東北新社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東北新社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。CM制作等の広告プロダクションやコンテンツ制作、CS・BS放送等のメディア事業を展開。当連結会計年度は、メディア事業における子会社譲渡等の影響で減収となったが、広告事業の好調や資産売却益の計上により、経常利益は増益、純利益は大幅な増益となった。


#記事タイトル:東北新社転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社東北新社 の有価証券報告書(第63期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東北新社ってどんな会社?


総合映像プロダクションとして、CM制作や映画・番組制作、放送事業等を展開。高いクリエイティビティと技術力を強みとする。

(1) 会社概要


1961年に設立され、テレビ映画の日本語版制作を開始。1964年には新日本映画製作所を子会社化し、CM制作事業へ参入した。その後、1986年に株式会社スター・チャンネルを設立し衛星放送事業を開始(2024年に譲渡)。2002年に株式を店頭登録し、2025年には名証メイン市場へ上場を果たした。

同社の連結従業員数は1,283名、単体では715名です。筆頭株主は植村久子氏で、第2位は資産管理業務を行う投資ファンドの関連組織と見られる3D WH OPPORTUNITY MASTER OFC、第3位は植村綾氏となっており、創業家関係者や機関投資家が名を連ねています。

氏名 持株比率
植村 久子 21.17%
3D WH OPPORTUNITY MASTER OFC - 3D WH OPPORTUNITY HOLDINGS 18.69%
植村 綾 16.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長は小坂恵一氏が務めています。社外取締役比率は46.7%です。

氏名 役職 主な経歴
小坂 恵一 代表取締役社長 1977年同社入社。常務執行役員、取締役専務執行役員などを経て、2022年6月より現職。
二宮 清隆 取締役 2000年同社入社。代表取締役副社長、代表取締役社長、特別顧問を経て、2023年6月より現職。
沖山 貴良 取締役 2001年同社入社。衛星放送事業本部長、常務執行役員などを経て、2022年6月より現職。
江草 康二 取締役 電通出身。テー・オー・ダブリュー代表取締役社長兼CEOを経て、2022年6月より現職。
家氏 太造 取締役 博報堂出身。カカクコム・インシュアランス代表取締役社長等を経て、2022年6月より現職。
中野 智司 取締役 電通出身。電通マネジメントサービス代表取締役社長等を経て、2023年6月より現職。
山口 哲史 取締役 ソニー出身。同社メディア事業部長兼テクノロジーサービス統括部長等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、鈴木咲江子(フジテレビジョン経営企画局経営企画部長)、岩倉正和(一橋大学大学院教授)、上村はじめ(ガバナンスクラウド代表取締役)、William Ireton(ワーナーエンターテイメントジャパン代表取締役社長)、ロケット和佳子(あずさ監査法人パートナー)、小野直路(NHK副会長)、長坂武見(ソニー業務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「広告プロダクション」「コンテンツプロダクション」「メディア」「プロパティ」および「その他」事業を展開しています。

**広告プロダクション**
テレビCM制作やプロモーション企画・制作などを行っています。主な顧客は広告主や広告代理店です。
収益は、CMやプロモーション制作の対価として広告主等から受け取る制作費等が中心です。運営は主に東北新社、株式会社二番工房、株式会社ソーダコミュニケーションズなどが行っています。

**コンテンツプロダクション**
CG・VFXなどのデジタルプロダクション業務、映画・テレビ番組の制作、日本語版制作等を行っています。放送局や映画会社等が主な顧客です。
収益は、映像コンテンツの制作受託費や技術提供料などから構成されます。運営は主に東北新社、株式会社オムニバス・ジャパンなどが担っています。

**メディア**
CS・BS放送チャンネルの運営や、番組の編成・販売、放送関連業務の受託を行っています。視聴者やプラットフォーム事業者が顧客となります。
収益は、視聴者からの視聴料収入や広告収入、放送業務の受託料などが柱です。運営は主に東北新社、株式会社ファミリー劇場、株式会社囲碁将棋チャンネルなどが行っています。

**プロパティ**
映像コンテンツの共同企画・製作、版権管理、キャラクターライセンス、劇場・テレビ配給事業などを展開しています。
収益は、コンテンツの使用許諾によるライセンス料や配給収入などが主な源泉です。運営は主に東北新社が行っています。

**その他**
映像用メディアの販売、インテリア商品の輸入販売、酒造・酒販事業などを行っています。
収益は、商品販売による売上代金です。運営はナショナル物産株式会社、株式会社木村酒造などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の推移を見ると、売上高は500億円台で推移してきましたが、当期は400億円台後半へ減少しました。一方で、利益面では変動が見られますが、当期は大幅な増益となっています。特に当期利益は過去最高水準を記録しており、事業ポートフォリオの見直しや資産売却などの戦略的な動きが数字に表れています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 529億円 528億円 559億円 528億円 457億円
経常利益 27億円 55億円 48億円 22億円 33億円
利益率(%) 5.1% 10.4% 8.6% 4.2% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 20億円 27億円 62億円 164億円

