※本記事は、クルーズ株式会社 の有価証券報告書(第24期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. クルーズってどんな会社?
ITアウトソーシングとEC領域を中心に事業を展開する持株会社です。
■(1) 会社概要
2001年に有限会社ウェブドゥジャパンとして設立され、モバイルコンテンツ事業を開始しました。2007年にヘラクレス(現スタンダード市場)へ上場し、2009年に現社名へ変更しました。その後、ソーシャルゲームやEC事業「SHOPLIST」で成長しましたが、2018年にSHOPLIST事業を分社化(後に売却)。現在はITアウトソーシング事業を中核に事業構造の転換を進めています。
同社グループの従業員数は連結712名、単体21名です。筆頭株主は代表取締役社長の小渕宏二氏で、第2位は個人株主の清原達郎氏、第3位も個人株主の田澤知志氏となっています。創業社長が株式の3分の1以上を保有するオーナー系企業です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 小渕 宏二 | 33.39% |
| 清原 達郎 | 9.78% |
| 田澤 知志 | 7.83% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は小渕宏二氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小渕 宏二 | 代表取締役社長 | 1995年ホテル京急入社。1996年シーエスアイ(現SCSK Minoriソリューションズ)入社。2001年同社設立し代表取締役社長より現職。 |
| 仲佐 義規 | 取締役副社長 | 2004年同社入社。2010年執行役員を経て、2011年取締役より現職。 |
| 稲垣 佑介 | 取締役副社長 | 2003年ワールドコンパイラ設立代表取締役社長。BANEX JAPAN取締役副社長を経て2013年同社入社。2016年取締役より現職。 |
社外取締役は、永井文隆(公認会計士・税理士、AURUM代表取締役社長)、立松進(U.P.n.P代表取締役)、川井崇司(すごい会議どすえ代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ITアウトソーシング事業」「EC事業」「GameFi事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ITアウトソーシング事業
システムエンジニアリングサービス(SES)を中心に、人材×IT領域で事業を展開しています。IT人材業界におけるエンジニア不足という市場課題の解決を主目的としています。
収益は、顧客企業に対するエンジニアの技術提供対価(稼働エンジニア数×単価)として受け取ります。運営は主に496株式会社などの子会社が行っています。
■(2) EC事業
ファッション通販サイト『ZOZOTOWN』内で、オリジナル商品や他社優良ブランドの商品を厳選したファッションセレクトショップを運営しています。なお、以前主力であったSHOPLIST事業からは撤退しています。
収益は、商品の販売代金として一般消費者から受け取ります。運営は主にAda株式会社が行っています。
■(3) GameFi事業
スマートフォン等の携帯端末を利用したゲームの企画・開発・運営や、それに付随した受託開発等を行っています。ブロックチェーン技術を活用したゲーム開発なども手掛けていました。
収益は、ゲーム内課金や受託開発費としてユーザーや顧客企業から受け取ります。運営はStudio Z株式会社などが行っていましたが、2025年6月に当該事業からの撤退を完了しています。
■(4) その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、メディア事業などを展開していましたが、量的な重要性の低下により「その他」に含まれています。
収益は各サービスの利用料や広告料などから構成されます。運営はグループ各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は2021年3月期をピークに、事業構造の転換により縮小傾向にありましたが、直近数期は約140億円前後で推移しています。利益面では、2024年3月期までは黒字を維持していましたが、直近の2025年3月期はGameFi事業の不振等により営業赤字、最終赤字に転落しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 357億円 | 155億円 | 140億円 | 143億円 | 142億円 |
| 経常利益 | 22億円 | 13億円 | 6億円 | 12億円 | -8億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | 8.4% | 4.5% | 8.6% | -5.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 3億円 | 3億円 | 10億円 | -5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比でほぼ横ばいですが、売上原価の増加により売上総利益率が低下しています。さらに、販売費及び一般管理費が増加したことや、GameFi事業での損失計上が影響し、営業損益が大幅に悪化して赤字となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 143億円 | 142億円 |
| 売上総利益 | 67億円 | 62億円 |
| 売上総利益率(%) | 47.0% | 43.5% |
| 営業利益 | 2億円 | -10億円 |
| 営業利益率(%) | 1.1% | -7.2% |
