新日本科学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新日本科学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新日本科学は東京証券取引所プライム市場に上場しており、医薬品開発支援(CRO)事業、トランスレーショナルリサーチ(TR)事業、メディポリス事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比で増収となる一方、経常利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社新日本科学の有価証券報告書(第52期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 新日本科学ってどんな会社?


国内初の医薬品開発受託機関(CRO)として創業し、前臨床試験から臨床試験までを一貫して支援する企業です。

(1) 会社概要


同社の前身は1957年に創業した南日本ドッグセンターで、1973年に日本ドッグセンターとして設立後、翌年現社名に変更しました。国内初のCROとして事業を開始し、2004年に東証マザーズへ上場、2008年には東証一部へ市場変更しました。2015年には米国PPD社と合弁会社を設立し、グローバル臨床試験の体制を確立。2025年には連結子会社Satsuma社の経鼻片頭痛薬が米国FDAの販売承認を取得しました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は1,436名(単体1,046名)です。大株主については、筆頭株主はNagata and Companyで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には永田貴久氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
Nagata and Company 40.33%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 8.81%
永田 貴久 4.71%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性4名の計15名で構成され、女性役員比率は26.7%です。代表取締役会長兼社長CEO兼CHOは永田良一氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
永田 良一 代表取締役会長兼社長CEO兼CHO 1981年取締役就任。医師、医学博士。1991年社長、1997年社長兼CEOに就任。2020年より現職。
永田 一郎 代表取締役副社長COO 2008年SNBL U.S.A.入社。医師、医学博士。2017年入社、2025年6月より現職。
高梨 健 取締役副会長 1987年三菱商事入社。2002年入社。Wave Life Sciences Director等を歴任し、2025年6月より現職。
角﨑 英志 専務取締役 1996年入社。医学博士。SNBL U.S.A.社長等を経て、2023年6月より現職。
入山 隆 専務取締役CFO 1991年日産自動車入社。日本オーチス・エレベータ等を経て2019年入社。2025年6月より現職。
長利 京美 専務取締役 1984年九州松下電器入社。2002年入社。2019年上席執行役員等を経て2025年6月より現職。


社外取締役は、福元紳一(弁護士)、山下隆(公認会計士)、花田強志(税理士)、戸谷圭子(明治大学教授)、松枝千鶴(公認会計士)、廣瀬由美(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「CRO事業」「トランスレーショナルリサーチ事業」「メディポリス事業」「米国不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) CRO事業


製薬企業等から医薬品開発における非臨床試験や臨床試験(治験)を受託する事業です。実験動物や細胞を用いた安全性・有効性評価を行う非臨床事業と、ヒトでの試験を管理・運営する臨床事業で構成されています。特に実験用NHP(サル類)を用いた試験に強みを持ちます。

収益は、製薬企業等の委託者から受領する試験受託費や業務支援費から成ります。非臨床事業の運営は主に新日本科学、新日本科学イナリサーチセンターなどが行い、臨床事業は持分法適用関連会社である新日本科学PPDなどが担当しています。

(2) トランスレーショナルリサーチ事業


独自の経鼻投与基盤技術(SMART)の開発や、大学・バイオベンチャー等の有望なシーズ技術を発掘・育成し事業化する事業です。経鼻製剤技術を用いた医薬品開発や、経鼻ワクチンの研究開発、バイオベンチャーへの投資・支援を行っています。

収益は、開発した技術や医薬品のライセンスアウトによる対価、マイルストーン収入、共同研究費などから成ります。運営は主に新日本科学、Satsuma Pharmaceuticals、Gemsekiインベストメント、SNLDなどが行っています。

(3) メディポリス事業


鹿児島県指宿市に所有する敷地(メディポリス指宿)の自然資本を活用した事業です。地熱発電事業および、ウェルビーイングをコンセプトとしたホテル宿泊施設の運営を行っています。

収益は、電力会社への売電収入およびホテル宿泊客からの宿泊料・サービス料から成ります。運営は主に新日本科学、メディポリスエナジー、AMAFURU&Co.が行っています。

(4) 米国不動産事業


米国子会社が保有する敷地内に建設した多目的産業用ビルを活用した事業です。

収益は、ビル等の賃貸料から成ります。運営は主にSNBL U.S.A.が行っています。

(5) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、事務業務受託や特例子会社による業務支援などを行っています。

