※本記事は、AREホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第17期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. AREホールディングスってどんな会社?
貴金属リサイクルや北米での精錬事業を主軸に、環境保全事業も展開する資源循環のリーディングカンパニーです。
■(1) 会社概要
2009年、アサヒプリテックとジャパンウェイストの共同株式移転により設立され、東証一部に上場しました。2015年に北米の貴金属精錬・加工事業を子会社化し、グローバル展開を加速。2023年には現在のAREホールディングスへ商号変更し、貴金属と環境保全を両輪とするグループ体制を強化しています。
同社グループは、連結で998名、単体で59名の従業員を擁しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に信託業務を担う日本カストディ銀行(信託口)、第3位は海外の信託銀行であるSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANYとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.59% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.99% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505223(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 2.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長最高経営責任者(CEO)は東浦知哉氏が務めています。社外取締役比率は71.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 東浦 知哉 | 代表取締役社長最高経営責任者(CEO) | 1984年に日本電気入社。2001年にアサヒプリテックへ入社し、取締役や事業本部長を歴任。2014年に同社社長に就任し、2018年より現職。 |
| 鍵本 充敏 | 取締役(監査等委員) | 1984年に帝人入社。2006年にアサヒプリテックへ入社し、事業所次長や子会社社長を歴任。2015年に監査等委員会事務局長を務め、2021年より現職。 |
社外取締役は、山本明紀(山本公認会計士事務所代表)、原良憲(京都大学名誉教授)、鶴由貴(弁護士法人協和綜合パートナーズ法律事務所)、中村亨(日本クレアス税理士法人代表社員)、片田薫(ライフネット生命保険執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「貴金属事業」「環境保全事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 貴金属事業
電子材料、歯科材料、宝飾、自動車触媒などの分野から貴金属・希少金属含有スクラップを集荷し、金・銀・プラチナ・パラジウムなどをリサイクル・精錬して販売しています。北米やアジアなど海外でも精錬・加工や倉庫業をグローバルに展開し、限られた資源の有効活用に貢献しています。
商社や宝飾メーカー、電子部品メーカー等への高純度の地金製品の販売や、製造機械装置の精密洗浄による収益が主な収入源です。事業の運営は、国内ではアサヒプリテックやアサヒメタルファイン、海外ではAsahi Refining USA Inc.などが担っています。
■(2) 環境保全事業
日本国内において、産業廃棄物の収集運搬および中間処理などのサービスを提供し、有害物質の無害化や資源化を通じた地球環境保全への貢献を目指しています。独自のリサイクル技術を活用し、脱炭素社会に向けた持続可能な資源循環をサポートしています。
排出事業者から受け取る産業廃棄物の処理・リサイクル手数料が主な収益源となります。事業の運営は、環境保全事業に関する持株会社として位置づけられているウェイストシステムジャパンや、その持分法適用会社が主体となって行っています。
■(3) その他事業
報告セグメントに含まれないその他の事業活動を行っています。グループ全体の事業運営を横断的にサポートする活動や、新たな収益源の探索に向けた周辺業務などが含まれており、本業との相乗効果を図っています。
その他の事業活動から得られる小規模な付随収益が中心となります。これらの事業は、AREホールディングスやグループ内の関連子会社によって運営されています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は直近5年間で継続的に拡大し、順調なトップライン成長を遂げています。特に直近2期は北米精錬事業の好調やリサイクル量の増加により、売上・利益ともに大きく伸長しました。利益率も直近は6.1%へと回復し、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,924億円 | 2,742億円 | 3,223億円 | 5,062億円 | 5,700億円 |
| 税引前利益 | 264億円 | 126億円 | 124億円 | 205億円 | 347億円 |
| 利益率(%) | 13.7% | 4.6% | 3.9% | 4.0% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 187億円 | 109億円 | 245億円 | 143億円 | 244億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益状況を見ると、増収に加えて取引の採算性向上や生産効率の改善が進んだことで、営業利益が大幅に増加し、営業利益率も向上しています。成長市場への対応とコスト最適化の成果が利益の押し上げに貢献しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 5,062億円 | 5,700億円 |
| 営業利益 | 200億円 | 371億円 |
| 営業利益率(%) | 4.0% | 6.5% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が41億円(構成比43%)、減価償却費及び償却費が7億円(同7%)、研究開発費が5億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の貴金属事業は、宝飾・電子分野での採算性向上や北米精錬事業での金銀原料の入荷量増加により、大幅な増収増益を牽引しました。環境保全事業の利益は前期と同水準で安定的に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 貴金属事業 | 5,061.3億円 | 5,698.6億円 | 183.4億円 | 354.2億円 | 6.2% |
| 環境保全事業 | - | - | 19.2億円 | 18.5億円 | - |
| その他 | 0.8億円 | 1.3億円 | -2.7億円 | -1.8億円 | -138.5% |
| 連結(合計) | 5,062.1億円 | 5,699.9億円 | 199.8億円 | 370.9億円 | 6.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 147億円 | -994億円 |
| 投資CF | 3億円 | -3億円 |
| 財務CF | -62億円 | 919億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.5%で市場平均の製造業水準をやや下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「環境と社会をつなぐ循環経済の担い手となる」ことをミッションに掲げ、地球環境に配慮した資源循環の推進と脱炭素思考のウェイストマネジメントに取り組んでいます。社会貢献を通じて長期的に発展し続け、持続可能な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「挑戦しよう」「自ら考えよう」「学び続けよう」といった価値観(AREグループウェイ)を重視し、人を大切にする文化を根幹としています。多様な従業員が協力し合い、活き活きと挑戦できる環境を整えることで、組織全体の生産性最大化を追求しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年に向けた中長期ビジョンにおいて、事業成長と資本効率の向上を両立させる数値目標を掲げています。
* 連結営業利益の継続的な拡大
* 親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)の向上
* 2030年度までにCO2排出量を2023年度比で42%削減
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益性を高める事業基盤強化」や「一層のグローバリゼーション推進」など5つの戦略主題を掲げています。北米での精錬設備増強やアジア地域での工場建設を通じて国際的に貴金属回収量を拡大するとともに、AI関連の電子・半導体分野での対応を強化する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
AREグループウェイに掲げる価値観を基点とし、「事業発展を支える人材形成」を目指しています。多様な価値観を活かすDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進や若手・海外人材の積極採用、健康経営を土台とした従業員エンゲージメントの向上を図り、中長期的な企業価値創出を支える組織カルチャーを醸成する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.3歳 | 2.9年 | 7,961,472円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 29.1% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 80.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 41.4% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.9%)、年次有給休暇取得率(60.8%)、インターバル勤務11時間以上達成率(99.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 貴金属相場および為替相場の変動
貴金属や希少金属の価格は、国際的な需給や政治経済、為替相場の影響を受けて変動します。同社グループは先渡取引等で価格変動リスクをヘッジしていますが、急激な相場変動やヘッジ手段が限られる金属の存在により、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法規制の変更と社会的ルールへの対応
事業を展開する各国で、環境保全や輸出入、労働、租税などの法規制が適用されています。気候変動対策等に係る新たな規制の導入や基準強化によって事業活動が制約を受けた場合、対応コストの増加等を通じて同社グループの業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 製造業の経済変動と需要減少
貴金属事業および環境保全事業は、エレクトロニクスや自動車などの製造業界の動向に依存しています。世界的な景気後退や消費水準の減退による最終製品の需要減少が生じた場合、事業環境の悪化や資金調達コストの増加を招き、業績に影響を及ぼすリスクがあります。



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