#記事タイトル:雪印メグミルク転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、雪印メグミルク株式会社 の有価証券報告書(第16期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 雪印メグミルクってどんな会社?
牛乳、乳製品を中心に、飲料・デザート類、飼料・種苗事業を展開する総合乳業メーカーです。
■(1) 会社概要
同社のルーツは1925年に設立された有限責任北海道製酪販売組合に遡り、1950年に雪印乳業が設立、上場しました。2003年には日本ミルクコミュニティが設立され、2009年に両社が経営統合して共同持株会社である同社が設立されました。2011年に同社が2社を吸収合併し、現在の体制となっています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は5,751名、単体従業員数は3,127名です。筆頭株主は農業協同組合の連合会である全国農業協同組合連合会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は農業・水産業等の協同組合等の金融機関である農林中央金庫となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 全国農業協同組合連合会 | 13.64% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.47% |
| 農林中央金庫 | 9.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は佐藤雅俊氏です。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐 藤 雅 俊 | 代表取締役社長 | 1985年4月雪印乳業入社。秘書室長、乳食品事業部長、常務執行役員、社長執行役員(CEO)などを経て、2022年6月より現職。 |
| 石 井 智 実 | 代表取締役副社長 | 1980年4月全国農業協同組合連合会入会。本所畜産生産部部長、科学飼料研究所代表取締役社長、同社常務執行役員などを経て、2022年6月より現職。 |
| 戸 髙 聖 樹 | 代表取締役副社長 | 1987年4月農林中央金庫入庫。常務執行役員、三菱UFJニコス常務執行役員、同社常務執行役員を経て、2024年6月より現職。 |
| 井 上 剛 彦 | 取締役常務執行役員 | 1989年4月雪印乳業入社。福岡工場長、大樹工場長、生産部長などを経て、2020年6月より現職。 |
| 稲 葉 聡 | 取締役常務執行役員 | 1987年4月雪印乳業入社。秘書室長、総合企画室長、雪印ビーンスターク代表取締役社長、同社常務執行役員などを経て、2021年6月より現職。 |
| 岩 橋 貞 治 | 取締役常務執行役員 | 1987年4月雪印乳業入社。関係会社統括部長、乳食品事業部長、常務執行役員を経て、2022年6月より現職。 |
| 伊 藤 弘 幸 | 取締役監査等委員 | 1988年4月雪印乳業入社。IT企画推進部長、監査部長を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、板東久美子(元消費者庁長官)、福士博司(元味の素代表取締役)、服部明人(弁護士)、真鍋朝彦(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「乳製品」「飲料・デザート類」「飼料・種苗」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 乳製品
チーズ、バター、粉乳等の乳製品、油脂、機能性食品、粉ミルク等の製造・販売を行っています。顧客は一般消費者や食品加工メーカーなど多岐にわたります。
製品の販売等により収益を得ています。運営は主に雪印メグミルクが行っているほか、雪印ビーンスターク、チェスコ、甲南油脂などの連結子会社が事業を担っています。
■(2) 飲料・デザート類
牛乳類、果汁飲料等の飲料、ヨーグルト、デザート等の製造・販売を行っています。主要製品には「雪印メグミルク牛乳」「ナチュレ 恵 megumi」などがあります。
製品の販売等により収益を得ています。運営は主に雪印メグミルクが行っているほか、八ヶ岳乳業、いばらく乳業、みちのくミルクなどの連結子会社も事業を展開しています。
■(3) 飼料・種苗
牛用飼料、牧草・飼料作物種子、野菜種子の製造・販売、および造園事業等を行っています。酪農・畜産農家などが主な顧客となります。
製品の販売等により収益を得ています。運営は主に連結子会社の雪印種苗および道東飼料が行っています。
■(4) その他
共同配送センター事業、不動産賃貸事業等を行っています。グループ内の物流機能などを担うほか、不動産の有効活用を行っています。
配送サービスの提供や不動産賃貸により収益を得ています。運営は雪印メグミルクのほか、雪印メグミルクビジネスソリューション、エスアイシステムなどの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 6,152億円 | 5,584億円 | 5,843億円 | 6,054億円 | 6,158億円 |
| 税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 | 217億円 | 200億円 | 145億円 | 199億円 | 203億円 |
| 利益率(%) | 3.5% | 3.6% | 2.5% | 3.3% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 149億円 | 121億円 | 91億円 | 194億円 | 139億円 |
売上高は2022年3月期に一度減少しましたが、その後は増加傾向にあり、2025年3月期には6,158億円となりました。経常利益は2023年3月期に低下しましたが、その後回復しています。当期純利益については変動が見られます。
■(2) 損益計算書
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,054億円 | 6,158億円 |
| 売上総利益 | 983億円 | 1,015億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.2% | 16.5% |
| 営業利益 | 185億円 | 191億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 3.1% |
