※本記事は、クエストの有価証券報告書(第62期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. クエストってどんな会社?
情報システム開発からITインフラ構築まで一貫した情報サービスを提供し、顧客のDXを支援するIT企業です。
■(1) 会社概要
1965年にデータエントリー業務受託を目的として設立され、1970年よりソフトウェア開発事業を開始しました。2002年にJASDAQ市場へ株式上場を果たしています。近年はM&Aを積極的に推進しており、2022年にエヌ・ケイ、2025年にセプトを完全子会社化し、エンジニアリソースと事業規模の拡大を続けています。
現在は連結で1,092名、単体で986名の従業員を擁する体制で事業を展開しています。大株主の状況としては、筆頭株主は創業関係者とみられる内田廣氏で、第2位は従業員の福利厚生や資産形成を目的とするクエスト従業員持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 内田廣 | 16.33% |
| クエスト従業員持株会 | 7.38% |
| 花輪祐二 | 5.72% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役会長は清澤一郎氏、代表取締役社長執行役員は鎌田智氏が務めています。社外取締役比率は36.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 清澤一郎 | 代表取締役会長 | 1985年ソニー駐在。1996年同社IS戦略統括部長等を経て、2009年同社へ執行役員として入社。システムソリューション第一事業部長等を経て2016年に代表取締役社長へ就任。2025年より現職。 |
| 鎌田智 | 取締役(代表取締役)社長執行役員ビジネスイノベーション推進部担当内部監査室担当 | 1989年ソニーシステムデザイン(現ソニーグローバルソリューションズ)入社。2020年同社執行役員として入社。IT Value-up事業部長等を歴任し、2025年より現職。 |
| 鈴木裕二 | 取締役副社長執行役員 | 2001年ティ・アイ・ディサン・サートグループ入社。2004年同社システムサービス事業部部長として入社。インフラソリューション事業部長等を歴任し、2025年より現職。 |
| 兒島賢 | 取締役上席執行役員公共・エネルギー事業部担当DX推進部担当中部支社担当 | 1988年同社入社。2003年ITセンター長、2004年執行役員を経て2008年取締役に就任。ICTソリューション事業本部担当などを歴任し、2024年より現職。 |
| 金井淳 | 取締役上席執行役員人事総務部担当法務コンプライアンス室担当ダイバーシティ&インクルージョン推進室担当エヌ・ケイ取締役 | 1983年東京芝浦電気(現東芝)入社。同社人事部長等を経て東芝総合人材開発代表取締役社長を歴任。2018年同社取締役に就任し、2025年より現職。 |
| 小泉裕 | 取締役上席執行役員経営企画管理部担当経理部担当サステナビリティ担当セプト取締役 | 1986年ソニー入社。同社コーポレートテクノロジー戦略部門経営企画部統括部長等を経て2020年同社取締役に就任。2024年より現職。 |
| 加藤直子 | 取締役上席執行役員エヌ・ケイ代表取締役社長 | 1982年東京芝浦電気(現東芝)入社。エルゴコンサルティング代表取締役社長等を経て、2013年エヌ・ケイ入社。2024年同社取締役に就任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、佐藤裕之(元東芝デバイス&ストレージ代表取締役社長)、内野一博(元東芝プラントシステム取締役上席常務)、宗司ゆかり(クラシル常勤監査役)、難波満(東京駿河台法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報サービス事業」の単一セグメントですが、事業を2つのカテゴリーに分けて展開しています。
■(1) インダストリー事業
半導体、製造、金融、情報通信、エンタテインメント、公共・社会、移動・物流、ヘルスケア・メディカルなどの幅広い業種の顧客を対象に、業務システムのコンサルティングから要件定義、設計、開発、保守に至る一連のシステム開発サービスを提供しています。
顧客企業のIT投資ニーズに応え、システム開発における技術役務の提供や請負による対価を収益源としています。これらサービスの運営は主に同社および連結子会社のエヌ・ケイ、セプトが一体となって行っています。
■(2) ソリューションサービス事業
急成長する中堅企業と大企業関連会社を対象とし、顧客の経営課題解決につながるITコンサルティングおよびアプリケーションサービスを軸とした付加価値の高いITサービスを提供しています。あわせて、クラウドやセキュリティを含むITインフラソリューション事業も展開しています。
ITインフラの構築や運用管理、クラウドサービスの提供、セキュリティ対策などに伴うサービス利用料や役務提供の対価を収益源としています。運営は主に同社が中心となり、専門的なITインフラソリューションを顧客の現場に密着して提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去4期間の業績は、安定的な成長軌道を描いています。売上高は着実な増加傾向にあり、特に直近の事業年度ではM&Aの効果や重点領域での案件拡大により大幅な増収を達成しました。経常利益も毎年10億円以上の水準を維持しつつ堅調に推移しており、継続的に利益を創出する安定した収益基盤を確立しています。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 142億円 | 142億円 | 149億円 | 178億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 11億円 | 11億円 | 12億円 |
| 利益率(%) | 7.3% | 7.5% | 7.4% | 6.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 8億円 | 8億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が約19%の大幅増収となったことに伴い、売上総利益も増加しています。一方で、人的資本への積極的な投資や事業所拡張等の未来投資を実行した影響などにより、売上総利益率および営業利益率は前期間と比較して低下傾向となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 149億円 | 178億円 |
| 売上総利益 | 27億円 | 30億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.4% | 17.0% |
