:売上高62億円、セグメント営業利益3億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ミッション・ビジョン・バリューを体現できるプロフェッショナル人材の育成を重視しています。OJTや研修を通じて個々の適性を踏まえた成長機会を提供し、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる環境づくりを推進しています。また、評価制度の見直しや働き方の多様化を進め、働きがいのある環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 34.8歳 3.4年 12,166,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.1%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規) -


※男女間賃金格差については、女性活躍推進法の公表項目として選択していないため、記載を省略しております。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用比率(69.4%)、エンゲージメントスコア(70.6)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の確保に関するリスク


ビジネスプロデュース事業の継続的成長には、高度な専門性を持つ優秀な人材の確保と育成が不可欠です。コンサルティング業界における人材獲得競争の激化により、計画通りの採用が進まない場合や、人材流出が生じた場合、事業拡大の制約となる可能性があります。

(2) カントリーリスク


インキュベーション事業においてインド企業への投資が大きな比率を占めています。そのため、投資先企業の所在国における政治・経済情勢の変化が、事業遂行や資金回収に影響を与え、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) コンプライアンスリスク


国内外にグループ会社を展開しており、全従業員に対してコンプライアンス意識の徹底を図っています。しかし、役職員による法令違反等が発生した場合、同社グループの社会的信用の失墜を招き、経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。