#記事タイトル:フィデアホールディングス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、フィデアホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第16期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フィデアホールディングスってどんな会社?
東北地方初の広域地方銀行グループとして、山形県の荘内銀行と秋田県の北都銀行を中核に、リースや電力小売など多様なサービスを展開する企業です。
■(1) 会社概要
2009年に荘内銀行と北都銀行の経営統合により設立され、東証一部に上場しました。2010年には公的資金を導入しましたが、2023年に完済しています。2016年にフィデアカードなどを完全子会社化しグループ経営を強化。2024年には両行の合併検討とフィデアエナジー設立を決定し、経営効率化と地域貢献を進めています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は1,373名、単体では199名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行、第3位は従業員持株会となっており、特定の事業会社による支配色は薄く、機関投資家や従業員が主要な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.59% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.10% |
| フィデアホールディングス従業員持株会 | 3.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性21名、女性3名の計24名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表執行役社長最高経営責任者(CEO)は新野 正博氏です。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田 尾 祐 一 | 取締役会長 | 1981年富士銀行入行。みずほ銀行常務執行役員、みずほ総合研究所副社長を経て、2016年同社社長に就任。荘内銀行頭取などを歴任し、2023年より現職。 |
| 新 野 正 博 | 取締役兼代表執行役社長最高経営責任者(CEO) | 1989年富士銀行入行。みずほ銀行リテール法人営業推進部長などを経て、2019年同社執行役に就任。2023年より現職。 |
| 宮 下 典 夫 | 執行役副社長最高ICT・システム責任者(CTO)兼最高人事責任者(CHRO) | 1982年安田信託銀行入行。みずほ信託銀行常務執行役員などを経て、2013年同社専務執行役に就任。2014年より現職。 |
| 小野山 公彦 | 専務執行役最高財務責任者(CFO) | 1988年富士銀行入行。金融庁検査局専門検査官などを経て、2020年同社執行役に就任。2025年より現職。 |
| 伊 藤 新 | 取締役 | 1985年日本債券信用銀行入行。北都銀行頭取などを経て、2019年同社取締役に就任。2025年より取締役会長。 |
| 松 田 正 彦 | 取締役 | 1990年荘内銀行入行。同行頭取などを経て、2022年同社取締役に就任。2025年より取締役会長。 |
| 浅 見 英 紀 | 常務執行役最高投資責任者(CIO) | 1988年富士銀行入行。みずほ銀行市場営業部長などを経て、2019年同社理事に就任。2022年より現職。 |
| 安 達 光 | 常務執行役最高マーケティング責任者(CMO) | 1997年北都銀行入行。同行執行役員などを経て、2024年同社執行役に就任。2025年より現職。 |
| 堀 越 智 則 | 常務執行役 | 1998年荘内銀行入行。同社ICT業務戦略グループ長などを経て、2023年同社執行役に就任。2025年より現職。 |
| 富 樫 秀 雄 | 取締役 | 1981年荘内銀行入行。同行常務取締役、同社専務執行役などを歴任。2022年より現職(非業務執行)。 |
| 西 堀 利 | 取締役兼取締役会議長 | 1975年富士銀行入行。みずほ銀行頭取、みずほフィナンシャルグループ取締役などを歴任。2016年より現職(非業務執行)。 |
社外取締役は、堀 裕(弁護士)、近野 博(公認会計士)、布井 知子(元BNPパリバ証券代表者室長)、廣瀬 渉(元山形県教育長)、甲斐 文朗(元日本銀行秋田支店長)、青木 淳(元資生堂代表取締役)、佐藤 史朗(元セゾン自動車火災保険社長)、成田 恭子(元CDP Worldwide-Japanシニアマネージャー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 銀行業
中核事業として、株式会社荘内銀行、株式会社北都銀行、フィデアカード株式会社の3社が、秋田県、山形県、宮城県を主たる営業エリアとして金融サービスを提供しています。預金、貸出、為替業務のほか、有価証券の売買・投資、保証業務などを行っています。
収益は主に、貸出金利息や有価証券利息配当金、各種手数料から得ています。運営は、株式会社荘内銀行、株式会社北都銀行、フィデアカード株式会社が行っています。
■(2) その他
リース業務、調査研究業務、ソフトウェア開発業務、電力小売業務、投資業務などを展開しています。地域経済の活性化や脱炭素化支援など、金融周辺分野でのサービス提供を行っています。
収益は、リース料、業務受託手数料、電力料金、投資収益などから得ています。運営は、フィデアリース株式会社、株式会社フィデア情報総研、フィデアエナジー株式会社、株式会社フィデアキャピタルが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は経常収益が増加した一方で、経常利益は前期比で減少しました。これは、主に貸出金利息など資金運用収益の増加により経常収益が増加したものの、預金等利息など資金調達費用や債券売却損などの増加により経常費用が増加したことが要因です。過去5年間の推移を見ると、経常収益は概ね横ばいで推移しており、当期は前期から増加に転じています。経常利益は、2021年3月期をピークに減少傾向にありましたが、当期は前期比で増加しました。当期純利益は、前期に一時的に増加した反動もあり、当期は大幅に増加しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 532 | 511 | 514 | 500 | 531 |
