※本記事は、株式会社クエスト の有価証券報告書(第61期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. クエストってどんな会社?
同社は、システム開発からITインフラの構築・運用までを一貫して提供する独立系の情報サービス企業です。
■(1) 会社概要
1965年に株式会社京浜計算センターとして設立され、データエントリー業務からスタートしました。1988年に商号を現在のクエストに変更し、システム開発や運用管理へ事業を拡大。2002年にJASDAQ市場へ上場しました。2022年の市場区分見直しに伴い、東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。2025年4月には、システム開発を行う株式会社セプトを完全子会社化し、事業規模を拡大しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は970名(単体954名)です。筆頭株主は創業者の内田廣氏で、第2位はクエスト従業員持株会、第3位は個人株主となっています。安定株主として創業者や従業員持株会が名を連ねており、独立系の経営体制を維持しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 内田 廣 | 15.63% |
| クエスト従業員持株会 | 5.94% |
| 花輪 祐二 | 5.47% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役 社長執行役員は鎌田 智氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 清澤 一郎 | 代表取締役会長 | 1985年ソニー駐在。同社IS戦略統括部長等を経て、2009年同社入社。2016年代表取締役社長に就任。2020年代表取締役会長、2024年社長執行役員を兼務し、2025年6月より現職。 |
| 鎌田 智 | 取締役(代表取締役)社長執行役員 | 1989年ソニーシステムデザイン入社。ソニーグローバルソリューションズ部門長等を経て、2020年同社執行役員。DX推進部担当等を経て、2025年6月より現職。 |
| 鈴木 裕二 | 取締役副社長執行役員 | 2001年ティ・アイ・ディ入社。2004年同社入社。インフラソリューション事業部長、ICTソリューション事業本部長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 兒島 賢 | 取締役上席執行役員 | 1988年同社入社。システムサービス事業部長等を経て2008年取締役就任。2020年上席執行役員。公共・エネルギー事業部担当兼DX推進部担当として現職。 |
| 金井 淳 | 取締役上席執行役員 | 1983年東京芝浦電気(現東芝)入社。同社人事部長等を経て、2018年同社取締役就任。2020年上席執行役員。人事総務部担当等を経て、2025年6月より現職。 |
| 小泉 裕 | 取締役上席執行役員 | 1986年ソニー入社。同社経営企画部統括部長等を経て、2020年同社取締役上席執行役員就任。経営企画管理部担当兼経理部担当として現職。 |
| 加藤 直子 | 取締役上席執行役員 | 1982年東京芝浦電気(現東芝)入社。エルゴコンサルティング社長等を経て、エヌ・ケイ代表取締役社長。2024年同社取締役上席執行役員に就任し現職。 |
社外取締役は、佐藤 裕之(東芝デバイス&ストレージ社長)、内野 一博(元東芝プラントシステム取締役)、宗司 ゆかり(日本監査役協会常任理事)、難波 満(東京駿河台法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「システム開発」「インフラサービス」および「その他」事業を展開しています。
■(1) システム開発
半導体、金融、通信、公共など幅広い業種の顧客に対し、ERPやCRM等のソリューション導入支援や、業務システムのコンサルティングから設計、開発、保守までの一連のサービスを提供しています。
収益は、顧客からのシステム開発案件の受託や、技術者派遣による対価として得ています。運営は主にクエストが主体となって行っていますが、連結子会社のエヌ・ケイもソフトウェア開発を行っています。
■(2) インフラサービス
クラウド、ネットワーク、セキュリティ等のITインフラ領域において、ソリューションの提案から設計、構築、保守、運用監視までの一貫したサービスを提供しています。
収益は、インフラ構築プロジェクトの対価や、運用保守サービスの契約に基づく継続的な料金として顧客から受け取っています。運営は主にクエストが担っており、顧客のIT環境を支える基盤サービスを提供しています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、商品販売業務などを行っています。
機器やソフトウェアライセンスの販売等による収益が主となります。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近4期の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりで推移しており、事業規模の拡大が続いています。利益面でも、経常利益は10億円台から11億円台へと増加傾向にあり、利益率も7%台半ばで安定しています。当期純利益も増益基調を維持しており、全体として堅調な成長トレンドを示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | 142億円 | 142億円 | 149億円 |
| 経常利益 | - | 10億円 | 11億円 | 11億円 |
| 利益率(%) | - | 7.3% | 7.5% | 7.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 6億円 | 8億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率、営業利益率ともに前期と同水準を維持しており、増収効果がしっかりと利益に結びついています。コストコントロールを行いつつ、事業拡大を実現していることが分かります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 142億円 | 149億円 |
