※本記事は、株式会社リニカル の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
リニカルグループは、医薬品開発業務受託事業(CRO事業)を主軸に、医薬品の臨床試験(治験)に係る業務を代行・支援しています。新薬開発における創薬支援から臨床開発、発売後のライフサイクルマネジメントまで、グローバルでワンストップのサービスを提供しています。
単体従業員数は280名、連結従業員数は577名です。同社グループはCRO事業の単一セグメントで事業を展開しています。
主な国内グループ会社は、(連結子会社)Linical RomaniaS.R.L.(CRO事業)、(連結子会社)Linical Hungary Kft.(同)などです。
国内においてはリニカルが事業を担い、海外18社の連結子会社を通じてグローバルに事業を展開しています。
なお、同社グループはセグメント区分を変更し、CRO事業の単一セグメントとなりました。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
リニカルは、医薬品開発支援(CRO)事業をグローバルに展開しています。専門性の高い領域で、社員一人ひとりの成長と活躍を重視する環境が特徴です。同社グループは、プロフェッショナルとして変革の時代に飛躍できる人材の育成に力を入れています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は、平均勤続年数と平均年齢から、比較的安定した人材の定着傾向が見られます。専門性の高い医薬品開発支援の分野で、長期的なキャリア形成を支援する環境が整っていることがうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 6,830,097円 |
| 平均勤続年数 | 8.5年 |
| 平均年齢 | 37.1歳 |
| 単体従業員数 | 280人 |
| 連結従業員数 | 577人 |
| 単体のグループ内比率 | 48.5% |
同社および一部の連結子会社は、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の退職給付制度を採用しています。退職一時金制度もありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。なお、退職給付債務は5.5億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社は、医薬品開発支援事業において、高い専門性と倫理観を有するCRA人材を重要な経営資本と位置付けています。中長期的な事業運営の安定化と成長のため、経験豊富なCRA人材の確保と若手人材の計画的な育成を基本方針としています。
社員の専門性、経験、役割、業績への貢献度を総合的に勘案し、公正かつ透明性のある基準に基づき給与等を決定する方針です。職掌定義書、職能要件書、役割基準書を基本とする人事考課制度を取り入れ、勤続年数や経験に応じた能力開発を促進し、職能やタスクに応じた評価を実施しています。評価は目標達成状況を基本とし、特筆すべき実績や自己啓発、組織貢献も総合的に勘案され、公正性・公平性を重視したフィードバックを通じて賞与、昇給、昇格等に反映されます。
治療領域や治療モダリティの高度化・多様化に対応するため、社内人材育成に加え、外部の専門的知見を活用する体制を整備しています。モニタリング業務経験を基礎とした人材に対し、メディカルライティング、レギュラトリー業務、プロジェクトマネジメント等の周辺領域の経験を段階的に付与し、業務全体を俯瞰できる人材育成に取り組んでいます。グローバル試験への対応力向上のため、本社人材の海外子会社への出向等を通じてプロジェクトマネジメント業務の経験機会を提供しています。デジタルテクノロジーの活用も人材育成上の重要な取り組みの一つです。
具体的には、外部の専門的知見を有する医師(メディカルドクター)との連携による勉強会開催や資料整備、プロジェクト開始前のメディカルドクターからの説明・助言機会の提供などを行っています。また、提案資料と完了時の顛末記の整理・保管・共有環境整備、IT教育や外部教育ツールの活用による従業員のデジタルスキル向上、専門的なスキル・資格取得支援制度の整備・運用も進めています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。男性労働者の平均育児休業取得日数(日)は、公表前事業年度に育児休業から復職した男性労働者の平均育児休業取得日数を算出しています。育児休業を取得した男性従業員の全員が28日以上の育児休業を取得しています。男女の賃金格差については、正規雇用労働者において、同一労働の賃金に差はなく、等級別人数構成の差によるものです。具体的には、低賃金層である若年層の新卒・未経験中途の過去5年の採用者数の男女比においては男性より女性の比率が高く、高賃金層である管理職比率においては女性より男性の方が多いことから、結果として男女賃金差異が生じています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 37.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 72.7% |
| 男性労働者の平均育児休業取得日数 | 150日 |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 79.6% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) | 78.5% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(パート・有期労働者) | 86.0% |
人材育成・エンゲージメント
革新的な医薬品開発を実現するために必要な人材が長く働き続けられるかどうか、また、効率的に実行できているか生産性を測る指標として設定されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 離職率(連結) | 13.4% |
| 離職率(単体) | 11.0% |
| 人員稼働率 | 短時間で効率的に成果を創出する社員の比率を継続的に改善 |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
