シーボン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シーボン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するシーボンは、スキンケア製品を中心とする化粧品の製造販売とフェイシャルサロンの運営を展開しています。直近の業績では、主力のサロン事業における店舗改装や新製品投入などの施策が奏功し、売上高および各段階利益ともに増収増益を達成しており、堅調な成長を続けています。


※本記事は、株式会社シーボンの有価証券報告書(第61期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シーボンってどんな会社?


スキンケア化粧品の製造販売と会員制フェイシャルサロンの運営を一体で手がける企業です。

(1) 会社概要


1966年に化粧品の製造・販売を目的にシーボン化粧品を設立し、1986年に直営店を会員制サロンとして展開を開始しました。1992年に現在のシーボンへ商号を変更し、2012年に東京証券取引所市場第二部へ上場、2013年に同市場第一部へ指定されました。その後、2022年にスタンダード市場へ移行しています。

同社の従業員数は連結で717名、単体で713名です。筆頭株主は創業者の犬塚雅大氏で、第2位はシーボン従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
犬塚雅大 17.63%
シーボン従業員持株会 2.73%
犬塚公子 2.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性4名の計10名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役会長は犬塚雅大氏、代表取締役社長は崎山一弘氏が務めており、取締役7名中3名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
崎山一弘 代表取締役社長 執行役員 1985年同社入社。チサンレストランを経て再入社後、直販営業部長などを歴任。2021年より現職。
犬塚雅大 代表取締役会長 1978年同社入社。美容部長、営業部長、副社長を経て1986年に社長就任。2005年より現職。
菅原桂子 取締役 執行役員 事業本部責任者 1993年同社入社。エリア長、直販営業部営業部長などを経て、2021年より現職。
堀住輝男 取締役 執行役員 商品開発本部責任者 1996年花王入社。2017年同社入社後、商品開発本部執行役員などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、岩田功(元三陽商会代表取締役社長)、山田奈央子(シルキースタイル代表取締役)、大杉春子(レイザー代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、化粧品の製造・販売およびアフターサービスの提供を単一セグメントとして事業を展開しています。

(1) 化粧品製造および販売事業


同社は、スキンケア製品を中心とする化粧品および医薬部外品の製造・販売を展開しています。日常的に使用するベーシック製品やスペシャル製品のほか、メイクアップ製品やボディ関連製品、子会社が製造する美容ドリンクなどの飲料食品も取り扱っています。主力ブランドとして「フェイシャリスト」シリーズなどを展開しています。

同社は、直営店舗での販売を主力としており、製品の販売代金から収益を得ています。また、通信販売や国内外の代理店を通じた販売も行っています。製品の製造は自社工場である生産センターおよび子会社の天然酵母研究所などが担い、販売およびサロン運営は同社とクリニメディックなどの子会社が行っています。

(2) アフターサービス事業


同社は、化粧品を購入した会員顧客に対し、肌の状態を確認しカウンセリングに基づいたスキンケアアドバイスを提供するアフターサービスを展開しています。店舗にて東洋式トリートメントをはじめとするフェイシャルサービスなどを提供し、顧客の美を継続的にサポートしています。

