ブロードメディア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ブロードメディア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ブロードメディアは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、通信制高校等を展開する教育事業やサイバーセキュリティ等の技術事業を主力としています。直近の業績では、技術事業の好調や制作事業の黒字転換などにより売上高が増加し、各段階利益も揃って増益となるなど、堅調な成長を続けている企業です。


※本記事は、ブロードメディア株式会社の有価証券報告書(第30期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ブロードメディアってどんな会社?


通信制高校などの教育事業とサイバーセキュリティなどの技術事業を中心に展開する企業です。

(1) 会社概要


1996年に設立され、2002年にナスダック・ジャパン市場(現スタンダード市場)へ上場しました。2006年に釣りビジョンを子会社化して放送事業に参入したほか、2009年にルネサンス・アカデミーを子会社化して教育事業を本格化させました。近年はdivやdivxなどを子会社化し、AI・プログラミング教育分野へも進出しています。

同社グループの従業員数は連結で716名、単体で450名です。筆頭株主はエイブイアイ ジャパン オポチュニティー トラスト ピーエルシーで、第2位は金融機関のゴールドマン・サックス・インターナショナル、第3位はSG/UCITS V/INVとなっています。

氏名 持株比率
エイブイアイ ジャパン オポチュニティー トラスト ピーエルシー 36.04%
ゴールドマン・サックス・インターナショナル 8.95%
SG/UCITS V/INV 2.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は橋本太郎氏が務めており、社外取締役比率は過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
橋本太郎 代表取締役社長 野村證券やソフトバンク等を経て、2000年より現職。
久保利人 取締役執行役員技術サービス本部長 フジモリ産業やソフトバンク等を経て、2016年より現職。
木村修巳 取締役執行役員教育サービス本部長 三菱建設や学校法人等を経て、2024年より現職。
押尾英明 取締役執行役員CFO経営管理本部長 2004年に同社へ入社し、財務部長等を経て、2015年より現職。
嶋村安高 取締役放送・事業戦略担当 ペイ・パー・ビュー・ジャパン等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、山田純(元クアルコムジャパン社長)、山口畝誉(元日本マイクロソフト本部長)、古屋俊一(元富士銀行支店長)、北谷賢司(元米国ワシントン州立大学栄誉教授)、佐藤淳子(尾崎法律事務所所属)、粂川操(元アビームコンサルティング取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「教育」「スタジオ・プロダクション」「放送」「技術」「その他」の各セグメントで事業を展開しています。

教育


通信制高校の「ルネサンス高等学校グループ」や外国人向け日本語研修の運営に加え、プログラミングスクールの「テックキャンプ」などを展開しています。
収益は主に生徒からの授業料収入や法人からの研修受託料などで構成されています。通信制高校事業は同社が運営し、AI・プログラミング教育事業はdivやdivキャリアなどが運営しています。

スタジオ・プロダクション


海外の映画およびテレビ作品の日本語字幕や吹替制作、聴覚・視覚障がい者向けの字幕や音声解説の制作、番組宣伝の制作などを手がけています。
収益は発注元からの制作物の販売による収入や受託制作料から成り立っています。運営は同社およびブロードメディア・スタジオが行っています。

放送


釣り専門番組「釣りビジョン」の制作や、BS・CS放送およびケーブルテレビ局等への番組供給、動画配信サービスの提供などを行っています。
収益源は視聴者からの視聴料収入や広告料収入などです。運営は釣りビジョンが行っていましたが、同社は2026年3月末付で同社の全株式を譲渡しています。

技術


サイバーセキュリティサービスやコンテンツ配信を行うアカマイサービスをはじめ、クラウドゲーム配信技術の提供、映画館向けデジタルシネマサービスなどを展開しています。
収益は企業からの役務提供に伴う利用料や機器販売収入、システム開発の受託料などで構成されています。運営は同社やシステムデザイン開発、divxなどが行っています。

