アイティメディア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイティメディア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイティメディアは、東証プライム市場に上場するインターネット専業メディアです。IT分野を中心に専門性の高いニュースや技術解説記事を提供し、リードジェネレーション等によるマーケティング支援を主力とします。直近の業績は、BtoCメディアの伸長等により増収となった一方、先行投資等により減益となりました。


※本記事は、アイティメディアの有価証券報告書(第27期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。

1. アイティメディアってどんな会社?


同社は、IT分野を中心に専門性の高い情報を発信するインターネット専業メディアです。

(1) 会社概要


1999年にソフトバンク・ジーディーネットとして設立され、2005年に現在のアイティメディアへ商号変更しました。2007年の東証マザーズ上場後、2015年の発注ナビ子会社化などM&Aを通じて事業を拡大し、直近ではピイ.ピイ.コミュニケーションズやマジセミを完全子会社化しています。

現在は連結で382名、単体で335名の従業員を擁しています。筆頭株主は親会社であるSBメディアホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
SBメディアホールディングス 53.18%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4.33%
新野 淳一 1.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長兼CEOは小林教至氏が務め、過半数を占める5名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
小林 教至 代表取締役社長兼CEO 1991年博報堂ダブルス入社。アスキー総合研究所を経て2000年にアットマーク・アイティ(現同社)入社。執行役員、取締役等を経て2025年4月より現職。
大槻 利樹 代表取締役会長 1984年日本ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)入社。1999年に同社代表取締役社長に就任し、長らく同社を牽引。2025年4月より現職。
加賀谷 昭大 取締役CFO兼 管理本部長 1998年間組入社。セガやソフトバンクグループ各社を経て2008年に同社入社。執行役員等を経て2019年7月より取締役CFOに就任し、現職。
木崎 秀夫 取締役 1995年三和銀行入行。ビーウィズやSBヒューマンキャピタルを経て、2024年にSBメディアホールディングス代表取締役社長に就任。2025年6月より現職。


社外取締役は、渡邉桂子(ビーアイシーピー・データ代表取締役)、浜田敬子(リクルートワークス研究所編集長)、髙橋利忠(元ユーシーカード常務)、佐藤広一(HRプラス社会保険労務士法人代表)、佐藤未央(A.佐川法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「BtoBメディア事業」および「BtoCメディア事業」を展開しています。

BtoBメディア事業


IT&ビジネス分野や産業テクノロジー分野における専門情報の提供、および情報システム開発会社の検索・比較サービス等を提供しています。企業の情報システムの導入に意思決定権を持つキーパーソンや、技術者、ビジネスパーソンを主な顧客としています。

収益は、リードジェネレーションやオンラインで開催するデジタルイベント、予約型広告の販売等により顧客企業から得ています。運営は同社のほか、発注ナビやピイ.ピイ.コミュニケーションズ等の子会社が担っています。

BtoCメディア事業


パソコンやスマートフォン等のデジタル関連機器の製品・活用情報、日用品全般の購買支援情報、ネット上の話題等を提供するメディアを展開しています。デジタル関連機器の活用に積極的な消費者や、一般のインターネットユーザーを対象としています。

収益は、閲覧されるページビューや購買行動に紐づく運用型広告等により広告主から得ています。主なメディアとして「ねとらぼ」や「Fav-Log」などを有し、運営は同社が単独で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上収益は80億円台で安定して推移し、直近では増収傾向にあります。一方、営業利益は減少傾向が続いており、システム基盤の強化等の先行費用が利益を圧迫する形となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 81億円 88億円 80億円 81億円 83億円
営業利益 27億円 29億円 22億円 20億円 18億円
利益率(%) 33.2% 33.5% 27.9% 25.0% 21.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 18億円 20億円 15億円 15億円 12億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で微増となったものの、売上総利益および営業利益は減少しました。利益率も低下傾向にあり、M&Aに伴う各種費用や事業拡大に向けた広告宣伝費の投入が影響しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 81億円 83億円
売上総利益 45億円 44億円
売上総利益率(%) 55.3% 52.4%
営業利益 20億円 18億円
営業利益率(%) 25.0% 21.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が9億円、業務委託費が4億円を占めています。また、売上原価のうち、労務費が18億円(構成比56.5%)、経費が14億円(同43.5%)となっています。

(3) セグメント収益


BtoBメディア事業は、デジタルイベントやリードジェネレーションの減収等により微減収・減益となりました。一方、BtoCメディア事業は、コンテンツの高品質化による広告単価の改善が寄与し、大幅な増収増益を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
BtoBメディア事業 66億円 66億円 17億円 12億円 18.2%
BtoCメディア事業 15億円 17億円 3億円 6億円 33.0%
連結(合計) 81億円 83億円 20億円 18億円 21.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益と資産売却等で得た資金を用いて配当金の支払いやリース負債の返済等を進める改善型の状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 18億円 14億円
投資CF -12億円 0.5億円
財務CF -20億円 -20億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も85.7%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「メディアの革新を通じて情報革命を実現し、社会に貢献する」を企業理念とし、ITを中心としたニュースや解説など専門性・信頼性の高い情報を提供するとともに、社会的知識基盤としての情報コミュニティを提供し、人々の知恵と知識の向上に貢献することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


「Value First(価値にとことん、こだわり抜く)」という人事ポリシーを掲げています。価値を生み出す源泉は「人」であり、多様な社員一人ひとりの力を引き出し、環境変化に即応しながら提供価値を磨き続ける文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、各事業の成長性と収益性を評価する指標として、売上収益や営業利益、EPS(1株当たり当期利益)等を重視しています。また、サービスの利用動向を示す会員数やページビュー数も重要な評価指標としています。具体的な中期目標としては以下を掲げています。

* EPS 140円超(2029年度)

(4) 成長戦略と重点施策


重要成長戦略として「差別化につながるデジタルデータの生成」や「収益モデルの多元化」を掲げています。具体的には、メディアの規模と展開領域の拡張、M&Aを通じた新事業への進出を進める方針です。また、システム基盤の刷新やAI活用による業務効率化など、経営基盤の強化にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「挑戦」「自律」「安心」の3つをキーワードに環境整備を進めています。複線キャリアパスや、年齢・経歴によらない役割等級制度を導入し、働く場所や時間を自ら選択できる「スマートワーク制度」やフレックスタイム制等を通じて、社員が能力を最大限に発揮できる組織づくりを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.9歳 8.6年 6,989,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.6%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 72.6%
男女賃金差異(正規雇用) 74.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.7%


また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員における女性比率(42%)、昇格者数(64名)、昇格率(18.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報セキュリティと個人情報管理


自然災害やシステム障害、不正アクセスにより、ユーザーへの安定的な情報提供ができなくなるリスクや、取得した個人情報が社外に流出するリスクがあり、業績や社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合と情報価値の低下


ソーシャルメディアやAIの発展を背景にインターネット上の情報量が拡大する中、同社が運営するメディアの情報価値が相対的に低下した場合、提供する広告商品の価値が下落し、事業および業績に大きな影響を与える可能性があります。

(3) 新規事業およびM&Aの不確実性


将来の成長を確保するため新規事業や企業買収等を行っていますが、当初想定した成果を得られず、のれんの減損や事業再編に伴う費用等が発生した場合、同社グループの財政状態および業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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