テレビ東京ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テレビ東京ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テレビ東京ホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場しており、地上波やBS放送、アニメ・配信事業を中心に展開しています。直近の業績では、強みであるアニメ事業や経済報道、独自IPの開発強化が奏功し、売上高および各段階利益が過去最高を更新するなど、順調な増収増益トレンドで推移しています。


※本記事は、テレビ東京ホールディングスの有価証券報告書(第16期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. テレビ東京ホールディングスってどんな会社?


地上波放送とBS放送を中核に、アニメや経済報道に強みを持つ認定放送持株会社です。

(1) 会社概要


2010年10月にテレビ東京、BSジャパン、テレビ東京ブロードバンドの経営統合により認定放送持株会社として設立されました。同月に東証一部に上場し、2022年4月にプライム市場へ移行しました。2015年には番組制作や美術を担う子会社群を現物配当により取得し、グループ体制を強化しています。

従業員数は連結で1,672名、単体で103名です。筆頭株主は事業会社である日本経済新聞社で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
日本経済新聞社 33.06%
日本カストディ銀行(信託口) 6.51%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役会長は石川一郎氏、代表取締役社長は吉次弘志氏が務めています。社外取締役比率は31.3%です。

氏名 役職 主な経歴
石川一郎 代表取締役会長 1980年日本経済新聞社入社。同社専務取締役を経て、2016年テレビ東京ホールディングス専務取締役等に就任。2020年同社代表取締役社長を経て、2025年より現職。
吉次弘志 代表取締役社長 1987年日本経済新聞社入社。2015年テレビ東京入社。報道局長、経営企画局長を歴任。2024年テレビ東京ホールディングス専務取締役を経て、2025年より現職。
長田隆 専務取締役 1987年テレビ東京入社。編成局長、営業局長を歴任し、2021年テレビ東京ホールディングス常務執行役員に就任。2024年同社専務取締役を経て、2026年より現職。
小沢武史 専務取締役 1987年日本経済新聞社入社。BSジャパン制作局長等を経て、2021年テレビ東京ホールディングス常務執行役員に就任。2024年同社専務取締役を経て、2026年より現職。
平岡利介 常務取締役 1988年テレビ東京入社。アニメ局長、営業局長を歴任。2021年テレビ東京常務執行役員を経て、2024年テレビ東京ホールディングス常務取締役に就任。2026年より現職。
小丸港市 常務取締役 1989年日本経済新聞社入社。BSジャパン管理部長等を経て、2019年テレビ東京ホールディングス経理局長に就任。2025年同社常務取締役を経て、2026年より現職。
田村肇 常務取締役 1989年テレビ東京入社。人事部長、グループ経営室長等を歴任し、2024年テレビ東京ホールディングス常務執行役員に就任。2025年同社常務取締役を経て、2026年より現職。


社外取締役は、岩沙弘道(元三井不動産社長)、澤部肇(元TDK社長)、奥正之(元三井住友銀行頭取)、佐々木かをり(イー・ウーマン社長)、長谷部剛(日本経済新聞社社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「地上波・BS放送事業」「アニメ・配信事業」「ショッピング・その他事業」を展開しています。

地上波・BS放送事業
テレビ東京による地上波放送とBSテレビ東京による衛星放送を展開しています。教育、教養、娯楽、報道の各ジャンルを調和させた番組を企画編成し、視聴者に提供しています。また、制作した番組を他の国内放送局向けに販売する事業も行っています。
主な収益源は、番組の放送時間内に広告を放送するタイム収入や、番組間に放送するスポット収入といった広告主からの広告枠販売収入です。事業の運営は主にテレビ東京、BSテレビ東京、テレビ東京メディアネット等が行っています。

アニメ・配信事業
テレビ東京が持つコンテンツを活用し、放送による広告以外で収益を上げるライツ事業や、CS有料チャンネルでのアニメ番組提供、音楽関連ビジネスを展開しています。北米や欧州、中国での収益拡大などグローバル展開も推進しています。
主な収益源は、インターネット動画配信プラットフォームへのコンテンツ供給収入、映画出資による周辺権利収入、自社コンテンツと連動したイベント収入などです。運営は主にテレビ東京、エー・ティー・エックス、テレビ東京コミュニケーションズが行っています。

