新日本科学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新日本科学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新日本科学は東証プライム市場に上場し、製薬企業等から医薬品開発支援を受託するCRO事業や、独自の経鼻投与技術等を用いたトランスレーショナルリサーチ事業を展開しています。直近の業績は、売上高が前期比微増となる一方、各種投資や研究開発費の増加等により経常利益は減益となっています。


※本記事は、新日本科学の有価証券報告書(第53期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 新日本科学ってどんな会社?


同社は医薬品開発を支援するCRO事業を中心に、独自の経鼻投与技術を活かした事業などを展開しています。

(1) 会社概要


同社は1957年に鹿児島市で実験用ビーグルの繁殖を目的として創業し、1960年には国内で初めて安全性試験の受託事業を開始しました。1973年に会社を設立後、2004年に東証マザーズ市場へ上場、2008年に東証一部へ市場変更を果たしています。2015年には米国企業との合弁で臨床事業の基盤を強化し、2025年には同社技術を用いた経鼻片頭痛薬が米国FDAの承認を取得するなど事業を拡大しています。

現在の同社グループは、連結で1,522名、提出会社単体で1,126名の従業員を擁しています。筆頭株主はNagata and Companyで、第2位および第3位は信託業務を行う金融機関です。

氏名 持株比率
Nagata and Company 40.33%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.01%
日本カストディ銀行(信託口) 5.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性4名の計15名で構成され、女性役員比率は26.7%です。代表取締役会長兼社長CEO兼CHOは永田良一氏が務めています。社外取締役は6名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
永田 良一 代表取締役会長兼社長CEO兼CHO 1983年医師免許取得。1991年同社代表取締役社長に就任。1997年代表取締役社長兼CEOとなり、2020年より現職。
永田 一郎 代表取締役副社長COO 2015年医師免許取得。順天堂大学医学部附属順天堂醫院などを経て、2017年同社入社。2025年より現職。
高梨 健 取締役副会長 三菱商事などを経て、2002年同社入社。2017年代表取締役副社長COOなどを経て、2025年より現職。
角﨑 英志 専務取締役 1996年同社入社。2007年医学博士(大阪市立大学)。2010年取締役、2018年専務執行役員などを経て、2021年より現職。
入山 隆 専務取締役CFO 日産自動車などを経て、2019年同社入社。2020年常務執行役員経営戦略本部長などを経て、2025年より現職。
長利 京美 専務取締役 2002年同社入社。2017年執行役員総務人事統括部長、2019年上席執行役員総務人事本部長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、福元紳一(弁護士)、山下隆(公認会計士)、花田強志(税理士)、戸谷圭子(大学教授)、松枝千鶴(公認会計士)、廣瀬由美(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「CRO事業」「トランスレーショナルリサーチ事業」「メディポリス事業」「米国不動産事業」および「その他事業」を展開しています。

CRO事業

製薬企業等を顧客とし、細胞や実験動物等を用いて新薬の有効性と安全性を確認する非臨床試験や、ヒトを対象とした臨床試験(治験)の受託支援サービスを提供しています。

顧客である国内外の製薬企業から受託研究の対価として収益を得ています。運営は同社や新日本科学イナリサーチセンター、関連会社である新日本科学PPDなどが行っています。

トランスレーショナルリサーチ事業

大学やバイオベンチャーの基礎研究から有望な技術を発掘・育成する事業です。特に独自の経鼻投与基盤技術を用いた新薬開発やライセンスアウトの活動に注力しています。

開発品の事業化やライセンス契約、ファンドを通じた投資リターンなどから収益を獲得します。運営は同社のほか、米国Satsuma Pharmaceuticals, Inc.やGemsekiインベストメントなどが担っています。

メディポリス事業

鹿児島県指宿市の広大な自然資本を活用し、環境に配慮した地熱・温泉発電事業や、人々の健康をテーマとしたホテル宿泊施設などの運営を行っています。

発電した電力の売電収入や、ホテル宿泊客からの宿泊・サービス利用料から収益を得ています。運営は同社およびメディポリスエナジーなどが実施しています。

米国不動産事業

米国子会社がワシントン州に保有する広大な敷地内に建設した、多目的産業用ビル等の不動産賃貸事業を展開しています。

入居するテナントからの賃貸料等として収益を獲得しています。運営は米国子会社のSNBL U.S.A., Ltd.が行っています。

その他事業

グループ内の業務支援や福利厚生サービスの提供、事務業務の受託などを行っています。

グループ内外へのサービス提供対価として収益を得ています。運営はふれあい・ささえあいなどの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は一貫して拡大基調にあり、特に直近2年間は300億円台に達しています。一方、経常利益は2023年3月期をピークに減少傾向にあり、利益率は徐々に低下しています。これは事業規模拡大に伴う各種投資や研究開発費の増加が影響しているとみられます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 177億円 251億円 265億円 324億円 325億円
経常利益 71億円 92億円 70億円 65億円 58億円
利益率(%) 39.9% 36.6% 26.5% 19.9% 17.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 52億円 50億円 44億円 48億円 46億円

