※本記事は、株式会社カカクコムの有価証券報告書(第29期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. カカクコムってどんな会社?
カカクコムは、価格.comや食べログをはじめとする、日々の暮らしに役立つ情報メディアを多数展開しています。
■(1) 会社概要
1997年4月に創業し、同年5月にパソコン等の価格情報を提供する「価格.com」を開始、同年12月に会社を設立しました。2003年10月に東証マザーズへ上場後、2005年3月に東証一部へ市場変更しています。その後も旅行領域のフォートラベルや映画領域のエイガ・ドット・コムなどを子会社化するなど、幅広い分野へ事業を拡大してきました。
同社グループの従業員数は連結で1,421名、単体で1,152名です。筆頭株主はその他の関係会社として同社を持分法適用関連会社とするデジタルガレージで、第2位も同様に資本業務提携を結ぶKDDI、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| デジタルガレージ | 20.68% |
| KDDI | 17.70% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.24% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長 社長執行役員は村上敦浩氏が務めています。なお、取締役の社外取締役比率は63.6%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村上敦浩 | 代表取締役社長社長執行役員 | アクセンチュア等を経て2004年に同社入社。食べログ本部長や新規事業部長などを歴任し、食べログ事業を牽引。取締役副社長執行役員を経て、2024年4月より現職。 |
| 林郁 | 取締役会長 | 1995年にデジタルガレージを設立し代表取締役に就任。2002年7月に同社代表取締役会長に就任。現在はデジタルガレージの代表取締役兼社長執行役員グループCEOを務める傍ら、2003年6月より現職。 |
| 宮崎加奈子 | 取締役上級執行役員CSO | アクセンチュア等を経て2010年に同社入社。食べログ本部の事業部長や価格.com本部長などを歴任。ショッピング事業本部長や人事総務本部長を経て、2026年4月より現職。 |
| 粕谷進一 | 取締役上級執行役員CFO | 山一證券、カルチュア・コンビニエンス・クラブ等を経て、複数の事業会社でCFOや経営管理本部長を歴任。2024年に同社執行役員CFOに就任し、2026年4月より現職。 |
| 平井裕文 | 取締役常勤監査等委員 | JUKI、コーエー等を経て2002年に同社入社。経理総務部長や執行役員管理本部長、専務執行役員管理本部長を歴任。2019年に常勤監査役に就任し、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、加藤智治(まん福ホールディングス代表取締役社長)、木下雅之(元三井物産代表取締役副社長)、門脇誠(KDDI執行役員)、岩瀬大輔(ベネッセコーポレーション代表取締役社長)、梶木壽(元広島高等検察庁検事長)、井上美樹(元リクルートホールディングス)です。
2. 事業内容
同社グループは、「価格.com事業」「食べログ事業」「求人ボックス事業」「インキュベーション事業」を展開しています。
■価格.com事業
パソコンや家電、各種サービスを対象に、仕様、クチコミ、販売価格など消費者の購買行動をサポートする充実した情報を提供する「価格.com」や、保険代理店事業を展開しています。
掲載店舗からの送客数や販売実績に応じた手数料、サービス提供者からの成果に応じた手数料、及び広告主からの広告収入が主な収益源です。運営は同社およびカカクコム・インシュアランスが行っています。
■食べログ事業
全国の飲食店の情報やクチコミを掲載し、利用者が目的に応じて飲食店を検索しネット予約できるレストラン検索・予約サービス「食べログ」を提供しています。
飲食店からの販促サービスやネット予約に応じた手数料、ユーザーに対する有料コンテンツ提供による会費、及び広告収入を収益としています。本事業の運営は同社が行っています。
■求人ボックス事業
全国のさまざまな雇用形態・業種の求人情報を対象に、キーワード、給与、勤務地などの条件による検索機能等を提供する求人情報の一括検索サービス「求人ボックス」を展開しています。
同サービス上のリスティング広告枠に掲載された求人情報がクリックされるごとに、掲載企業等の求人掲載事業者から得られる手数料が収益源です。本事業の運営は同社が行っています。
■インキュベーション事業
不動産住宅情報の「スマイティ」、旅行関連の「タイムデザイン」「バス比較なび」、宿泊旅行メディアの「icotto」、ホームサービス事業等を複数展開しています。
広告収入及び各種役務提供等に基づく手数料収入等を収益源としています。同社のほか、タイムデザイン、LCL、LiPLUSホールディングスなどの子会社がそれぞれの事業を運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上収益は右肩上がりで成長を続けており、2022年3月期の517億円から2026年3月期には941億円へと大幅な拡大を遂げています。利益面についても増益基調が続いていましたが、直近の2026年3月期は事業拡大に向けた積極的な投資を行った影響により、税引前利益及び当期利益が減益に転じています。利益率は依然として高い水準を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 517億円 | 608億円 | 669億円 | 784億円 | 941億円 |
| 税引前利益 | 209億円 | 233億円 | 261億円 | 287億円 | 273億円 |
| 利益率(%) | 40.4% | 38.2% | 39.0% | 36.6% | 29.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 143億円 | 162億円 | 181億円 | 200億円 | 188億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しており、売上総利益率は80%台という極めて高い水準を維持しています。一方で、営業利益については販売費及び一般管理費の増加が影響し、減益となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 784億円 | 941億円 |
| 売上総利益 | 652億円 | 778億円 |
| 売上総利益率(%) | 83.2% | 82.6% |
| 営業利益 | 293億円 | 272億円 |
