※本記事は、雪印メグミルク株式会社の有価証券報告書(第17期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 雪印メグミルクってどんな会社?
同社グループは、乳製品や飲料・デザート類を中心とした製造販売や、飼料・種苗事業を幅広く展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1925年設立の北海道製酪販売組合をルーツとし、バター製造から事業を開始しました。1950年に雪印乳業が設立されて上場し、2003年には日本ミルクコミュニティが誕生しました。2009年に両社が経営統合して雪印メグミルクが設立され、2011年の吸収合併を経て現在の体制となりました。
現在の従業員数は連結で5,844名、単体で3,172名となっています。筆頭株主は生産資材等の供給を行う全国農業協同組合連合会で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は農林中央金庫が名を連ねており、事業上の提携先や金融機関が中心の安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 全国農業協同組合連合会 | 15.20% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.92% |
| 農林中央金庫 | 7.44% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐藤 雅俊 | 代表取締役社長 | 1985年雪印乳業入社。日本ミルクコミュニティ仙台支店長、同社乳食品事業部長等を経て、2022年より現職。 |
| 田川 福彦 | 代表取締役副社長 | 1982年全国農業協同組合連合会入会。JA西日本くみあい飼料専務等を経て、2025年より現職。 |
| 戸髙 聖樹 | 代表取締役副社長 | 1987年農林中央金庫入庫。同庫JAバンク統括部長、三菱UFJニコス常務等を経て、2024年より現職。 |
| 井上 剛彦 | 取締役常務執行役員 | 1989年雪印乳業入社。同社福岡工場長、生産部長等を経て、2024年より現職。 |
| 稲葉 聡 | 取締役常務執行役員 | 1987年雪印乳業入社。雪印ビーンスターク代表取締役社長等を経て、2021年より現職。 |
| 岩橋 貞治 | 取締役常務執行役員 | 1987年雪印乳業入社。同社大阪支店長、乳食品事業部長等を経て、2022年より現職。 |
| 山下 功太郎 | 取締役監査等委員 | 1995年雪印乳業入社。同社総務部長、監査部長、雪印種苗監査役を経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、板東久美子(元消費者庁長官)、福士博司(元味の素代表取締役)、服部明人(服部明人法律事務所開設)、真鍋朝彦(税理士法人髙野総合会計事務所代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「乳製品」、「飲料・デザート類」、「飼料・種苗」および「その他」事業を展開しています。
■乳製品
チーズ、バター、粉乳などの乳製品や油脂、機能性食品、粉ミルクなどを提供しています。一般消費者向けの市販用商品のほか、外食産業や食品メーカー向けの業務用商品も幅広く取り扱っており、国内外の幅広い顧客層に向けて付加価値の高い商品を展開しています。
一般消費者や法人顧客に対する商品の販売代金を主な収益源としています。事業の運営は主に雪印メグミルクが行っているほか、雪印ビーンスタークやチェスコなどの国内外の子会社群がそれぞれの専門領域で製造や販売を担っています。
■飲料・デザート類
牛乳類や果汁飲料などの飲料、ヨーグルト、デザートなどを一般消費者向けに提供しています。日常の食生活に欠かせないチルド商品を主力としており、健康志向の高まりに応える機能性表示食品の開発など、消費者ニーズに合わせた商品展開を行っています。
小売店を通じた消費者への商品販売による収益を主な柱としています。事業の運営は主に雪印メグミルクが行っているほか、八ヶ岳乳業やみちのくミルクなどの地域に根ざした子会社が製造や販売を分担して展開しています。
■飼料・種苗
酪農家などの生産者に向けて、牛用飼料や牧草・飼料作物種子、野菜種子などを提供しているほか、造園事業も手がけています。持続可能な酪農の実現に向けたサポートや、気候変動に対応した品種の開発など、日本の酪農基盤を支える重要な役割を担っています。
生産者への配合飼料や種苗の販売代金を主な収益源としています。この事業領域の運営は、主に子会社である雪印種苗が主体となって行っており、同じく子会社である道東飼料と連携しながら安定的な供給体制を構築しています。
■その他
主要な報告セグメントに含まれない事業領域として、共同配送センター事業や不動産賃貸事業などを展開しています。グループ内外の物流インフラの効率的な運営や、保有不動産の有効活用を通じて、グループ全体の経営効率の向上に貢献しています。
物流サービスの提供に係る配送収入や不動産の賃貸収入などを主な収益源としています。これらの事業は雪印メグミルク本体のほか、エスアイシステムや直販配送などの専門子会社が物流業務を担うなど、グループ各社が協働して運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は価格改定の浸透などにより着実な増加傾向にあり、直近2期間は6000億円台で安定して推移しています。経常利益も原材料価格高騰の影響を受けた時期を乗り越え、回復基調を鮮明にしています。特に直近の当期利益は、投資有価証券売却益が大きく寄与し、大幅な増益を記録しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5584億円 | 5843億円 | 6054億円 | 6158億円 | 6158億円 |
| 経常利益 | 200億円 | 145億円 | 199億円 | 203億円 | 205億円 |
| 利益率(%) | 3.6% | 2.5% | 3.3% | 3.3% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 90億円 | 84億円 | 176億円 | 97億円 | 286億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年同期とほぼ同水準を維持していますが、価格改定の効果などにより売上総利益と売上総利益率は改善しています。一方で、広告宣伝費や運送保管料などのコスト増が影響し、営業利益および営業利益率は前年をわずかに下回る結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6158億円 | 6158億円 |
| 売上総利益 | 1015億円 | 1044億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.5% | 16.9% |
| 営業利益 | 191億円 | 183億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 3.0% |
