メディカルシステムネットワーク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 メディカルシステムネットワーク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。地域薬局の運営と、医薬品卸と医療機関をつなぐ医薬品ネットワーク事業を中核に展開。2025年3月期は、地域薬局の処方箋枚数減少やコスト増の影響があったものの、医薬品ネットワーク加盟店増により増収を確保。一方、利益面では営業減益、経常減益となった。


※本記事は、株式会社メディカルシステムネットワーク の有価証券報告書(第27期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. メディカルシステムネットワークってどんな会社?


地域薬局の運営と、医薬品卸売会社との流通効率化を図る医薬品ネットワーク事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1999年に設立し、医薬品システム関連業務を開始しました。2002年に大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場へ上場し、その後数多くの子会社化や合併を経て事業を拡大。2010年には東証一部指定を受けました。2024年には医薬品物流事業を行う子会社を設立するなど、医薬品流通の効率化を推進しています。

連結従業員数は3,860名、単体では391名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は社長の近親者が全議決権を所有する資産管理会社です。第3位は個人株主であり、創業メンバーや経営陣が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行㈱(信託口) 9.50%
合同会社エスアンドエス 9.28%
沖中 恭幸 8.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性1名の計17名で構成され、女性役員比率は5.9%です。代表取締役社長は田尻 稲雄氏です。社外取締役比率は41.2%です。

氏名 役職 主な経歴
田尻 稲雄 代表取締役社長経営全般賃貸・設備関連事業管掌 メディカル山形薬品代表取締役等を経て、1999年同社設立とともに現職。ノマド福祉会理事長などを兼務。
秋野 治郎 代表取締役副社長経営全般 一の山形薬業入社、一の秋野代表取締役等を経て、1999年同社設立時に代表取締役専務就任。2015年より現職。
田中 義寛 代表取締役副社長経営全般地域薬局ネットワーク事業管掌 兼経営戦略本部管掌 日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2006年同社入社、経営企画部長、常務、専務を経て2021年より現職。
坂下 誠 取締役専務執行役員管理本部管掌 兼医療福祉サポート本部長 ファーマホールディング入社等を経て、同社総務部長、常務、専務を歴任。現在は管理本部管掌等を務める。
角 和彦 取締役常務執行役員リスク統括室・プロジェクト推進室所管 安田信託銀行(現みずほ信託銀行)入社。同社常務取締役等を経て、現在はリスク統括室・プロジェクト推進室を所管。
青山 明 取締役常務執行役員システム本部長 諏訪精工舎(現セイコーエプソン)入社。エプソンメディカル取締役副社長等を経て、現在はシステム本部長を務める。
平島 英治 取締役常務執行役員経理財務本部長 安田信託銀行(現みずほ信託銀行)入社。同社取締役管理部長、財務部長等を経て、現在は経理財務本部長を務める。
多湖 健太郎 取締役常務執行役員給食事業管掌 兼経営戦略本部長 日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。同社経営企画部長、執行役員等を経て、現在は給食事業管掌兼経営戦略本部長。
清水 健司 取締役執行役員SCM事業本部長 兼マーケティング部長 三星堂(現メディセオ)入社。同社SCM事業本部長を経て、2023年より現職。現在はマーケティング部長を兼務。
中村 秀一 取締役 厚生省入省。社会保険診療報酬支払基金理事長等を経て、現在は医療介護福祉政策研究フォーラム理事長等を兼務。


社外取締役は、小池 明夫(元北海道旅客鉄道会長)、一色 浩三(元日本政策投資銀行理事)、井部 俊子(元聖路加看護大学学長)、渡邊 光春(元札幌都市開発公社代表取締役)、佐藤 敏(元北海道庁総務部長)、米屋 佳史(弁護士)、前田 裕次(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「地域薬局ネットワーク事業」「賃貸・設備関連事業」「給食事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 地域薬局ネットワーク事業


調剤薬局の運営、医薬品流通の効率化支援、後発医薬品の製造販売、医薬品物流、デジタルシフト支援を行っています。一般患者や医療機関、薬局が主な顧客です。

収益は、患者からの調剤報酬や薬代、加盟店からの医薬品ネットワーク利用料、医薬品の販売代金等から得ています。運営は、メディカルシステムネットワークや、なの花北海道、なの花東日本等の連結子会社が行っています。

