※本記事は、イー・ギャランティ株式会社 の有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イー・ギャランティってどんな会社?
企業間取引における信用リスクの受託と流動化を行う信用保証事業を単一セグメントで展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2000年に伊藤忠商事の子会社として設立され、翌2001年に企業間取引の売上債権を包括的に保証するサービスを開始しました。2007年にジャスダック証券取引所へ上場し、2012年には東京証券取引所市場第一部へ指定されました。その後、信用リスクの引受けや流動化を目的とした複数の匿名組合を設立し、事業基盤を拡大しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は184名、単体従業員数は180名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は同社の設立母体であり事業上の提携関係にある伊藤忠商事です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 14.90% |
| 伊藤忠商事株式会社 | 13.20% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 10.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は江藤 公則氏が務めています。社外取締役は4名選任されており、取締役全体の50%を占めます。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 江藤 公則 | 代表取締役社長 | 1998年4月伊藤忠商事入社。2000年9月同社出向、ゼネラル・マネージャー兼営業統括部長等を歴任。2005年4月代表取締役社長に就任。2006年11月同社に転籍し、現在に至る。 |
| 唐津 秀夫 | 取締役副社長 | 1978年4月三井銀行入行。三井住友銀行日本橋支店長等を経て、2010年4月同社入社。経営管理部長、営業部門長等を歴任し、2020年6月常務取締役執行役員。2024年6月より現職。 |
| 邨井 望 | 常務取締役執行役員経営管理部長 | 2002年4月エヌ・アイ・エフベンチャーズ入社。2007年1月同社入社。経営企画室長等を歴任し、2013年6月取締役執行役員経営管理部長。2024年6月より現職。 |
| 永井 譲次 | 取締役執行役員社長補佐 | 1973年4月埼玉銀行入行。あさひ銀行支店長等を経て2008年3月同社入社。内部監査室長、リスク管理室長、営業部門長、業務部長等を歴任。2023年3月より現職。 |
社外取締役は、黒澤 秀雄(元三井住友海上火災保険常務執行役員)、亀井 信重(元三菱UFJ銀行常務執行役員)、澁谷 司郎(元帝国データバンク執行役員)、馬渕 磨理子(日本金融経済研究所代表理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「信用保証事業」を単一セグメントとして展開しています。
■(1) 事業法人向け保証サービス
一般事業会社が行う企業間取引(BtoB)において発生する、売掛金や手形などの売上債権の未回収リスクを保証するサービスです。販売先の倒産等による焦げ付きリスクを同社が引き受けることで、顧客企業は貸倒れリスクを回避できます。多数の取引先をまとめて保証する「包括保証」と、特定の取引先のみを保証する「個別保証」があります。
収益は、保証契約を締結した顧客企業から受け取る「保証料」です。包括保証では売上の増減に連動する「売上高課金方式」などを提供しています。運営は主にイー・ギャランティが行っており、引き受けたリスクの一部はファンドや金融機関等へ流動化(移転)しています。
■(2) 金融法人向け保証サービス
金融機関等が保有する各種債権の信用リスクを同社が受託し、それをファンドや他の金融機関等のニーズに合わせて再組成して流動化するサービスです。同社では「リスク・マーケット・サービス(RMS)」と呼称しています。金融機関が融資や債権流動化を行う際に発生するリスクを同社が引き受けることで、金融機関の新たなサービスの提供を支援します。
収益は、金融機関等の契約先から受け取る保証料等です。このサービスにより、同社は信用リスクを顧客から仕入れ、投資家へ販売するマーケットメーカーとしての機能を果たしています。運営はイー・ギャランティが中心となり行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実な右肩上がりを続けており、直近5期間を通じて増収傾向にあります。利益面でも、経常利益率は高い水準を維持しており、50%前後で推移しています。当期においては売上高、経常利益、当期純利益のいずれも過去最高を更新しており、安定した成長と高い収益性を両立しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 72億円 | 79億円 | 85億円 | 92億円 | 102億円 |
| 経常利益 | 31億円 | 38億円 | 42億円 | 49億円 | 52億円 |
| 利益率(%) | 43.2% | 47.6% | 49.8% | 53.5% | 50.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 25億円 | 29億円 | 33億円 | 35億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は70%台後半と非常に高い水準を維持していますが、当期は売上原価の増加率が売上高の増加率を上回ったため、利益率はわずかに低下しました。営業利益率は50%前後で推移しており、高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 92億円 | 102億円 |
| 売上総利益 | 74億円 | 78億円 |
