※本記事は、WDBホールディングス株式会社の有価証券報告書(第41期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. WDBホールディングスってどんな会社?
同社グループは、理学系研究職等の人材派遣・人材紹介サービスと、医薬品等の開発支援を行うCRO事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1985年に設立され事務処理サービスを開始後、1987年に人材派遣業へ参入しました。2006年にジャスダック上場を果たし、2011年には純粋持株会社へ移行しています。近年では2023年にドコ1を設立し、人材サービス関連のプラットフォーム事業など新たな領域への展開を進めています。
同社グループの従業員数は連結で5,489名、単体で11名です。筆頭株主は中野商店で、第2位は信託銀行、第3位は投資事業組合です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中野商店 | 50.36% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 3.74% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 3.54% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は中野敏光氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中野敏光 | 代表取締役社長 | 1982年アリコジャパン入社。1985年ワークデーターバンク(現WDBホールディングス)設立、代表取締役に就任。複数子会社の役員を歴任し、現職。 |
| 大塚美樹 | 専務取締役 | 1986年奥内ビル入社後、同年同社に入社。1995年社会保険労務士登録。1996年取締役、2000年専務取締役に就任。子会社の代表を歴任し、現職。 |
| 加藤正久 | 常務取締役 | 1979年竹中工務店入社。執行役員、常務執行役員、取締役専務執行役員などを経て、2024年4月に同社顧問に就任。同年6月より現職。 |
| 鵜飼茂一 | 取締役(常勤監査等委員) | 1972年姫路信用金庫入社。2001年税理士登録。2007年同社入社、常勤監査役に就任。子会社の監査役などを歴任し、2018年6月より現職。 |
社外取締役は、黒田清行(弁護士)、木村裕史(弁護士)、濱田聡(公認会計士)、有田知德(元福岡高等検察庁検事長)、目細実(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「人材サービス事業」「CRO事業」の報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 人材サービス事業
理学系研究職、工学系技術職、一般事務職等の専門的な能力や経験を有する人材を、製薬・食品・化学等の製造業における研究開発部門などに派遣および紹介しています。
顧客企業に人材を派遣し労働力を提供することで派遣料金を受け取ります。また、人材紹介では求職者が入社した際に紹介手数料を得ます。運営はWDB、WDB工学が担当しています。
■(2) CRO事業
医薬品メーカーや医療機器メーカーを対象に、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器などの基礎研究における実験業務や開発業務の代行および支援を行っています。
契約に基づく受託業務の提供や成果物の納品により、顧客から業務受託料を受け取ります。国内では安全性情報管理を中心に、海外では開発業務全般を扱っており、WDBココやOy Medfiles Ltd.、コーブリッジなどが運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の連結業績を見ると、売上高は概ね右肩上がりの傾向が続いていましたが、直近では微減となっています。一方、経常利益および経常利益率は段階的に低下しており、収益性の確保が課題となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 469億円 | 476億円 | 493億円 | 511億円 | 503億円 |
| 経常利益 | 64億円 | 56億円 | 55億円 | 51億円 | 46億円 |
| 利益率(%) | 13.6% | 11.8% | 11.2% | 10.0% | 9.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 17億円 | 35億円 | 31億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および売上総利益は前期と比較してわずかに減少しています。また、販売費及び一般管理費の増加に伴い、営業利益および営業利益率も低下傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 511億円 | 503億円 |
| 売上総利益 | 117億円 | 116億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.9% | 23.1% |
| 営業利益 | 51億円 | 45億円 |
| 営業利益率(%) | 10.0% | 8.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が33億円(構成比46%)、賃借料が7億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の人材サービス事業は、派遣料金の引き上げにより増収となりました。一方でCRO事業は、国内での受託量減少や海外の不採算事業売却の影響を受けて減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 人材サービス事業 | 430億円 | 435億円 |
| CRO事業 | 82億円 | 68億円 |
| 連結(合計) | 511億円 | 503億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」に該当します。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 44億円 | 28億円 |
| 投資CF | -33億円 | -39億円 |
| 財務CF | -14億円 | -21億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「新たなスタンダードを創出し、社会を変える」という経営理念のもとで事業を運営しています。埋もれた価値を発掘し、新たな価値を創造していく会社であり続けるため、提供する事業や人材が持つ価値を最大限に発揮できる状態を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「働く喜び」の提供をビジョンに掲げ、経済的報酬と精神的報酬の調和を重視しています。努力が正当に評価され、挑戦と成長が支えられる仕組みを整えるとともに、社員一人一人が社会貢献への強い意識と誇りを持って働ける会社づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
収益力の拡大と株主価値の向上に注力し、重要な経営指標として以下の目標を掲げています。
・営業利益率:10%以上
・経常利益率:10%以上
・ROE(自己資本利益率):15%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
人口減少や賃金上昇を見据え、プラットフォームを通じた仲介業務の自動化を推進し、人材派遣会社としての価値最大化を図ります。削減したコストを原資に派遣スタッフの待遇改善を進めるほか、CRO事業においてはAIを活用した定型業務の自動化と高付加価値領域への資源集中を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
仲介業務の自動化を担うIT人材の採用・育成を進めるとともに、派遣スタッフの就業支援を担う人材の育成にも注力しています。また、待遇改善やフルフレックス制度、長期休暇制度の導入など、ライフスタイルに応じた柔軟な働き方を支える労働環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 48.9歳 | 16.2年 | 7,618,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 77.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 79.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 99.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(43%)、中途採用比率(76%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 企業買収に伴うリスク
買収した企業の事業展開が計画通りに進まない場合、のれんの減損処理が発生する可能性があります。同社では、十分なデューデリジェンスの実施と買収後の定期的なモニタリング体制を整備し、リスクの特定と抑制を図っています。
■(2) 海外事業の拡大に伴うリスク
CRO事業において欧州や米国で事業展開を行っているため、進出先国の政治や社会体制に急激な変化が生じた場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。これに対し、定期的な情勢把握とタイムリーな情報収集によるリスク管理を行っています。
■(3) 社会保険の改定に伴う影響
制度改革による社会保険料率の改定や加入要件の見直しにより、雇用主としての社会保険料負担が増加する可能性があります。同社はコスト管理の徹底やサービスの質向上を通じて、派遣料金の適正な改定につなげることで対応しています。



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