※本記事は、株式会社クロスキャット の有価証券報告書(第52期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. クロスキャットってどんな会社?
金融・公共分野に強みを持つ独立系システムインテグレーターで、データ活用支援等のDX推進にも注力しています。
■(1) 会社概要
同社は1973年に株式会社ニスコンコアとして設立され、1989年に現社名へ変更しシステムインテグレーション事業を開始しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たし、2011年にはSaaS型勤怠管理システムや予算管理ソリューション等の自社製品販売を開始しました。2018年に東京証券取引所第一部へ指定替えとなり、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。
同グループは連結従業員数856名、単体538名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は同社の社員持株会、第3位は個人株主の牛島豊氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.10% |
| クロスキャット社員持株会 | 7.13% |
| 牛島 豊 | 4.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は山根光則氏が務めています。なお、社外取締役の比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井上 貴功 | 代表取締役会長 | 1983年同社入社。執行役員コンサルティング事業部長、営業統括部長、代表取締役社長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 山根 光則 | 代表取締役社長 | 1989年同社入社。取締役執行役員として保険・金融・公共・法人ビジネス等の各事業部を担当。2023年6月より現職。 |
| 山下 智己 | 取締役常務執行役員コーポレート統括部担当 | 1988年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2018年同社入社。経営財務統括部長などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 道上 正人 | 取締役常務執行役員金融ビジネス事業部担当兼公共ビジネス事業部担当兼DX事業部担当 | 1998年同社入社。法人ビジネス事業部長、DX事業部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 小倉 功 | 取締役執行役員管理統括部担当 | 1987年日本IBM入社。2012年同社入社。管理統括部長、SI営業統括部担当などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 小野田 友彦 | 取締役常勤監査等委員 | 1993年同社入社。執行役員金融ビジネス事業部長、経営監査統括部長などを経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、五味洋行(元ハイマックス社長)、瀬戸川礼子(経営ジャーナリスト)、鈴木実(元NTTデータソフィア社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、情報サービス事業およびこれらの付帯業務の単一セグメントで事業を展開しており、「システムソリューション」と「スタッフサービス」に大別されます。
■(1) システムソリューション(システム開発)
金融・クレジット・公共・製造・通信・流通など幅広い業種の顧客に対し、ソフトウェア開発、システム運用・保守、テクニカルサポート、システムコンサルティングなどを提供しています。特に金融・保険・公共などの公益性の高い分野でのシステム開発に長年の実績があります。
収益は、顧客との契約に基づくシステムの設計・開発・運用・保守等の役務提供対価として得ています。運営は主に株式会社クロスキャットが行い、開発業務の一部を子会社の株式会社クロスユーアイエス、株式会社クロスアクティブ、株式会社クロスリードに委託する体制をとっています。
■(2) システムソリューション(BIビジネス)
企業の経営情報を可視化・分析し、経営の革新や効率化を実現するためのBI(Business Intelligence)活用を支援しています。最適なBI活用を可能とする導入コンサルティングから開発、実装支援までを行っています。
収益は、BI導入コンサルティングや開発・実装支援等のサービス提供対価として得ています。運営は株式会社クロスキャットを中心に、グループ各社が連携して行っています。
■(3) その他・スタッフサービス
その他事業として、オリジナルソリューションやパッケージの販売、ハードウェア機器販売、IT教育などを手掛けています。また、スタッフサービスとして、技術系および事務系の人材派遣、アウトソーシング、職業紹介を行っています。
収益は、製品・商品の販売代金や、派遣・アウトソーシング等のサービス対価から得ています。運営は株式会社クロスキャットおよびグループ各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は96億円から162億円へと右肩上がりで成長を続けています。経常利益も5億円台から19億円台へと大幅に拡大しており、利益率も5.6%から11.7%へと向上しています。当期純利益についても順調に推移しており、増収増益基調が継続しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 96億円 | 121億円 | 138億円 | 149億円 | 162億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 12億円 | 15億円 | 16億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 5.6% | 9.7% | 10.9% | 10.5% | 11.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 8億円 | 10億円 | 12億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は23.5%から23.8%へ改善しました。販管費も増加していますが、増収効果により営業利益率は10.2%から11.3%へと向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 149億円 | 162億円 |
| 売上総利益 | 35億円 | 38億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.5% | 23.8% |
