ネットイヤーグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ネットイヤーグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するネットイヤーグループは、ユーザー体験を軸としたデジタルマーケティング支援を展開する企業です。直近の業績は、重点顧客の深耕や生成AIを組み込んだ高付加価値サービスの展開が寄与し、売上高が前期比で増加、営業利益も大幅な増益を達成しています。


※本記事は、ネットイヤーグループの有価証券報告書(第27期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ネットイヤーグループってどんな会社?


同社はユーザー体験を軸としたデジタルマーケティング支援など、徹底的なユーザー視点に基づくSIPS事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1999年にネットイヤー・ナレッジキャピタル・パートナーズとして設立し、翌年現社名に変更しました。2008年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2019年にはエヌ・ティ・ティ・データ(現NTTデータグループ)の連結子会社となりました。2026年4月には東証スタンダード市場へ市場区分を変更しています。

従業員数は単体で171名です。筆頭株主は事業会社であるNTTデータで、第2位および第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
NTTデータ 48.51%
石黒 不二代 7.63%
鈴木 智博 2.42%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表者の役職は代表取締役社長CEOで、廣中龍蔵氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
廣中 龍蔵 代表取締役社長CEO 1990年富士総合研究所入社。2001年同社入社。絵本ナビ社外取締役、ドッツ代表取締役などを経て、2024年6月より現職。
中澤 智彦 取締役副社長 1986年日本電信電話入社。NTTデータ通信事業部長、JSOL常務取締役などを経て、2023年6月より現職。
安地 亮一 取締役 1995年NTTデータ通信入社。NTTデータ執行役員事業本部長、JSOL取締役などを経て、2025年6月より現職。
德永 裕幸 取締役 1999年NTTデータ通信入社。NTTデータシステムインテグレーション事業部長などを経て、2024年6月より現職。
小布施 秀幸 取締役 1998年NTTデータ通信入社。NTTデータ第一インダストリ統括事業部長などを経て、2025年6月より現職。
河西 謙治 取締役(監査等委員) 1991年NTTデータ通信入社。NTTデータ法人事業推進部シニア・スペシャリストなどを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、渡辺今日子(慶應義塾大学大学院政策メディア研究科特任講師)、小池藍(慶應義塾大学大学院経営管理研究科訪問講師)、古田利雄(クレア法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「SIPS事業」を展開しています。

(1) サービスデザインおよびデジタルマーケティング支援


ユーザー中心主義に基づき、新規事業の立案や既存サービスの再定義を構想段階から支援しています。Web、アプリ、データ分析など既存のプロセスを統合し、生成AI等の最新手法を用いて消費者の認知からファン化に至る全プロセスを繋ぐマーケティング支援を推進します。

企業から戦略立案、コンサルティング、マーケティング支援ツール導入などの対価を受け取る収益モデルです。当該事業の運営は同社が行っています。

(2) デジタルプロダクト開発および社会インパクト開発


企業のブランド接点となるデジタルプロダクトを、生成AIが活用可能な構造へと転換させる支援を行っています。また、UXデザインの知見を地域活性化等の社会課題解決に役立てるビジネスインキュベーションやソーシャルビジネスの創出も展開しています。