リニカルは、医薬品開発の臨床試験を支援するCRO事業を主軸に、医薬品のライフサイクル全体をサポートするサービスをグローバルに展開しています。新薬開発における創薬支援から臨床開発、発売後の育薬まで、幅広いフェーズで専門的なサービスを提供しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
リニカルグループは、医薬品開発業務受託事業(CRO事業)を主な事業としています。この事業では、医薬品開発段階で行われる臨床試験(治験)に関する業務の一部を代行・支援しています。具体的には、モニタリング業務を中心に、品質管理、データマネジメント、統計解析、メディカルライティング、ファーマコビジランスなどの専門業務を受託しています。
また、医薬品の発売後の臨床試験や臨床研究を支援する育薬事業も展開しています。さらに、バイオベンチャー企業などの創薬を支援する創薬支援事業では、開発品の市場分析や薬事戦略立案、パートナリング・ライセンス支援などのコンサルティングサービスを提供しています。同社グループはこれらの事業を通じて、新薬開発の全プロセスをグローバルにワンストップで支援する体制を構築しています。
収益は、顧客との契約に基づき、契約期間において定めた人員がサービスを提供した履行義務の充足度に応じて認識するモデルとなっています。同社グループはグローバルに事業を展開しており、日本、米国、欧州、アジアなど各地域の業績が連結業績に影響を与えています。
主要な顧客への売上集中も見られ、当連結会計年度ではPFIZER, INC.とPhilip Morris International Inc.がそれぞれ売上高の14.5%、13.6%を占めています。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績は、売上高が直近2期で減少傾向にあり、特に当期は大幅な減収となりました。利益面では、直近2期で経常損失および親会社株主に帰属する当期純損失を計上しています。
当期は、減損損失や繰延税金資産の取り崩しといった非現金項目が親会社株主に帰属する当期純損失に大きく影響しました。営業活動によるキャッシュ・フローは当期にマイナスに転じており、本業での資金創出力に課題が見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 116億円 | 125億円 | 123億円 | 104億円 | 86.7億円 |
| 経常利益 | 11.8億円 | 12.8億円 | 7.9億円 | △5.0億円 | △20.2億円 |
| 経常利益率 | 10.2% | 10.3% | 6.4% | △4.8% | △23.3% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 7.9億円 | 10.0億円 | 3.4億円 | △5.4億円 | △33.3億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 35.00 | 44.47 | 14.98 | △23.87 | △147.41 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は、前期から当期にかけて減少しています。従業員1人あたりの営業利益も、前期のマイナスから当期はさらにマイナス幅が拡大する結果となりました。
これは、売上高の減少と営業損失の拡大が影響していると考えられます。減損損失などの一時的な要因も、これらの指標に影響を与えています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 17.5百万円 | 15.0百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | △1.0百万円 | △3.6百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
財務の安定性の観点から、同社グループの現在の状況を示します。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤を見ると、純資産は前期から減少しています。自己資本比率は前期から低下しているものの、非製造業のプライム市場平均と比較すると高い水準を維持しています。一方で、ROE(自己資本利益率)は前期に続き当期もマイナスとなっており、プライム市場平均を大きく下回る状況です。手元資金である現金及び預金も前期から減少しており、今後の収益改善が財務の安定性にとって重要な傾向を示しています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 72.5億円 | 39.8億円 |
| 自己資本比率 | 43.2% | 33.1% |
| ROE(自己資本利益率) | -7.0% | -59.3% |
| 現金及び預金 | 70.4億円 | 52.0億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前期の資金獲得から一転して16.1億円の使用となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失の計上、前受金及び預り金の減少があったことによるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、前期の資金使用から88百万円の獲得に転じており、投資事業組合からの分配による収入が主な要因となっています。財務活動によるキャッシュ・フローは、前期に引き続き資金を使用していますが、短期借入金の純増があったものの、長期借入金の返済や配当金の支払いにより、使用額は前期より減少しています。結果として、フリーキャッシュ・フローもマイナスとなっており、本業での資金創出が課題となっている状況です。今後の収益改善が、雇用や給与の安定性、そして成長性にとって重要な要素となります。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 6.0億円 | △16.1億円 |
| 投資CF | △45百万円 | 88百万円 |
