メディカルシステムネットワーク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 メディカルシステムネットワーク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メディカルシステムネットワークは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、地域薬局ネットワーク事業や医薬品物流、デジタルシフト事業などを展開する企業です。直近の業績は、給与水準の引き上げ等による人件費増等があったものの、医薬品ネットワークの加盟件数増加などにより増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社メディカルシステムネットワークの有価証券報告書(第28期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. メディカルシステムネットワークってどんな会社?


地域薬局ネットワーク事業を中核とし、医薬品の流通効率化や薬局の経営支援サービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


1999年9月に設立され、同年11月に医薬品システム関連業務を開始しました。2002年3月に大証ナスダック・ジャパン市場へ上場後、2010年6月には東証一部に指定され、2023年10月に東証スタンダード市場へ移行しています。2024年4月には新たに医薬品物流事業を開始し事業を拡大しています。

現在の従業員数は、連結で4,014名、単体で400名です。大株主の状況は、筆頭株主が代表取締役社長の近親者が議決権を所有する合同会社エスアンドエスで、第2位は個人の沖中恭幸氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
合同会社エスアンドエス 9.28%
沖中恭幸 8.40%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性1名の計17名で構成され、女性役員比率は5.9%です。代表取締役社長は田尻稲雄氏が務めています。社外取締役は7名(監査等委員含む)で、社外取締役比率は41.2%です。

氏名 役職 主な経歴
田尻 稲雄 代表取締役社長経営全般賃貸・設備関連事業管掌 一の山形薬業等を経て、1999年9月に同社を設立し代表取締役社長に就任。現在は賃貸・設備関連事業管掌などを兼務。
秋野 治郎 代表取締役副社長経営全般 一の山形薬業等を経て、1999年9月に同社設立とともに代表取締役専務に就任。2015年6月より現職。
田中 義寛 代表取締役副社長経営全般地域薬局ネットワーク事業管掌 日本興業銀行を経て、2006年6月に同社入社。常務取締役、専務取締役などを経て、2021年6月より現職。
坂下 誠 取締役専務執行役員管理本部管掌 兼医療福祉サポート本部長 2001年にファーマホールディング入社。同社取締役などを経て、2017年6月に取締役専務執行役員に就任。
角 和彦 取締役常務執行役員リスク統括室・プロジェクト推進室所管 安田信託銀行を経て、2000年9月に同社取締役に就任。常務取締役などを経て、2017年6月より現職。
青山 明 取締役常務執行役員システム本部管掌 諏訪精工舎等を経て、2013年6月に同社常務取締役に就任。2017年6月に取締役常務執行役員に就任。
平島 英治 取締役常務執行役員経理財務本部長 安田信託銀行を経て、1999年9月に同社取締役に就任。取締役執行役員財務部長などを経て、2021年6月より現職。
多湖 健太郎 取締役常務執行役員システム本部所管 兼給食事業管掌 兼経営戦略本部長 日本興業銀行等を経て、2015年9月に同社入社。経営企画部長などを経て、2024年6月より現職。
清水 健司 取締役執行役員SCM事業本部長 三星堂等を経て、2020年4月に同社入社。執行役員SCM事業本部長等を経て、2023年6月より現職。
中村 秀一 取締役 厚生省入省、老健局長等を歴任。社会保険診療報酬支払基金理事長等を経て、2019年6月より現職。


社外取締役は、小池明夫氏(元北海道旅客鉄道社長)、一色浩三氏(元日本開発銀行理事)、井部俊子氏(元聖路加国際大学学長)、佐藤敏氏(元北海道庁保健福祉部長)、齋藤研吾氏(元札幌市環境事業部長)、米屋佳史氏(弁護士)、前田裕次氏(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「地域薬局ネットワーク事業」「賃貸・設備関連事業」「給食事業」および「その他事業」を展開しています。

地域薬局ネットワーク事業


地域薬局の運営から、医薬品ネットワークによる薬局等の経営支援、LINEを活用したかかりつけ薬局化支援、医薬品の製造販売や物流まで、地域医療のインフラを支える幅広いサービスを提供しています。

収益は、患者への調剤や医薬品販売、加盟店へのネットワークシステム提供などに伴う手数料から得ています。運営は、同社のほか、なの花北海道などの子会社や、フェルゼンファーマ、ファーマシフトなどが各部門を担っています。

賃貸・設備関連事業


薬局の立地開発や建物の賃貸・管理のほか、医師の開業を支援するコンサルティング、複数診療科目のクリニックを集積した医療施設の開発や運営、サービス付き高齢者向け住宅の運営などを行っています。

収益は、保有する建物の賃貸収入や医療施設等の設計施工監理に伴う手数料、高齢者向け住宅からの入居費等から構成されています。運営は、同社および子会社のパルテクノが中心となって展開しています。

