日本システム技術 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本システム技術 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、SI事業、パッケージ事業、医療ビッグデータ事業等を展開する独立系システム企業です。金融・大学・医療分野に強みを持ち、自社ブランド製品も展開しています。2025年3月期は、大型案件の好調やパッケージ製品の伸長により、売上高・各利益ともに前期を上回る増収増益となりました。


※本記事は、日本システム技術株式会社 の有価証券報告書(第53期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本システム技術ってどんな会社?


独立系の強みを活かしたSI事業と、大学・金融・医療分野での自社パッケージ開発・販売を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1973年に大阪で設立され、1994年に学校事務支援統合システム「GAKUEN」シリーズを発売しました。2001年にジャスダック市場へ上場後、2003年に東証二部、2017年に東証一部へ指定替えとなり、現在はプライム市場に上場しています。2010年には医療費適正化を支援する「JMICS」を開始し、医療ビッグデータ事業へ参入しました。また、2024年にはアイエスアールを吸収合併するなど事業基盤を拡大しています。

連結従業員数は1,613名、単体では1,151名体制です。筆頭株主は、不動産管理を行う株式会社ジャストで23.36%を保有しています。第2位以降は信託銀行等の金融機関が名を連ねており、創業家関連と機関投資家が主な株主構成となっています。

氏名 持株比率
ジャスト 23.36%
BNYM AS AGT/CLTS NON TREATY JASDEC(常任代理人 三菱UFJ銀行) 20.54%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長執行役員は平林卓氏が務めています。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
平林 卓 代表取締役社長執行役員 1992年富士通入社。1998年同社入社。財務経理部長、経営企画室長、財務・IR担当などを経て2025年6月より現職。
平林 武昭 取締役会長 1973年同社設立とともに代表取締役就任。2005年社長執行役員、2020年社長を経て2025年6月より現職。
伴 浩明 取締役副社長執行役員 1981年同社入社。東日本ソフトウェア事業部長、医療ビッグデータ事業担当などを歴任。2025年4月より現職。
土屋 祐二 取締役常務執行役員 1983年同社入社。GAKUEN事業担当、BankNeo事業担当、西日本SI事業担当などを歴任。2025年4月より現職。
六車 千春 取締役常務執行役員 1988年同社入社。東日本SI事業担当、ASEAN事業本部長などを経て、2024年4月よりコーポレート担当・経営企画室長として現職。
籔下 昌巳 取締役常務監査等委員 1989年同社入社。流通ビジネス事業部長、常勤監査役などを経て2024年6月より現職。


社外取締役は、秋葉俊幸(元キヤノンスーパーコンピューティングエスアイ社長)、高永東(NTTデータ(中国)信息技術董事長兼総裁)、安治郎(ヴァレックス・パートナーズ代表取締役)、最上次郎(弁護士)、町田美紗(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「DX&SI事業」、「パッケージ事業」、「医療ビッグデータ事業」、「グローバル事業」を展開しています。

(1) DX&SI事業


製造、流通、金融、公共、教育など幅広い業種に対し、業務システムの受託開発やインフラ構築を行っています。また、AIやIoT、クラウドを活用したソリューション提供も手掛けています。

SI開発やソリューション提供の対価として収益を得ています。運営は主に日本システム技術、アルファコンピュータ、新日本ニーズが行っています。

(2) パッケージ事業


大学向けの学校事務支援システム「GAKUEN」シリーズや、金融機関向けの情報系統合パッケージ「BankNeo」などの自社ブランド製品を開発・販売しています。導入支援や保守サービスも提供しています。

パッケージライセンス販売、導入コンサルティング、保守運用サービス、サブスクリプション利用料などが収益源です。運営は主に日本システム技術、アルファコンピュータ、上海嘉峰信息科技有限公司が行っています。

(3) 医療ビッグデータ事業


健康保険組合などの保険者に対し、レセプト(診療報酬明細書)の自動点検システム「JMICS」やデータ分析サービスを提供しています。医療費適正化やデータヘルス計画の実行を支援しています。

レセプト点検サービスや分析サービスの利用料、成果報酬などが収益源です。運営は主に日本システム技術、新日本ニーズ、ケーシップが行っています。

(4) グローバル事業


ASEAN地域や中国において、ERPやHRM(人事管理)製品の開発・販売・導入コンサルティングを行っています。また、オフショア開発拠点としての機能も担っています。

