※本記事は、クルーズの有価証券報告書(第25期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. クルーズってどんな会社?
■(1) 会社概要
2001年に設立され、モバイルコンテンツ受託開発を開始しました。2007年には大阪証券取引所ヘラクレス(現東証スタンダード)へ上場を果たし、2009年に現在の社名に変更しています。2012年から展開していた主力EC事業を譲渡し、2026年からは新たにホテルコンバージョン事業を開始しています。
従業員数は連結で856名、単体で14名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の小渕宏二氏であり、第2位は清原達郎氏、第3位は田澤知志氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 小渕宏二 | 33.39% |
| 清原達郎 | 9.30% |
| 田澤知志 | 7.83% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は小渕宏二氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小渕宏二 | 代表取締役社長 | ホテル京急、シーエスアイを経て、2001年に同社を設立し、代表取締役社長に就任。 |
| 仲佐義規 | 取締役副社長 | 2004年に同社に入社し、執行役員を経て、2011年より現職。 |
| 稲垣佑介 | 取締役副社長 | ワールドコンパイラ設立などを経て2013年に同社に入社し、2016年より現職。 |
社外取締役は、永井文隆(AURUM代表取締役社長)、立松進(U.P.n.P代表取締役)、川井崇司(すごい会議どすえ代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ITアウトソーシング事業」「EC事業」および「その他」事業を展開しています。
■ITアウトソーシング事業
システムエンジニアリングサービス(SES)事業を中心に、人材とITの領域で事業を展開しています。IT人材業界におけるエンジニア人材不足という市場課題を解決すべく、積極的な採用活動を通じて獲得した正社員エンジニアの技術力を顧客へ提供しています。
収益は、主に稼働エンジニア数と単価で構成されるサービス提供対価として顧客から受け取ります。運営は、主に496などが担当しています。
■EC事業
主にファッション通販サイト内で、オリジナル商品と他社の優良ブランドの商品を厳選して取り扱うセレクトショップを展開しています。季節要因による変動などに対応しながら、安定した収益基盤の構築を図っています。
収益は、オンラインショップでの商品販売や受託販売業務を通じて顧客から受け取ります。運営は、主にAdaが担当しています。
■その他事業
上記の報告セグメントに含まれない事業を展開しています。2026年からは、インバウンド需要の増加を背景に、都心の築古中小型ビルを取得し高付加価値なホテルへと用途変更するホテルコンバージョン事業を開始しました。
収益は、ホテルの宿泊提供を通じた長期安定的な収益(インカムゲイン)を想定しています。運営は、同社などが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は140億円〜150億円台で推移していましたが、直近では事業撤退等の影響で118億円へと減少しています。利益面では一時的に経常赤字を計上したものの、当期利益については全期間で黒字を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 155億円 | 140億円 | 143億円 | 142億円 | 118億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 6億円 | 12億円 | -8億円 | -2億円 |
| 利益率(%) | 8.4% | 4.5% | 8.6% | -5.9% | -1.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -5億円 | 6億円 | 10億円 | 12億円 | 5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年比で減少しましたが、売上原価の低減により売上総利益率は改善しています。また、不採算事業からの撤退や主力の成長により、営業利益は黒字転換を果たしました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 142億円 | 118億円 |
| 売上総利益 | 62億円 | 61億円 |
| 売上総利益率(%) | 43.5% | 52.0% |
| 営業利益 | -10億円 | 0.2億円 |
| 営業利益率(%) | -7.2% | 0.2% |
販売費及び一般管理費のうち、販売促進費が23億円(構成比38%)、給料及び手当が10億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力に位置づけるITアウトソーシング事業は大きく成長し、売上高が増加しています。一方で、EC事業およびその他事業は事業譲渡や撤退の影響により売上高が大きく減少しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ITアウトソーシング事業 | 50億円 | 77億円 |
| EC事業 | 69億円 | 37億円 |
| その他 | 23億円 | 4億円 |
| 連結(合計) | 142億円 | 118億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期の営業キャッシュ・フローはマイナス、投資キャッシュ・フローもマイナス、財務キャッシュ・フローはプラスとなっており、本業は赤字ですが、将来の成長に向けて借入等で投資を継続する勝負型の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -10億円 | -1億円 |
| 投資CF | -63億円 | -76億円 |
| 財務CF | 46億円 | 22億円 |
財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「売上高、営業利益の最大化を通じて、すべてのステークホルダーに大きな価値を還元する」ことを経営の基本方針としています。また、新たに「国土の真価を証明し、世界に誇る観光立国へ」というビジョンを掲げ、時代とユーザーに合わせて事業を創造するテックカンパニーを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、多様な人材がそれぞれの能力を発揮し、いきいきと活躍できる職場環境の整備を重視しています。フレキシブルな勤務制度の導入やフラットな組織運営を通じて、組織横断的な連携とチャレンジを促進し、新たな価値創造につなげる文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループが重要と考える経営指標は、売上高および営業利益です。主力であるSES事業においては、ITエンジニアの新規採用数と離職率を中長期的な重要指標と位置づけ、これらをシンプルに追求することで業績の拡大を図っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は持続的な成長に向けて、以下の重点施策に取り組んでいます。従来の採用チャネルに加え新たな採用手法の導入や、リモートワーク等の柔軟な働き方の提供を通じ、エンジニアと顧客の双方にとって満足度の高いアサインメントの実現を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「果敢な挑戦への適切なインセンティブと、個のポテンシャルを最大限に活かす適材適所の配置」を人事ポリシーとしています。重要プロジェクト制度やライフサポート休暇制度など、個人の主体的なキャリア形成と組織力向上を連動させる先進的な社内環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.8歳 | 8.6年 | 8,437,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業界の動向と技術的変化への対応
クラウドやAIなど新たな技術が次々と生まれる中で、技術者のスキルや提供サービス内容を継続的に進化させ、変化に即応する柔軟な事業運営が求められます。市場の技術的変化や顧客ニーズの転換に十分に対応できなかった場合、競争力の低下を招くリスクがあります。
■(2) SES業界における競合と価格競争の激化
SES業界には多数の事業者が存在し、顧客の獲得や案件受注をめぐる競争が激化しています。業界大手や新規参入企業による価格競争の激化や営業網の拡充により、既存顧客との取引維持や新規案件の受注機会が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 優秀なエンジニア人材の確保と育成
同社の事業は人的資本への依存度が高く、コミュニケーション力や課題解決力を兼ね備えたエンジニアの確保と育成が持続的成長の要です。人材市場の流動性が高まる中、他社との獲得競争が激化しており、必要な人員の確保や育成が思うように進まないリスクが存在します。



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