※本記事は、株式会社ASJ の有価証券報告書(第42期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ASJってどんな会社?
同社グループは、自社サーバー・ソフトウエア開発を強みとするクラウドサービスやEC事業を展開するネットサービス企業です。
■(1) 会社概要
1984年に設立され、1996年にホスティングサービスを開始しました。2003年に東証マザーズへ上場し、その後、決済代行やグループウェア等のサービスを拡充しています。2016年にはアイテックスを子会社化して体制を強化し、2024年10月には新拠点「姫路ラボ&サーバセンター」を竣工させ、事業基盤の拡大を図っています。
同社グループの従業員数は連結147名、単体53名です。筆頭株主は創業者の丸山治昭氏で、第2位は公益財団法人ASJ財団です。第3位には上田八木短資が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 丸山 治昭 | 24.80% |
| 公益財団法人ASJ財団 | 15.00% |
| 上田八木短資 | 2.59% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長Co-CEO&COOには青木邦哲氏が就任しています。社外取締役比率は約27%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 丸山 治昭 | 代表取締役会長Co-CEO | 1984年同社設立代表取締役社長。2005年会長兼社長を経て、2023年4月より現職。アイテックス取締役会長を兼任。 |
| 青木 邦哲 | 代表取締役社長Co-CEO&COO | 1999年入社。CFO、COOを歴任し、2023年4月より現職。アイテックス代表取締役社長を兼任。 |
| 沼口 芳朗 | 専務取締役最高技術責任者技術本部長 | 2000年入社。2005年常務取締役CTOを経て、2008年より現職。アイテックス取締役副社長を兼任。 |
| 田代 博之 | 取締役事業推進本部長 | 1999年入社。2008年より取締役。ASJコマース取締役を兼任。 |
| 星 俊秀 | 取締役開発部長 | 1998年入社。2008年より取締役。イー・フュージョン取締役を兼任。 |
| 仁井 健友 | 取締役社長室長IR室長DX・セキュリティ推進室長 | 2000年入社。2008年より取締役。ASJコマース取締役等を兼任。特定社会保険労務士。 |
| 津崎 博久 | 取締役管理本部長 | 1991年協和埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)入社。支店長を経て2023年同社入社。2024年6月より現職。 |
| 田村 公一 | 取締役(常勤監査等委員) | 1986年入社。2008年常勤監査役を経て、2015年より現職。 |
社外取締役は、安永嵩(税理士)、石井裕二(税理士)、奥脇貞美(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ネットサービス事業」の単一セグメントですが、サービスの内容により主に以下の2つに分類して事業を展開しています。
■(1) クラウドインテグレーションサービス
自社保有のデータセンターを基盤とし、主に自社開発ソフトウエアによるHRTechサービス、決済代行サービス、インターネットグループウェア等のクラウドサービスを提供しています。顧客の要望に応じたカスタマイズや、複数サービスの連携による統合ソリューションが特徴です。
収益は、顧客からのクラウドサービス利用料や開発費等が中心です。運営は同社および連結子会社のアイテックス、イー・フュージョンなどが担っており、開発から運用までの大半をグループ内で内製化することで、高品質かつ安価なサービス提供を実現しています。
■(2) ECサービス
「楽天市場」や「Amazon.co.jp」などの大手インターネットショッピングモールに出店し、ペットケア商品、ウェルネスケア商品、日用品、化粧品などを一般消費者向けに販売しています。また、自社運営サイトを通じたEC事業者向けのインターネット卸売も行っています。
収益は、消費者への商品販売による代金や、事業者への卸売代金から得ています。運営は主に連結子会社のASJコマースが中心となって展開しており、独自の在庫・受注管理システムとグループ保有の物流拠点を連携させ、受注から出荷までをワンストップで管理しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は25億円から28億円前後で推移しています。利益面では、2022年3月期に大幅な損失を計上しましたが、その後は回復基調にあり、直近の2025年3月期には税引前利益1.6億円、親会社所有者帰属当期利益2.5億円を達成し、利益率は8.9%まで改善しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 25.1億円 | 24.9億円 | 27.5億円 | 28.5億円 | 27.4億円 |
| 税引前利益 | 0.5億円 | -4.8億円 | 0.8億円 | 1.1億円 | 1.6億円 |
| 利益率(%) | 2.1% | -19.3% | 3.0% | 3.9% | 6.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.4億円 | -4.8億円 | 0.6億円 | 1.1億円 | 2.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期比で減少しましたが、売上総利益はほぼ横ばいを維持しています。一方、営業利益は前期の1.0億円から1.6億円へと大きく増加しており、営業利益率も3.6%から5.9%へ改善しました。販売費及び一般管理費の削減効果などが寄与し、収益性が向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 28.5億円 | 27.4億円 |
