※本記事は、スパークス・グループ株式会社の有価証券報告書(第37期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. スパークス・グループってどんな会社?
国内外の株式や実物資産への投資を行う独立系の資産運用グループです。
■(1) 会社概要
1989年に独立系の投資顧問会社として創業し、徹底したボトムアップ・アプローチによる日本株等の資産運用を行ってきました。2001年にジャスダックに上場し、2006年に持株会社体制へ移行しました。近年は再生可能エネルギーを中心とする実物資産投資や、未公開企業へのプライベート・エクイティ投資にも領域を広げています。
同社グループは連結で187名、単体で39名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者の阿部修平氏であり、第2位は資産管理を行う阿部キャピタル、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 阿部修平 | 38.13% |
| 阿部キャピタル | 14.87% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性3名の計7名で構成され、女性役員比率は42.9%です。代表取締役社長グループCEOは阿部修平氏が務めており、取締役の過半数が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 阿部修平 | 代表取締役社長グループCEOグループCIO | 野村総合研究所、野村證券を経てアベ・キャピタル・リサーチを設立。1989年より現職。 |
| 峰松洋志 | 取締役グループ上席執行役員グループCFO | 朝日監査法人等を経てスパークス・アセット・マネジメント投信に入社。2019年より現職。 |
社外取締役は、中川俊彦氏(元野村證券常務取締役)、能見公一氏(元あおぞら銀行会長兼CEO)、箱田英子氏(弁護士)、森下公江氏(元電通ゼネラル・マネージャー)、斉藤麻子氏(元テントゥーフォー代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、主に「投信投資顧問業」の単一セグメントで事業を展開しています。投資戦略に応じた独自の資産運用サービスを提供しています。
■(1) 伝統的資産運用(日本株式・アジア株式)
日本株式およびアジア地域の上場株式を投資対象とした運用戦略を提供しています。国内外の機関投資家や個人投資家に向けて、ボトムアップ・アプローチによる徹底した企業調査に基づき、中長期的な資本成長を目指すファンドを組成・運用しています。
主にスパークス・アセット・マネジメントやSPARX Asset Management Koreaなどが運営を担っています。収益源は、運用資産残高に応じた「残高報酬」と、一定の基準を上回る運用実績をあげた際に得られる「成功報酬」から成り立っています。
■(2) オルタナティブ運用(実物資産・プライベートエクイティ)
再生可能エネルギー発電施設(太陽光・蓄電所等)や不動産を対象とした実物資産投資戦略と、次世代の成長企業やモノづくり企業に投資するプライベート・エクイティ投資戦略を展開しています。中長期的な視点で安定したキャッシュフローや革新的技術を持つ企業を支援しています。
主にスパークス・グリーンエナジー&テクノロジーやスパークス・インベストメントが運営しています。ファンドの運用・管理に伴う残高報酬のほか、発電所の開発や売却に関わるアクイジションフィー、分配金が一定水準を超過した際の成功報酬が収益源です。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、運用資産残高の増加基調を背景に、総じて売上および利益が拡大傾向にあります。特に当期は、国内外の株式市場の堅調な推移により日本株式等のパフォーマンスが向上し、大幅な増収と過去最高水準の利益を記録しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 140億円 | 134億円 | 165億円 | 180億円 | 196億円 |
| 経常利益 | 62億円 | 63億円 | 81億円 | 78億円 | 89億円 |
| 利益率(%) | 44.4% | 47.1% | 49.0% | 43.3% | 45.5% |
| 当期利益 | 32億円 | 52億円 | 51億円 | 35億円 | 43億円 |
■(2) 損益計算書
前期と当期の利益構成を比較すると、主力の残高報酬が安定して伸びたことに加え、運用成績に応じた成功報酬が大きく増加したことで、営業利益・営業利益率ともに高い水準を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 180億円 | 196億円 |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 77億円 | 90億円 |
| 営業利益率(%) | 42.9% | 46.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が38億円(構成比36%)、支払手数料が30億円(同29%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は投信投資顧問業の単一セグメントであるため、事業規模の推移を示します。主力の日本株式戦略やアジア株式戦略において運用パフォーマンスが好調に推移し、全体として増収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 投信投資顧問業 | 180億円 | 196億円 |
| 連結(合計) | 180億円 | 196億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で十分なキャッシュを創出し、それを借入金の返済に充てつつ、手元資金の範囲内で将来に向けた投資を行っている優良な健全型(+、-、-)のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 51億円 | 59億円 |
| 投資CF | -21億円 | -39億円 |
| 財務CF | -34億円 | -40億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.1%といずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「世界で最も信頼、尊敬されるインベストメント・カンパニー」になることで、「世界を豊かに、健やかに、そして幸せにする」というミッション(パーパス)の実現を目指しています。投資インテリジェンスと優れた運用成果の提供を通じ、持続可能な社会の実現に貢献することを責務と定めています。
■(2) 企業文化
行動規範として「ARTSの精神(Arigato、Responsiveness、Thoroughness、Sympathy)」を定めています。また、創業以来「マクロはミクロの集積である」との投資哲学を重視し、現場の生の声から真の企業像を見出す「ボトムアップ・アプローチ」を徹底する文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
運用資産残高(AUM)3兆円の達成後を見据え、収益の源泉である「日本株式」「OneAsia」「実物資産」「プライベート・エクイティ」の4本柱をバランスよく強化・拡大することを目標として掲げています。特定の市場環境に依存しない安定性と成長性に優れたポートフォリオの構築を目指します。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存の運用戦略の拡大による残高報酬の増加に加え、運用力を高めて成功報酬を安定的に計上することで収益性の向上を図ります。また、次世代を担う人材を育成・登用してマネジメント層の世代交代を進めるとともに、組織的なイノベーション力とコミュニケーション力を強化し、より競争力の高い体制を構築します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、パーパスやビジョンに共感する優秀な人材が多様性を尊重し、最高のプロフェッショナルとなるべく主体的に能力向上に取り組む環境の構築を目指しています。専門的なスキルだけでなく、行動規範を重視した人格形成を促し、組織全体で高い投資アイデアを創出・具現化できるチーム力の強化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 49.8歳 | 11.3年 | 12,551,000円 |
※平均年間給与は、固定報酬・短期業績連動報酬(業績賞与)・中長期業績連動型株式報酬から算出されています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 27.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 52.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 36.0% |
また、同社は「従業員の状況」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における女性比率(39.0%)、外国人比率(21.9%)、中途採用者比率(95.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 運用資産の変動に伴う収益リスク
同社の収益の大半は、運用資産残高に応じた委託者報酬や投資顧問料から成り立っています。そのため、世界経済の動向や気候変動、地政学的リスクなどにより日本およびアジア地域の株式市場が低迷した場合、運用資産残高が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 顧客基盤と解約に関するリスク
顧客との投資一任契約や投資信託において、一部を除きいつでも解約が可能なため、運用成績の悪化などにより大口顧客が解約を行った場合、ファンド規模が縮小するリスクがあります。同社は小口の運用資金を積み上げることで特定の顧客への依存度を下げる対策を講じています。
■(3) 新規運用対象の拡大リスク
不動産や再生可能エネルギー、未公開企業への投資など、運用対象を拡大する中で、想定以上の初期投資や事業立ち上げの遅れが生じるリスクがあります。また、新たな分野における法規制の変更や、適切な利益相反管理が求められるため、これらに不備があった場合は社会的信用が低下する恐れがあります。



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