給食事業


病院や福祉施設などでの給食事業を受託し、一般的な飲食業以上に厳格な衛生管理が求められる集団給食や食堂の運営業務を提供しています。

収益は、委託側の医療機関や福祉施設から支払われる給食事業の受託費用から得ています。運営は、子会社のなの花九州およびさくらフーズが担当しています。

その他事業


看護師らが高齢者や疾患を持つ方の生活の場へ直接訪問し、看護ケアの提供や療養上の相談に応じるなど、在宅療養生活を支援する訪問看護業務を提供しています。

収益は、訪問看護サービスの提供に伴う利用料等から得ています。運営は、同社が主体となって直接サービスを展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、順調な事業拡大が伺えます。経常利益は一時的に変動が見られたものの、直近では回復の兆しを見せており、安定した収益基盤を維持しつつ着実な成長を続けています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1067億円 1096億円 1154億円 1224億円 1322億円
経常利益 43億円 34億円 38億円 32億円 32億円
利益率(%) 4.0% 3.1% 3.3% 2.6% 2.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 22億円 23億円 27億円 26億円

(2) 損益計算書


売上高および売上総利益ともに増加しており、事業規模の拡大が進んでいます。営業利益も堅調に推移していますが、利益率は微減しており、コスト増加の影響がうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1224億円 1322億円
売上総利益 507億円 537億円
売上総利益率(%) 41.5% 40.7%
営業利益 32億円 33億円
営業利益率(%) 2.6% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が190億円(構成比38%)、租税公課が75億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である地域薬局ネットワーク事業が全体の売上の大半を占め、売上高の成長を牽引しています。一方、賃貸・設備関連事業や給食事業はわずかに減収となっており、セグメント間で成長のばらつきが見られます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
地域薬局ネットワーク事業 1169億円 1271億円
賃貸・設備関連事業 28億円 24億円
給食事業 24億円 23億円
その他事業 3.4億円 3.4億円
連結(合計) 1224億円 1322億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動からのキャッシュ創出が一時的にマイナスとなっているものの、将来の成長に向けた投資を継続し、借入等により資金調達を行っている「勝負型」の局面となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 45億円 -34億円
投資CF -37億円 -40億円
財務CF -5.4億円 68億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も21.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「良質な医療インフラを創造し生涯を見守る『まちのあかり』として健やかな暮らしに貢献します」を企業理念に掲げています。医療・医薬品分野での最適な流通やサービスの提供を通じて地域医療に貢献し、構築したネットワークを基盤として、住み慣れた場所で生涯安心して暮らせるまちづくりの一翼を担うことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、サステナビリティを企業活動の原点と位置づけています。社内では「Community Pharmacist Step制度」を通じた専門性の高い人材の育成や、ダイバーシティ&インクルージョンの推進による多様な人材の活躍を重視しており、従業員が主体的に学び合い、ともに成長していく企業文化の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は、長期ビジョン「まちのあかりビジョン2035」と、それに基づく第7次中期経営計画(2027年3月期~2030年3月期)を策定しています。中長期的な視点で、収益性の高い事業ポートフォリオへの転換と経営基盤の強化を推進し、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

* 2030年3月期目標:連結営業利益 50億円、ROE 11%、サポート件数 25,000施設
* 2035年3月期目標:連結営業利益 100億円、ROE 15%、サポート件数 45,000施設

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、構築してきた顧客接点や取引ネットワークを市場基盤として活用し、データ基盤の整備を通じたサービスの高度化を推進します。メディカル領域では処方箋依存からの脱却、メディカルサポート領域では総合ソリューションによる顧客価値の最大化、メディカルサプライ領域では需給最適化と安定供給を両立させることで社会価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、人材が最大の価値創造の源泉であると考え、社員が安心して長く働ける環境を整えることを基本方針としています。専門性を高め地域医療に貢献できる人材の育成や、1on1面談によるキャリア支援を行うとともに、健康経営や育児と仕事の両立支援などを通じて、多様な人材が活躍できる組織基盤の強化を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.0歳 8.0年 5,862,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 26.6%
男性育児休業取得率 45.5%
男女賃金差異(全労働者) 69.1%
男女賃金差異(正規雇用) 72.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 49.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 薬価・調剤報酬の改定による業績影響


同社の地域薬局ネットワーク事業の大部分を占める調剤売上は、薬価基準や調剤報酬点数などの公的な制度によって定められています。そのため、厚生労働省による薬価基準や調剤報酬の改定が行われた場合、同社の収益性が低下し、業績や財政状態に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 専門人材(薬剤師)の確保と定着


薬局の運営には、法令により必要な人数の薬剤師を配置することが義務付けられています。業界全体で薬剤師の確保が重要な課題となる中、同社が必要な人材を十分に採用・定着させられなかった場合、店舗の円滑な運営や新規出店計画に遅れが生じ、事業拡大に支障をきたすリスクがあります。

(3) 個人情報の取り扱いと情報漏洩リスク


同社の事業では、処方箋やカルテなどの機微な個人情報を大量に取り扱っています。システム・運営の両面で厳重な管理体制を敷いていますが、万一、サイバー攻撃や人為的ミスによって個人情報の漏洩事故が発生した場合、損害賠償による金銭的負担や社会的信用の失墜を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 積極的なM&Aによるのれん等の減損リスク


同社は、事業規模の拡大を目的として積極的なM&Aを実施しています。買収時には対象会社の将来的なキャッシュ・フローを見込んで投資を行いますが、事後の経済環境の変化や事業計画との乖離により想定したシナジー効果が得られない場合、多額の減損損失が発生し、財務状況に影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。