電算 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

電算 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する長野県の独立系システムインテグレーターです。自治体向けの公共分野と民間企業向けの産業分野で事業を展開しています。2025年3月期の業績は、売上高187億円(前期比17.3%増)、経常利益25億円(同104.6%増)と、自治体システムの標準化対応などが寄与し大幅な増収増益となりました。


※本記事は、株式会社電算 の有価証券報告書(第60期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 電算ってどんな会社?


長野県を地盤に、全国の自治体や民間企業へ情報処理サービスやシステム開発を提供するシステムインテグレーターです。

(1) 会社概要


同社は1966年、信越放送が中心となり株式会社長野電子計算センターとして設立され、1969年に現社名へ変更しました。1995年にインターネットサービスプロバイダ事業を開始し、2003年には自社データセンターを竣工させました。2013年に東京証券取引所市場第一部へ指定され、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結で589名、単体で566名です。大株主の構成は、筆頭株主が同社の設立母体であり放送事業を行う関係会社、第2位が情報コミュニケーション事業を行う資本業務提携先の関係会社、第3位が地元の新聞社となっています。

氏名 持株比率
信越放送 35.27%
TOPPANエッジ 15.15%
信濃毎日新聞 4.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は轟 一太氏です。社外取締役比率は46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
轟 一太 代表取締役社長 信越放送入社後、同社取締役総務局長等を経て、2004年電算取締役就任。専務取締役管理部門担当等を経て2011年6月より現職。
村松 文男 常務取締役 1982年電算入社。公共事業本部公共営業部長、東京支社長、営業本部長等を経て、2023年6月より現職。
依田 頼和 常務取締役 1987年電算入社。公共開発本部商品開発部長、公共開発本部長、開発本部長等を経て、2024年6月より現職。
吉川 満則 取締役 1989年電算入社。技術開発センター長、技術推進本部長、データセンター長等を経て、2023年4月より現職。
穂川 尚実 取締役 1993年電算入社。経営企画本部経営企画部長、ティー・エム・アール・システムズ取締役、管理本部長を経て、2024年6月より現職。
増田 久 取締役 トッパン・ムーア(現TOPPANエッジ)入社。同社執行役員本部長、TFペイメントサービス常務等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、小林 秀明(元在タイ日本国大使)、渡辺 雅義(信越放送代表取締役社長)、田中 良平(弁護士)、小出 貞之(元八十二銀行代表取締役副頭取)、宮坂 直慶(公認会計士)、広瀬 敏男(元富士通Japan取締役副会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「公共分野」および「産業分野」の2つの報告セグメントを展開しています。

(1) 公共分野


主に地方公共団体や関係団体向けに、システム提供サービス、機器システム・用品販売、情報処理サービス、データセンターサービスを提供しています。主力商品は総合行政情報システム「Reams」であり、住民記録や税務、福祉などの業務に対応しています。

収益は、地方公共団体等からのシステム導入対価、運用保守料、処理委託料などから得ています。運営は主に電算が行っています。

(2) 産業分野


民間企業、金融機関、医療・福祉機関向けにソフトウェア開発や各種システム販売を行うほか、一般個人向けにインターネット接続サービスを提供しています。主な商品には医療機関向けの電子カルテや健診システム、製造業向けの生産管理システムなどがあります。

収益は、民間企業や医療機関からのシステム開発・販売代金、保守料、および個人・法人からのインターネット接続料などから得ています。運営は電算および株式会社ティー・エム・アール・システムズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は160億円から180億円台で推移しています。2023年3月期と2025年3月期に利益が大きく伸長しており、特に当期は売上高が過去最高水準に達し、経常利益も前期比で倍増するなど、好調な決算となりました。利益率も13%台と高い水準を記録しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 161億円 173億円 178億円 160億円 187億円
経常利益 11億円 12億円 25億円 12億円 25億円
利益率(%) 6.9% 7.2% 14.1% 7.7% 13.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 6.0億円 8.6億円 16億円 9.0億円 18億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も約10億円増加しました。増収効果により利益率が大きく改善し、営業利益率は約2倍に上昇しています。コストコントロールと売上拡大が相まって、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 160億円 187億円
売上総利益 55億円 65億円
売上総利益率(%) 34.6% 34.6%
営業利益 13億円 25億円
営業利益率(%) 8.1% 13.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が12億円(構成比30%)、研究開発費が7.3億円(同18%)を占めています。売上原価に関しては、ソフトウェア開発やシステム構築に伴う労務費や外注費などが主な内訳となります。

