サンマルクホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンマルクホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンマルクホールディングスは、東京証券取引所プライム市場に上場する外食企業です。レストラン事業と喫茶事業を主軸に多業態を展開しています。直近の決算では、人流回復やM&A効果により、売上高709億円、経常利益38億円と増収増益(経常利益39.4%増)を達成しました。


※本記事は、株式会社サンマルクホールディングス の有価証券報告書(第34期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンマルクホールディングスってどんな会社?


レストラン「サンマルク」や「サンマルクカフェ」などを展開する持株会社です。M&Aにより牛カツ業態なども強化しています。

(1) 会社概要


1989年に設立され、「ベーカリーレストラン・サンマルク」1号店を開店しました。1999年には「サンマルクカフェ」1号店を出店し、2006年に持株会社体制へ移行しました。2024年には「牛カツ京都勝牛」等を運営するジーホールディングスなどを相次いで子会社化し、業容を拡大しています。

現在の連結従業員数は1,087人(単体307人)です。筆頭株主は個人の片山智恵美氏で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。

氏名 持株比率
片山 智恵美 19.31%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 8.96%
AAGS S2,L.P. 5.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名、計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は藤川祐樹氏が務めています。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
藤川 祐樹 代表取締役社長 三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て2019年に入社。経営企画室長などを経て2022年1月より現職。
難波 篤 取締役 監査法人トーマツを経て2012年に入社。管理本部長、代表取締役社長などを経て2022年1月より現職。人材開発、リスク・コンプライアンスを担当。
飯田 隆文 取締役 サイタ工業、マグナを経て2009年に入社。商品第2部長などを経て2020年6月より現職。商品本部長を務める。
一杉 博文 取締役 スペースを経て2015年に入社。店舗開発本部設計担当部長などを経て2020年6月より現職。店舗開発本部長を務める。
下司 貴永 取締役 日本エクスラン工業、シンフォームを経て2011年に入社。情報システム部長などを経て2020年6月より現職。情報システム本部長を務める。
岡村 淳弘 取締役 あずさ監査法人を経て2013年に入社。管理本部財務担当などを経て2020年6月より現職。管理本部長を務める。


社外取締役は、中川雅文(中川公認会計士事務所代表)、渡辺勝志(渡辺勝志法律事務所所長)、北川真也(ファジアーノ岡山スポーツクラブ代表取締役会長)、原繭子(原公認会計士事務所代表)、王玲(ベルク取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「レストラン事業」および「喫茶事業」を展開しています。

(1) レストラン事業


「ベーカリーレストラン・サンマルク」「生麺専門鎌倉パスタ」「すし処函館市場」などの多様な飲食店を展開しています。さらに、2024年にグループ入りした「牛カツ京都勝牛」「牛かつもと村」などの牛カツ業態も加わり、インバウンド需要の取り込みを強化しています。

収益は、直営店における一般顧客からの飲食代金、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入や食材・資材販売などから得ています。運営は主に、鎌倉パスタ、サンマルクグリル、ゴリップ、牛かつもと村などの事業子会社が行っています。

(2) 喫茶事業


セルフサービススタイルの「サンマルクカフェ」およびフルサービス喫茶の「倉式珈琲店」を全国展開しています。パンやコーヒーを中心としたメニューを提供し、顧客満足度の向上に努めています。

収益は、店舗での飲食・テイクアウト販売による代金、およびフランチャイズ加盟店からの収入等です。運営は、サンマルクカフェおよび同社(倉式珈琲事業部)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は回復基調にあり、直近では700億円台に達しています。利益面でも、経常利益はV字回復を見せ、直近では38億円と高い伸びを示しました。当期純利益も黒字化から拡大傾向にあり、業績は改善トレンドにあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 440億円 477億円 578億円 646億円 709億円
経常利益 -36億円 25億円 16億円 28億円 38億円
利益率(%) -8.2% 5.2% 2.8% 4.3% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -22億円 -21億円 26億円 6億円 21億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。営業利益率は4%台から5%台へと改善しており、収益性が高まっています。コストコントロールと売上拡大の両立が進んでいることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 646億円 709億円
売上総利益 489億円 532億円
売上総利益率(%) 75.7% 75.1%
営業利益 26億円 36億円
営業利益率(%) 4.1% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が212億円(構成比43%)、賃借料が96億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


レストラン事業は、既存店の改装や新業態の獲得効果により大幅な増収増益となりました。喫茶事業も、原点回帰の施策等により増収増益を確保しています。両セグメントともに黒字を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
レストラン 380億円 441億円 27億円 38億円 8.6%
喫茶 265億円 268億円 16億円 22億円 8.4%
調整額 - - -17億円 -24億円 -
連結(合計) 646億円 709億円 26億円 36億円 5.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で得た資金と借入金を活用し、M&Aなどの投資へ積極的に振り向けている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 51億円 58億円
投資CF -28億円 -227億円
財務CF -13億円 146億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「We create the prime time for you.」(私達はお客様にとって最高のひとときを創造します)を経営理念に掲げ、「食」を通じて顧客満足向上策を提案し、人々のより豊かな心と生活の形成に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社独自の「レストラン等飲食店業態の3要素(味・雰囲気・サービス)」の品質をバランスよく高めることを重視しています。業態開発においては、成熟したマーケットに着目し、独自の付加価値を積み重ねることで、他社他店にはない品質・サービスを生み出し、オンリーワン企業を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


持株会社体制による機能の最適化と複数事業子会社によるグループ形成を通じて、安定した経営基盤を確立しつつ、中期経営計画において以下の数値目標を掲げています。

* グループ営業利益:38億円(2026年3月期)
* グループ営業利益:65億円(2029年3月期)

(4) 成長戦略と重点施策


前期にグループ入りした牛カツ事業とのシナジー創出、既存店の内外装メンテナンスによる売上向上、および価値あるメニュー開発に注力しています。また、中長期的な成長を見据え、以下の施策を推進しています。

* 管理業務の効率化とスケールメリットによるコスト削減
* 店舗開発機能を活用した出店加速
* 既存業態のブラッシュアップおよび派生業態の開発

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人材がモチベーション高く働き、専門的知見を持つメンバーが積極的に発言する文化を育んでいます。従業員の自律的なキャリア形成を支援するため、新入社員へのキャリアカウンセリングや資格取得支援を実施しています。また、エンゲージメントサーベイの結果に基づき、IT環境や評価制度などの環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 8.1年 5,561,019円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.9%
男性育児休業取得率 25.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.3%
男女賃金差異(正規) 74.6%
男女賃金差異(非正規) 99.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントサーベイの調査結果(52.6)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新業態の開発・事業化


同社グループは多業態展開を推進しており、新業態開発を重要課題と位置づけています。しかし、これら新業態の開発や事業化の進展状況によっては、開発コストや収益化の遅れなどが生じ、経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 特定の取引先への依存度


グループチェーン店舗で使用するパン生地の仕入において、タカキベーカリーへの依存度が高くなっています(当連結会計年度の連結仕入高に対し8.8%)。同社との取引関係に変化が生じた場合、パン生地の安定調達や品質維持に支障をきたし、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 主要食材の調達


牛肉や鶏肉などの主要食材について、世界的な異常気象や感染症(鳥インフルエンザ等)の影響による価格高騰や調達難のリスクがあります。調達先の分散化を進めていますが、調達に支障をきたした場合はメニュー変更やコスト増を余儀なくされ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。