システム開発やパッケージ導入、コンサルティングサービスの対価として収益を得ています。運営は主にJASTEC (THAILAND)、JAST Asia Pacific、Virtual Calibreグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けており、利益面でも増加傾向にあります。特に直近の2025年3月期は、売上高、各利益ともに過去最高水準を更新しており、安定的な成長軌道にあることがうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 188億円 214億円 235億円 262億円 293億円
経常利益 13億円 21億円 25億円 29億円 33億円
利益率(%) 7.0% 9.6% 10.4% 10.9% 11.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 10億円 16億円 16億円 27億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率も改善しており、増収効果が利益増に寄与していることが分かります。販売費及び一般管理費も増加していますが、売上の伸びがそれを上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 262億円 293億円
売上総利益 73億円 83億円
売上総利益率(%) 27.8% 28.2%
営業利益 28億円 32億円
営業利益率(%) 10.7% 10.9%


販売費及び一般管理費のうち、賃金給料及び諸手当が19億円(構成比38%)、研究開発費が6億円(同11%)を占めています。売上原価では、労務費や外注費などが主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで前期比増収となりました。特にDX&SI事業とパッケージ事業が業績を牽引しています。利益面では、グローバル事業が損失を計上しましたが、他の主要セグメントの増益により全体では増益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
DX&SI事業 153億円 175億円 23億円 28億円 16.2%
パッケージ事業 49億円 59億円 14億円 16億円 26.6%
医療ビッグデータ事業 26億円 32億円 7億円 7億円 21.0%
グローバル事業 34億円 28億円 4億円 -1億円 -2.2%
調整額 -2億円 -1億円 -19億円 -18億円 -
連結(合計) 262億円 293億円 28億円 32億円 10.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**
営業活動で得た資金の範囲内で投資活動と財務活動(借入返済や配当等)を行っており、財務基盤の健全性が高い状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 19億円 18億円
投資CF -8億円 -20億円
財務CF -4億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来、「情報化の創造・提供による社会貢献」を企業理念として掲げています。完全独立系の立場を堅持し、業種やプラットフォームを問わず、常に最新技術に挑戦しながら幅広い分野の開発に取り組むことで、社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「不易流行」の思想に基づき、「変わらぬ信念」と「変わる経営」を両輪としています。いかなる系列にも属さない自由な立場で挑戦を続ける一方、時代や環境の変化に敏感に対応し、お客様、株主、社員、社会の「四方良し」の価値観を大切にする文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


2024年を第2創業のスタートと位置づけ、グループビジョン「JAST VISION 2035」を策定しています。2035年度には連結売上高1,000億円の実現を掲げ、これを長期的な目標としています。また、毎期の売上・利益計画の達成とともに、株主資本に対するリターン(ROE)の向上も重要指標としています。

* 2035年度 連結売上高:1,000億円

(4) 成長戦略と重点施策


DX&SI事業では高付加価値ビジネスの推進と新事業モデルの構築、パッケージ及び医療ビッグデータ事業では製品機能強化と新サービスの創出、グローバル事業ではSAPビジネスの拡大や新製品開発を進めています。アライアンスやM&Aも活用し、事業規模の拡大と高収益化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員エンゲージメントやウェルビーイングの向上を目指し、ワークライフバランスを整えながら能力を発揮できる環境整備に注力しています。具体的には、エンゲージメントサーベイによる組織課題の改善、健康経営の推進、テレワーク制度の活用などを通じ、多様な働き方の実現と生産性の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 35.0歳 9.0年 6,201,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 90.5%
男女賃金差異(全労働者) 83.7%
男女賃金差異(正規雇用) 83.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 69.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 不採算案件の発生や製品・サービスの瑕疵


システム開発において要件定義不足や見積精度の問題により不採算案件が発生するリスクがあります。また、製品やサービスの品質問題が発生した場合、損害賠償や信用の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報管理およびサイバーセキュリティ


医療データ等の重要情報を扱っているため、情報漏洩やサイバー攻撃による被害が発生するリスクがあります。これらが発生した場合、損害賠償責任や社会的信用の失墜により、業績に重大な影響を与える可能性があります。

(3) 訴訟に関するリスク


事業運営において訴訟を提起されるリスクが存在します。予期せぬ多額の損害賠償を命じられた場合、業績や財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

(4) 人財の確保


IT業界における人手不足の中で、優秀な人財や協力会社を十分に確保できない場合、業務遂行に支障をきたす可能性があります。また、外部委託費の高騰などが業績に影響を与える可能性もあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。