カカクコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カカクコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、購買支援サイト「価格.com」やレストラン検索・予約サイト「食べログ」、求人情報検索サイト「求人ボックス」などを運営しています。直近の業績は、各事業が好調に推移し、売上収益は前期比17.2%増、営業利益は13.5%増と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社カカクコム の有価証券報告書(第28期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. カカクコムってどんな会社?


インターネットを通じた購買支援や飲食店検索など、生活に密着した情報サービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1997年に創業し、ウェブサイト「価格.com」を開設しました。2003年にマザーズへ上場し、2005年には「食べログ」を開始して市場一部へ指定替えを行いました。その後、2018年に「求人ボックス」事業や「バス比較なび」運営会社の買収などを通じて事業を拡大。2022年には東証プライム市場へ移行しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は1,381名、単体では1,140名体制です。筆頭株主は、創業期より関わりの深いITソリューション企業のデジタルガレージで、第2位は電気通信事業を行うKDDIです。両社とは持分法適用関連会社や業務提携などを通じて強固な関係性を築いています。

氏名 持株比率
デジタルガレージ 20.69%
KDDI 17.71%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長社長執行役員は村上 敦浩氏が務めています。社外取締役比率は58.3%です。

氏名 役職 主な経歴
村上 敦浩 代表取締役社長社長執行役員 1998年アンダーセンコンサルティング入社。2004年同社入社。食べログ本部長、新規事業部長などを歴任し、2024年4月より現職。
林 郁 取締役会長 1995年デジタルガレージ設立、代表取締役。2002年同社代表取締役会長。2003年6月より現職。
宮崎 加奈子 取締役上級執行役員CHRO 2002年アクセンチュア入社。2010年同社入社。食べログ本部各部長、価格.com本部長、ショッピング事業本部長、人事総務本部長等を経て、2025年4月より現職。
粕谷 進一 取締役上級執行役員CFO 1989年山一證券入社。TSUTAYA取締役管理本部長、力の源ホールディングス常務取締役CFO、京都きもの友禅取締役副社長等を経て、2024年4月同社入社。2025年4月より現職。
冨永 大輔 取締役 2004年三井物産入社。2018年デジタルガレージ入社、同社執行役員グループCEO本部長等を歴任。2025年6月より現職。


社外取締役は、加藤 智治(まん福ホールディングス代表取締役社長)、木下 雅之(元三井物産代表取締役副社長)、門脇 誠(KDDI執行役員)、岩瀬 大輔(ベネッセHD代表取締役)、梶木 壽(元広島高等検察庁検事長)、井上 美樹(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「価格.com事業」「食べログ事業」「求人ボックス事業」「インキュベーション事業」を展開しています。

価格.com事業


購買支援サイト「価格.com」等を運営し、パソコン、家電、金融、通信など幅広い商品・サービスの比較情報を提供しています。ユーザーの購買行動をサポートする仕様情報やクチコミなどを掲載しています。また、連結子会社で保険代理店業務も行っています。

収益は、掲載店舗からの送客数や販売実績に応じた手数料(ショッピング事業)、見積もり依頼や契約等の成果に応じた手数料(サービス事業)、広告収入(広告事業)から構成されます。保険代理店業務では保険会社から手数料を受け取ります。運営は主にカカクコム、カカクコム・インシュアランスが行っています。

食べログ事業


レストラン検索・予約サービス「食べログ」を展開し、全国の飲食店情報やクチコミを掲載しています。利用者は目的に応じた飲食店の検索やネット予約が可能です。

収益は、飲食店からの販促サービス利用料やネット予約手数料(飲食店広告・予約事業)、ユーザーからの有料会員料(ユーザー会員事業)、メーカー等からの広告収入(広告事業)からなります。運営はカカクコムが行っています。

求人ボックス事業


求人情報の一括検索サービス「求人ボックス」を展開しています。全国の様々な雇用形態・業種の求人情報を集約し、キーワードや勤務地などの条件で検索できる機能を提供しています。

収益は、サービス上のリスティング広告枠に掲載された求人情報がクリックされるごとに、掲載企業から手数料収入を得るモデルです。運営はカカクコムが行っています。

インキュベーション事業


不動産住宅情報サイト「スマイティ」、旅行情報メディア「icotto」、映画情報サイト「映画.com」、高速バス比較サイト「バス比較なび」などの新規・成長事業群です。また、航空券と宿泊プランを組み合わせたダイナミックパッケージ・プラットフォームも提供しています。

