※本記事は、ASJ の有価証券報告書(第43期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ASJってどんな会社?
同社は自社データセンターと自社開発ソフトウエアを組み合わせた国産クラウドサービスを展開しています。
■(1) 会社概要
1984年2月に設立され、1996年4月に現在の主業務であるホスティングサービスを開始しました。2003年1月には東京証券取引所マザーズに上場し、事業を拡大してきました。2024年10月には新たな基盤となる姫路ラボ&サーバセンターを竣工し、2026年2月に東証スタンダード市場への市場変更および名証メイン市場への新規上場を果たしています。
同社グループの従業員数は連結で144名、単体で53名です。筆頭株主は創業者の丸山治昭氏で、第2位は公益財団法人ASJ財団、第3位は金融事業を展開するSBI証券となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 丸山治昭 | 25.27% |
| 公益財団法人ASJ財団 | 15.29% |
| SBI証券 | 3.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長Co-CEOを丸山治昭氏、代表取締役社長Co-CEO&COOを青木邦哲氏が務めています。社外取締役の比率は27.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 丸山治昭 | 代表取締役会長Co-CEO | 1984年2月に同社を設立し代表取締役社長に就任。2005年1月に代表取締役会長兼社長に就任。アイテックスの取締役会長を務め、2023年4月より現職。 |
| 青木邦哲 | 代表取締役社長Co-CEO&COO | 1999年4月に入社。2005年4月に常務取締役最高財務責任者、2013年7月に専務取締役最高執行責任者に就任。アイテックス代表取締役社長などを経て2025年6月より現職。 |
| 沼口芳朗 | 専務取締役最高技術責任者技術本部長 | 2000年9月に入社し、2001年4月に執行役員、2002年6月に取締役に就任。2005年4月に常務取締役最高技術責任者となり、2008年4月より現職。 |
| 田代博之 | 取締役事業推進本部長 | 1999年5月に入社。2008年6月に取締役に就任。ASJコマースやアイテックスの取締役も歴任し、2025年6月より現職。 |
| 星俊秀 | 取締役開発部長 | 1998年3月に入社。2008年6月に取締役に就任し、開発部長を務める。イー・フュージョンやアイテックスの取締役も歴任し、2025年6月より現職。 |
| 仁井健友 | 取締役社長室長IR室長DX・セキュリティ推進室長 | 2000年8月に入社し、2008年6月に取締役に就任。アイテックスの取締役などを経て特定社会保険労務士に登録し、現在に至る。 |
| 津崎博久 | 取締役管理本部長 | 1991年4月に協和埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)に入社し、各支店長を歴任。2023年4月に同社へ入社し、2024年6月より現職。グループ各社の取締役も兼任。 |
| 田村公一 | 取締役(常勤監査等委員) | 1986年2月に入社し、2008年6月に同社の常勤監査役に就任。グループ各社の監査役を歴任し、2015年6月より現職。 |
社外取締役は、安永嵩(元東京国税局)、石井裕二(元税理士法人世田谷税経センター代表社員税理士)、奥脇貞美(元鎌倉税務署長)です。
2. 事業内容
同社グループは、ネットサービス事業の単一セグメントとして展開しており、主要サービスは「クラウドインテグレーションサービス」と「ECサービス」に分類されます。
■(1) クラウドインテグレーションサービス
同社が保有する姫路ラボ&サーバセンターをはじめとする複数の自社データセンターを基盤として、主に自社開発のソフトウエアにより構築した各種クラウドサービスを提供しています。主力のHRTechサービスをはじめ、決済代行サービスやインターネットグループウェアなどの統合的なソリューションを展開しています。
顧客の多様な要望に対してカスタマイズを行い、サービス利用料や保守料金などのサブスクリプション売上、および開発・システムインテグレーション売上を収益源としています。運営は同社、アイテックス、イー・フュージョンが共同で行っています。
■(2) ECサービス
「楽天市場」「Amazon.co.jp」「Yahoo!ショッピング」などの大手インターネットショッピングモールに出店し、ペットケア商品、ウェルネスケア商品、日用品や化粧品などの様々な商品を一般消費者向けに販売しています。また、自社運営のWebサイトを通じ、EC事業者向けの卸売も行っています。
消費者からの商品購入代金やEC事業者向け卸売による販売代金を収益源としており、受注から出荷までのプロセスを独自のシステムと物流拠点で管理しています。運営は主にASJコマースが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は25億円から28億円規模で安定的に推移しています。税引前利益については、一時的に赤字を計上した時期もありましたが、その後は黒字に転換し、直近では先行投資の影響により減益となったものの、底堅い収益力を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 25億円 | 28億円 | 28億円 | 27億円 | 27億円 |
| 税引前利益 | -5億円 | 0.8億円 | 1.1億円 | 1.6億円 | 1.3億円 |
| 利益率(%) | -19.3% | 3.0% | 3.9% | 6.0% | 4.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -5億円 | 0.6億円 | 1.1億円 | 2.5億円 | 0.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益および売上総利益は、過去2期間において同水準を維持しています。営業利益率も約5%前後で推移しており、安定した収益構造となっています。当期は将来の成長に向けた先行投資を積極的に実施したことから、営業利益はわずかに減少しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 27億円 | 27億円 |
