パーソルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パーソルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する総合人材サービスグループです。事務派遣や人材紹介、BPO、テクノロジーなど多角的に事業を展開し、アジア・パシフィック地域でも活動しています。2025年3月期の業績は、全ての事業セグメントで増収となり、グループ全体で増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社パーソルホールディングス の有価証券報告書(第17期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. パーソルホールディングスってどんな会社?


「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに掲げ、人材派遣、人材紹介、BPO、テクノロジーサービス等を展開する総合人材サービス企業です。

(1) 会社概要


同社のルーツは1973年に創業したテンプスタッフです。2008年、テンプスタッフとピープルスタッフの経営統合により持株会社として設立・上場しました。2013年にインテリジェンスホールディングス(現パーソルキャリア等)を子会社化し、2017年に現社名へ変更しました。2023年よりIFRSを任意適用し、5つのSBU体制へ移行しています。

グループ連結の従業員数は71,570人、単体では647人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は創業者の篠原欣子氏、第3位は信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.54%
篠原 欣子 11.74%
日本カストディ銀行(信託口) 7.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長CEOは和田孝雄氏が務めています。取締役9名のうち7名が社外取締役であり、その比率は77.8%と高い水準にあります。

氏名 役職 主な経歴
和田 孝雄 代表取締役社長CEO 1991年テンプスタッフ入社。同社取締役、パーソルホールディングス取締役副社長などを経て2021年4月より現職。
水 田 正 道 取締役会長 1988年テンプスタッフ入社。パーソルホールディングス代表取締役社長を経て2021年4月より現職。


社外取締役は、山内雅喜(元ヤマトホールディングス会長)、吉澤和弘(元NTTドコモ社長)、Debra A. Hazelton(元みずほ銀行シドニー支店長)、村林聡(三菱UFJリサーチ&コンサルティング社長)、榎本知佐(元日立製作所)、友田和彦(元あらた監査法人代表社員)、菅谷とも子(元ANAあきんど社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Staffing」「BPO」「Technology」「Career」「Asia Pacific」および「その他」事業を展開しています。

Staffing SBU


国内において、事務領域を中心に幅広い業種に対応した人材派遣事業を行っています。顧客企業の人材ニーズに合わせて登録スタッフを派遣し、企業の業務効率化を支援します。主な職種は事務、営業、販売、ITエンジニア、製造など多岐にわたります。

収益は、派遣先企業から受け取る派遣料金から得ており、派遣スタッフへの給与支払いを差し引いた額が利益の源泉となります。運営は主にパーソルテンプスタッフが行っています。

BPO SBU


BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)やコンサルティングサービスを提供しています。人事・総務・経理等のコーポレート業務や、コールセンター等の顧客対応業務、DX支援などを一気通貫でサポートし、企業の生産性向上に貢献します。

収益は、顧客企業や官公庁から受託した業務の対価として得る委託料等です。運営はパーソルビジネスプロセスデザインや、2025年に子会社化したパーソルコミュニケーションサービスなどが行っています。

Technology SBU


IT・エンジニアリング領域において、設計・開発に関する業務受託やエンジニア派遣を行っています。システム開発、インフラ設計、製品開発の支援などを通じ、技術革新を支えるサービスを提供しています。

収益は、顧客企業からの業務受託料やエンジニア派遣料金から得ています。運営は主にパーソルクロステクノロジーが行っています。

Career SBU


正社員の中途採用を支援する人材紹介事業や求人メディア事業を展開しています。主要ブランド「doda」を中心に、ハイクラス層向けの「doda X」なども提供し、個人のキャリア形成と企業の採用活動を支援しています。

収益は、人材紹介成立時の紹介手数料や、求人メディアへの広告掲載料金から得ています。運営は主にパーソルキャリアが行っています。

Asia Pacific SBU


シンガポール、マレーシア、オーストラリアなど13カ国・地域で事業を展開しています。アジア地域では人材派遣・紹介を、豪州では人材サービスに加え、空港や公共施設の維持管理を行うファシリティマネジメント事業も手掛けています。

収益は、人材サービスの派遣・紹介料や、ファシリティマネジメントの業務委託料等から得ています。運営はPERSOLKELLYやProgrammedなどの現地法人が行っています。

その他


グループの次世代事業の開発や、特定領域のサービスを行っています。スキマバイトアプリ「シェアフル」、アセスメントリクルーティング「ミイダス」、障害者雇用支援、クラウド型POSレジ「ポスタス」などが含まれます。