| 財務CF | △9.4億円 | △5.1億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 5.5億円 | △15.2億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、特定の顧客への売上割合が高い場合に、その顧客のプロジェクト中断・キャンセルが業績に影響を与えるリスクを認識しています。また、CRO業界内での競争激化により、受託件数の減少や受託契約価格の下落が業績に影響を及ぼす可能性もあります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは労働集約型のビジネスを主体としているため、試験規模に応じた人員が確保できない場合や、専門性を持つ人材をタイムリーに獲得できない場合に、業務を受託できないリスクがあります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
リニカルは、医薬品開発のプロフェッショナルとして、製薬会社や医療機関、患者、株主、従業員の幸せを追求する企業です。グローバルな視点と高い専門性をもって、革新的な医療の実現に貢献することを目指しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「医薬品開発のあらゆる場面で常にプロフェッショナルとしての質を提供し、ステークホルダーである製薬会社、医療機関、患者ならびに株主、従業員の幸せを追求する」ことを経営理念として掲げています。アンメット・メディカル・ニーズが高く、開発難易度の高い特定疾患領域に注力しています。
大手製薬会社と対等の立場で医薬品開発を実行・支援できる知識・技術・経験を有する、日本発のグローバルCRO(医薬品開発業務受託機関)を目指しています。中期経営ビジョンでは、「日本発のグローバルCROとして、クライアントの戦略的パートナーに」なることを掲げています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、役員・従業員一人ひとりがプロフェッショナルとして誠実に行動し、患者と社会全体の幸せを追求することを大切にしています。医薬品開発の高い専門性とノウハウをもって、世界のヘルスケアカンパニーや医療機関のパートナーとして貢献することを使命としています。
グローバル企業としてコーポレート・ガバナンスを充実させ、ステークホルダーとともに重要課題に取り組み、社会とともに持続可能な発展を目指しています。社員を価値創造の源泉と捉え、多様な経験を持つ人材が能力を最大限に発揮し、活躍し続けられる環境整備を進めています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、将来にわたる安定的な収益基盤確立のため、人材の確保・育成とテクノロジーへの投資を重点施策としています。グローバル営業人材の採用・育成を強化し、拠点間の営業活動における連携体制を一層強化する方針です。
グループ経営の効率化として、各機能組織の最適化と機能間の連携強化を進めています。また、テクノロジーと臨床開発の双方に精通した人材の採用・育成を強化し、多様化する治験効率化ニーズに対応するため、戦略的パートナリングや内製化も視野に入れています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
リニカルは監査等委員会設置会社であり、経営の透明性確保と監督機能の強化、意思決定の迅速化を図っています。取締役会は社外取締役が過半数を占める構成となっています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
創業家およびその関連会社が主要な株主として名を連ねており、同社の資本構成に特徴が見られます。上位株主には、代表取締役社長の秦野和浩氏が関連する秦野や、執行役員CFOの髙橋明宏氏が関連する髙橋が含まれています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 秦野 | 19.96% |
| 髙橋 | 8.86% |
| 辻本 桂吾 | 4.53% |
| 坂本 | 3.58% |
| 秦野 和浩 | 3.28% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は6名(男性4名・女性2名)で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長執行役員CEOは秦野和浩氏が務めています。社外取締役比率は83.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 秦野 和浩 | 代表取締役社長 執行役員CEO | 2005年6月同社設立 代表取締役社長、2024年6月同社代表取締役社長 執行役員CEOより現職。 |
社外取締役は、安藤良光氏(元富士フイルム富山化学 取締役常務執行役員開発本部長)、西村智子氏(西村智子公認会計士事務所所長)、村上祐一氏(元株式会社マーベラス 管理統括本部経理財務部長・常勤監査等委員)、中島与志明氏(元株式会社大阪ソーダ 執行役員人事本部担当兼経営戦略本部経営企画部担当部長・常勤監査等委員)、杦山栄理氏(はばたき綜合法律事務所パートナー弁護士・監査等委員)です。
リニカルは監査等委員会設置会社であり、社外取締役が取締役会の過半数を占める構成となっています。社外取締役は多様な専門知識と経験を活かし、客観的かつ公平な立場から経営を監督し、助言を行う役割を担っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
リニカルの役員報酬は、固定の基本報酬と短期の業績結果に連動する賞与で構成されています。賞与制度には業績賞与制度と特別賞与制度があり、業務執行取締役が対象です。社外取締役および監査等委員である取締役は、その職責に鑑み、業績連動報酬を含まない基本報酬のみとなっています。非金銭報酬である株式報酬制度は導入していません。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(監査等委員及び社外除く) | 1名 | 58百万円 | 57.6百万円 |
| 社外役員 | 5名 | 62百万円 | 12.4百万円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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