本事業は、ホームケア製品の購入金額に応じて付与されるポイントを利用したサービスの提供に加え、別途購入するパックセット等を用いた有償の施術サービスにより収益を得ています。直営の「シーボンフェイシャリストサロン」などの店舗運営は、主に同社が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響等による店舗休業や顧客の来店減少により一時的に業績が落ち込み、赤字を計上する時期がありました。しかし、その後は店舗改装や新製品の投入、接客スキルの向上といった施策の効果が表れ、売上高は回復基調にあります。利益面でも収益性の改善が進み、直近では黒字転換から増益へと順調な回復を見せています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 92億円 85億円 85億円 88億円 93億円
経常利益 3.0億円 -1.3億円 0.4億円 1.7億円 2.8億円
利益率(%) 3.3% -1.5% 0.5% 1.9% 3.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.5億円 -4.2億円 -0.3億円 1.4億円 2.1億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回る結果となっています。独自の高付加価値製品とアフターサービスの組み合わせにより、高い売上総利益率を維持している点が同社の収益構造の特徴です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 88億円 93億円
売上総利益 67億円 70億円
売上総利益率(%) 76.3% 75.9%
営業利益 1.7億円 2.5億円
営業利益率(%) 1.9% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が26億円(構成比38%)、退職給付費用が0.2億円(同0.3%)を占めています。直営店舗での対面サービスを主体とするビジネスモデルのため、人件費が大きな割合を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -0.4億円 7.6億円
投資CF -8.5億円 -1.6億円
財務CF -0.9億円 -2.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「美を創造し、演出する」という企業理念を掲げています。この理念の実現に向け、スキンケア製品の研究開発や製造、販売にとどまらず、顧客に寄り添い共に美しさを育むことを使命としています。直営サロンでの肌カウンセリングや東洋式トリートメントなどのアフターサービスを提供し、顧客とのコミュニケーションを深めることで、人々のQOL(生活の質)向上と持続可能な社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


社員一人ひとりが「自分らしく輝く」ことを重視し、お互いの個性や多様性を尊重できる企業風土の醸成に取り組んでいます。また、現場の声を製品開発やサービス改善に直結させる「現場起点のイノベーション」を促進しており、社員が自ら考え行動する主体性あふれる組織文化を大切にしています。新しいことに挑戦できる環境を整え、社員と顧客双方の人生を輝かせることを行動の基盤としています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な成長と企業価値の向上を目指し、2027年3月期から2029年3月期を対象とする新たな中期経営計画を策定しています。継続的な事業拡大を通じて企業体力と価値を高めることを経営目標に掲げており、最終年度である2029年3月期までに以下の数値目標の安定的な実現を目指しています。

* 自己資本利益率(ROE):7.3%
* 自己資本配当率(DOE):2.8%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では「美しさを共に奏でる」というビジョンのもと、顧客体験価値の深化と生産・店舗オペレーションの向上を推進します。蓄積した肌データやアンケートを研究開発に反映し、パーソナライズされた製品を開発するとともに、サロンとECを融合したシームレスな購買体験を確立します。また、生産体制の自動化や店舗業務のDX化を図り、接客効率と収益性の改善に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を事業拡大の中核と位置づけ、女性活躍の推進と多様性を尊重する組織づくりを行っています。階層別プログラムを通じた専門技術の高度化や、社内公募制度を利用した自律的なキャリア形成を支援しています。さらに、選抜型の管理職研修等により次世代リーダーを育成するとともに、短時間勤務などの柔軟な勤務体系を導入し、ライフイベントに関わらず長期的に活躍できる職場環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.9歳 12.6年 4,474,448円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 85.9%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 81.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一人当たり月平均所定時間外労働(14.9時間)、年次有給休暇取得率(73.7%)、美容社員の離職率(16.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) イベントプロモーションによる集客への依存


同社は新規顧客の獲得にあたり、各種イベント会場や駅前での肌チェック、試供品の配布などを通じてサロンへの誘致を行っています。新規来店者の約7割がイベントプロモーションを動機としているため、デジタル化等によるライフスタイルの変化によりイベントの集客力が低下した場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) アフターサービスの質と顧客ロイヤルティ


主力チャネルである直営サロンでは、購入金額に応じたポイントによる各種アフターサービスを提供しています。このサービスが定期的な来店やリピート購入の要となっており、サービスの質の低下によって顧客離れが生じた場合、収益の根幹を揺るがすリスクがあります。同社はカウンセリングシステムの導入や科学的検証を進め、サービスの差別化を図っています。

(3) 特定の生産拠点への集中と品質保証


同社はスキンケア製品のほぼ全てを栃木県の自社工場「生産センター」で製造しています。このため、自然災害や設備の老朽化によって生産機能が停止した場合、製品供給に大きな支障をきたす恐れがあります。また、化粧品会社として安全な製品の提供は最重要事項であり、万が一製品事故が発生した場合、風評被害を含めブランドの信用低下につながるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。