※本記事は、全国保証株式会社の有価証券報告書(第46期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 全国保証ってどんな会社?
同社は特定の金融機関に属さない独立系保証会社として、全国的なネットワークで信用保証事業を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1981年2月に設立され、同年4月に厚生年金転貸住宅融資の保証業務を開始しました。1997年7月に民間金融機関の住宅ローン保証業務を開始し、2012年12月には東証一部(現在はプライム市場)に上場しています。直近では2021年以降に筑波信用保証などのM&Aを進め、事業領域の拡大を図っています。
現在の従業員数は連結で378名、単体で319名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位と第3位にはそれぞれ富国生命保険相互会社と明治安田生命保険相互会社などの事業会社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.73% |
| 富国生命保険相互会社 | 9.31% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 9.31% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は青木裕一氏が務めています。社外取締役の比率は23.1%(13名中3名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 青木 裕一 | 代表取締役社長(監査部担当) | 2002年入社。経営企画部長や管理本部長などを経て、2023年7月より現職。 |
| 石川 英治 | 代表取締役会長 | 1990年入社。福岡支店長や代表取締役社長などを経て、2023年4月より現職。 |
| 山口 隆 | 専務取締役(コンプライアンス・リスク統括部、総務部、人事部、経理部、システム部担当) | 1995年入社。名古屋支店長や業務本部長などを経て、2023年7月より現職。 |
| 浅田 慶一 | 取締役(保証企画部、営業統括部、本支店担当) | 1984年日本債券信用銀行入行。ジーライオン取締役副社長などを経て2018年入社。2023年7月より現職。 |
| 米田 典由 | 取締役(業務統括部、審査部、 債権管理部担当) | 2000年入社。経理部長や札幌支店長、業務統括部長などを経て、2026年4月より現職。 |
| 水口 耕 | 取締役経営企画部長(経営企画部担当) | 2006年入社。経営企画部長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、上條正仁(元埼玉りそな銀行社長)、永島義郎(元エム・ユー・フロンティア債権回収社長)、今戸智惠(三浦法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「信用保証事業」を展開しています。
■信用保証事業
住宅ローン等を希望する個人の連帯保証を引き受ける事業です。特定の金融機関や業界の制限を受けない独立系の強みを活かし、多様な業態の契約先と全国的にビジネスを展開しています。住宅取得資金等の保証だけでなく、カードローンや教育ローンの保証商品も提供しています。
収益源は、保証委託者から一括または毎月の残高に応じて受け取る保証料です。代位弁済発生時には取得した求償債権を基に、担保不動産の迅速な処分等で回収を図ります。運営は同社のほか、みのり信用保証や筑波信用保証などの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近4期間の業績推移を見ると、経常利益は415億円から466億円へと右肩上がりで成長を続けています。当期利益についても200億円台後半から300億円台へと着実に規模を拡大しており、主力である信用保証事業の堅調な推移が伺えます。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 415億円 | 416億円 | 445億円 | 466億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 282億円 | 279億円 | 317億円 | 315億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の営業利益は400億円台を維持しており、安定した本業の収益力が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 420億円 | 414億円 |
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
直近のキャッシュ・フローを見ると、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる「健全型」です。本業で安定して現金を創出し、その資金で投資や借入金の返済を進める優良な財務体質を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 334億円 | 328億円 |
| 投資CF | 6億円 | -424億円 |
| 財務CF | -193億円 | -273億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も48.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「最高の商品とサービスを提供することにより、[お客様の夢と幸せの実現]をお手伝いするとともに、地域社会の発展に貢献する」という経営理念を掲げています。全てのステークホルダーの視点に立った経営施策を実施することで、企業価値の向上および永続的な発展・成長を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「全国保証SDGs宣言」に基づき、環境保全への取り組みを重要な経営課題と位置づけ、信用保証事業を通じて環境課題の解決や持続可能な未来の実現を目指しています。また、多様な価値観を尊重し合える職場環境づくりを推進する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
10年後のありたい姿からバックキャストし、2026年度から2030年度までを対象とする新中期経営計画「Go for 50 保証の力で未来をひらく」を策定しています。2031年3月期に目指すべき主要KPIとして以下を設定しています。
* 保証債務残高:27.3兆円
* EPS(1株当たり当期純利益):298.0円
* ROE:12%~15%
■(4) 成長戦略と重点施策
「住宅ローン保証を中核とした住生活・金融分野の総合グループ形成」をビジョンとしています。提携金融機関とのリレーション強化やDXサービスの提供により、新規住宅ローン市場での事業を拡大します。さらに、M&Aや資本業務提携を活用して既存市場の保証債務残高を積み上げるほか、周辺領域への事業拡大で新たな収益獲得を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
幅広い知識を持ち合わせ、多様化する業務や時代の変化に柔軟かつスピーディーに対応できる人材の育成を方針としています。階層別・業務別研修や自己啓発支援を通じて能力開発を行うとともに、従業員一人ひとりの力が最大限活かされる魅力的で働き甲斐のある職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.7歳 | 11.0年 | 8,481,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.6% |
| 男性育児休業取得率 | 140.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 66.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 78.8% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得日数(14.4日)、従業員満足度(4.90点)、ワークエンゲージメント(4.04点)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスクと代位弁済の増加
国内外の経済環境の悪化や金利上昇などが保証委託者のローン返済に影響を及ぼし、代位弁済が増加するリスクがあります。予想損失額を上回る貸倒れが生じたり担保価値が下落した場合、引当金の積み増し等によって与信関連費用が増加し、業績に不利な影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 金利や為替などの市場関連リスク
保証の引き受けによる負債に見合った資産運用を行っていますが、金利の変動により資産運用利回りの低下や債券の現在価値下落が生じるリスクがあります。また、保有する金融商品の信用格付低下や株価下落、為替変動によって評価損益が悪化する可能性があります。
■(3) システムや情報漏洩などのオペレーショナルリスク
保証業務の多くがシステム化されているため、システム障害やソフトウエアの不具合が生じた場合、正常な業務運営が妨げられるリスクがあります。さらに、外部からのサイバー攻撃等による不正アクセスや人為的なミスで個人情報が漏洩した場合、社会的信用が失墜し業績に影響を及ぼす恐れがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。