パーソルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パーソルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パーソルホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場する総合人材サービス企業です。人材派遣や人材紹介、BPO、ITアウトソーシングなど人と組織に関わる多様なサービスを展開しています。直近の業績は売上収益1兆5558億円、営業利益665億円と増収増益を達成し、成長を続けています。


※本記事は、パーソルホールディングスの有価証券報告書(第18期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. パーソルホールディングスってどんな会社?


人材派遣、人材紹介、BPOなど、人と組織に関わる多様なサービスを提供する総合人材サービス企業です。

(1) 会社概要


同社グループのルーツは1973年に設立されたテンプスタッフです。2008年にピープルスタッフとの経営統合によりテンプホールディングスを設立し、東京証券取引所に上場しました。2013年にインテリジェンスホールディングスを子会社化し、2017年には現在のパーソルホールディングスへ商号を変更しています。

現在の従業員数は連結で74,926名、単体で761名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は創業者の篠原欣子氏、第3位は一般財団法人篠原欣子記念財団となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.87%
篠原欣子 11.69%
一般財団法人篠原欣子記念財団 7.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長CEOは和田孝雄氏が務めています。社外取締役比率は高い水準です。

氏名 役職 主な経歴
和田 孝雄 代表取締役社長CEO 1991年テンプスタッフ入社。同社取締役、テンプスタッフ代表取締役社長などを経て、2021年より現職。
水田 正道 取締役会長 1988年テンプスタッフ入社。同社代表取締役社長などを経て、2021年より現職。


社外取締役は、山内雅喜(元ヤマトホールディングス社長)、吉澤和弘(元NTTドコモ社長)、Debra A. Hazelton(元AMP Ltd. Chair)、村林聡(元三菱UFJリサーチ&コンサルティング社長)、榎本知佐(元フィリップス・ジャパン広報部長)、友田和彦(元PwC Japan有限責任監査法人代表社員)、菅谷とも子(元ANAあきんど社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Staffing」「BPO」「Technology」「Career」「Asia Pacific」の報告セグメントおよび「その他」の事業を展開しています。

Staffing


国内で事務領域を中心に幅広い業種に対応した人材派遣事業を行っています。労働者派遣事業の許可を受け、登録された派遣スタッフの中から条件が合致する人材を選定し、顧客企業へ派遣しています。
収益源は派遣先企業から受け取る派遣料金です。運営は主にパーソルテンプスタッフが行っています。

BPO


BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)やコンサルティング等のサービスを提供しています。民間企業における事務業務やIT業務、地方自治体の総合窓口業務などを受託し、課題解決の提案から施策の定着まで一気通貫でサポートしています。
収益源は企業や官公庁から受け取る業務委託料です。運営は主にパーソルビジネスプロセスデザインが行っています。

Technology


IT・エンジニアリング等の専門家・技術者集団として、技術革新を支える設計・開発に関する業務委託や、エンジニア人材の派遣サービスなどを提供しています。
収益源は顧客企業から受け取る業務委託料や派遣料金です。運営は主にパーソルクロステクノロジーが行っています。

Career


顧客企業の正社員の中途採用活動を支援する人材紹介事業や、求人メディア事業を展開しています。代表ブランド「doda」を主体として、そのブランド力を最大限に活用しています。
収益源は求人企業から受け取る紹介手数料や求人広告の掲載料金です。運営は主にパーソルキャリアが行っています。

Asia Pacific


シンガポールやマレーシアなどのアジア地域で人材サービス事業を、豪州・ニュージーランドで人材サービス事業およびファシリティマネジメント事業を展開しています。
収益源は海外の顧客企業から受け取る派遣料金、紹介手数料、業務委託料などです。運営は主にPERSOL ASIA PACIFIC PTE. LTD.等の海外子会社が行っています。

その他


グループにおける未来の事業の探索を行うR&D領域や、海外でのAIドリブンの人材派遣プラットフォーム事業などを展開しています。
収益源は各サービスの利用料などです。運営はパーソルデジタルベンチャーズやGojob SASなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績は、売上収益、税引前利益ともに継続的な成長を遂げています。利益率も年々向上しており、収益性の改善が進んでいることが読み取れます。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 12,426億円 13,271億円 14,512億円 15,558億円
税引前利益 412億円 489億円 572億円 649億円
利益率(%) 3.3% 3.7% 3.9% 4.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 228億円 300億円 359億円 427億円