| 経常利益(億円) | 7 | 7 | 6 | 4 | 4 |
| 当期純利益(億円) | 3 | 4 | 3 | 1 | 3 |
■(2) 損益計算書
当期は、貸出金利息の増加などにより経常収益が増加しました。一方、預金等利息の増加や債券売却損の増加などにより経常費用も増加しました。これらの要因により、経常利益は前期比で減少しました。当期純利益は、前期に一時的に増加した反動もあり、大幅に増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 500 | 531 |
| 経常費用 | 464 | 489 |
| 経常利益 | 4 | 4 |
| 当期純利益 | 1 | 3 |
■(3) 役務取引等収益の内訳
当期は、役務取引等収益合計が前期比で減少しました。これは、主に代理業務や投資信託関連の手数料が減少したことが要因です。役務取引等収益合計の中で最も大きいのは代理業務であり、次いで預金・貸出業務となっています。
| 区分 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 役務取引等収益 合計 | 85 | 82 |
| 預金・貸出業務 | 19 | 19 |
| 為替業務 | 13 | 14 |
| 証券関連業務 | 1 | 1 |
| 代理業務 | 38 | 35 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
フィデアホールディングスでは、期間損益の安定成長により自己資本の更なる積み上げを図り、日次管理によるリスク把握と定期的な会議での報告・協議を通じて、適切なリスク管理体制を構築しています。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、貸出金の増加や預金の減少等により、支出となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得支出の減少や売却・償還収入の増加等により、収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により、支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 675 | △1521 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △755 | 1597 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △15 | △18 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「一人ひとりの情熱と知恵と挑戦で、東北を幸せと希望の産地にします。」をグループ経営理念として掲げています。東北に誇りを持ち、東北で暮らすことが憧れになる未来を創造することを目指し、地域のファン・サポーターとして、金融機関の枠を超えたチャレンジも取り入れながら行動することを宣言しています。
■(2) 企業文化
経営理念を実現するための行動指針として「Future7」を掲げています。「前例にとらわれず挑戦する」「情熱をもって動く」「自らをアップデートする」「高水準のコンサルティングを提供する」「個人の成長や挑戦を後押しする」「風通しのよい職場をつくる」「法令遵守と高い倫理観を持つ」という7つの行動様式を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年度を最終年度とする第5次中期経営計画を推進しています。地域における金融仲介機能の充実、取引先の経営改善や事業再生支援、GX・DX分野を中心としたコンサルティング営業の強化、合併シナジーの前倒し発揮による経営効率化により、最終年度目標の達成を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
持続可能な地域づくりに貢献できる広域地方銀行グループを目指し、荘内銀行と北都銀行の合併およびシステム統合を決定しています。2027年1月の合併に向け、2025年度から実質1行の経営体制へ移行し、合併効果の前倒しを図ります。また、再生可能エネルギーの地産地消を目指した電力小売事業への参入など、地域の脱炭素化と経済活性化にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
コンサルティング業への転換を支えるため、多様性確保、人材育成、従業員エンゲージメント、健康経営推進を重視しています。法人・個人一体営業人材の育成に注力し、研修・OJT・自己啓発を組み合わせたプログラムを展開。また、専門職コースの新設や、経験重視の通年中途採用により、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.0歳 | 22.0年 | 6,830,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 72.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役員比率(12.5%)、有給休暇取得率(73.5%)、定期健康診断受診率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経営統合に関するリスク
荘内銀行と北都銀行の合併において、顧客との関係悪化や想定外の追加費用の発生、システム障害等のトラブルにより、期待される合併効果が得られない可能性があります。合併準備委員会等を設置しリスク管理に努めていますが、円滑な統合が進まない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 金融環境の変化に伴うリスク
収益の柱である貸出金利息や有価証券運用収益は、景気、物価、金融政策などの外部要因に強く影響されます。特に、長期にわたる金融緩和の解除や継続的な利上げが行われた場合、保有有価証券の評価損拡大や、金利上昇による与信費用の増加などが生じ、財務状況が悪化する恐れがあります。
■(3) 人材確保のリスク
労働市場の流動化や専門人材の需要増大により、有能な人材の確保・育成が困難になるリスクがあります。特にデジタル化対応などに必要な高度な専門性を持つ人材が不足した場合、競争力やサービス品質が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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