アイティメディア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイティメディア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。IT(情報技術)を中心とした専門性の高い情報を発信するインターネット専業メディアを運営しています。直近の業績は、売上収益が前期比で微増となりましたが、成長投資やコスト増により営業利益は減益となりました。


※本記事は、アイティメディア株式会社 の有価証券報告書(第26期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. アイティメディアってどんな会社?


ITやビジネス分野を中心とした専門性の高い情報を発信するインターネット専業メディア企業です。

(1) 会社概要


同社は1999年、ソフトバンクグループ初のオンラインメディア企業として設立され、2005年に現在の「アイティメディア」へ商号変更しました。2007年に東証マザーズへ上場し、2011年にはWebメディア「ねとらぼ」を開設してコンシューマー分野へも領域を拡大しました。2019年に東証一部へ市場変更し、現在は東証プライム市場に上場しています。

連結従業員数は346名(単体318名)です。筆頭株主は親会社のSBメディアホールディングスで53.35%を保有しており、ソフトバンクグループの連結子会社に位置付けられています。第2位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は個人株主の新野淳一氏(@IT創業者)となっています。

氏名 持株比率
SBメディアホールディングス 53.35%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 4.76%
新野 淳一 1.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名、計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長 兼 CEOは小林 教至氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
小林 教至 代表取締役社長 兼 CEO 博報堂ダブルス、アスキー総合研究所を経て2000年入社。発注ナビ代表取締役社長などを経て2025年4月より現職。
大槻 利樹 代表取締役会長 1984年日本ソフトバンク入社。同社代表取締役社長などを経て2025年4月より現職。
加賀谷 昭大 取締役CFO兼 管理本部長 セガ、ソフトバンクパブリッシングなどを経て2008年入社。2019年7月より現職。
土橋 康成 取締役 1983年日本ソフトバンク入社。SBクリエイティブ代表取締役社長などを歴任。2009年6月より現職。


社外取締役は、渡邉 桂子(ビーアイシーピー・データ代表取締役)、浜田 敬子(元AERA編集長)、髙橋 利忠(元ユーシーカード常務)、佐川 明生(弁護士)、佐藤 広一(社会保険労務士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「BtoBメディア事業」および「BtoCメディア事業」を展開しています。

(1) BtoBメディア事業


IT技術者や企業経営者向けに、「TechTargetジャパン」「キーマンズネット」「@IT」「ITmedia NEWS」などの専門メディアを運営し、技術情報や製品導入支援情報を提供しています。主な顧客はIT関連製品やサービスを提供する企業です。

収益は、見込み客情報を獲得・提供する「リードジェネレーション」、広告掲載料、オンラインイベント開催による「デジタルイベント」等が柱となっています。運営は主に同社が行っていますが、システム開発会社比較サービス「発注ナビ」については子会社の発注ナビが運営しています。

(2) BtoCメディア事業


一般消費者向けに、デジタルガジェット情報を扱う「ITmedia Mobile」「ITmedia PC USER」や、ネット上の話題を提供する「ねとらぼ」などを展開しています。読者はデジタル機器に関心の高い層やインターネットユーザー全般です。

主な収益源は、メディア上での広告掲載料(運用型広告、タイアップ広告等)です。特に「ねとらぼ」などのメディア力を活かし、スマートデバイスやソーシャルメディアに最適化した広告収益の拡大を図っています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上収益は2023年3月期をピークに80億円台で推移しています。利益面では、2023年3月期まで高い利益率を維持していましたが、直近2期間は減益傾向にあります。2025年3月期は売上収益が微増したものの、営業利益は減少しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 69億円 81億円 88億円 80億円 81億円
税引前利益 20億円 27億円 29億円 22億円 20億円
利益率(%) 29.3% 33.2% 33.5% 27.8% 25.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 18億円 20億円 15億円 15億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上収益は微増しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益率は低下しました。売上総利益率は高い水準を維持していますが、コスト増が利益を圧迫しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 80億円 81億円
売上総利益 50億円 50億円
売上総利益率(%) 62.8% 62.2%
営業利益 22億円 20億円
営業利益率(%) 27.8% 25.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が約9億円(構成比29%)、業務委託費が約4億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