(2) 損益計算書


売上収益と各段階利益はともに増加しており、特に営業利益は前年から大きく伸長しています。売上総利益率および営業利益率も上昇傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 14,512億円 15,558億円
売上総利益 587億円 789億円
売上総利益率(%) 4.0% 5.1%
営業利益 574億円 665億円
営業利益率(%) 4.0% 4.3%

(3) セグメント収益


各セグメントの売上高は増加傾向にあり、特にStaffingやAsia Pacificが全社売上の大きな割合を占めています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
Staffing 5,874億円 6,081億円
BPO 1,172億円 1,431億円
Technology 1,147億円 1,248億円
Career 1,446億円 1,529億円
Asia Pacific 4,761億円 4,964億円
その他 526億円 746億円
調整額 -414億円 -440億円
連結(合計) 14,512億円 15,558億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスであり、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 689億円 774億円
投資CF -298億円 -343億円
財務CF -639億円 -448億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに掲げています。多様な働き方や学びの機会の提供を通じて、一人ひとりの可能性を広げ、働く自由を広げ、個人と社会の幸せを広げる「“はたらくWell-being”創造カンパニー」をありたい姿として追求しています。

(2) 企業文化


「雇用の創造」「人々の成長」「社会貢献」を経営理念に掲げ、これに基づき持続可能な社会を目指しています。多様なステークホルダーと連携し、社会や環境課題の解決に積極的に取り組む文化を大切にしています。また、従業員に対しては、公正、正直、敬意および誠実さをもって行動することを定めています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画FY2028において、2030年に100万人のより良い“働く機会”の創出を価値創造ゴールとして定めています。また、中長期的な高成長と高収益の実現を目指しています。

* 調整後EBITDA 年平均成長率10%
* ROIC 18%以上
* ROE 20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「テクノロジードリブンの人材サービス企業へ」の実現に向け、「AIを起点とした、収益性向上と事業モデル転換」を基本方針としています。AIを活用した業務効率化やマッチング機会の最大化、独自データとAIの融合により、新たな雇用需要を獲得する戦略を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人とAIが協働して価値創造するための変革」を人事戦略の前提としています。テクノロジーによる事業変革を牽引する経営チームづくりや、AI活用を通じた労働生産性の向上、社員のスキル開発支援を推進しています。また、多様な人材が安心して活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.9歳 6.3年 8,818,492円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 34.9%
男性育児休業取得率 89.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 36.0%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、「はたらいて、笑おう。」指標(72.3%)、テクノロジー人材人数(約2,000人)、障害者雇用数(3,827人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT関連リスク(個人情報漏洩・システム障害等)


同社グループは個人情報を大量に保有しており、サイバー攻撃やシステムの設定・管理不備などにより個人情報が漏洩した場合、社会的信用の低下や損害賠償の発生を招く可能性があります。また、システム障害が発生した場合も業務の遅延・停止に繋がり、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 企業買収投資に伴うリスク


事業拡大や新テクノロジー取り込みのため企業買収等を行っていますが、買収後に偶発債務が判明した場合や想定した収益計画と乖離した場合、関係会社株式の評価替えやのれんの減損等が発生するリスクがあります。これにより同社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) プライバシー侵害リスク


AIを用いたプロファイリングやマッチング、生成AIの活用において、適切な取り扱いや透明性が確保できない場合、プライバシー侵害のリスクが生じます。データ提供者の不利益や不信感を招き、同社グループのブランドイメージ低下や社会的信用の毀損に繋がる可能性があります。

(4) 人権侵害に関するリスク


同社グループは国内外で事業を展開し、多様なステークホルダーと取引を行っています。ビジネスと人権に対する関心が高まる中、万が一人権侵害に該当する事案が生じた場合、各国における行政罰やブランドイメージの毀損により事業運営および業績に大きな影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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