(2) 損益計算書


直近2年間の損益構造を見ると、売上高は維持されているものの、売上総利益率は52.5%から49.8%へやや低下しています。これに伴い、営業利益率も9.3%から8.3%へとわずかに低下しており、原価や各種費用の増加が利益を圧迫している状況がうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 324億円 325億円
売上総利益 170億円 162億円
売上総利益率(%) 52.5% 49.8%
営業利益 30億円 27億円
営業利益率(%) 9.3% 8.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が34億円(構成比25.1%)、研究開発費が24億円(同17.7%)、飼育動物維持管理費が20億円(同14.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


売上高の大半を占めるCRO事業は、前期と同水準で堅調に推移しています。一方、その他のセグメントは規模こそ小さいものの、メディポリス事業や米国不動産事業などで大幅な増収が見られ、新たな収益源の育成が進んでいることがうかがえます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
CRO事業 315億円 312億円
トランスレーショナルリサーチ事業 0.5億円 1億円
メディポリス事業 5億円 7億円
米国不動産事業 0.5億円 2億円
その他 3億円 3億円
連結(合計) 324億円 325億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う積極型の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 70億円 83億円
投資CF -117億円 -68億円
財務CF 59億円 45億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.0%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も41.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「創薬と医療技術の向上を支援し、人類を苦痛から解放する事を絶対的な使命とします。」という企業使命を掲げています。この使命の具現化に向け、医薬品開発分野における非臨床試験および臨床試験の受託を通じて事業基盤の確立を図り、社会貢献と企業価値の極大化を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「環境、生命、人材を大切にする会社であり続ける」という企業理念を経営判断の根底に据えています。持続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現は相互に不可分であるとの認識のもと、サステナビリティを重要な経営課題と位置づけ、ステークホルダーとの双方向の対話を通じた信頼獲得を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な展望として「2028Vision」を掲げ、2028年度の財務KPI(目標)として以下の数値を設定し、持続的成長を推進しています。
・売上高:500億円
・経常利益:200億円
・売上高経常利益率:40%
・ROE:10%以上
・ROIC:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、基幹であるCRO事業をさらに強化するため、新規創薬モダリティに対応したサービス拡充や、実験用NHP(非ヒト霊長類)の安定的なサプライチェーン構築を進めています。また、AI等のデジタル技術を活用した業務プロセスの効率化を図りつつ、中長期的には独自の経鼻投与技術を活かしたトランスレーショナルリサーチ事業を新たな収益エンジンへと成長させる方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材」を社会の財産である「人財」とするため、「社員と会社が共に成長し、幸せの連鎖を創造する組織」を掲げています。社員一人ひとりの個性を尊重し、自律的かつ主体的に成長できる組織づくりを推進。社内教育機関「SNBLアカデミー」を通じた教育体制の構築や、多様な人材が活躍できるダイバーシティの推進に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.5歳 10.2年 6,702,701円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.5%
男女賃金差異(正規雇用) 86.4%
男女賃金差異(パート・有期) 41.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休業取得率(100%)、一人当たりの研修時間(22.0時間)、従業員エンゲージメントスコア(64)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 実験動物の調達リスク

CRO事業の非臨床分野では実験動物を用いた試験が不可欠ですが、地政学リスクや需要逼迫などにより実験用NHP(非ヒト霊長類)などの安定的な調達が困難となるリスクがあります。同社は自社グループ内での繁殖・供給体制の強化に努めています。

(2) 新薬開発の事業化遅延リスク

トランスレーショナルリサーチ事業では、開発中の新薬等において期待された有効性が確認できず研究が中止となるリスクや、商業化に向けたパートナーシップ構築が計画通り進まず、収益化が遅れる可能性があります。

(3) 情報セキュリティに関するリスク

顧客の機密情報や試験データを多数取り扱うため、サイバー攻撃やシステム障害等による情報漏洩やデータアクセス制限が発生した場合、顧客からの信頼失墜や損害賠償が生じ、事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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