顧客企業や行政機関から開発・運用費やシステム構築費などの対価を受け取る収益モデルです。当該事業の運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は30億円台後半を維持して安定推移しています。直前期は一時的な落ち込みによる最終赤字を計上しましたが、当期は重点顧客の深耕など積極的な提案活動とサービス拡充が奏功し、増収ならびに各段階利益において大幅な黒字回復を見せています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 34億円 39億円 36億円 34億円 37億円
経常利益 2億円 3億円 1億円 0.8億円 3億円
利益率(%) 6.0% 7.2% 4.0% 2.5% 9.2%
当期純利益 6億円 2億円 1億円 -0.3億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高の伸長とともに、売上原価率の改善が進み売上総利益率が上昇しています。さらに、各種費用の適正化や販売費および一般管理費の抑制にも努めた結果、営業利益および営業利益率ともに大きく改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 34億円 37億円
売上総利益 7億円 9億円
売上総利益率(%) 20.2% 24.2%
営業利益 0.8億円 3億円
営業利益率(%) 2.4% 9.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1.8億円(構成比32%)、支払手数料が1.0億円(同17%)を占めています。売上原価の内訳は、経費が16.6億円(同59%)、労務費が11.3億円(同41%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はSIPS事業の単一セグメントです。既存サービスの拡充や生成AIを提案活動に組み込んだ高付加価値サービスの展開により、既存顧客の深耕と新規顧客の獲得が進みました。結果として受注高が増加し、売上高の改善につながっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
SIPS事業 34億円 37億円
連結(合計) 34億円 37億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す健全型のキャッシュ・フローです。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 0.7億円 1.1億円
投資CF -0.1億円 -0.1億円
財務CF -0.4億円 -0.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営ビジョンに「生成AIを活用して未来の社会を創造する」を掲げています。これまで培ってきたUXデザインとデジタル技術のノウハウに加え、生成AI技術を高度に融合させることで、顧客企業のDXとマーケティング成果の最大化を支援し、事業成長を共創する戦略的伴走パートナーを目指しています。

(2) 企業文化


創業以来一貫して「徹底的なユーザー視点」と「優れたデザイン思考」に基づく事業展開を重視しています。また、従業員それぞれが高い専門性を持ち続けることを奨励し、自ら学び、チームワークを大切にし、内発的動機を引き出す多様なプロフェッショナルの集合体として機能する組織文化の醸成に注力しています。

(3) 経営計画・目標


主な成長性・収益性の指標として、売上高および売上総利益率、営業利益率を重視しています。同社は中長期的な成長を目指して新サービスの開発や、生成AI人材への転換等の人材開発、M&Aなどの投資を積極的に行う方針を掲げて事業を展開しています。

(4) 成長戦略と重点施策


次世代のデジタル人材の確保・育成とともに、生成AI技術の各種サービスへの取り込みや社内推進部署の設置、外部パートナーとの連携強化を進めています。また、Webやアプリなどデジタルとリアルを横断したマルチチャネル化を推進し、親会社であるNTTデータとの連携を深めることで事業収益性の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材こそが最も重要な資本であると考え、従業員の内発的動機を引き出し、高い専門性を持ち続けることを奨励しています。全社員が生成AIを自在に活用できる人材へと成長するためのリスキリングを推進するほか、リモートワークや副業制度を導入し、多様な人材が活躍できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.9歳 7.9年 5,952,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 37.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 37.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) デジタル人材の確保と育成


事業は人材の知識や能力に大きく依存しており、優秀な人材の確保と育成が不可欠です。労働環境の整備や教育プログラムの拡充を進めていますが、人材獲得競争の激化により人材確保が想定通りに進まない場合、競争力の低下や事業拡大の制約となる可能性があります。

(2) 技術革新と競合の激化


デジタルマーケティング領域は競合環境が厳しく、急速な技術進展による新規参入の脅威もあります。生成AIをはじめとする技術革新や顧客ニーズの変化は激しく、新技術の獲得や対応に遅れをとった場合、提供サービスの競争力が低下し業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。

(3) 親会社および特定顧客への依存


同社はNTTデータの連結子会社であり、経営方針や事業戦略に変更が生じた場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。また、特定顧客への依存度が高まった際に、顧客側の戦略変化などにより取引が急激に減少した場合、財政状態に深刻な影響を与えるリスクが存在します。

(4) AI活用に伴うガバナンスリスク


業務効率化やサービス高度化のために生成AI等を活用していますが、各国政府等による新たな規制の導入により事業活動が制限される懸念があります。また、AIの出力結果による権利侵害や機密情報漏洩などが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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