(2) 賃貸・設備関連事業


薬局の立地開発、建物の賃貸・管理、医師開業コンサルティング、医療施設の開発・運営、サービス付き高齢者向け住宅の運営等を行っています。

収益は、テナントからの賃貸料、コンサルティング料、入居者からの利用料等から得ています。運営は、メディカルシステムネットワークおよびパルテクノが行っています。

(3) 給食事業


病院や福祉施設内での給食事業受託業務を行っています。

収益は、病院・福祉施設等の委託元から給食業務の受託料を受け取っています。運営は、トータル・メディカルサービスおよびさくらフーズが行っています。

(4) その他事業


高齢者や疾患を持つ方への訪問看護業務を行っています。

収益は、利用者や保険者からの訪問看護療養費等から得ています。運営は、メディカルシステムネットワークが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では変動が見られ、直近期においては経常利益、当期純利益ともに減少しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,043億円 1,067億円 1,096億円 1,154億円 1,224億円
経常利益 35億円 43億円 34億円 38億円 32億円
利益率(%) 3.3% 4.0% 3.1% 3.3% 2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 24億円 16億円 19億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益は減少しました。売上高の伸びに対し、コストの増加率がやや上回る結果となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,154億円 1,224億円
売上総利益 479億円 507億円
売上総利益率(%) 41.5% 41.5%
営業利益 38億円 32億円
営業利益率(%) 3.3% 2.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が174億円(構成比36%)、租税公課が70億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


地域薬局ネットワーク事業は、医薬品ネットワーク加盟店の増加やデジタルシフトの進展等により増収となりましたが、医薬品仕入価格の上昇や労務費増加等により減益となりました。賃貸・設備関連事業は建築業務の受注増等により増益となりました。給食事業は不採算施設撤退の影響で微減収ながら黒字転換しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
地域薬局ネットワーク事業 1,099億円 1,169億円 64億円 56億円 4.8%
賃貸・設備関連事業 28億円 28億円 1.6億円 1.9億円 6.8%
給食事業 24億円 24億円 -0.4億円 0.1億円 0.4%
その他事業 3.1億円 3.4億円 -0.4億円 -0.3億円 -8.5%
調整額 -8.3億円 -7.5億円 -27億円 -26億円 -
連結(合計) 1,154億円 1,224億円 38億円 32億円 2.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで得た資金を借入金の返済や投資に充てており、本業での収益力に基づき健全な財務運営を行っている「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 77億円 45億円
投資CF -36億円 -37億円
財務CF -39億円 -5.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は23.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、『良質な医療インフラを創造し生涯を見守る「まちのあかり」として健やかな暮らしに貢献します』を企業理念に掲げています。医療と生活の基盤創造や、住み慣れた場所で生涯安心して暮らせる「まちづくり」の一翼を担い、地域社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、医療人あるいは医療を支える企業人としての心構えを持ち、専門性を高めることを推進・奨励しています。また、人材を最大の価値創造の源泉と捉え、社員が安心して長く働ける環境整備や、時代の変化に柔軟に対応しながらグループの総合力を発揮し、理念実現を牽引する人材の育成を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2022年4月から4カ年の「第6次中期経営計画」を策定しましたが、事業環境の変化により達成が困難となったため、新たに長期ビジョンの策定に向けた検討を開始しました。長期ビジョンは2025年秋頃の公開を目指しています。現在は、2026年3月期末に向けた各部門の数値目標を掲げています。
* 医薬品ネットワーク加盟店件数:12,000件
* 医薬品製造販売部門取引店舗数:9,070店舗
* 「つながる薬局」導入店舗数:6,850店舗

(4) 成長戦略と重点施策


地域薬局部門では、かかりつけ機能や在宅医療の強化、LINE公式アカウント「つながる薬局」活用による処方箋獲得を推進します。医薬品ネットワーク部門では、加盟店向けサービスの拡充等により件数拡大を図ります。また、財務体質の強化として、コストコントロール徹底による利益確保を通じた自己資本比率向上に努めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最大の価値創造の源泉と位置づけ、安心して長く働ける環境整備と成長支援を基本方針としています。専門性を高め地域医療に貢献できる薬剤師の育成制度「CP Step」の実施や、女性の中核人材養成、1on1面談による自律的キャリア形成支援を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 7.8年 5,639,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.4%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.6%
男女賃金差異(正規雇用) 69.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 56.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、本部勤務中途採用者に占める女性社員の比率(48.7%)、男性社員の育児休業取得率(50.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金利情勢による業績変動リスク


事業資金を主に金融機関からの借入で調達しています。固定金利での借入促進やデリバティブ取引によるヘッジを行っていますが、変動金利での借入や借換時、新規調達において金利が上昇した場合、支払利息の増加により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 有利子負債依存度について


総資産に占める有利子負債の割合が高く、当連結会計年度末で42.2%となっています。収益力向上と自己資本充実により財務体質の改善を図る方針ですが、計画通りに進まない場合、事業計画や業績等に影響が出る可能性があります。

(3) 制度変更等の法的規制リスク


主力事業である地域薬局や医薬品関連事業は、医薬品医療機器等法や健康保険法等の規制を受けます。薬価基準や調剤報酬の改定は業績に直結するほか、医薬品流通制度の抜本的な変更があった場合、ビジネスモデルそのものに影響を及ぼす可能性があります。

(4) 薬剤師の確保について


薬局運営には法的に薬剤師の配置が義務付けられています。業界全体で薬剤師の採用・確保が課題となる中、十分な人数を確保できない場合、店舗運営や出店計画に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。