| 売上総利益率(%) | 80.4% | 76.5% |
| 営業利益 | 49億円 | 51億円 |
| 営業利益率(%) | 52.9% | 49.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が10億円(構成比36%)、租税公課が3億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は「信用保証事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の詳細な増減分析はありませんが、倒産件数の増加や金融環境の変化を背景に保証ニーズが高まっており、新規契約の獲得や既存顧客の利用拡大が進んだことで、事業全体として増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 信用保証事業 | 92億円 | 102億円 |
| 連結(合計) | 92億円 | 102億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
A. パターン判定と注記
**改善型**
本業で得た現金に加え、投資活動でも資金が増加しており、それらを原資として配当等の財務活動へ充当している状態です。なお、当期の投資CFのプラスは主に定期預金の払戻しによるものです。
B. 表
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 31億円 | 41億円 |
| 投資CF | -43億円 | 3億円 |
| 財務CF | -13億円 | -14億円 |
C. 財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、信用リスクの引受けによる信用供与と適正な社会資源の配分を通じて、企業の新たな挑戦と活力のある社会成長に貢献することを基本理念としています。また、自社の経営資源に拘らず、信頼できるパートナーとの協力と自社の専門性に基づき、常に先進的かつ夢の広がる金融サービスを創造することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「自分で考え、行動でき、信頼される魅力に溢れた社員を育成し、自由な発想を活かせる企業」を目指すことを理念の一つとして掲げています。社員一人ひとりの主体的な行動と成長を重視し、自由な発想を尊重する組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、事業の成長性と収益性を重視し、連結経常利益を重要な経営指標と位置付けています。また、中期経営計画「Accelerate2028」を策定し、飛躍的な成長へのギアチェンジを図っています。財務指標としては、ROEおよびROIC 20%以上を目標として掲げています。
* 2025年3月期 経常利益目標:52億円(達成)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、独自の企業データベースの充実とリスク引受能力の向上により、安定成長から加速度的成長へのシフトを目指しています。具体的には、営業資源の投入増加とデジタル化推進による効率的な売上増加、新チャネル・新商品投入による顧客基盤の拡大、既存顧客へのサービス充実による継続率向上を図ります。
* 2028年3月期末までに100億円の自己株式取得を実施
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「自分で考え、行動でき、信頼される魅力に溢れた社員」の育成を掲げ、主体的に能力開発に取り組む社員を支援しています。特にマネジメントに必要なコンセプチュアルスキル、ヒューマンスキル、テクニカルスキルの習得を重視した研修制度を設けています。また、多様な人材が活躍できるよう、ライフステージに応じた柔軟な働き方ができる制度整備やダイバーシティの推進に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 31.5歳 | 5.9年 | 6,053,000円 |
※平均年間給与は賞与、基準外賃金による給与課税額を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.4% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(60.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 収益構造に関するリスク
同社は顧客から保証料を得る一方、リスク移転先に費用を支払います。保証料率の低下や、想定を超える信用力の低下・保証履行が発生した場合、またはリスク移転先が引受け困難となった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、一部のリスクを同社グループで保有しており、想定以上の保証履行が発生した場合も業績に影響する可能性があります。
■(2) 競合との競争激化
同社の事業法人向け売掛債権保証サービスは、大手金融機関系ファクタリング会社の保証ファクタリングや損害保険会社の取引信用保険と類似しています。これら競合他社は知名度や信用力で優位にあり、競争が激化した場合には営業推進上不利になる可能性があります。顧客ニーズに合った商品開発ができず競争力が低下すれば、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 気候変動による影響
気候変動への対応としてTCFD提言に基づく情報開示を行っていますが、気候変動に伴うリスク(移行リスクや物理的リスク)が顕在化した場合、同社の事業活動や財務状況に影響を与える可能性があります。同社はシナリオ分析を実施し、リスクと機会の特定を行っていますが、予期せぬ環境変化が生じる可能性は否定できません。



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