(3) セグメント収益


公共分野は、自治体システムの標準化対応や法制度改正対応、機器リプレイスなどが進み、売上が大幅に増加しました。それに伴い利益も倍増以上の伸びを示しています。産業分野は売上が微減となりましたが、利益は微増を確保しました。全体として公共分野の好調が業績を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
公共分野 113億円 142億円 8.9億円 21億円 14.9%
産業分野 46億円 45億円 3.9億円 4.0億円 8.9%
調整額 -0億円 -0億円 0.1億円 -0億円 -
連結(合計) 160億円 187億円 13億円 25億円 13.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

電算は、営業活動で資金を獲得し、投資活動と財務活動で資金を使用する方針です。当連結会計年度は、売上債権の増加があったものの、税金等調整前当期純利益や仕入債務の増加などにより、営業活動で多額の資金を獲得しました。一方、無形固定資産の取得や定期預金の預入により、投資活動では資金を使用しました。また、長期借入金の返済や配当金の支払いなどにより、財務活動でも資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 16億円 30億円
投資CF -14億円 -9.3億円
財務CF -1.9億円 -13億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「1.5歩進んだ情報技術を、豊かな発想と情熱で活用することにより『お客さまにワンランク上の仕事を』『人々の生活に便利さを』提供する」を使命として掲げています。また、「輝く会社」「輝いている社員」「輝ける仕事」を目指す企業像としています。

(2) 企業文化


「DENSAN VALUES」として、「お客さまにとって『頼りになる企業』になろう」「高い志を持ち、自ら創り出す事ができる社員になろう」「誠実でフェアであり続け、誇り高い行動をとろう」「仕事に感動を吹き込もう」「利益ある事業成長を目指そう」という5つの価値観を掲げています。

(3) 経営計画・目標


収益力の向上を図るため、売上高営業利益率とROE(自己資本利益率)を重要な経営指標として位置づけています。本業の収益性を高めることが資本収益性の向上につながると考え、継続的な達成を目指しています。

* 売上高営業利益率:10%以上
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


地方自治体の基幹業務システム標準化への対応を最優先課題とし、2025年度末までに全顧客のシステム移行完了を目指しています。また、自治体DX推進ソリューションの展開や、産業分野における主力パッケージシステムの拡販、AI製品の販売強化を進めています。さらに、協業各社との連携により、新規事業の開発や技術力の強化を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最大の資本と位置づけ、新卒・中途の区別なく通年採用を行い、優秀な技術者の確保に注力しています。また、シニア層の活躍推進や、社員一人当たりの生産性向上を目指し、高度情報セキュリティ技術者やシステム開発技術者の育成、営業・管理部門の専門知識向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.5歳 19.7年 7,356,085円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を合計したものです。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.4%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.5%
男女賃金差異(正規) 70.7%
男女賃金差異(非正規) 63.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断二次健診の受診率(90%以上)、健康診断一次健診の受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共分野への依存度


同社グループの売上高の約7割以上が公共分野で占められており、地方公共団体向けのシステムが主力です。自治体システムの標準化や共同利用の動向、公共投資の削減などがあった場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、産業分野へのシフトや新規顧客開拓を進めています。

(2) 特定の大株主との関係


信越放送が議決権の37.6%を保有しており、その他の関係会社となっています。また、TOPPANエッジも15.2%を保有しています。事業戦略や人事政策等に制約は受けていませんが、大株主としての方針決定への影響力を持つ可能性があります。なお、両社とは取引関係もあります。

(3) 不採算案件の発生


システム開発において、見積り以上の工数発生や開発遅延などが生じ、開発費用が増加するリスクがあります。品質・生産性向上の推進や品質管理部門によるチェック体制を強化していますが、大幅なコスト超過が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) システム障害と情報漏洩


データセンター運営やシステムサービスにおいて、自然災害やサイバー攻撃等によるシステム障害が発生した場合、損害賠償や信用の失墜につながる恐れがあります。また、個人情報を含む重要データを扱っているため、情報漏洩が発生した際の影響も甚大であり、セキュリティ対策を徹底しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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