| 売上総利益 | 4億円 | 4億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.1% | 15.6% |
| 営業利益 | 1.6億円 | 1.3億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が5億円(構成比53.5%)と最も大きな割合を占め、次いで減価償却費及び償却費が0.2億円(同2.5%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社グループはネットサービス事業の単一セグメントで展開しています。当期は「姫路ラボ&サーバセンター」竣工後の新規サービス開発等に向けた先行投資を実施した影響で、減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ネットサービス事業 | 27億円 | 27億円 | 1.6億円 | 1.3億円 | 4.8% |
| 連結(合計) | 27億円 | 27億円 | 1.6億円 | 1.3億円 | 4.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえる健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.2億円 | 4.8億円 |
| 投資CF | -7.2億円 | -2.4億円 |
| 財務CF | 4.3億円 | -1.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「お客様の課題を発見し、解決へと導き、さらなる発展と働きやすい環境づくりを支援する」ことをVision(ビジョン)に掲げています。新たなサービスを積極的に提供することにより、永続的な利益の計上と長期的な成長を目指すことを基本方針として事業を展開しています。
■(2) 企業文化
同社グループでは、企業理念、VisionおよびMissionを深く理解し、自律的に挑戦する組織を構築することを基本方針としています。また、持続可能な社会の実現に向けた責任を果たすとともに、サステナビリティ活動を推進していくことを企業価値向上のための重要な施策と位置付けています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループでは、企業価値の向上を図るため、資本効率性の指標として主に「ROIC(投下資本利益率)」および「ROE(自己資本利益率)」をモニタリングしています。当期は将来の収益拡大に向けた先行投資を積極的に実施したため、今後は稼働率の向上や新規サービスの展開を通じて各指標の改善に向けた取り組みを進めています。
* ROIC:3.5%
* ROE:3.1%
* PBR:1.01倍
■(4) 成長戦略と重点施策
同社グループは、AI時代に対応したサイバーセキュリティ対策および事業継続体制(BCP)の強化に取り組んでいます。また、「姫路ラボ&サーバセンター」の稼働率向上により、ストック型売上収益の増加を見込んでおり、生成AI等を活用した新規事業領域やサイバーセキュリティ対策に関連する新規サービスの提供を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、持続的成長の中核は人的資本にあると認識し、人的資本投資を経営戦略の中核に位置付けています。お客様の課題に伴走する営業人材や、データセンター運用を担うインフラエンジニア、先端技術を活用する生成AI人材、サイバーセキュリティ人材の確保と育成を重点投資領域としています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.7歳 | 15.1年 | 5,219,636円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.6% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | -% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | -% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | -% |
※男性育児休業取得率および男女賃金差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため記載を省略しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) サイバーセキュリティ対策への対応遅れ
同社グループはデータセンター事業者として顧客の重要情報をお預かりしており、ランサムウエアやAIを悪用したサイバー攻撃への対応を最重要経営課題と位置付けています。未知の攻撃によりシステムが侵害された場合、情報の漏えいやサービスの停止により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) サプライチェーンの供給制約
クラウドサービスの展開にあたり、サーバ機器や通信回線、電力など多くの外部サプライヤーとの共存が不可欠です。半導体不足や地政学的リスク、エネルギー価格の高騰などにより想定を超える供給制約が発生した場合、サービス提供能力の低下やコスト上昇が生じる可能性があります。
■(3) AI技術の進展に伴う競争環境の変化
生成AIおよびAIエージェント技術を活用したサービス開発を推進していますが、技術の進化が想定以上に速く、競合他社による革新的なサービスの登場により差別化が困難になる可能性があります。また、AIの不適切な出力や権利侵害などのリスクが顕在化した場合、社会的信用の毀損につながる恐れがあります。



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