| 売上総利益 | 11.1億円 | 11.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.0% | 40.8% |
| 営業利益 | 1.0億円 | 1.6億円 |
| 営業利益率(%) | 3.6% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が4.7億円(構成比49%)、その他経費が3.9億円(同40%)を占めています。売上原価においては、労務費やサーバー関連費用などが主要なコストとなっています。
■(3) セグメント収益
クラウドインテグレーションサービスは、HRTechサービスの推進等により堅調に推移したものの、仕入売上の減少により微減収となりました。ECサービスは、物価高による買い控えや競争激化の影響を受け、売上収益が減少しました。全体として減収となりましたが、利益面ではクラウドサービスの採算改善等が貢献しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| クラウドインテグレーションサービス | 18.1億円 | 17.9億円 |
| ECサービス | 10.3億円 | 9.5億円 |
| 連結(合計) | 28.5億円 | 27.4億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラスを維持し、本業で資金を稼いでいます。一方、投資CFはマイナスで、有形固定資産の取得などへの投資を行っています。財務CFはプラスで、長期借入等による資金調達を実施しました。これらは、営業キャッシュフローと調達資金を成長投資に充てる「積極型」のキャッシュフローパターンを示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.8億円 | 4.2億円 |
| 投資CF | -2.9億円 | -7.2億円 |
| 財務CF | -0.6億円 | 4.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、基本理念に則り、ネットサービス事業およびそれに付随するサービスを通じて新たなサービスを積極的に提供することにより、永続的な利益の計上と長期的な成長を目指しています。
■(2) 企業文化
基本理念に基づき、常に最新の技術を研究し、顧客のニーズに対応した新サービスを迅速に提供することで顧客満足度の向上を図る姿勢を重視しています。また、開発から運用までを内製化することで高品質かつ安価なサービス提供を実現する体制を構築しています。
■(3) 経営計画・目標
企業価値向上のため、資本効率性の指標としてROIC(投下資本利益率)とROE(自己資本利益率)を、安全性の指標としてDEレシオを、市場評価の指標としてPBR(株価純資産倍率)をモニタリングしています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「姫路ラボ&サーバセンター」の稼働率向上によるサブスクリプション収益の増加や、生成AI技術を活用した新事業領域への進出を目指しています。また、東証グロース市場の上場維持基準適合に向けた取り組みと並行し、東証スタンダード市場への区分変更および名証メイン市場への上場申請を行い、投資機会の拡大を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長のために人材確保と育成を重要課題とし、採用枠の拡大や積極的な採用活動を行っています。育成面では、外部研修や社内有資格者による研修、資格報奨金制度、eラーニング等を活用し、生成AIやDX人材、技術者のスキルアップを支援しています。また、柔軟な働き方の環境整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.7歳 | 14.9年 | 5,337,397円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(25.9%)、有給休暇取得率(75.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 他社との競合
クラウド市場において、資本力やマーケティング力を持つ他社グループの参入等により競争が激化し、同社サービスの差別化や競争力が維持できなくなった場合、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新への対応
インターネット関連技術の進化や業界標準の変化は急速であり、同社が想定しない技術革新や新サービスが普及して事業環境が急変した場合、自社開発を基本とする同社グループの事業及び業績に影響が出る可能性があります。
■(3) システム障害と安全対策
24時間体制での監視や物理的・技術的な安全対策を講じていますが、災害、事故、通信障害、不法行為等によりサービス提供が不能となった場合、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 上場維持基準への適合
東証グロース市場の上場維持基準のうち「時価総額基準」を満たしておらず、改善期間入りしています。新拠点開設やIR強化等を進めていますが、基準を満たせない場合や、申請中の市場変更等が承認されない可能性があります。



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