(2) 損益計算書


当期は前期と比較して減収となりましたが、売上総利益率および営業利益率は改善傾向にあります。特に営業利益率は上昇しており、収益性の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 528億円 457億円
売上総利益 138億円 125億円
売上総利益率(%) 26.1% 27.3%
営業利益 27億円 27億円
営業利益率(%) 5.1% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が30億円(構成比30%)、減価償却費が5億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


広告プロダクション事業は増収増益となり好調を維持していますが、メディア事業やコンテンツプロダクション事業では減収となりました。プロパティ事業は黒字転換を果たしています。全体としては、主力事業の堅調さと構造改革による特定事業の縮小が混在しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
広告プロダクション 272億円 287億円
コンテンツプロダクション 95億円 82億円
メディア 109億円 53億円
プロパティ 18億円 14億円
その他 35億円 20億円
調整額 - -
連結(合計) 528億円 457億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

東北新社は、営業活動による資金は微増にとどまりましたが、これは一時的な特別退職金の支払い等があったためです。一方で、有形固定資産や投資有価証券の売却、定期預金の払戻し等により、投資活動では大幅な資金増加を実現しました。財務活動では配当金の支払い等により資金が減少しました。これらの結果、期末の現金及び現金同等物は前連結会計年度末に比べ大きく増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 61億円 0.4億円
投資CF 41億円 232億円
財務CF -22億円 -66億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「総合的なクリエイティブプロダクション」として、社会の多様なニーズに応え、質の高い映像・クリエイティブコンテンツを制作するという本質的な価値を追求することにより成長を図ることを基本方針としています。

(2) 企業文化


「PCTS(ピクツ)」を精神として掲げています。「Passion(ほとばしる情熱)」「Creativity(豊かな想像力)」「Technology(最新技術の追求)」「Speed(変化への迅速な対応)」の4要素を重視し、プロフェッショナルとして自律自走する人材の育成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2029年3月期までの中期経営計画を推進しており、「健全な収益性を伴った“総合クリエイティブプロダクション”」を目指す姿として掲げています。収益力の強化とともに、生活全般へのビジネスフィールド拡大を目指しています。
* ROE(自己資本利益率):10.0%(当期実績)
* DOE(純資産配当率):2.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画において、「構造改革」「新たな収益基盤の確保」「財務・資本戦略の実行」を重点課題としています。組織再編や不採算事業の整理による収益性向上を図るとともに、M&Aを含む積極的な事業開発・投資を行い、映像・クリエイティブシーンの生活全般への拡大を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


クリエイティブの質を重視し、人的資本を企業競争力の源泉と位置付けています。プロフェッショナルとして主体的に決断し自走する人材の育成を基本とし、組織・人員の再編成とともに、高度な専門スキルを持つ人材の採用や育成に注力し、少数精鋭で高い競争力を実現することを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.2歳 12.0年 6,000,000円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.2%
男性育児休業取得率 42.9%
男女賃金差異(全労働者) 74.2%
男女賃金差異(正規雇用) 72.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 82.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児休業からの復帰率(97.1%)、中途採用数 女性比率(60.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業戦略に関するリスク


中期経営計画の推進において、M&Aや新規投資が想定通りに進まない場合や、投資先の環境悪化等により計画が未達となる可能性があります。また、広告や映像コンテンツ市場の環境変化、技術革新に適応できない場合、競争力が低下し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 減損損失に関するリスク


新規事業や買収、資本業務提携などが計画通りの収益を生まない場合、減損処理が必要となり、業績に悪影響を与える可能性があります。投資案件についてはモニタリングを実施しリスク軽減に努めていますが、事業計画を下回る事態が生じれば財務状態に影響します。

(3) 情報セキュリティ・サイバーセキュリティに関するリスク


業務で情報システムやネットワークを活用しているため、システム障害やサイバー攻撃が発生した場合、業務停止やデータ漏洩等により社会的信用や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。セキュリティ対策やサイバーリスク保険への加入等の対策を講じています。

(4) 個人情報保護に関するリスク


プロモーションや配信事業等で個人情報を扱っており、漏洩等が発生した場合は社会的信用の低下や業績への悪影響が懸念されます。法令遵守や社員教育、プライバシーマークの取得等を通じて管理を徹底しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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