BtoBメディア事業は、外資系顧客のマーケティング活動鈍化により広告収益が減少しましたが、デジタルイベント収益の増加で全体としては横ばいでした。利益は減少しています。BtoCメディア事業は、コンテンツ強化等により増収となり、利益も微増しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
BtoBメディア事業 66億円 66億円 19億円 17億円 25.7%
BtoCメディア事業 14億円 15億円 3億円 3億円 22.1%
連結(合計) 80億円 81億円 22億円 20億円 25.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業活動によるキャッシュ・フローを源泉として、投資や人材、コンテンツ等への投資、基幹システム等の設備投資に充当しています。

営業活動では、事業活動を通じて資金が増加しました。投資活動では、有価証券や投資有価証券の取得、固定資産や無形資産の取得により資金が減少しました。財務活動では、配当金の支払い等により資金が減少しましたが、新株発行による収入もありました。

同社は、豊富な現預金を保有しており、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる懸念は少ないと認識しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 14億円 18億円
投資CF -2億円 -12億円
財務CF -12億円 -20億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「メディアの革新を通じて情報革命を実現し、社会に貢献する」を企業理念としています。ITを中心とした専門性・信頼性の高い情報を提供するとともに、社会的知識基盤としての情報コミュニティを形成し、人々の知恵と知識の向上に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「Value First(価値にとことん、こだわり抜く)」を人事ポリシーとして掲げ、価値を生み出す源泉である人材の多様な力を引き出すことを重視しています。また、従業員がイキイキ働ける環境作りのキーワードとして「挑戦」「自律」「安心」を掲げ、主体的なキャリア形成や柔軟な働き方を推奨しています。

(3) 経営計画・目標


各事業の成長性と収益性を評価する指標として、売上収益、営業利益、当期利益およびEPS(基本的1株当たり当期利益)を重視しています。また、事業別の重要KPIとして、BtoBメディア事業では会員数、BtoCメディア事業ではページビュー数(PV)およびユニークブラウザ数(UB)を設定し、利用動向を注視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「差別化につながるデジタルデータの生成」と「収益モデルの多元化」を重要成長戦略としています。具体的には、コンテンツ強化によるメディア規模の拡大、M&Aを通じた新事業への進出、そして「リードジェンモデル」の強化などを推進します。

* BtoB領域:IT領域からビジネス、産業テクノロジー領域への拡大、職種・産業特化型メディアの開発。
* BtoC領域:スマートデバイスやSNSに最適化したメディア拡充、運用型広告からの収益拡大。
* 新規事業:M&Aを含む投資を強化し、メディア事業に留まらない領域への進出を図る。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「Value First」のポリシーのもと、社員一人一人の価値発揮を最大化するため、複線キャリアパス(組織価値コース・個人価値コース)や役割等級制度を採用しています。育成面では「挑戦機会」「対話機会」「研修機会」を提供し、評価においては成果だけでなくプロセスも重視する多面評価を導入しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.6歳 8.4年 6,765,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.6%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.4%
男女賃金差異(正規) 77.6%
男女賃金差異(非正規) 82.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システムトラブル、不正アクセス等


自然災害やサイバー攻撃等によりシステム障害が発生した場合、情報提供や役務提供が停止し、事業や信用に重大な影響を与える可能性があります。クラウド活用による冗長化やBCP策定等の対策を講じています。

(2) 個人情報等の取扱い


会員情報等の個人情報を保有しており、外部からの攻撃や漏洩事故が発生した場合、社会的信用の失墜等により業績に影響を与える可能性があります。プライバシーマークの取得やセキュリティ体制の強化等の対策を行っています。

(3) 運営メディアへの集客


集客において検索エンジンやSNS等のプラットフォームを活用しており、これらの仕様変更や方針転換により集客効果が低下した場合、広告価値の低下を通じて業績に影響を与える可能性があります。動向のモニタリングと最適化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。