※本記事は、WDBホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第40期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. WDBホールディングスってどんな会社?
理学系研究職の人材派遣に強みを持ち、CRO事業やプラットフォーム事業も展開する企業グループです。
■(1) 会社概要
同社は1985年に兵庫県姫路市で設立され、事務処理サービスを開始しました。1987年に労働者派遣事業、1991年に人材紹介業へ進出し、2006年に株式上場を果たしました。2011年には持株会社体制へ移行し、現社名へ変更しています。その後、海外CRO企業の買収や、プラットフォーム開発を行う子会社の設立などを通じて事業領域を拡大しています。
現在の連結従業員数は5,452名(単体11名)です。大株主構成については、筆頭株主は中野商店、第2位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位はSMBC信託銀行(特定有価証券信託受託者)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中野商店 | 49.19% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.68% |
| SMBC信託銀行 | 3.44% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は中野敏光氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中野 敏光 | 代表取締役社長 | 1985年同社設立・代表取締役。WDB代表取締役などを兼務し、グループ経営を牽引。2020年WDB事業承継パートナーズ代表取締役より現職。 |
| 大塚 美樹 | 専務取締役 | 1986年同社入社。WDB専務取締役、WDB独歩代表取締役、コーブリッジ代表取締役などを兼務。2000年より現職。 |
| 加藤 正久 | 常務取締役 | 竹中工務店にて執行役員、常務執行役員、取締役専務執行役員などを歴任。同社顧問を経て2024年より現職。 |
| 鵜飼 茂一 | 取締役(常勤監査等委員) | 姫路信用金庫を経て同社入社。WDB独歩監査役、WDB工学監査役などを兼務。2018年より現職。 |
社外取締役は、黒田清行(弁護士法人三宅法律事務所代表社員)、木村裕史(木村法律事務所所長)、濱田聡(公認会計士・税理士)、有田知德(元福岡高等検察庁検事長・弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「人材サービス事業」および「CRO事業」を展開しています。
■(1) 人材サービス事業
理学系研究職(バイオ・化学系)、工学系技術職(機械・電気等)、一般事務職を対象とした人材派遣および人材紹介サービスを提供しています。主な顧客は製薬・食品・化学等の製造業における研究開発部門や大学の研究室などで、特に理学系研究職の派遣に強みを持っています。
収益は、顧客企業からの派遣料金および紹介手数料によって構成されています。運営は主にWDB、WDB工学などが行っています。
■(2) CRO事業
医薬品メーカーや医療機器メーカーを対象に、医薬品・化粧品・医療機器等の開発業務の代行・支援を行っています。国内では安全性情報管理の分野を中心に、海外では開発業務全般を扱っています。
収益は、顧客企業からの業務受託費によって構成されています。運営は主にWDBココ、Oy Medfiles Ltd.、コーブリッジなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では、2022年3月期をピークに経常利益および当期純利益が減少傾向にあり、利益率は低下しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 441億円 | 469億円 | 476億円 | 493億円 | 511億円 |
| 経常利益 | 52億円 | 64億円 | 56億円 | 55億円 | 51億円 |
| 利益率(%) | 11.9% | 13.6% | 11.8% | 11.2% | 10.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 34億円 | 42億円 | 35億円 | 35億円 | 31億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益および営業利益率は低下しました。売上総利益率は微減となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 493億円 | 511億円 |
| 売上総利益 | 119億円 | 117億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.1% | 23.0% |
| 営業利益 | 55億円 | 51億円 |
| 営業利益率(%) | 11.1% | 9.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が32億円(構成比48%)、賃借料が7億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
人材サービス事業は売上が増加したものの、派遣社員や従業員の待遇改善に伴うコスト増により減益となりました。CRO事業も国内外での受注が堅調で増収となりましたが、人件費増や事業売却費用の発生により利益は横ばいとなりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 人材サービス事業 | 421億円 | 430億円 | 45億円 | 40億円 | 9.4% |
| CRO事業 | 72億円 | 82億円 | 15億円 | 15億円 | 18.5% |
| 連結(合計) | 493億円 | 511億円 | 55億円 | 51億円 | 9.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.4%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 45億円 | 44億円 |
| 投資CF | -7億円 | -33億円 |
| 財務CF | -12億円 | -14億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「埋もれた価値を発掘し、新たな価値を創造していく会社でありたい」という考えのもと事業運営を行っています。多様な経営資源を組み合わせることで新たな価値を創造し、自身の企業価値を高めていく企業グループを目指しています。
■(2) 企業文化
「仕事の成果」の保証、「働く喜び」の提供、「誇り」をもって働ける会社、「価値」の還元という4つのビジョンを掲げています。サービス品質の維持向上、働く一人一人への喜びの提供、社会貢献への誇り、そしてステークホルダーへの利益還元を重視する文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
収益力の拡大に注力し、株主価値の向上を目指しています。資本コスト以上の利益を得られる状態を維持するため、以下の経営指標を目標として掲げています。
* 売上高営業利益率:10%以上
* 売上高経常利益率:10%以上
* ROE(自己資本利益率):15%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
労働力人口減少と賃金上昇に対応するため、人材派遣会社としての価値の極限化とプラットフォーム運営会社への転身を戦略としています。派遣社員の待遇改善や「転勤を伴わない正社員型派遣」の推進、派遣サービスプラットフォーム「ドコ1」の活用により、競争力を強化します。
* 人材派遣:待遇改善、営業体制強化、プラットフォームによる自動化と仲介コスト削減。
* CRO事業:AI活用による業務効率化、定型業務の自動化・標準化、高付加価値領域への集中。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「埋もれている価値を見出し、そこに光を当てて新たな価値を付加できる会社」を目指し、DE&I(ダイバーシティ・インクルージョン)や人材教育を重視しています。多様な人材の採用・登用を進めるとともに、派遣社員の安定就業支援やスキルアップ研修の拡充に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.1歳 | 15.5年 | 7,084,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 95.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用比率(76%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 派遣社員の確保
顧客の求めるスキルや経験を有する求職者を速やかに選任できる体制が不可欠ですが、雇用情勢の変化等により十分な人材を確保できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、教育・養成施設の活用や報酬の継続的な引き上げ、営業体制の強化による採用数増加に取り組んでいます。
■(2) 法的規制ならびに関連法規の改正
事業は労働者派遣法や職業安定法等の適用を受け、法令違反や法改正の内容によっては業績に影響を与える可能性があります。同社は法令順守を重視し、これまで欠格事由への該当や業務停止命令を受けた事実はありませんが、法改正には都度対応策を講じています。
■(3) 企業買収に伴うリスク
企業買収後、計画通りに事業展開が進まない場合、のれんの減損処理が発生し業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、十分なデューデリジェンスの実施や買収後の定期的なモニタリング体制の整備により、リスクの特定・抑制と買収効果の最大化を図っています。
■(4) 個人情報の管理
多数の個人情報を保有しており、漏洩や不正使用が発生した場合、企業イメージの悪化等により業績に影響を与える可能性があります。対策として、社員研修による教育やシステム上の仕組みの整備を行っており、WDBにおいて「プライバシーマーク」の認定を取得しています。



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