| 営業利益率(%) | 37.3% | 28.9% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が185億円(構成比34%)、支払手数料が119億円(同22%)、代理店手数料が94億円(同18%)を占めています。また、売上原価については、ウェブサイト等の維持管理にかかる経費が53億円(構成比69%)、労務費が24億円(同31%)となっています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の状況を見ると、食べログ事業がオンライン予約の増加などで大幅な増収増益となり、全体の業績を牽引しました。また、求人ボックス事業はプロモーション等の営業体制強化により大きく売上を伸ばしたものの、先行投資の影響により営業赤字となっています。価格.com事業とインキュベーション事業はともに増益を確保しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 価格.com事業 | 236億円 | 236億円 | 117億円 | 125億円 | 53.1% |
| 食べログ事業 | 335億円 | 402億円 | 181億円 | 222億円 | 55.2% |
| 求人ボックス事業 | 134億円 | 202億円 | 43億円 | -15億円 | -7.4% |
| インキュベーション事業 | 80億円 | 101億円 | 19億円 | 27億円 | 27.1% |
| 調整額 | -0.1億円 | -0.5億円 | -67億円 | -88億円 | - |
| 連結(合計) | 784億円 | 941億円 | 293億円 | 272億円 | 28.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金で投資を行い、さらに借入金の返済や株主還元も自己資金で賄う「健全型」となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 274億円 | 254億円 |
| 投資CF | -29億円 | -114億円 |
| 財務CF | -113億円 | -184億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は29.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.7%となっており、いずれも市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ユーザーファーストで、新しい常識を作る」というミッションを経営理念として掲げています。常にユーザーの視点に立ち、革新と挑戦を続けながら、社会の新たな常識となるような価値あるサービスを創出していくことを通じて、ダイナミックな成長を目指すことを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、組織能力を支える重要な価値観(バリュー)として「AI EXCELLENCE」を掲げています。年齢や勤続年数にかかわらず、一人ひとりが担う役割と専門性に基づいて評価・処遇される体制を整え、変化に応じてサービスを変革できる自律的な人材が挑戦し続けられる文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期的な経営目標として、売上収益および営業利益の年平均成長率(CAGR)で二桁成長を継続することを掲げています。また、持続的な企業価値向上のため、以下の財務指標を目標として設定しています。
・ROE(自己資本利益率):40%以上
・配当性向:50%以上を目安
・自己資本比率:50%以上
・営業利益率:40%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の着実な成長に加え、「価格.com」「食べログ」「求人ボックス」に続く新たな柱となる事業の推進と創出を成長戦略として掲げています。また、生成AIをはじめとする先進技術を迅速に導入し、特定の集客経路に過度に依存しない強固な事業基盤の構築や、独自の付加価値創出による競争優位性の確保を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を企業成長の源泉と位置づけ、多様な領域における深い専門性を持ち、変化に応じてサービスと事業を変革できる人材をグループ全体で確保・育成することを目指しています。とくに、各領域の専門性とAI技術を掛け合わせて新たなサービスを創造できる人材の育成を人材戦略の重要な柱としています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 37.3歳 | 6.6年 | 7,547,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.8% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 83.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 76.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 78.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 89.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員数(489人)、コンプライアンス関連研修実施受講率(99.8%)、独立社外取締役比率(45.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報提供の正確性とクチコミ管理のリスク
運営サイトにおいて商品価格や空席情報等の不正確な情報が提供された場合や、ユーザーからのクチコミ等で不適切な書き込みに対する管理が不十分であった場合、サイトの信頼性が低下し、利用者数や登録店舗数の減少を招く可能性があります。
■(2) システムトラブルと情報セキュリティリスク
サービス提供の基盤となるシステムにおいて、自然災害やサイバー攻撃、アクセス集中等によるシステムトラブルが発生した場合、サービスが停止するリスクがあります。また、個人情報の漏洩等が発生した場合には社会的信用が失墜し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 検索エンジンへの集客依存リスク
運営サイトへのユーザー流入は検索エンジンを経由する割合が高いため、検索アルゴリズムの変更や競合他社のSEO対策強化によって検索結果における表示順位が低下した場合、集客効率が下がり、同社の業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 先進技術の進展に伴うリスク
生成AIなどの新たな技術革新やビジネスモデルの変化に対し、迅速な対応や技術導入ができなかった場合、競争力の低下を招くリスクがあります。また、生成AIの普及に伴い、従来の検索エンジン経由の流入が減少する可能性も懸念されています。



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