収益は、業務受託費やサービス料から成ります。運営は主に新日本科学グループ、ふれあい・ささえあいなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。利益面では、2022年3月期と2023年3月期に高い経常利益率を記録しましたが、直近の2025年3月期は利益率が低下しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 151億円 177億円 251億円 265億円 324億円
経常利益 36億円 71億円 92億円 70億円 65億円
利益率(%) 24.1% 39.9% 36.6% 26.5% 19.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 29億円 52億円 50億円 44億円 48億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加しましたが、売上総利益率は若干低下しています。また、営業利益率は低下しており、販管費の増加などが影響していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 265億円 324億円
売上総利益 143億円 170億円
売上総利益率(%) 54.0% 52.3%
営業利益 42億円 30億円
営業利益率(%) 15.7% 9.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が33億円(構成比24%)、飼育動物維持管理費が24億円(同17%)、研究開発費が22億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のCRO事業は増収増益となり、全社の売上を牽引しています。一方、トランスレーショナルリサーチ事業は売上規模が小さく、損失を計上しています。メディポリス事業と米国不動産事業も損失となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
CRO事業 257億円 315億円 70億円 73億円 23.0%
トランスレーショナルリサーチ事業 0.1億円 0.5億円 -25億円 -37億円 -6794.6%
メディポリス事業 4.8億円 4.7億円 -2.5億円 -4.2億円 -89.8%
米国不動産事業 -億円 0.5億円 -0.2億円 -0.6億円 -131.6%
その他 3.0億円 3.3億円 0.9億円 -0.3億円 -8.1%
調整額 - - -2.1億円 -0.8億円 -
連結(合計) 265億円 324億円 42億円 30億円 9.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は**積極型**のキャッシュ・フロー状態にあります。営業活動で得た資金に加え、財務活動による資金調達を行い、将来の成長に向けた投資を積極的に実施している状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 21億円 70億円
投資CF -69億円 -117億円
財務CF 53億円 59億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.3%で市場平均(非製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「創薬と医療技術の向上を支援し、人類を苦痛から解放する事を絶対的な使命とします。」という使命を掲げています。社会貢献と企業価値の極大化を経営の基本方針とし、株主、顧客、取引先、従業員などすべてのステークホルダーの期待に応えることを目指しています。

(2) 企業文化


「環境、生命、人材を大切にする会社であり続ける」という理念のもと、経営判断を行っています。また、「感謝と尊敬」の精神に基づく組織文化の醸成を重視しており、理念に根差した行動様式を推奨しています。ステークホルダーに寄り添い、幸せの連鎖を創造する組織を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「2028Vision」を掲げ、2028年度の財務KPI(目標)を設定しています。また、資本コストを意識した経営を実践し、資本コストを上回るROEとROICの維持・向上を目指しています。

* 売上高500億円
* 経常利益200億円
* 売上高経常利益率40%
* ROE10%以上
* ROIC10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


CRO事業のさらなる強化、第3の収益エンジンとしてのTR事業の推進、ESGへの取組みを通した非財務価値の向上を重点施策としています。CRO事業では、実験用NHPの繁殖体制強化や新規技術(MPS等)の導入、グローバル対応力の向上を図ります。TR事業では、経鼻製剤技術を用いた医薬品開発やワクチンの研究開発を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を「人財」と捉え、従業員の個性を尊重し、働きがいを向上させることで自己実現を支援する方針です。社内教育機関「SNBLアカデミー」を中心に、新卒採用の強化や階層別研修を実施し、優秀な人材の確保と育成に注力しています。また、女性活躍推進や健康経営にも積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.3歳 10.4年 6,266,764円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.3%
男性育児休業取得率 107.1%
男女賃金差異(全労働者) 66.4%
男女賃金差異(正規雇用) 81.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 40.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員一人当たりの平均研修時間(60.3時間)、従業員エンゲージメント調査(23.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 実験動物の安定調達リスク


非臨床試験において、実験動物(特にNHP)の安定的な調達が重要です。世界的な需要増や供給不足が発生した場合、試験計画の見直しや試験数の減少につながる可能性があります。同社は自社グループ内での繁殖供給体制を確立し、リスク軽減に努めています。

(2) 開発パイプラインの不確実性


TR事業において、開発中の医薬品や技術が期待された有効性・安全性を確認できず、研究開発が中止となるリスクがあります。これにより、投下した多額の費用が回収不能になる可能性があります。同社は非臨床試験による事前評価やパートナーとの連携によりリスク管理を行っています。

(3) ホスピタリティ事業の外部環境リスク


メディポリス事業のホスピタリティ事業は、景気動向や海外情勢、感染症等の影響を受ける可能性があります。個人消費の低迷や観光需要の減少により、稼働率が低下するリスクがあります。同社は国内外へのマーケティング強化やコストコントロールにより対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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