日本調剤 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本調剤 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。調剤薬局事業を中核に、医薬品製造販売、医療従事者派遣事業を展開。第43期連結業績は、売上高3,133億円(前期比4.7%増)、経常利益77億円(同13.5%増)、当期純利益45億円(同20.3%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、日本調剤株式会社 の有価証券報告書(第43期、自 2022年4月1日 至 2023年3月31日、2023年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本調剤ってどんな会社?

全国展開する調剤薬局チェーンを中核に、ジェネリック医薬品製造や医療人材派遣も手掛ける総合ヘルスケア企業です。

(1) 会社概要

1980年に札幌市で設立し、調剤薬局の運営を開始しました。2000年に人材派遣事業(現メディカルリソース)を立ち上げ、2004年に東証二部へ上場(2006年一部、2022年プライム移行)。2005年に日本ジェネリックを設立して医薬品製造へ参入し、2013年には長生堂製薬を子会社化して製造販売事業を拡大しています。

連結従業員数は5,689名、単体では4,587名です。筆頭株主は社長の三津原庸介氏、第2位は創業者の三津原博氏、第3位は資産管理会社の三津原興産であり、創業家が主要株主となっています。

氏名 持株比率
三津原 庸介 22.14%
三津原 博 16.01%
三津原興産 12.01%

(2) 経営陣

同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は三津原庸介氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
三津原 庸介 代表取締役社長 1999年入社。日本ジェネリック社長等を経て2019年より現職。
笠井 直人 常務取締役 2013年入社。営業統括部長等を経て2016年より現職。
小柳 利幸 取締役薬剤本部長 1990年入社。購買部長等を経て2014年より現職。
小城 和紀 取締役財務部長 2008年入社。長生堂製薬社長等を兼務し2015年より現職。
藤本 佳久 取締役 2011年入社。管理本部長等を経て2023年より現職。
井上 祐弘 取締役 2016年日本ジェネリック入社。同社社長を経て2023年より現職。


社外取締役は、恩地祥光(元ダイエー経営企画本部長)、野間幹晴(一橋大学大学院教授)、東葭新(公認会計士)、原田史緒(弁護士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「調剤薬局事業」「医薬品製造販売事業」「医療従事者派遣・紹介事業」を展開しています。

調剤薬局事業

全国の大型総合病院前や医療モール、駅前などに調剤薬局を出店し、処方箋に基づく調剤や服薬指導を行っています。また、医療情報の提供やコンサルティングも手掛けています。

収益は主に国民健康保険団体連合会等からの調剤報酬や患者の一部負担金によります。運営は日本調剤および子会社4社、日本医薬総合研究所が行っています。

医薬品製造販売事業

ジェネリック医薬品の研究開発、製造および販売を行っています。つくば第二工場などの製造拠点を有し、品質管理と安定供給体制の強化を進めています。

収益は医薬品卸企業等への医薬品販売による対価です。運営は主に日本ジェネリックおよび長生堂製薬が行っています。

医療従事者派遣・紹介事業

薬剤師を中心に、医師や看護師などの医療従事者を対象とした人材派遣および紹介サービスを全国で展開しています。また、企業の健康経営を支援する産業医業務の提供も行っています。

収益は医療機関や企業等の顧客からの派遣料や紹介手数料です。運営は主にメディカルリソースが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。利益面では第42期に一時的な減少が見られましたが、第43期には回復し、増収増益基調に戻っています。

項目 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期
売上高 2,457億円 2,685億円 2,790億円 2,994億円 3,133億円
経常利益 61億円 74億円 84億円 68億円 77億円
利益率(%) 2.5% 2.8% 3.0% 2.3% 2.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 38億円 67億円 35億円 37億円 45億円

(2) 損益計算書

直近2期間の傾向として、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。特に営業利益率は改善傾向にあり、収益性が向上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期
売上高 2,994億円 3,133億円
売上総利益 524億円 536億円
売上総利益率(%) 17.5% 17.1%
営業利益 66億円 76億円
営業利益率(%) 2.2% 2.4%


