※本記事は、ソースネクスト株式会社の有価証券報告書(第30期、自 2025年4月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ソースネクストってどんな会社?
AI通訳機「ポケトーク」やPCソフト等を企画・開発し、新たな市場の創出を目指す企業です。
■(1) 会社概要
1996年にソース(現ソースネクスト)として設立され、ソフトウェア事業の譲受を経て事業を拡大しました。2006年に東証マザーズへ上場し、2008年には東証一部へ市場変更しています。2017年にはAI通訳機「ポケトーク」を発売し、2022年に会社分割でポケトークを設立してグローバル展開を加速させています。
従業員数は連結で163名、単体で103名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役会長を務める松田憲幸氏で、第2位は事業会社のヨドバシカメラ、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 松田憲幸 | 26.20% |
| ヨドバシカメラ | 10.43% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.06% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役は松田憲幸氏および小嶋智彰氏が務めています。取締役9名のうち社外取締役は3名で、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松田憲幸 | 取締役会長 兼 CEO(代表取締役) | 日本アイ・ビー・エム入社後、トリプル・エーを設立。同社設立時より代表取締役社長。ポケトーク代表執行役社長兼CEO等を経て現職。 |
| 小嶋智彰 | 取締役社長 兼 COO(代表取締役) | 同社入社後、執行役員、常務取締役等を歴任。POCKETALK B.V.のCEOやロゼッタストーン・ジャパン代表取締役社長を経て現職。 |
| 青山文彦 | 取締役 兼 CFO | 監査法人トーマツ、デロイトトーマツコンサルティングを経て同社入社。常務取締役、取締役常務執行役員兼CFOを歴任し現職。 |
社外取締役は、安藤国威(元ソニー代表取締役社長)、中井戸信英(元SCSK代表取締役社長)、大上有衣子(中本総合法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) ハードウェア製品事業
互いに相手の言葉を話せない人同士が自国語のままで対話できるAI通訳機「ポケトーク」や、AI議事録サービス「オートメモ」、360度webカメラなどを提供しています。訪日外国人客の増加に伴う法人利用のほか、海外の教育機関や医療・公共機関向けへの導入も進んでいます。
ハードウェア製品の販売代金やレンタル料、およびテキスト化などのサブスクリプション利用料が主な収益源です。これらの企画・販売やサービスの運営は、ソースネクストおよび連結子会社のポケトークなどが担っています。
■(2) ソフトウェア製品事業
業界トップシェアの住所録・はがき作成ソフト「筆まめ」をはじめ、更新料0円のセキュリティ対策ソフト「ZERO」、定番のPDF編集ソフト「いきなりPDF」などを提供しています。企業のペーパーレス化やDXに向けた法人向け導入実績も豊富にあります。
パッケージソフトやダウンロード版の販売代金に加え、年次自動課金などのサブスクリプションによる収益を主な収益源としています。これらの製品の企画・開発から販売、マーケティング活動に至るまで、主にソースネクストが運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は100億円前後で推移していましたが、直近の12ヶ月決算である2025年3月期には114億円を超えました。一方、先行投資や評価損の計上等により経常損失が継続していましたが、決算期変更に伴う9ヶ月決算となった2025年12月期はコスト削減効果により赤字幅が縮小傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 103.1億円 | 103.5億円 | 113.3億円 | 114.6億円 | 92.7億円 |
| 経常利益 | -21.3億円 | -25.4億円 | -22.4億円 | -39.3億円 | -12.4億円 |
| 利益率(%) | -20.6% | -24.5% | -19.8% | -34.3% | -13.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -32.9億円 | -3.6億円 | -1.1億円 | -21.2億円 | -1.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上総利益率は50%前後で推移しています。販管費の見直しやAI活用による業務効率化を推進したことで、直近の2025年12月期は営業赤字の幅が大きく縮小し、収益性の改善が進んでいます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 114.6億円 | 92.7億円 |
| 売上総利益 | 53.4億円 | 48.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.6% | 51.7% |
| 営業利益 | -34.8億円 | -13.1億円 |
| 営業利益率(%) | -30.4% | -14.1% |
販売費及び一般管理費のうち、業務委託費が11.4億円(構成比31%)、広告宣伝費が5.8億円(同16%)、給料が5.1億円(同14%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -18.6億円 | 4.3億円 |
| 投資CF | -12.2億円 | -9.4億円 |
| 財務CF | 57.8億円 | -6.5億円 |
企業の収益力を測るROEはマイナスで市場平均を下回る一方、財務の安定性を測る自己資本比率は38.3%で非製造業の市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「製品を通じて喜びと感動を世界中の人々に広げること」をミッションとし、「世界一エキサイティングな企業になる」というビジョンを掲げています。世界中から高品質かつ利便性の高いアプリやソフトウェア、ハードウェアを発掘し、誰でも手軽に購入できる価格で提供することで、新たな市場の創出を目指しています。
■(2) 企業文化
「SOURCE」の頭文字をとった6項目のバリュー(Speed:速さ、Ownership:当事者意識、Uniqueness:独自性、Respect:尊重、Challenge:挑戦、Efficiency:効率・合理性)を行動指針として掲げています。これを「ソースネクストらしさ」として日々の業務で実践し、実力主義に基づいた評価を行っています。
■(3) 経営計画・目標
「AIネイティブカンパニー」への転換を掲げ、全従業員の人事評価にAI活用を組み込むなど、組織の生産性の飛躍的向上を図っています。また、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、以下の指標を重視しています。
・売上高
・経常利益
・売上高経常利益率
■(4) 成長戦略と重点施策
急速に進化するAI技術に遅滞なく追従し、AI技術を応用した新製品の開発に注力します。国内では法人への導入推進で販売チャネルを拡大し、海外では米国・欧州での事業展開を強化します。また、サブスクリプションモデルへの移行を促進し、安定したストック型収益基盤の構築による経営基盤の盤石化を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ソースネクスト最高戦略」の実現に向け、人的資本を最重要の経営資源と位置づけています。競争力の源泉である専門人材の確保・育成、多様な人材によるイノベーション創出、および従業員のエンゲージメントと生産性を最大化する働く環境の整備を重点課題とし、自律した人材が活躍できる組織づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 39.8歳 | 9.2年 | 8,080,890円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 27.8% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 72.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 48.5% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員男女比率の女性割合(48.5%)、育児休業からの復職率(100%)、年次有給休暇取得率(56.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) AI技術と製品の陳腐化リスク
生成AIをはじめとする技術革新のスピードは極めて速く、技術の陳腐化リスクがあります。市場ニーズの変化への対応や新OSへの対応に遅れが生じた場合、製品の競争力を失い、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 事業環境と市場競争の激化
PC用ソフトウェア市場やAI通訳機などのハードウェア市場は競争が激しく、短期間で他社製品にシェアを奪われる可能性があります。また、個人のPC販売台数やスマートフォンの普及状況など、市場全体の動向に業績が大きく左右されます。
■(3) 開発・生産等の外部依存リスク
製品の開発やハードウェアの生産、物流、顧客サポート業務の多くを外部パートナーに依存しています。委託先の確保が困難になった場合や、委託先での品質・コスト管理が適切に行えない場合、事業運営に支障をきたすリスクがあります。
■(4) 海外展開と法規制対応
米国や欧州での「ポケトーク」事業拡大にあたり、各国の法規制や関税政策の適用を受けます。消費者保護やデータ保護に関する法規制の強化や変更により、対応のための費用が増加し、事業活動に制約が生じる可能性があります。



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