| 営業利益 | 15億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 10.2% | 11.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6億円(構成比28%)、役員報酬が3億円(同14%)、支払手数料が2億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期はSI分野、DX分野ともに増収増益となりました。SI分野では官公庁・自治体向けが大きく伸長し、DX分野ではクラウド関連サービス等の需要拡大が寄与しました。なお、同社は単一セグメントですが、経営管理上の区分として以下の数値が開示されています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| SI分野 | 132億円 | 140億円 | 30億円 | 33億円 | 23.7% |
| DX分野 | 18億円 | 22億円 | 5億円 | 5億円 | 24.2% |
| 連結(合計) | 149億円 | 162億円 | 35億円 | 38億円 | 23.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
クロスキャット社のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
同社は、営業活動により資金を獲得し、投資活動では一部資金を使用しました。財務活動では、短期借入等により資金を調達した一方、配当金の支払い等で資金が流出しました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | 7億円 |
| 投資CF | 1億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | -10億円 | -3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は創業以来、「知識・技術・創意」という知的要素である「技」を高め、顧客には「誠意」という「心」で対応する「心技の融和」を企業理念としています。中長期的には「独立系情報サービス企業として、持続的な企業価値向上と社会への貢献」を経営ビジョンに掲げ、全てのステークホルダーの期待に応え、創業50年を経て次の100年を目指す企業として持続的な成長を実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
先進的なアプリケーション開発技術と多様な運用ノウハウを駆使し、プロフェッショナルなサービス提供に努める文化があります。また、常に時代を見る眼とみずみずしい感性を持ち、世の中のトレンドや環境にフレキシブルに対応できるよう、新技術の獲得に他社より一歩先んじて取り組む姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期的な経営ビジョンの財務目標・KPIsとして以下の数値を掲げています。
* 売上高300億円以上
* 営業利益30億円以上
* 1株あたり当期純利益200円以上
* 時価総額450億円以上
* 社員数1,200人以上
■(4) 成長戦略と重点施策
新中期経営計画「Growing Value 2026」では、「提供価値を高め、お客様に必要とされる企業」を目指し、5つの基本戦略を推進しています。具体的には、人的リソース依存からの脱却を目指す「価値提供モデルへの転換」、蓄積されたナレッジを活用する「アセットベースビジネスの拡大」、エンドユーザー比率拡大に向けた「顧客基盤の強化」、人的投資による「人材・組織力強化」、そしてグループシナジーを追求する「グループ経営の展開」です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、価値の源泉である社員に対して積極的に人的投資を行い、IT人材の強化を図るとともに、エンゲージメント施策を推進しています。人材の確保に向けては、スペシャリスト採用やリファラル採用、M&Aなど多様な手法を活用しています。また、2025年4月に人事制度を見直し、中核人材が活躍に応じた処遇を受けられるようにするとともに、適性に合ったコース選択ができるようコースの細分化を行いました。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 36.8歳 | 11.6年 | 5,478,816円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金の手当を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.2% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 82.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 83.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 71.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(73.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) IT投資環境リスク
顧客のIT投資は経済情勢や景気動向の影響を受ける傾向にあります。日本経済が低迷または悪化した場合には、顧客のIT投資が減少し、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 主要取引先への依存リスク
主要な取引先である大手メーカー系やインテグレーター系の顧客の方針変更は重要なリスク要因です。これら主要取引先の発注方針が大きく変更された場合、同社グループの受注量や取引条件に変化が生じ、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) システム開発リスク
システム開発において、予測できない要因により品質問題や工期遅延が発生する可能性があります。QMSやCMMIによる品質管理、PMOによる監視を行っていますが、万が一不具合やトラブルにより不採算プロジェクトが発生した場合は、コスト増加などにより業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 技術者確保のリスク
情報サービス業界では技術者の不足が続いており、労働市場の流動化が進んでいます。同社は採用や育成に注力していますが、必要な技術者を十分に確保できない場合、事業展開が制約され、計画の達成が困難になる可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。