エヌアイデイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エヌアイデイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する独立系システムインテグレーターです。システム開発とシステムマネジメントを主軸に、金融・通信・公共など幅広い分野で事業を展開しています。直近の決算では、DX関連需要の取り込み等により増収増益を達成しました。自己資本比率が高く、安定した財務基盤を有しています。


※本記事は、株式会社エヌアイデイ の有価証券報告書(第58期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エヌアイデイってどんな会社?


システム開発事業とシステムマネジメント事業を柱とする独立系IT企業であり、ヒューマンウェアの理念のもと安定成長を続けています。

(1) 会社概要


1967年に株式会社京葉計算センターとして設立され、データエントリー事業を開始しました。1972年に合併を経て現商号となり、2003年にJASDAQ市場へ上場しました。その後、子会社の再編を進め、2022年には東京証券取引所の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行するとともに、テニックを子会社化するなど事業基盤の強化を図っています。

同グループの従業員数は連結で1,652名、単体で1,076名です。筆頭株主は代表取締役社長の小森俊太郎氏で、第2位は取締役会長の小森孝一氏、第3位は従業員持株会となっており、創業者一族と従業員が主要株主となっています。

氏名 持株比率
小森 俊太郎 19.54%
小森 孝一 10.78%
エヌアイデイ従業員持株会 9.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は小森俊太郎氏が務めています。社外取締役比率は14.3%(取締役7名中1名)です。

氏名 役職 主な経歴
小森 俊太郎 代表取締役社長 2000年同社取締役財務担当、2007年常務取締役兼事業本部長などを経て、2015年より現職。
小森 孝一 取締役会長 1967年同社設立代表取締役社長。1993年代表取締役社長、2005年代表取締役会長を経て、2019年より現職。
盛満 敏昭 常務取締役DX事業本部長 1979年同社入社。ネットワークソリューション事業部長などを経て、2019年常務取締役就任。NID東北代表取締役を兼務。
石井  廣 取締役CX事業本部長 1987年子会社入社。通信システム事業部長、NID・MI代表取締役、NID air代表取締役などを歴任し、2012年より現職。
小菅 宏 取締役コーポレートデザイン本部長 1980年ナショナルシステムエンジニアリング(現NTTデータMSE)入社。2011年同社入社後、ICTイノベーション事業部長等を経て2017年より現職。
酒井 真一 取締役DX事業本部副本部長兼インシュアランスデジタルデザイン事業部長 1988年同社入社。フィナンシャルシステム事業部長、デジタルビジネスデザイン事業部長などを経て、2019年より現職。


社外取締役は、石井慎一(弁護士・石井法律事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システム開発事業」「システムマネジメント事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) システム開発事業


金融、情報・通信、公共・社会インフラ等の分野の顧客を対象に、組込みソフトウエア、通信ソフトウェア、金融ビジネスソフトウエアの設計・開発を幅広く提供しています。

収益は、顧客からのシステム開発案件の受託開発費や技術支援料等から得ています。運営は主にエヌアイデイが行い、NID・MI、NID東北、テニックも事業を展開しています。

(2) システムマネジメント事業


運輸・通信、金融・保険、官公庁・団体等の分野の顧客を対象に、各種サーバー等のネットワークに関するシステム構築、インフラ構築、セキュリティーサービス、システム保守・運用等のサービス全般を提供しています。

収益は、システムの構築費用や、運用・保守サービスに対する対価として得ています。運営は主にエヌアイデイが行っています。

(3) その他


データエントリーサービス等を提供するデータソリューション事業、スマートデバイス向けアプリケーションやパッケージを含めたプロダクト製品開発を提供するプロダクト事業、並びに人材派遣事業を展開しています。

収益は、データ処理サービスの利用料、プロダクト販売収益、人材派遣料等から得ています。運営は、エヌアイデイ(プロダクト事業)、NID・MI(データソリューション事業、プロダクト事業)、NID air(人材派遣事業)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は177億円から250億円へと右肩上がりで推移しており、順調な事業拡大が続いています。経常利益も21億円から34億円へと増加傾向にあり、利益率も12%〜13%台の高い水準を維持しています。増収増益基調が継続しており、安定した成長を実現しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 177億円 183億円 204億円 226億円 250億円
経常利益 21億円 25億円 27億円 31億円 34億円
利益率(%) 12.1% 13.5% 13.4% 13.9% 13.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 11億円 16億円 15億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は約23%前後で安定しており、営業利益率も12%台を維持しています。原価管理や販管費のコントロールが適切に行われていることが伺え、収益性は安定的に推移しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 226億円 250億円
売上総利益 53億円 57億円
売上総利益率(%) 23.3% 22.8%
営業利益 28億円 31億円
営業利益率(%) 12.4% 12.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6億円(構成比24%)、役員報酬が3億円(同13%)を占めています。売上原価においては、労務費と経費(外注費等)が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収増益を達成しています。主力のシステム開発事業は売上が10%以上増加し、利益も堅調に伸びました。システムマネジメント事業は利益率が高く、10%を超える水準を確保しています。その他事業もデータソリューションや人材派遣が好調で、大幅な増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
システム開発事業 157億円 173億円 21億円 23億円 13.1%
システムマネジメント事業 53億円 58億円 5億円 6億円 10.3%
その他 16億円 19億円 2億円 2億円 11.1%
連結(合計) 226億円 250億円 28億円 31億円 12.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

エヌアイデイのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

同社は、営業活動を通じて安定的に資金を生み出しており、事業活動の基盤を強化しています。一方で、将来の成長に向けた設備投資やM&Aなどの投資活動にも積極的に資金を投じています。財務活動においては、借入金の返済や配当金の支払いなど、株主還元や財務基盤の安定化に向けた動きが見られます。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物は増加傾向にあり、財務的な健全性を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 18億円 28億円
投資CF -1億円 -5億円
財務CF -6億円 -3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは企業理念として、「<ヒューマンウェア>人が真ん中のしあわせな社会を知恵と技術で拓いていきます。」を掲げています。ITを駆使して人と情報技術が融合したより良い社会の形成を具現化することを使命とし、顧客の価値実現に貢献するために、常に顧客の一歩先を見通し付加価値を提供することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同グループは、ITを駆使して人と情報技術が融合したより良い社会の形成において、なくてはならない確固たる存在となることを目指しています。社員の多様性や個性を尊重し、安心して働ける職場環境を整備し、コミュニケーションを重視した活き活きした組織をつくることを行動基準として定めています。

(3) 経営計画・目標


同グループは、持続的な成長を続けることで企業価値を高めることを経営目標としています。当面の目標として、以下の指標を重視しています。

* 営業利益率:10%以上を継続して維持

(4) 成長戦略と重点施策


同グループは、既存事業領域における競争優位性を高めつつ、DX化等の領域においても信頼されるパートナーとしての地位を確立・強化することを成長戦略としています。新たな付加価値を提供する新規事業の創出や、業務改革による生産性の向上、アライアンス強化による販売チャネルの拡大に取り組んでいます。

* 新しい事業ポートフォリオの開拓(IT技術革新への適応)
* 既存事業の収益性の拡大(人材育成、品質・生産性向上)
* 営業戦略の拡充(顧客リレーション強化、新規開拓)
* 人材確保の強化(OJT、研修、通年採用)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同グループは「ヒューマンウェア」の理念に基づき、社員の育成と新たな人材の確保を重視しています。OJTや社外・社内研修による技術力の向上と先進技術の共有、階層ごとの体系的なキャリア開発プラン等を通じて人材育成に努めるとともに、募集方法の多様化や選考方法の工夫により優秀な人材の確保に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.7歳 14.6年 5,781,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.6%
男性育児休業取得率 70.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.6%
男女賃金差異(正規雇用) 77.3%
男女賃金差異(非正規) 46.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術社員の研修参加率(72.5%)、離職率(4.7%)、新卒採用における女性採用比率(28.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 不採算プロジェクト発生のリスク


システム開発において、見積りの甘さやプロジェクト進行中の突発的な事故等により、原価が受注額を上回り不採算となる可能性があります。また、品質低下によるクレームや納期遅延に伴う損害賠償が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。同社はプロジェクトマネジメント教育や見積検討委員会等により対策を講じています。

(2) 外部要因による受注減のリスク


受注先は大手企業や官公庁が中心ですが、為替、景気悪化、政治動向、自然災害等の外部要因により顧客がシステム投資を抑制した場合、受注額が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は新技術・新領域への事業展開や、新たな市場・顧客への展開によりリスク分散を図っています。

(3) サービス価格(単価)の引き下げのリスク


情報サービス業界における過当競争や、海外への発注増加等により、価格競争が激化し単価引き下げ圧力が強まる可能性があります。これにより業績に影響が出るリスクがあります。同社はISO9001に基づく品質保証や人材育成により、高付加価値な成果物を提供することで価格維持に努めています。

(4) 人材の確保や育成に関するリスク


事業成長には優秀なエンジニアやキーパーソンの確保が不可欠ですが、これらを十分に確保・育成できない場合、成長や業績に影響が及ぶ可能性があります。また、採用コストや教育研修費の増加、ビジネスパートナーとの関係維持が困難になった場合も、業績や受注拡大に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。