※本記事は、株式会社パピレスの有価証券報告書(第31期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. パピレスってどんな会社?
電子書籍販売サイト「Renta!」を運営する電子書籍事業のパイオニアであり、オリジナルコンテンツ制作も展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1995年、富士通の社外ベンチャー制度を利用して設立され、「電子書店パピレス」を開始しました。2007年には電子書籍レンタルサイト「電子貸本Renta!」を開設し、事業を拡大。2010年に大阪証券取引所JASDAQへ上場を果たしました。その後、2014年に台湾、2017年に米国へ子会社を設立し、海外展開を進めています。
現在の連結従業員数は158名(単体119名)です。大株主構成については、筆頭株主は創業者の天谷幹夫氏で、第2位はセガサミーホールディングスです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 天谷 幹夫 | 39.49% |
| セガサミーホールディングス | 10.37% |
| 松井 康子 | 2.81% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は松井康子氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松井康子 | 取締役社長(代表取締役) | 1995年入社、WEB編集部長、経営企画室長、管理部門統括等を経て2012年より現職。 |
| 福井智樹 | 専務取締役仕入部門統括 | 1995年入社、コンテンツ企画部長、営業部門統括等を経て2015年より現職。 |
| 天谷幹夫 | 取締役アドバイザー | 富士通を経て1995年同社設立・代表取締役社長。会長等を経て2025年より現職。 |
| 岡田英明 | 取締役販売部門統括兼システム管理部長 | 国土情報開発を経て2000年入社。WEB開発部長等を経て2010年より販売部門統括。 |
| 須永喜和 | 取締役管理部門統括兼総務・経理部長 | 太平洋銀行、会計事務所等を経て2007年入社。2008年より総務・経理部長。 |
社外取締役は、今田公久(ビットキャッシュ取締役)、三竹兼司(ナレッジピースエグゼクティブアドバイザー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電子書籍事業」および「IP制作事業」を展開しています。
■(1) 電子書籍事業
スマートフォン、タブレット、PC等の情報端末向けに、ネットワーク配信による電子書籍コンテンツの販売を行っています。主なサービスとして、電子書籍レンタルサイト「Renta!」などを運営し、コミックや小説、実用書など幅広いジャンルのコンテンツを提供しています。
収益は、主にユーザーからの電子書籍コンテンツ利用料(ポイント購入等)によって構成されています。運営は同社に加え、海外事業においては子会社のPapyless Global,Inc.や巴比楽視網路科技股份有限公司などが担当しています。
■(2) IP制作事業
次世代コンテンツやWebtoon(縦スクロールコミック)などのオリジナルコンテンツの開発・制作を行っています。自社グループ内での活用のほか、他社の電子書籍事業者への提供も視野に入れた事業展開を行っています。
収益は、制作したIPコンテンツを販売または利用する事業者へ提供することによるロイヤリティ収入等を想定しています。運営は主に、セガサミーホールディングスとの合弁会社であるJadeComiX株式会社などが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は237億円から158億円へと減少傾向が続いています。利益面でも、経常利益は23億円から縮小し、当期には3億円の赤字に転落しました。利益率も低下しており、当期はマイナスとなっています。競争激化や広告宣伝効率の低下などが影響していると考えられます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 237億円 | 207億円 | 186億円 | 172億円 | 158億円 |
| 経常利益 | 23億円 | 12億円 | 5億円 | 5億円 | -3億円 |
| 利益率(%) | 9.6% | 5.8% | 2.9% | 3.2% | -1.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 3億円 | 8億円 | 6億円 | -4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の172億円から158億円へ減少し、売上総利益も83億円から76億円へ縮小しました。売上総利益率は48%前後で推移しています。営業利益については、前期は3億円の黒字でしたが、当期は3億円の赤字となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 172億円 | 158億円 |
| 売上総利益 | 83億円 | 76億円 |
| 売上総利益率(%) | 48.1% | 47.9% |
| 営業利益 | 3億円 | -3億円 |
| 営業利益率(%) | 1.5% | -2.0% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が52億円(構成比66%)、代金回収手数料が12億円(同16%)を占めています。売上原価においては、著作権利用料が主な内訳となっています。
■(3) セグメント収益
電子書籍事業は、広告施策の効果低下や消費行動の低迷により減収となり、セグメント損失を計上しました。IP制作事業は、制作段階のため売上高は発生しておらず、先行投資による費用が発生して損失となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電子書籍事業 | 172億円 | 158億円 | 6億円 | -1億円 | -0.9% |
| IP制作事業 | - | - | -1億円 | -1億円 | - |
| 連結(合計) | 172億円 | 158億円 | 5億円 | -3億円 | -1.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | -6億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -0.0億円 |
| 財務CF | 6億円 | -12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-1.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、インターネットの進展による世界的なコンテンツ流通革命の中で、顧客が満足する新しい価値を創造し、世界規模のデジタルコンテンツ提案型のビジネスを目指すことを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
顧客第一主義のもと、イノベーションの創出を実現し、世界規模のデジタルコンテンツの普及と発展を推進することを重視しています。また、サステナビリティ経営に取り組み、事業の発展を通じて紙資源の消費減少などに貢献することを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、日本国内における電子書籍販売売上高シェア第1位を目標としています。また、同時に全世界での電子書籍販売売上高の向上も目標として掲げ、海外での事業拡大を指標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「Renta!」のブランド確立と海外展開を主軸とした戦略を推進しています。具体的には、AIを活用したユーザビリティ向上や、縦スクロールコミック「タテコミ」等の次世代コンテンツ開発、オリジナル作品の制作体制強化に注力しています。また、英語圏や中国語圏などのグローバル市場での販路拡大を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を重要な経営資本と認識し、多様性の確保と人材育成の強化を進めています。企業価値の持続的な成長を実現するため、多様な人材が活躍できる職場環境の構築に取り組み、管理職の構成比目標(女性、外国人、中途採用者)を定めて採用や教育を実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 34.6歳 | 6.5年 | 4,981,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 87.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 87.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男女賃金差異(非正規雇用)の「-」は対象者がいないことを示しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職の構成比(外国人)(14.3%)、管理職の構成比(中途採用)(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合他社の影響
電子書籍市場は参入障壁が低く、多数の企業が参入しているため競争が激化しています。競合他社がより魅力的なサービスや効果的な集客施策を実施した場合、同社グループの収入および収益が減少する可能性があります。
■(2) 海賊版サイト
電子データである電子書籍には違法配信リスクが存在します。海賊版サイトによる被害は業界全体に影響を与えており、リスクが顕在化した際の影響額を想定することは困難です。同社は業界団体と連携し、対策に取り組んでいます。
■(3) システム障害
事業運営に不可欠なコンピューターネットワークシステムに障害が発生した場合、規模に応じて収入が減少するリスクがあります。ハードウェア不具合や自然災害など予測不可能な事態も含め、サービス停止による影響が懸念されます。
■(4) 著作権利用料
出版社等のコンテンツホルダーとの契約において、支払料率が上昇した場合や契約更新に支障が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。特に大手出版社との交渉において、条件変更や契約終了のリスクが存在します。



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