収益は、各サービスの利用料や手数料などから得ています。運営はパーソルイノベーション、パーソルダイバース、シェアフル、ミイダスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の業績を見ると、売上収益は順調に拡大しており、毎期増収を続けています。利益面においても、税引前利益、当期利益ともに増加傾向にあり、増収増益のトレンドを維持しています。利益率は3%台後半から4%近くへと推移しており、収益性も安定しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 12,426億円 13,271億円 14,512億円
税引前利益 412億円 489億円 572億円
利益率(%) 3.3% 3.7% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 228億円 300億円 359億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上収益の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率はほぼ横ばいで安定的に推移しています。営業利益についても増加しており、営業利益率は前年から改善傾向にあります。全体として事業規模の拡大と利益成長が両立している状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 13,271億円 14,512億円
売上総利益 3,012億円 3,321億円
売上総利益率(%) 22.7% 22.9%
営業利益 521億円 574億円
営業利益率(%) 3.9% 4.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が1,670億円(構成比60.9%)と過半を占め、次いで業務委託料が232億円(同8.5%)、広告宣伝費が226億円(同8.2%)となっています。

(3) セグメント収益


全セグメントで前期比増収となりました。主力の人材派遣(Staffing)が堅調に推移し、海外事業(Asia Pacific)も大幅な増収を達成しました。利益面では、BPOを除く全セグメントで増益となりました。BPOはCOVID-19関連特需の剥落により減益となりましたが、その他セグメントの好調さが全体を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
Staffing 5,758億円 6,024億円 306億円 313億円 5.2%
BPO 1,108億円 1,172億円 89億円 67億円 5.7%
Technology 1,024億円 1,147億円 69億円 86億円 7.5%
Career 1,283億円 1,446億円 250億円 304億円 21.0%
Asia Pacific 4,128億円 4,761億円 98億円 117億円 2.5%
その他 347億円 384億円 -17億円 -34億円 -8.9%
調整額 -376億円 -423億円 -74億円 -69億円 -
連結(合計) 13,271億円 14,512億円 723億円 783億円 5.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って投資を行い(投資CFマイナス)、株主還元や借入返済等を進めている(財務CFマイナス)ことから、「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあると言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 778億円 689億円
投資CF -190億円 -298億円
財務CF -538億円 -639億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに掲げています。これは、多様なはたらき方や学びの機会の提供を通じて、一人ひとりの選択肢とはたらく自由を広げ、個人と社会の幸せを広げる「“はたらくWell-being”創造カンパニー」となることを目指すものです。

(2) 企業文化


「雇用の創造」「人々の成長」「社会貢献」を経営理念として掲げています。持続可能な社会を目指して、多様なステークホルダーと連携し、社会・環境課題解決に積極的に取り組む姿勢を重視しています。また、Diversity, Equity & Inclusionを推進し、多様性を活かす企業文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けた「グループ中期経営計画2026」において、財務戦略として成長性、効率性、健全性の3つの指標を掲げています。また、社会的価値の目標として、2030年に100万人のより良い“はたらく機会”を創出することを価値創造ゴールとして設定しています。

* 調整後EBITDA:年平均成長率10%超
* ROIC(投下資本利益率):15%以上
* ROE(自己資本利益率):20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「テクノロジードリブンの人材サービス企業」への進化を経営の方向性としています。「人的資本」「テクノロジー」「ラーニング」を事業成長のエンジンと位置づけ、特にStaffing SBUを成長基盤としつつ、Career、BPO、Technologyの各SBUを利益成長の柱として強化しています。

* Staffing SBU:2027年度調整後EBITDAマージン6%を目指す
* BPO SBU:2028年度調整後EBITDAマージン8%を目指す
* Technology SBU:2028年度調整後EBITDAマージン10%を目指す

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様な人材の活躍」をマテリアリティの一つに定め、「“はたらくWell-being”の体現」「テクノロジー人材の拡充」「多様な人材が活躍する基盤構築」に取り組んでいます。特にテクノロジー人材については、採用と育成(リスキリング・アップスキリング)の両輪で強化を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.9歳 6.2年 8,193,686円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 34.9%
男性育児休業取得率 70.7%
男女賃金差異(全労働者) 72.1%
男女賃金差異(正規雇用) 73.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 33.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、はたらいて、笑おう。指標(社員エンゲージメント指標)(72.0%)、障害者雇用数(3,431人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT関連リスク(個人情報漏えい・システム障害等)


大量の個人情報を保有しているため、サイバー攻撃や人為的過誤による情報漏えいが発生した場合、ブランド毀損や損害賠償請求等により業績に重大な影響を与える可能性があります。また、システム障害によるサービス停止も事業運営に大きな支障をきたす恐れがあります。これに対し、CSIRTの設置やセキュリティ対策の強化を進めています。

(2) 企業買収投資に伴うリスク


事業拡大のためにM&Aや事業提携を行っていますが、十分なデューディリジェンスが実施できない場合や、買収後の事業が計画通りに進捗しない場合、減損損失の計上などにより業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特にIFRS適用により、のれんの減損判定方法が異なるため、多額の損失が早期に計上されるリスクがあります。

(3) プライバシー侵害リスク


AIを用いたプロファイリングやマッチング等のデータ利活用において、法規制の解釈や運用によっては不適切と評価されるリスクがあります。また、公平性や公正性が担保できない場合、社会的信用の失墜を招く恐れがあります。これに対し、グループプライバシーガバナンス審議会の設置や、プライバシーレビュープロセスの構築を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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