全国保証 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

全国保証 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の全国保証は、住宅ローン保証を中核とする信用保証事業を展開しています。第45期は、提携金融機関との連携強化やM&Aによる保証債務残高の積み上げが奏功し、営業収益570億円(前期比10.3%増)、経常利益445億円(同7.1%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社全国保証 の有価証券報告書(第45期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 全国保証ってどんな会社?


独立系の信用保証会社として、国内の住宅ローン保証市場でトップクラスのシェアを持つ企業です。

(1) 会社概要


同社は1981年に設立され、1997年に民間金融機関の住宅ローン保証業務を開始しました。2012年に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしています。2025年にはちば興銀カードサービス、三重総合信用、東北保証サービスを完全子会社化するなど、M&Aによる規模拡大を進めています。

連結従業員数は369名(単体305名)です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は富国生命保険、第3位は明治安田生命保険と、資産管理を行う信託銀行や生命保険会社が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.48%
富国生命保険相互会社 9.18%
明治安田生命保険相互会社 9.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名、計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は青木裕一氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
石川 英治 代表取締役会長 1990年同社入社。管理本部長、代表取締役社長等を経て2023年4月より現職。
青木 裕一 代表取締役社長(監査部担当) 2002年同社入社。経営企画部長、常務取締役管理本部長等を経て2023年7月より現職。
山口 隆 専務取締役(コンプライアンス・リスク統括部、総務部、人事部、経理部、システム部担当) 1995年同社入社。業務本部長、常務取締役等を経て2023年7月より現職。
浅田 慶一 取締役(保証企画部、営業統括部、本支店担当) 元あおぞら銀行執行役員。同社執行役員営業本部長等を経て2023年7月より現職。
米田 典由 取締役業務統括部長(業務統括部、審査部、 債権管理部担当) 2000年同社入社。業務企画部長、執行役員業務統括部長等を経て2024年6月より現職。
水口 耕 取締役経営企画部長(経営企画部担当) 2006年同社入社。経営企画部長、執行役員経営企画部長等を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、上條正仁(元埼玉りそな銀行社長)、永島義郎(元東京ダイヤモンド再生・債権回収社長)、今戸智惠(三浦法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「信用保証事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

信用保証事業


同社グループは、住宅ローン保証を中核事業としています。住宅ローンを希望する個人(保証委託者)の連帯保証人となり、借入人が返済不能になった場合に金融機関へ代位弁済を行うことで、金融機関の融資促進と個人の円滑な借入を支援しています。また、代位弁済後は求償債権を取得し、回収業務を行います。

収益は、保証委託者から保証期間に応じた保証料(一括または分割)を受領するほか、金融機関から事務負担等を加味した特約保証料を受領しています。運営は、全国保証を中心に、連結子会社のみのり信用保証、筑波信用保証、あけぼの債権回収などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上収益、経常利益ともに順調な拡大を続けています。利益率も非常に高い水準で推移しており、安定した収益基盤を有しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) - - 503億円 516億円 570億円
経常利益 - - 415億円 416億円 445億円
利益率(%) - - 82.5% 80.5% 78.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 270億円 278億円 282億円 279億円 317億円

(2) 損益計算書


売上高は増加傾向にあり、営業利益率も高い水準を維持しています。増収に伴い利益も拡大しており、効率的な経営が行われています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 516億円 570億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 391億円 420億円
営業利益率(%) 75.7% 73.7%


同社は信用保証事業のため、一般的な売上原価の概念がなく、営業費用として計上されます。営業費用のうち、その他が83億円(構成比55%)、債務保証損失引当金繰入額が44億円(同30%)、給料手当及び賞与が26億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


信用保証事業単一セグメントですが、大手地方銀行をはじめとした銀行業態による利用増やM&A効果により、増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
信用保証事業 516億円 570億円 391億円 420億円 73.7%
連結(合計) 516億円 570億円 391億円 420億円 73.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

全国保証は、信用保証事業を主軸に、堅調な事業活動を通じて資金を創出しています。営業活動では、税金等調整前当期純利益の増加が主な要因となり、前年を上回る資金増加を達成しました。投資活動では、定期預金の払戻や投資有価証券の売却・償還による収入が、預入や取得による支出を上回り、資金が増加しました。一方、財務活動では、長期借入金の返済や配当金の支払いが主な支出要因となり、資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 313億円 334億円
投資CF -560億円 6億円
財務CF -103億円 -193億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「機関保証を必要とする全てのお客様に最高の保証商品とサービスを提供することにより、お客様の夢と幸せの実現をお手伝いするとともに、信用保証事業を通じて地域社会の発展に貢献する」という経営理念を掲げています。全てのステークホルダーの視点に立った経営施策を実施することで、企業価値の向上および永続的な発展・成長を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、特定の金融機関や業界等の制限を受けない独立系の保証会社として、様々な業態の契約先と全国的に事業を展開しています。この全国的な事業展開により、特定金融機関の経営リスクや狭い範囲の地域経済圏の影響を受けることなく、保証リスクの分散を可能とする体制を構築しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、中期経営計画「Next Phase~成長と価値創造~」を策定しており、更なる成長と価値創造を実現する「住宅ローンプラットフォーマー」を目指すことをビジョンとして掲げています。2026年3月期における経営目標として以下の数値を設定しています。

* 保証債務残高:21兆円
* ROE:14%

(4) 成長戦略と重点施策


「住宅ローンプラットフォーマー」を目指し、基幹事業の拡大、周辺事業への進出、資本活用の効率化、ESG諸課題の解決に取り組んでいます。基幹事業では、商品開発やエリア戦略による新規貸出市場のシェア拡大に加え、M&AやABL貸付による既存貸出市場でのシェア拡大を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


幅広い知識を持ち、多様化する業務や時代の変化に柔軟かつスピーディーに対応できる人材の育成を目指しています。経営人材育成のためのサクセッションプランや、全従業員を対象とした階層別・業務別研修、自己啓発支援などを通じ、個々の能力開発と育成風土の醸成に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.5歳 10.8年 8,094,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 92.9%
男女賃金差異(全労働者) 62.2%
男女賃金差異(正規雇用) 64.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 78.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職候補者となる職階に占める女性割合(9.4%)、有給休暇取得日数(年間13.1日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金利変動に関するリスク


保証債務に見合った運用資産管理のため債券ポートフォリオを構築していますが、金利上昇局面では債券価格の下落により純資産にマイナスの影響を与える可能性があります。また、金利低下局面では再投資時の運用利回りが低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) システムリスク


保証業務の多くをシステム化しており、機器障害や回線障害、誤作動、サイバー攻撃等によりシステム運用が困難となった場合、社会的信用の失墜や業務運営への支障を招き、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 流動性リスク


急激な景気後退等により代位弁済が急増した場合、流動資産が減少し、他の資産を不利な条件で処分せざるを得なくなる可能性があります。また、信用格付の引き下げによりローンの金利負担が増加し、業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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