| 営業利益 | 11億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 7.1% | 6.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比30%)、役員報酬が2億円(同12%)を占めています。売上原価は148億円で、売上原価合計に対する構成比は100%となります。
■(3) セグメント収益
同社は「情報サービス事業」の単一セグメントであるため、全社売上高の推移を示しています。重点強化領域である半導体分野や安定成長領域の金融分野における新規案件受注が拡大し、加えて子会社化したセプトの貢献もあり、売上高は前期間から大幅な増収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 情報サービス | 149億円 | 178億円 |
| 連結(合計) | 149億円 | 178億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | 5億円 |
| 投資CF | 1億円 | -1億円 |
| 財務CF | -3億円 | -9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も72.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は企業理念として「技術を探究し、価値を創造し、お客様とともに成長する」を掲げています。また、存在意義(Purpose)として「技術と創造力で人と社会の安心と幸せを支え続けます」と定義し、価値を共創するデジタルデータ社会の実現に向けて、すべての取引先に信頼されるITサービスのリーディングカンパニーとなることを経営目標(Vision)として定めています。
■(2) 企業文化
同社はブランドスローガンに「Quest For More」を掲げ、誠実な精神で顧客業務を効率化する「探究」と、新しい技術獲得に挑戦する「探求」の姿勢を重視しています。また、提供価値(Values)として、技術を創意工夫し人の力を補完補強するITサービスを真心を込めて提供することを定めており、「Digital Future As One」の約束のもと、ステークホルダーと一体となってデジタルな未来へ邁進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2030年度に向けた中長期計画「Quest Vision2030」を策定し、持続的な成長と高収益体質の維持、企業価値向上に向けた取り組みを進めています。この実現のため3か年ごとの中期経営計画を設定しており、「2024-2026年度・中期経営計画」の最終年度となる2026年度において、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:183億円
* 営業利益:13億円
* 営業利益率:6.9%
* ROE:11.1%
* 2030年度目標:売上高200億円超、企業価値250億円超
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は中長期ビジョンの飛躍的な成長を念頭に、豊富な専門知識と高度なスキルを有するITプロフェッショナル人材の獲得と育成に注力しています。ビジネスパートナーとの連携やM&Aを含めた体制強化を進めるとともに、常駐型サービスで培った経験を生かして運用保守の自動化を進め、新たな強みとして「ソリューションサービス」を強化していく方針です。また、重点領域への投資等を通じて収益性の向上を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本を重要な経営基盤と位置づけ、「働きがいにあふれる職場環境づくり」と「エンジニアの獲得強化」の2軸で優秀な人材が集まる会社を目指しています。具体的には、「成長意欲・チャレンジ精神を促す人材育成の仕組みづくり」「多様な人材が活躍する働きがいのある環境づくり」「成果に応じた納得性の高い人事処遇制度の改善」の3つの柱を掲げ、自律したキャリア意識を持つプロフェッショナル人材の育成を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.6歳 | 11.6年 | 5,965,656円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.2% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 85.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 74.6% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取り組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性従業員の育児休業取得日数(152日)、女性の新卒採用比率目標(30%超)、経験者採用比率の目標(50%程度)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材の確保に対するリスク
同社グループの事業は多くの先端技術に深く関連しており、豊富な専門知識と高度なスキルを有する人材の確保が重要です。技術者の獲得や定着、ビジネスパートナーとの連携強化に努めていますが、人材獲得競争の激化により計画通りに人材を確保できない場合、事業の発展拡大が制約され、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 不採算案件が発生するリスク
システム開発における品質管理強化や収益性向上に取り組んでおり、高リスク案件の受注可否の慎重な判断や進捗のモニタリング、専門部署による品質管理活動を行っています。しかしながら、案件の難易度や予期せぬバグの発生等によって想定外のコストが生じ、低収益または不採算プロジェクトとなった場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 個人情報および情報セキュリティに関するリスク
サイバー攻撃や情報機器の紛失等による情報流出のリスクに対し、同社はプライバシーマークやISMS認証を取得し、統合セキュリティ委員会を通じた情報保護強化に努めています。しかし、これらの対策にもかかわらず機密情報の漏洩や喪失等が生じた場合、社会的信用やブランドイメージの低下、損害賠償責任の発生により業績に影響を及ぼす可能性があります。



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