その他


プロeスポーツチーム「CAG OSAKA」の運営や関連イベントの企画を行うeスポーツ推進事業と、家庭用ゲーム機向けのゲームソフトの企画・開発・販売などを行っています。
収益はスポンサー企業からの協賛金や大会賞金、ゲームソフトの販売収入などから得ています。運営はブロードメディアeスポーツやポケットが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。経常利益は一時的に落ち込む時期もありましたが、当期には再び増加に転じ、利益率も回復しています。また当期純利益も大幅な増益を達成しており、堅調な成長がうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 123億円 130億円 142億円 155億円 158億円
経常利益 9億円 11億円 9億円 7億円 11億円
利益率(%) 7.6% 8.3% 6.4% 4.6% 6.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 11億円 8億円 7億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高と売上総利益はともに前年から微増にとどまりましたが、営業利益は大きく伸びており、営業利益率も改善しています。これは販売費及び一般管理費等の抑制や事業ポートフォリオの見直しが寄与した結果と推測されます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 155億円 158億円
売上総利益 61億円 61億円
売上総利益率(%) 39.0% 38.5%
営業利益 7億円 11億円
営業利益率(%) 4.6% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が14億円(構成比29%)、広告宣伝費が5.1億円(同10%)を占めています。売上原価(73億円)においては、支払手数料が36億円(構成比50%)、人件費が10億円(同14%)と主要な項目になっています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、技術セグメントと教育セグメントが収益の柱として順調に拡大しています。一方で、メディアコンテンツ事業は前期に事業譲渡を行ったため当期は計上されておらず、その他のセグメントや放送セグメントは減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
教育 54億円 55億円
メディアコンテンツ 3.5億円 -
スタジオ・プロダクション 16億円 16億円
放送 23億円 22億円
技術 55億円 62億円
その他 3.8億円 2.4億円
連結(合計) 155億円 158億円


同社は、営業利益と資産売却等によって借入返済を進める改善型のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 7億円 7億円
投資CF -0.3億円 0.1億円
財務CF -9億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.1%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も51.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「創造力が生み出す優れた作品やサービスを、広く社会に普及させ、より豊かなコミュニティーの形成・発展に貢献する」という企業理念を掲げています。既存メディア領域を広げるという意味を持つ「ブロードメディア」という社名が世界に通用するよう努めています。

(2) 企業文化


独自の技術プラットフォームを持つコンテンツ事業者として、独自性の高いサービスの提供を通じた成長を重視しています。「持続可能で、かつ倫理的なビジネスで成長する」ことを中期的な取り組みとして掲げ、社会課題の解決に寄与しながら企業価値を持続的に向上させる行動様式を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


事業の選択と集中を進めながら、業績向上と資本効率の改善を図るための経営目標を設定しています。具体的には、2024年度から当面の目標として以下の数値を掲げています。

* 連結営業利益率10%
* ROE(自己資本利益率)30%

(4) 成長戦略と重点施策


業績をけん引する教育と技術をさらに成長させるとともに、教育・技術・AIを掛け合わせた独自の複合的な事業の推進に注力しています。

* 通信制高校事業における生徒定員数の拡大と教育内容の充実
* AIやプログラミングなど次世代事業への投資と育成
* AI活用等による業務改善と経営効率の更なる向上
* 専門的知識を有した「AI人材」の育成など人的資本への投資

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業価値の持続的な向上のため、独自性の高いサービスを構築できる専門的知識を有した人材の確保と育成を重要課題としています。特にAIを活用できる「AI人材」の育成に投資を継続するほか、採用の強化や研修制度の充実、能力・成果に応じた人事評価など、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.3歳 9.7年 5,093,672円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 75.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 通信制高校事業における生徒確保と法令対応


通信制高校事業において、少子化や競合校の増加により新規入学者が減少した場合や、定員増加の認可が適時に取得できない場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。また、法令変更や違反による行政処分を受けた場合、事業継続が困難になるリスクがあります。

(2) アカマイサービス等における提携継続


アカマイ・テクノロジーズ合同会社のCDNサービスやセキュリティサービスのリセラー事業において、同社との契約が何らかの理由で円滑に継続されなかった場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) クラウドゲーム配信等におけるシステムトラブル


クラウドソリューションやホスピタリティ・ネットワーク等の事業において、システムへの過負荷や自然災害等による技術的トラブルが発生し、サービスが中断・停止した場合には、社会的信用の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報セキュリティと個人情報保護


主要なサービスをネットワークを通じて提供しているため、第三者からの不正アクセスやシステム障害が生じた場合、事業継続に支障をきたす恐れがあります。また、個人情報の漏洩が発生した場合は損害賠償や信用低下を招くリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。