| 売上総利益 | 26億円 | 27億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.4% | 18.4% |
| 営業利益 | 10億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 7.0% | 7.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.1億円(構成比29.9%)、役員報酬が1.9億円(同11.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
システム開発事業は、半導体や物流分野の顧客からの受注増により増収増益となりました。インフラサービス事業は、半導体・製造分野向けのサービスが増加し増収となったものの、事業基盤強化に伴う間接費配賦の影響等により減益となりました。全社費用の配賦後営業利益は全体として増加しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| システム開発 | 86億円 | 93億円 | 14億円 | 17億円 | 17.8% |
| インフラサービス | 56億円 | 56億円 | 9億円 | 9億円 | 15.5% |
| その他 | 0.1億円 | 0.5億円 | 0.0億円 | 0.1億円 | 20.5% |
| 調整額 | -0.3億円 | -0.0億円 | -14億円 | -15億円 | - |
| 連結(合計) | 142億円 | 149億円 | 10億円 | 11億円 | 7.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | 6億円 |
| 投資CF | -0.0億円 | 1億円 |
| 財務CF | -3億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「技術を探究し、価値を創造し、お客様とともに成長する」を企業理念(Philosophy)として掲げています。また、存在意義(Purpose)として「技術と創造力で人と社会の安心と幸せを支え続けます」を定め、「あなたに信頼されるITサービス」のリーディングカンパニーとなることを経営目標(Vision)としています。
■(2) 企業文化
ブランドスローガンとして「Quest For More(もっと探究・もっと探求)」を掲げ、誠実な精神と創造力でお客様の期待を超える価値を提供し、新しい市場や技術に挑戦する姿勢を重視しています。また、「Digital Future As One」をブランドプロミスとし、ステークホルダーと共にデジタルの未来へ進むという一体感を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度の長期目標として「Quest Vision2030」を策定し、売上高200億円超、企業価値250億円超を目指しています。その通過点として、「2024-2026年度・中期経営計画」では以下の目標を設定しています。
* 2026年度 売上高:168億円
* 2026年度 営業利益:13億50百万円
* 2026年度 ROE:11%超
■(4) 成長戦略と重点施策
「Quest Vision2030」の実現に向け、顧客産業を「重点強化領域」「安定成長領域」「社会課題解決領域」に分類し、リソースの最適配分を進めています。また、M&Aを含めたITプロフェッショナル人材の獲得と育成、新たな強みとしての「ソリューションサービス」の強化、そして企業価値向上に向けたQCSV(Quest Creating Shared Value)への取り組みを推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「働きがいあふれる職場」づくりを目指し、「成長意欲・チャレンジ精神を促す人材育成の仕組みづくり」「多様な人材が活躍する働きがいのある職場環境・風土づくり」「成果に応じた納得性の高い人事処遇制度の改善・ブラッシュアップ」の3つを柱としています。高度なスキルを持つ人材の確保・育成のため、教育投資やキャリア形成支援を継続的に行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.5歳 | 11.4年 | 5,809,090円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.9% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 68.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の育児休業取得率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材の確保に対するリスク
同社の事業は専門知識や高度なスキルを持つ人材に依存しています。人材獲得競争が激化する中で、技術者の採用、定着、育成が計画通りに進まない場合、事業の拡大が制約され、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 事業環境の変化に伴うリスク
経済状況や顧客企業のIT投資動向の変化により、受注が影響を受ける可能性があります。同社は特定の産業に偏らないようポートフォリオを管理していますが、顧客の投資抑制等が起きれば、事業活動や業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 不採算案件が発生するリスク
プロジェクトの難易度や予期せぬトラブルにより、想定外のコストが発生するリスクがあります。品質管理強化や受注可否の慎重な判断を行っていますが、低収益や不採算プロジェクトが発生した場合、同社の業績に悪影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。