販売費及び一般管理費のうち、運送保管料が218億円(構成比25%)、給与等の人件費が156億円(同18%)を占めています。売上原価は5114億円で、売上原価合計に対する構成比は83%となっています。
■(3) セグメント収益
乳製品セグメントは、価格改定を実施したことに加え、底堅い需要によりバターなどの販売が堅調に推移し増収となりました。一方で、飲料・デザート類セグメントは、機能性表示食品などは好調だったものの、物量の減少や一部商品の販売終了が影響して減収となりました。飼料・種苗セグメントは配合飼料の販売単価下落により減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 乳製品 | 2633億円 | 2684億円 |
| 飲料・デザート類 | 2643億円 | 2603億円 |
| 飼料・種苗 | 485億円 | 479億円 |
| その他 | 397億円 | 391億円 |
| 連結(合計) | 6158億円 | 6158億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社のキャッシュ・フローは、営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面のパターンを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 211億円 | 229億円 |
| 投資CF | -185億円 | 71億円 |
| 財務CF | -104億円 | -373億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.6%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も55.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、創立者の掲げた「健土健民(酪農は大地の力を豊かにし、その豊かな大地から生み出された牛乳・乳製品は最高の栄養食品として健やかな精神と強靭な身体を育む)」の考えを企業理念にあたる「存在意義・志」として定めています。また、コーポレートスローガンとして「Love Earth. Love Life.」を掲げ、自然と人が健やかにめぐる世界の実現を目指し、地球規模で社会課題の解決に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社グループは、存在意義・志を実現するための行動において、役職員一人ひとりが大切に考える共通の姿勢・価値観として「主体性」「チャレンジ」「チームワーク」の3つを「雪印メグミルク バリュー」として定めています。これらと「雪印メグミルクグループ 企業行動憲章」を合わせた三層構造で理念体系を構成し、消費者、生産者、地域社会などのステークホルダーと共に価値を創造する「価値をめぐらせる力」を強みとして重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、長期ビジョン「雪印メグミルクグループ 未来ビジョン2050」の実現に向けたマイルストーンとして、経営計画「Next Design 2030」を推進しています。「アセットの大変革」による事業ポートフォリオの変革を通じて収益性の向上を目指しています。
* 2030年度目標:調整後ROE 9.0%
* 2030年度目標:営業利益 350億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「第2の創業」とも言える構造改革に取り組み、ポートフォリオを「食の持続性貢献度」と「市場成長性×当社収益性」の軸で区分しています。練乳生産の外部委託などの「調整補完」、白物飲料などの高付加価値化を図る「酪農基盤」、チーズやヨーグルトに資源を集中する「重点」、海外および機能性食品で非連続的な成長を目指す「成長促進」の4領域で最適化を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは「最大の経営資源は『人材』である」と考え、人的資本経営を推進しています。「Next Design 2030」では「DXの推進」と「人的資本の活用・成長」を基盤戦略に位置づけ、経営戦略に連動した人材の獲得・配置、エンゲージメントの向上、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進、グループ人材育成とキャリア開発の4つを柱とした人事施策を展開しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.6歳 | 16.0年 | 7,733,539円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.3% |
| 男性育児休業取得率 | 97.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 69.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 76.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒者3年後離職率(25.7%)、年次有給休暇取得率(80.8%)、エンゲージメントスコア(66.0ポイント)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 酪農乳業界の需給変動と制度変更リスク
同社グループの主要原料である生乳の需給は、過剰と逼迫を繰り返しており、過剰時の在庫増加による販売競争激化や、逼迫時の調達不足による販売機会の喪失などが懸念されます。また、加工原料乳生産者補給金の制度見直しや、国際交渉による乳製品の関税水準の引き下げなど、農業保護政策の変更が事業に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 食品の安全性や品質問題に係るリスク
食品業界では高い安全性が求められており、万が一健康に影響を及ぼす物質の混入や家畜伝染病などによる品質問題が生じた場合、自主回収や工場の操業停止、製造物責任の負担が発生するリスクがあります。また、問題発生の有無にかかわらず、風評が拡大することによって商品消費が減少し、社会的信用や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 流通業者の寡占化とメーカー間の競争激化
小売市場では量販店を中心とした流通業者の再編や寡占化が進展しており、特定の大口販売先の仕入れ・販売施策の変更が業績に影響を与える可能性があります。同時に、食品メーカー間でも経営統合や淘汰が進み、他業界からの新規参入も相まって、商品開発や価格競争が一層激しさを増しており、収益性の低下を招くリスクが内在しています。



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