クロスキャット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クロスキャット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クロスキャットは、東京証券取引所プライム市場に上場する独立系の情報サービス企業です。主にクレジットや金融、公共、製造など幅広い業種向けのシステム開発や、データ利活用を支援するDX事業を展開しています。直近の業績は、主要事業の受注拡大により増収増益を達成し、5期連続で過去最高を更新しています。


※本記事は、クロスキャットの有価証券報告書(第53期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クロスキャットってどんな会社?


システム開発とデータ利活用支援を中心に、顧客のDXを推進する独立系情報サービス企業です。

(1) 会社概要


1973年に産業制御系ソフト開発を目的として設立され、1989年に現社名へ変更しシステムインテグレーション事業を開始しました。2004年にジャスダックへ上場し、2018年には東証一部へ指定されました。近年はM&Aを推進するほか、クラウドやAIなどの先端技術を活用したDX推進支援にも注力しています。

現在の従業員数は連結で881名、単体で563名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は社員持株会、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.74%
クロスキャット社員持株会 6.23%
尾野 貴子 4.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は山根光則氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
井上 貴功 代表取締役会長 1981年小杉産業入社。1983年同社入社後、営業統括部長などを経て2013年代表取締役社長に就任。2023年より現職。
山根 光則 代表取締役社長 1989年同社入社。保険ビジネス事業部長や各事業部担当を経て、2022年取締役副社長執行役員に就任。2023年より現職。
山下 智己 取締役常務執行役員コーポレート統括部担当 1988年三菱銀行入行。2018年同社入社、取締役執行役員経営財務統括部担当等を経て、2024年より現職。
道上 正人 取締役常務執行役員金融ビジネス事業部担当兼公共ビジネス事業部担当兼DXインテグレーション事業部担当兼DXソリューション事業部担当 1998年同社入社。法人ビジネス事業部長や各事業部担当を経て、2026年より現職。
小倉 功 取締役執行役員管理統括部担当 1987年日本IBM入社。2012年同社入社後、管理統括部長や営業統括部担当等を経て、2024年より現職。
小野田 友彦 取締役常勤監査等委員 1993年同社入社。金融ビジネス事業部長や経営監査統括部長などを歴任し、2023年より現職。クロスユーアイエス監査役。


社外取締役は、瀬戸川礼子(経営ジャーナリスト)、鈴木実(元NTTデータソフィア社長)、幸重孝典(元全日空システム企画社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、情報サービス事業およびこれらの付帯業務の単一セグメントで事業を展開していますが、事業分野別に以下の領域に分かれています。

(1) SI(システムインテグレーション)分野


クレジットや金融、公共、製造、通信、流通など幅広い業種のお客様を対象としています。システムの設計から開発、運用、保守に至るまで、長年にわたり培ってきた技術やノウハウを活かした高品質なシステムインテグレーションサービスを提供しています。

顧客からのシステム開発や運用・保守の業務委託費が主な収益源です。運営は同社のほか、子会社のクロスユーアイエス、クロスアクティブ、クロスリードがそれぞれ連携しながらサービスを提供しています。

(2) DX(デジタルトランスフォーメーション)分野


クラウドや生成AIなどの先端技術を利用したサービスを提供し、顧客の業務効率化や生産性向上に貢献しています。データ利活用のための支援サービスや基盤構築のほか、自社開発システムなどの提供も行っています。

自社開発の勤怠管理クラウドサービスなどの利用料や、データ活用基盤構築等のシステム開発費が収益源となります。運営は同社を中心に、各子会社も強みを活かしてDX推進支援やオリジナルソリューションの提供を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、直近5年間で順調に事業規模を拡大しています。経常利益も増収に伴い増加を続け、利益率も約10%から11%台後半へと改善が進んでいます。収益性の向上と安定した成長を両立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 121.2億円 138.4億円 149.3億円 161.9億円 173.1億円
経常利益 11.7億円 15.1億円 15.7億円 19.0億円 20.4億円
利益率(%) 9.7% 10.9% 10.5% 11.7% 11.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 6.4億円 10.1億円 12.0億円 12.5億円 14.0億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに堅調に伸長しています。利益率も安定して23%台、11%台を維持しており、収益性を確保しながら事業規模の拡大を実現していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 161.9億円 173.1億円
売上総利益 38.5億円 40.8億円
売上総利益率(%) 23.8% 23.6%
営業利益 18.4億円 20.1億円
営業利益率(%) 11.3% 11.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6.0億円(構成比29%)、役員報酬が2.7億円(同13%)、支払手数料が2.2億円(同10%)を占めています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 6.9億円 23.4億円
投資CF -0.3億円 -3.2億円
財務CF -3.2億円 -14.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も61.4%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を大きく上回る健全な水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「心技の融和」を企業理念に掲げています。「知識・技術・創意」という知的要素である「技」を高め、お客様にはどんな困難な局面においても意欲・忍耐・信念を失わない「誠意(心)」で対応することを目指しています。また、経営ビジョンとして「独立系情報サービス企業として、持続的な企業価値向上と社会への貢献」を定めています。

(2) 企業文化


先進的なアプリケーション開発技術と多様な運用ノウハウを駆使し、顧客へ総合的かつプロフェッショナルなサービスを提供することを重視しています。常に時代を見る眼とみずみずしい感性を持ち、世の中のトレンドや環境にフレキシブルに対応できるよう、新技術の獲得には他社より一歩先んじて取り組む姿勢が企業文化として根付いています。

(3) 経営計画・目標


中長期的(10年)な企業のあり方を示す経営ビジョンの財務目標・KPIとして、以下の数値を掲げて経営を行っています。

* 売上高300億円以上
* 営業利益30億円以上
* 1株あたり当期純利益200円以上
* 時価総額450億円以上
* 社員数1,200人以上

(4) 成長戦略と重点施策


新中期経営計画において、「提供価値を高め、お客様に必要とされる企業」を目指しています。カスタマーファーストによる価値提供モデルへの転換、プロジェクトでのナレッジを活用するアセットベースビジネスの拡大、顧客基盤の強化、人的投資による人材・組織力強化、グループシナジーの追求を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「心技の融和」のもと、先進的な技術を自ら磨き続けるとともに、多様な人材の育成を基本方針としています。技術者一人ひとりの専門性と技術力が企業価値の源泉であると位置づけ、継続的な教育・研修を実施しています。また、国籍・性別を問わない多様な人材の活躍促進や、健康と人権を尊重した働きやすい職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.6歳 11.3年 5,732,098円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.5%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 83.3%
男女賃金差異(正規雇用) 84.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 72.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における女性比率(30.5%)、年次有給休暇取得率(69.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT投資環境の変動リスク


顧客のIT投資は経済情勢や景気動向の影響を受けやすい傾向にあります。日本経済が低迷・悪化し、顧客企業のIT投資が減少した場合、同社グループのシステム開発案件の受注が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 主要取引先への依存リスク


同社グループは大手メーカー系やインテグレーター系の顧客を主要取引先としています。これらの顧客の発注方針や投資計画が大きく変更された場合、同社グループの受注動向に影響が生じ、業績が変動する可能性があります。

(3) システム開発における品質・工期リスク


システム開発において、予測できない要因により開発工程での品質問題や工期の遅延が発生する場合があります。また、システムの運用段階で不具合が発見され、不採算プロジェクトが発生した場合には、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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