販売費及び一般管理費のうち、消費税等が202億円(構成比44%)、給与手当が61億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益

調剤薬局事業は出店効果等により増収増益となりました。医薬品製造販売事業は薬価改定や限定出荷の影響で減収となり、営業損失を計上しました。医療従事者派遣・紹介事業は薬剤師紹介の回復等により増収増益となっています。

区分 売上(2022年3月期) 売上(2023年3月期) 利益(2022年3月期) 利益(2023年3月期) 利益率
調剤薬局事業 2,656億円 2,802億円 130億円 147億円 5.2%
医薬品製造販売事業 268億円 251億円 -1億円 -14億円 -5.5%
医療従事者派遣・紹介事業 70億円 81億円 6億円 8億円 9.4%
調整額 -181億円 -135億円 -69億円 -64億円 -
連結(合計) 2,994億円 3,133億円 66億円 76億円 2.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業CFで得た資金に加え、借入等による資金調達を行いながら、積極的な設備投資を実施している「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2022年3月期 2023年3月期
営業CF 194億円 75億円
投資CF -93億円 -100億円
財務CF -174億円 7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは「私たちの使命」として「すべての人の『生きる』に向き合う」を掲げています。また、2030年に向けたグループの目指す姿として「誰もが一番に相談したくなるヘルスケアグループへ」を標榜し、生活に身近な医療の担い手として質の高いサービス提供を目指しています。

(2) 企業文化

同社は、社員全員が使命に共感し、常に誠実さと顧客視点を持ち、医療課題の解決に挑戦することを重視しています。一人ひとりを尊重し、個性や多様性に基づき自律的に学び成長する人材育成と、それを協調して成し遂げる風土の創出を目指しています。

(3) 経営計画・目標

2030年に向けた長期ビジョンとして、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高1兆円企業を展望(連結消去前、各事業セグメント単純合算)
* 調剤薬局市場におけるシェア:10%
* ジェネリック医薬品市場におけるシェア:15%
* 収益ポートフォリオの深化(調剤:他の2事業=50%:50%)

(4) 成長戦略と重点施策

調剤薬局事業では、地域連携薬局や専門医療機関連携薬局の認定取得を進めるとともに、オンライン服薬指導や電子お薬手帳の活用による医療版DXを推進しています。医薬品製造販売事業では、ジェネリック医薬品の安定供給と品質管理の徹底を図りつつ、生産能力の拡大を進めます。
* 売上高1兆円(2030年目標)

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「患者のための薬局ビジョン」を踏まえ、高度な薬学管理や在宅医療に対応できる専門性の高い薬剤師の育成に注力しています。また、多様な人材が活躍できる環境整備を進め、健康経営への投資や、自律的なキャリア形成支援、エンゲージメント向上施策を実施しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2023年3月期 35.2歳 7.3年 5,320,000円


※平均年間給与は、税込支払給与額であり、賞与及び基準外賃金を含め、通勤手当は含めておりません。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.8%
男性育児休業取得率 69.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.7%
男女賃金差異(正規雇用) 61.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 57.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育休からの復職率(100.0%)、障害者雇用率(2.33%)、従業員エンゲージメントスコア(3.40)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療制度の変更に関するリスク

主力事業である調剤薬局および医薬品製造販売は、薬価基準や調剤報酬の改定による影響を大きく受けます。国の医療費抑制策に伴うマイナス改定や制度変更があった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) のれん・固定資産に関するリスク

M&Aや新規出店により取得したのれんや固定資産について、対象店舗の業績悪化等により投資回収が見込めなくなった場合、減損損失が発生し、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 調剤業務の安全性及び医薬品の品質に関するリスク

調剤過誤や医薬品の品質不良、予期せぬ副作用が発生した場合、多額の賠償金支払いや社会的信用の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。特に医薬品製造においては、品質管理や安定供給体制の不備が重大なリスク要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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