売上高は増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。それに伴い営業利益も増加しています。
販売費及び一般管理費のうち、運送保管料が211億円(構成比26%)、その他費用が206億円(同25%)を占めています。売上原価は5,143億円で、売上高に対する比率は83.5%です。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで黒字を確保しており、特に乳製品セグメントが収益の柱となっています。飲料・デザート類は増収ながら利益は横ばい、飼料・種苗は減収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 乳製品 | 2,592億円 | 2,633億円 | 99億円 | 104億円 | 4.0% |
| 飲料・デザート類 | 2,561億円 | 2,643億円 | 57億円 | 57億円 | 2.1% |
| 飼料・種苗 | 508億円 | 485億円 | 3億円 | 4億円 | 0.7% |
| その他 | 393億円 | 397億円 | 27億円 | 27億円 | 6.7% |
| 調整額 | -283億円 | -291億円 | -0億円 | 0億円 | -% |
| 連結(合計) | 6,054億円 | 6,158億円 | 185億円 | 191億円 | 3.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**パターン判定: 健全型**
営業活動で得たキャッシュで投資活動を行い、借入金の返済なども進めている状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 305億円 | 211億円 |
| 投資CF | -63億円 | -185億円 |
| 財務CF | -156億円 | -104億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業の精神である「健土健民」を存在意義・志に掲げ、「私たちは社会課題に挑む精神で、人と自然が健やかにめぐる食の未来を育んでいきます。」というステートメントを定めています。また、コーポレートスローガンとして「Love Earth. Love Life.」を掲げています。
■(2) 企業文化
役職員一人ひとりが大切にする共通の姿勢・価値観として、「雪印メグミルク バリュー」を定めています。具体的には「主体性」「チャレンジ」「チームワーク」の3つを掲げ、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高め、付加価値を創造する人材の育成を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度に向けた経営計画「Next Design 2030」を策定しています。
* 2030年度営業利益目標:350億円
* 経営上のコミットメント:2030年までに資産売却を除く調整後ROE9.0%以上、ROIC6.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「Next Design 2030」では、「成長の果実の育成と収穫」「乳の産業価値を高める構造の変革」「リジェネラティブな酪農の実現」「社会とのつながりの進化」の4つを柱としています。
* 乳製品事業において、チーズ市場における事業の拡大を図り、チーズの生産体制整備として約475億円の設備投資を計画しています。
* 白物飲料でのプレゼンス拡大や、プラントベースフードへの参入、海外展開の強化に取り組みます。
* 海外事業では全体の利益に対して20%の構成を占めることをKPIとし、金額として70億円を目標としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Next Design 2030」において、「DXの推進」と「人的資本の活用・成長」を基盤戦略に位置づけています。経営戦略と連動した人材の獲得・配置、エンゲージメントの向上、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進、グループ人材育成とキャリア開発を人事戦略として掲げています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.8歳 | 16.1年 | 7,658,598円 |
※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.6% |
| 男性育児休業取得率 | 94.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 74.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒者3年後離職率(4.7%)、障がい者雇用率(2.56%)、エンゲージメントスコア(65.2ポイント)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 酪農乳業界について
主要原料である加工原料乳の取引は「畜産経営の安定に関する法律」等の影響を受けます。また、WTO農業交渉やFTA、EPA等の交渉により乳製品の関税水準が引き下げられた場合、乳製品の販売に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 需給変動について
国内生乳需給の過剰や逼迫は、販売競争の激化や販売機会の喪失につながる可能性があります。また、乳製品や飼料原料の国際市況の変動、異常気象による飼料作物の不作などが、原料調達や価格に影響を与え、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 家畜伝染病について
生乳を搾った牛が家畜伝染病に感染していた場合、原材料や製品の廃棄が必要となり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、風評被害による消費減少や、乳牛の淘汰による生乳生産量の減少、飼料需要の減退などもリスク要因となります。
■(4) 市場規模の縮小等について
少子高齢化による人口減少や、経済状況の後退、物価高騰による消費意欲の減退は、市場の縮小を通じて商品販売に影響を及ぼす可能性があります。また、畜産市場における飼養頭数の減少は、飼料や飼料作物種子の販売に悪影響を及ぼす可能性があります。



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