※本記事は、電算 の有価証券報告書(第61期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 電算ってどんな会社?
長野・新潟を中心とした地方公共団体および民間企業向けに情報通信サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1966年に信越放送が中心となり、長野電子計算センターとして設立されました。1969年に電算へ商号変更し、1995年にはISP事業を開始しています。2003年にデータセンターを竣工し、2010年に東証二部へ上場しました。近年では、2016年にティー・エム・アール・システムズを子会社化、2023年にはTOPPANと資本及び業務提携を結んでいます。
現在の従業員数は連結で585名、単体で562名体制となっています。筆頭株主は事業会社の信越放送で、第2位は資本提携先であるTOPPANです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 信越放送 | 36.92% |
| TOPPAN | 15.86% |
| 信濃毎日新聞 | 5.21% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は轟一太氏が務めており、社外取締役比率は46.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 轟 一太 | 代表取締役社長 | 1969年信越放送入社。同社取締役等を経て、2011年6月より現職。 |
| 村松 文男 | 常務取締役 営業本部担当 | 1982年電算入社。公共事業本部長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 依田 頼和 | 常務取締役 開発本部担当 | 1987年電算入社。公共開発本部長等を経て、2024年6月より現職。 |
| 吉川 満則 | 取締役 DC・クラウドサービス推進本部担当 | 1989年電算入社。技術推進本部長等を経て、2023年4月より現職。 |
| 穂川 尚実 | 取締役 管理本部担当兼情報開示担当 | 1993年電算入社。経営企画部長、管理本部長等を経て、2024年6月より現職。 |
| 増田 久 | 取締役 イノベーション事業推進本部担当 | 1984年トッパン・ムーア入社。TOPPANエッジ顧問等を経て、2026年4月より現職。 |
社外取締役は、小林秀明(元内閣府迎賓館館長)、渡辺雅義(信越放送代表取締役社長)、田中良平(弁護士)、小出貞之(元八十二銀行代表取締役副頭取)、宮坂直慶(公認会計士)、広瀬敏男(元富士通Japan代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「公共分野」および「産業分野」の事業を展開しています。
■(1) 公共分野
主に地方公共団体や関係する諸団体向けに、総合行政情報システム「Reams」を中心としたパッケージシステムの提供や、情報処理サービス、データセンターサービス等を提供しています。
地方公共団体などからシステム提供費用や各種サービスの保守・運用料を受け取る収益モデルです。同セグメントの運営は同社が主体となって行っています。
■(2) 産業分野
民間企業、金融機関、医療・福祉機関向けに、リース業務パッケージや生産管理システム、病院総合情報システム等のソフトウェア開発・提供を行うほか、一般個人向けインターネットサービスも提供しています。
民間企業や医療機関などからソフトウェア開発費用やシステム利用料を、個人からインターネット接続料を受け取る収益モデルです。運営は同社およびティー・エム・アール・システムズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね増加傾向にあり、特に直近では大幅な増収を達成しています。利益面でも増益傾向が続いており、利益率も大きく改善するなど、収益性の向上がうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 173億円 | 178億円 | 160億円 | 187億円 | 280億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 25億円 | 12億円 | 25億円 | 63億円 |
| 利益率(%) | 7.2% | 14.1% | 7.7% | 13.5% | 22.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 16億円 | 9億円 | 18億円 | 44億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益構造を見ると、売上高の急増に伴い売上総利益も大きく伸びており、売上総利益率が向上しています。さらに営業利益率も大幅に改善しており、本業での稼ぐ力が強まっていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 187億円 | 280億円 |
| 売上総利益 | 65億円 | 106億円 |
| 売上総利益率(%) | 34.6% | 37.8% |
| 営業利益 | 25億円 | 63億円 |
| 営業利益率(%) | 13.4% | 22.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が12億円(構成比29%)、研究開発費が5億円(同13%)を占めています。売上原価では経費が74億円(同63%)、労務費が40億円(同34%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である公共分野が大きく売上と利益を牽引しています。産業分野も堅調に推移しており、両セグメントともに前期比で増収を記録し、連結全体の業績拡大に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 公共分野 | 142億円 | 225億円 | 21億円 | 58億円 | 25.6% |
| 産業分野 | 45億円 | 55億円 | 4億円 | 5億円 | 9.8% |
| 連結(合計) | 187億円 | 280億円 | 25億円 | 63億円 | 22.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 30億円 | 43億円 |
| 投資CF | -9億円 | -9億円 |
| 財務CF | -13億円 | -23億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は30.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.3%となっており、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「1.5歩進んだ情報技術を、豊かな発想と情熱で活用することにより『お客さまにワンランク上の仕事を』『人々の生活に便利さを』提供する」を会社の使命として掲げています。また、「輝く会社」「輝いている社員」「輝ける仕事」を目ざす企業像として設定し、情報サービスを通じた社会貢献を図っています。
■(2) 企業文化
同社は仕事の価値観として、顧客にとって真に役立つ「頼りになる企業」になることや、高い志を持ち自ら創り出すことができる社員になることを掲げています。また、誠実でフェアな姿勢を保ち、仕事に感動を吹き込みながら、利益ある事業成長を目指す文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、本業である事業の収益性を高め資本収益性を向上させるため、以下の数値を目標として掲げ、継続的な達成を目指しています。
・売上高営業利益率10%以上
・ROE10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は成長戦略として、新製品開発への積極的な投資や首都圏を含む全国エリアへの営業強化、データセンター事業の拡大を推進しています。公共分野では総合行政情報システムの新規顧客開拓や自治体DXの推進に注力し、産業分野では主力パッケージシステムの拡販や協業による医療関連システム事業の拡大を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本を重要な経営資源と位置づけ、多様な人材の確保と育成、社内環境の整備を柱とした人材戦略を推進しています。新卒や社会人経験者の区別なく通年採用を実施し、実力や成果に応じた適正な評価・登用を行っています。また、多様なワークスタイルを実現し、健康経営による働きやすい職場づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.4歳 | 19.6年 | 8,054,485円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.1% |
| 男性育児休業取得率 | 77.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 58.6% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一次健診率(100%)、二次健診率(88%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 公共分野への依存度
同社の売上高に占める公共分野の割合が高く、地方公共団体間での情報システムの共同利用や国家主導での業務プロセス・システムの標準化の動向によっては、同社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) システムの開発や不具合・障害
開発工数の増加や遅延による不採算案件の発生、過失によるシステムの不具合、予測不可能な事態によるシステム障害が発生した場合、損害賠償や信頼喪失等により、同社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 人材の確保及び人材育成
積極的な事業展開には優秀な技術者の確保が不可欠ですが、情報サービス業界での人材獲得競争は激しくなっています。必要な知識や経験を備えた人材を十分に確保できなかった場合、事業展開に制約を受け、業績に影響を及ぼすリスクがあります。



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