フィデアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フィデアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態


※本記事は、フィデアホールディングス株式会社の有価証券報告書(第17期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

0. まとめ

フィデアホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、荘内銀行と北都銀行を中核として銀行業やリース、電力小売事業等を展開しています。直近の業績は、貸出金利息等の資金運用収益の増加が牽引し、経常収益が前期比増収、経常利益も増益と、堅調な増収増益トレンドで推移しています。

1. フィデアホールディングスってどんな会社?

同社は東北地方を中心に広域な金融サービスを提供する地域金融グループです。

(1) 会社概要

同社は、2009年に荘内銀行と北都銀行の経営統合により設立されました。2018年にフィデアリースを設立してリース事業を強化し、2023年にはフィデア情報総研を完全子会社化しました。2024年には電力小売事業を担うフィデアエナジーを新設しています。2027年1月には傘下の荘内銀行と北都銀行を合併し、フィデア銀行として新たな体制へ移行する予定です。

現在、従業員数は連結で1,376名、単体で211名となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主および第3位は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位には同社グループの従業員持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.14%
フィデアホールディングス従業員持株会 3.09%
日本カストディ銀行(信託口) 2.35%


(2) 経営陣

同社の役員は男性19名、女性4名の計23名で構成され、女性役員比率は17.3%です。新野正博氏が代表執行役社長最高経営責任者(CEO)を務めており、取締役における社外取締役の比率は過半数を超えています。

氏名 役職 主な経歴
新野正博 取締役兼代表執行役社長最高経営責任者(CEO) 富士銀行入行、みずほ銀行ローン営業開発部次長等を歴任。2023年代表執行役社長に就任し、現在に至る。
佐藤敬 取締役 北都銀行入行、同土崎支店長、常務執行役員等を経て、2025年同代表取締役頭取および荘内銀行代表取締役頭取に就任。現在に至る。
山科宏幸 取締役 荘内銀行入行、同酒田中央支店長、常務執行役員等を経て、2025年同代表取締役専務執行役員および北都銀行代表取締役専務執行役員に就任。現在に至る。
富樫秀雄 取締役 荘内銀行入行、同資金証券部長、常務取締役等を経て、2022年より同社取締役(非業務執行)に就任し現在に至る。
西堀利 取締役兼取締役会議長 富士銀行入行、みずほ銀行取締役頭取等を歴任。2022年同社取締役(非業務執行)兼取締役会議長に就任し、現在に至る。


社外取締役は、堀裕(堀総合法律事務所代表弁護士)、布井知子(元アースウォッチ・ジャパン理事)、廣瀬渉(元山形県企業管理者)、甲斐文朗(元日本銀行秋田支店長)、青木淳(元資生堂取締役)、佐藤史朗(元損害保険ジャパン日本興亜代表取締役)、成田恭子(CDP Worldwide-Japan)、葉山良子(葉山良子公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容

同社グループは、「銀行業」および「その他」の事業を展開しています。

(1) 銀行業

中核子会社である荘内銀行、北都銀行、フィデアカードを通じて、預金業務、貸出業務、内国・外国為替業務、有価証券投資業務、クレジットカード業務、保証業務等を提供しています。秋田県、山形県、宮城県を主要な営業基盤とし、地域の法人および個人顧客を対象に幅広い金融サービスを展開しています。

収益源は、貸出金に伴う利息収益、有価証券運用による収益、および各種金融取引やクレジットカード利用に伴う手数料などです。運営は主に荘内銀行、北都銀行、およびフィデアカードが行っています。

(2) その他

リース業務、調査研究業務、ソフトウェア開発業務、電力小売業務、投資業務など、銀行業を補完する多角的なサービスを提供しています。グループ内のIT化推進や、地域の脱炭素化支援など、金融にとどまらない付加価値を創出しています。

収益源は、設備などのリース料、システム開発や調査の委託料、電力供給に伴う電気料金などです。運営はフィデアリース、フィデア情報総研、フィデアエナジー、フィデアキャピタルが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

経常利益は一時的な落ち込みを経て回復傾向にあり、直近の2026年3月期は大幅な増益を達成しています。親会社に帰属する当期純利益についても同様に、堅調な回復と成長の軌道に乗っていることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - - - - -
経常利益 66億円 55億円 36億円 42億円 55億円
利益率(%) - - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) 18億円 22億円 14億円 14億円 16億円


(2) 損益計算書

営業利益は前期から微増となっており、コストコントロールや本業の安定的な運営が維持されていることが読み取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 14億円 15億円
営業利益率(%) - -


(3) セグメント収益

銀行業が同社グループの収益の大半を占めており、直近期間においても増収を達成し、全体の成長を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
銀行業 531億円 561億円
連結(合計) 531億円 561億円


(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況にあります。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -1521億円 -411億円
投資CF 1597億円 1661億円
財務CF -18億円 -18億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は2.9%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

グループ経営理念として「一人ひとりの情熱と知恵と挑戦で、東北を幸せと希望の産地にします」を掲げています。東北に根差した地域金融機関として、役職員全員が自ら考え行動することで持続可能な地域社会の実現に貢献し、地域顧客とともに成長することを目指しています。

(2) 企業文化

「地域のいちばんのファンとして、サポーターとして、いつだって同じ目線に立ちながら」「ときには金融機関らしくない、思い切ったチャレンジも取り入れて」という価値観を重視しています。一人ひとりが考え動く主体性と、地域課題の解決に向けた枠にとらわれない挑戦を尊ぶ文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標

第6次中期経営計画(2026年度から2028年度)において、以下の数値を目標として掲げています。
・連結ROE6%
・2030年度までのCO2排出量70%削減(2013年度比)
・サステナブルファイナンス累計実行額4,000億円(2030年度まで)

(4) 成長戦略と重点施策

2027年1月に予定されている荘内銀行と北都銀行の合併を完遂し「フィデア銀行」を誕生させ、合併シナジーを早期に発揮することを重要戦略としています。地域における金融仲介機能の充実、取引先の経営改善や事業再生支援に積極的に取り組み、コンサルティング営業の徹底と市場部門の収益力強化を推進します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

経営戦略の柱であるコンサルティングの深化を推進するため、内部人材の育成や外部人材の活用、人員配置の最適化を展開しています。また、サステナビリティ方針に基づき、人権方針、人材育成方針、社内環境整備方針を制定し、働きがいがあり、働きやすい職場環境の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.3歳 22.3年 689万円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.2%
男女賃金差異(正規雇用) 85.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 82.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役員比率(17.4%)、専門分野の資格保有者数(1,567名)、アニバーサリー休暇制度の取得者数(1,511名)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営統合に関するリスク
傘下の荘内銀行と北都銀行の合併に向けた準備において、顧客との関係悪化や想定外の費用発生、事務・システム障害などのオペレーショナル・リスクが顕在化した場合、想定された合併効果が発揮されず、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金融環境の変化に伴うリスク
収益は貸出金利息や有価証券運用収益に大きく依存しているため、国内の政策金利の上昇や景気・物価の変動などによって、保有有価証券の評価悪化や与信関係費用の増加が生じた場合、業績にネガティブな影響が及ぶ恐れがあります。

(3) 競争環境の変化に伴うリスク
地域金融機関の再編や異業種企業による金融分野への参入などにより、金融業界の競争環境が激化しています。営業基盤において競争優位を獲得できず、計画した営業戦略が奏功しない場合、収益の確保が困難となり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。