収益は、各サービスにおける広告収入や、送客・予約等に基づく手数料収入などです。運営はカカクコムのほか、タイムデザイン、LCL、エイガ・ドット・コム、webCGなどの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は右肩上がりで推移しており、特に直近では大幅な増収となっています。利益面でも、税引前利益、当期利益ともに増加傾向にあり、高い利益率を維持しながら成長を続けています。コロナ禍の影響からの回復を含め、順調な業績拡大が見て取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 511億円 517億円 608億円 669億円 784億円
税引前利益 179億円 209億円 233億円 261億円 287億円
利益率(%) 35.1% 40.4% 38.2% 39.0% 36.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 118億円 143億円 162億円 181億円 200億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上収益の増加に伴い、売上総利益および営業利益もしっかりと増加しています。売上総利益率は80%を超える非常に高い水準を維持しており、プラットフォームビジネス特有の高収益体質が継続しています。営業利益率も30%台後半と高水準です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 669億円 784億円
売上総利益 544億円 652億円
売上総利益率(%) 81.3% 83.2%
営業利益 258億円 293億円
営業利益率(%) 38.6% 37.3%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が113億円(構成比23%)、支払手数料が85億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで売上収益が増加または横ばいを維持しています。特に求人ボックス事業は40%を超える大幅な増収を記録しました。食べログ事業も飲食店需要の回復等により20%超の増収増益となっています。価格.com事業も堅調です。インキュベーション事業は売上が微減しましたが、利益率は確保されています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
価格.com事業 217億円 236億円 113億円 117億円 49.6%
食べログ事業 278億円 335億円 148億円 181億円 54.0%
求人ボックス事業 93億円 134億円 46億円 43億円 31.9%
インキュベーション事業 81億円 80億円 20億円 19億円 23.9%
調整額 -0.5億円 -0.9億円 -68億円 -67億円 -
連結(合計) 669億円 784億円 258億円 293億円 37.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

カカクコムのキャッシュ・フローの状況について解説します。

同社は、営業活動により潤沢な資金を生み出し、事業運営の基盤を強化しています。投資活動では、将来の成長に向けた無形資産の取得に資金を投じています。一方、財務活動では、株主還元として配当金の支払い等を行っています。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物は増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 195億円 274億円
投資CF -22億円 -29億円
財務CF -161億円 -113億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ユーザーファーストで、新しい常識を作る」をミッションとして掲げています。常にユーザーの視点に立ち、新たな常識となるような価値あるサービスを創出することを通じて、ダイナミックな成長を目指しています。

(2) 企業文化


ミッションに基づき、常にユーザーの視点に立つことを重視しています。革新と挑戦を続けながら、日々の暮らしが豊かになるような、様々な生活シーンで役に立つサービスの提供を目指す文化があります。社会や生活の変化を捉え、新たなニーズや事業の可能性を発掘し、既存事業の変革と新たな事業の創出に挑戦し続ける姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


中長期的に売上収益および営業利益の年平均成長率(CAGR)で二桁成長を継続することを基本方針としています。また、持続的な企業価値向上に向け、株主還元と成長投資のバランスを図る方針です。

* ROE(自己資本利益率):40%以上
* 配当性向:50%以上
* 自己資本比率:50%以上
* 営業利益率:40%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「価格.com」「食べログ」「求人ボックス」に続く新たな柱となる事業の創出を目指しています。各事業においては、コンテンツ強化や利便性向上、DXサービスの展開などを推進し、新たな収益機会の検討も進めます。また、システムセキュリティや開発体制の強化、人材の確保・育成にも注力します。

* 価格.com事業:コンテンツ強化、効率的な運営体制構築、新収益機会検討
* 食べログ事業:ネット予約拡大、飲食店DXサービス展開
* 求人ボックス事業:情報充実・機能改善、ブランド認知向上・営業体制強化への投資
* インキュベーション事業:既存事業の効率化、新規事業開発、M&A

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を重要な経営資源と位置づけ、事業規模拡大や業務内容の多様化に応じた積極的な採用活動と育成強化に取り組んでいます。従業員が力を発揮できる働きやすい環境づくりに注力し、スキル習得機会の提供や、自律的なキャリア形成を支援する制度(社内公募制度など)を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.9歳 6.3年 7,204,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 21.6%
男性労働者の育児休業取得率 89.2%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 75.1%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 78.3%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) 93.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男女別平均勤続年数(男性6.7年、女性5.8年)、男女別新規採用数(男性69人、女性33人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報提供の正確性と適時性


運営サイトにおいて提供する商品・サービスの価格や空席情報などが、適時かつ正確に提供されない状況が多発した場合、ユーザーの信頼を失い、利用者数や登録事業者数が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 運営サイト内の書き込み管理


「クチコミ」や「レビュー」機能において、誹謗中傷や不適切な投稿がなされた場合、発見や削除が遅れるとサイトへの支持低下や責任問題に発展し、業績や社会的信用に悪影響を与える可能性があります。

(3) システムトラブルとセキュリティ


自然災害や事故による通信障害、外部からの不正アクセス等によりシステムトラブルが発生した場合、サービス利用不能や情報漏洩につながる恐れがあります。これらは事業活動の停止や信用の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 検索エンジンの影響


ユーザー流入の多くを検索エンジンに依存しているため、検索アルゴリズムの変更や競合他社のSEO対策強化により、同社サービスの表示順位が下がった場合、集客効率が低下し業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

カカクコムの転職研究 2026年3月期3Q決算に見るキャリア機会

カカクコムの2026年3月期3Q決算は、売上収益21.5%増と大幅増収を達成。求人ボックスへの先行投資で増収減益となる一方、エンゲージ社の子会社化合意によりHRテック領域での支配力強化が鮮明です。「なぜ今カカクコムなのか?」「転職希望者がどの事業で、どんな役割を担えるのか」を整理します。