販売費及び一般管理費のうち、販売促進費が22億円(構成比31%)、給料及び手当が11億円(同15%)、広告宣伝費が9億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ITアウトソーシング事業は売上が大幅に増加し黒字化しましたが、EC事業は減収減益となりました。GameFi事業は売上が半減し、多額の営業損失を計上しました。その他事業も減収で赤字幅が拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ITアウトソーシング事業 | 31億円 | 50億円 | -0.1億円 | 1億円 | 2.4% |
| EC事業 | 70億円 | 69億円 | 2億円 | 0.4億円 | 0.6% |
| GameFi事業 | 32億円 | 17億円 | 0.6億円 | -9億円 | -50.6% |
| その他 | 10億円 | 6億円 | -0.9億円 | -3億円 | -55.6% |
| 連結(合計) | 143億円 | 142億円 | 2億円 | -10億円 | -7.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の収益性低下や一時的な支出増により営業CFがマイナスとなり、さらに投資不動産の取得などで投資CFも大幅なマイナスとなりました。これらを賄うために長期借入を実施した結果、財務CFは大幅なプラスとなっており、将来の成長に向けた勝負に出ている状態と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -4億円 | -10億円 |
| 投資CF | -16億円 | -63億円 |
| 財務CF | 6億円 | 46億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できず(前期9.9%)、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.1%で市場平均(スタンダード市場非製造業平均48.5%)を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、インフラやテクノロジーの進化、ユーザーニーズの変化に合わせて事業を創造するテックカンパニーであることを目指しています。売上高と営業利益の最大化を通じて、すべてのステークホルダーに大きな価値を還元することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
常に時代とユーザーに合わせて変化し続けることを重視しています。各事業をコンパクトな組織単位で運営することで、現場主導の迅速な意思決定とサービス改善を可能にする体制を構築し、変化に即応する柔軟な事業運営を行っています。
■(3) 経営計画・目標
ITアウトソーシング事業、特にSES事業におけるエンジニア人材不足の解決を主軸とし、売上高および営業利益を重要経営指標としています。SES事業においては「稼働エンジニア数」の拡大が重要であるため、エンジニアの新規採用数と離職率の改善をシンプルに追求し、業績拡大を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後はITアウトソーシング事業に経営資源を集中させます。具体的には、エンジニア採用チャネルの拡充や広告運用の最適化による採用力強化、スキル獲得機会や高水準の報酬提供による定着率向上を図ります。一方で、SHOPLIST事業やGameFi事業からは撤退し、選択と集中を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ITアウトソーシング事業の成長には人的資本が不可欠であるため、エンジニアに選ばれ続ける待遇・働き方の維持を重視しています。希望するスキルの獲得機会、高水準の報酬、リモートワーク等の柔軟な働き方を提供することで、モチベーション維持と定着を図り、採用競争力の強化に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.5歳 | 8.4年 | 8,083,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) IT人材業界の競争と技術変化
クラウドやAIなど技術革新が速いIT人材業界において、技術者のスキルやサービスを変化に対応させる必要があります。また、多数の事業者が存在し競争が激化する中、顧客ニーズへの対応や優秀なエンジニアの確保・育成が困難になった場合、競争力の低下や稼働率の悪化により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 稼働率および契約単価の変動
SES事業の売上はエンジニアの稼働状況に依存しており、プロジェクト終了後の待機期間やスキルミスマッチにより稼働率が低下すると利益率が悪化します。また、業界全体の競争激化等により契約単価が下落した場合も、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 景気動向および顧客投資の影響
システムエンジニアリングサービスは顧客企業のIT投資に依存しており、景気後退により新規案件の抑制や契約規模の縮小が発生する傾向があります。特に大口顧客からの受注が減少した場合には、業績に大きな影響を与える可能性があります。
■(4) 情報セキュリティリスク
SES事業やEC事業において、顧客情報や個人情報を取り扱っています。サイバー攻撃や内部者による情報漏えい等が発生した場合、損害賠償責任や社会的信用の毀損により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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