ショッピング・その他事業
テレビ通販やeコマースを中心に、通信販売事業を展開しています。また、システム企画や施設管理運営など、グループ全体のサポート業務も担っています。
主な収益源は、テレビ番組やインターネットを通じた商品の販売収入です。通信販売業務はテレビ東京ダイレクトが中核となって展開しており、子会社のリアルマックスがゴルフ関連商品のインターネット通販事業を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期の売上高は1,481億円から1,649億円へと着実に増加傾向にあり、経常利益も拡大しています。利益率は5〜7%台で安定して推移しており、親会社株主に帰属する当期純利益も増減を伴いながら成長を続けています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,481億円 1,510億円 1,486億円 1,558億円 1,649億円
経常利益 92億円 94億円 96億円 83億円 119億円
利益率(%) 6.2% 6.2% 6.5% 5.3% 7.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 35億円 81億円 62億円 50億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で5.8%の増収となり、売上総利益も拡大しています。営業利益率も5.0%から6.9%へ向上し、コストコントロールと収益力強化が奏功して力強い増収増益を達成しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,558億円 1,649億円
売上総利益 483億円 549億円
売上総利益率(%) 31.0% 33.3%
営業利益 78億円 114億円
営業利益率(%) 5.0% 6.9%


販売費及び一般管理費のうち、代理店手数料が184億円(構成比42.2%)、人件費が97億円(同22.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の地上波・BS放送事業が増収を牽引し、特にアニメ・配信事業は海外向け販売や配信ビジネスが好調で大きく売上を伸ばしています。一方で、ショッピング・その他事業は減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
地上波・BS放送事業 967億円 1,007億円
アニメ・配信事業 450億円 505億円
ショッピング・その他事業 142億円 136億円
連結(合計) 1,558億円 1,649億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


前期・当期ともに営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フローパターンを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 76億円 161億円
投資CF -20億円 -53億円
財務CF -41億円 -34億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「心を温かく、時に熱く。一人ひとりに深く届け、 ちょっといい明日へ。」をパーパス(存在理由)として掲げています。放送の公共的使命を自覚し、国民生活に必要な報道や良質な文化娯楽コンテンツを発信することで、社会課題の解決と持続的な発展への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


「『あたりまえ』に挑み、 まだ見ぬ『おもしろい』を共に創る。」をミッションとし、他がやらないことに挑戦する姿勢を重視しています。視聴者に最も近い存在であり続け、独自の視点を持つこと、そして仲間と共に自らを超えて挑戦し続ける「超えていく」などのバリュー(行動指針)を制定し、組織に浸透させています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「テレ東VISION2035」および中期経営計画に基づき、各ステークホルダーへの責任を果たし企業価値の向上を目指しています。2020年代後半には以下の数値目標の達成を掲げています。

・ROE(自己資本利益率):8%
・連結ベース配当性向:35%目途
・総還元性向:40%程度

(4) 成長戦略と重点施策


アニメ・経済報道・独自IP事業を強化し、「グローバルIPメディア」を目指します。新規事業開発やM&A、DX投資などを機動的に推進するため、200億円の成長投資枠を活用します。

・アニメを中心としたグローバル展開の加速と海外売上比率の向上
・AVOD(広告付き動画配信)やショートドラマの強化
・経済動画配信サービス「テレ東BIZ」をハブとした経済報道の拡充
・AIやバーチャルプロダクションなどの先端技術を活用した生産性向上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「挑戦・成長を続ける社員が安心して長く活躍できる会社」の実現を掲げ、多様性と専門性を両立する組織づくりを進めています。重点領域であるグローバル、IPビジネス、AI分野への専門人材の採用を強化するほか、企業内大学「テレ東カレッジ」を通じたリスキリングを推進し、多様な層が活躍できる企業風土を醸成しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.3歳 18.9年 14,193,622円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.0%
男女賃金差異(正規雇用) 82.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 71.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍社員の人数(17名)、キャリア採用比率(56.8%)、健康診断受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) テレビ広告収入の減少
少子高齢化やメディアの多様化、インターネット広告の拡大などの外部環境の変化により、テレビ広告収入は漸減傾向にあります。日本経済の動向や広告市況の悪化により広告収入が大幅に縮小した場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(2) アニメビジネスの海外展開の阻害
アニメビジネスは重要な収益の柱であり海外展開を積極的に進めていますが、進出先の法制度やコンテンツ産業政策の変更、地政学的緊張の高まりに伴う輸出入規制や経済制裁の強化などにより、計画通りに事業が進捗しないリスクがあります。

(3) 知的財産権等の権利処理トラブル
映像コンテンツの多角的な展開には、原作者や脚本家など多くの著作権者等の許諾が必要であり、権利処理に時間と費用がかかる場合があります。権利者の理解を得られずコンテンツが利用できない場合や、AIによる第三者の権利侵害が発生した場合、社会的信用の低下や収益減少につながる恐れがあります。

(4) 設備システムとサイバーセキュリティの脅威
放送設備やデジタル配信基盤の刷新など継続的なシステム投資を行っていますが、技術革新による設備の陳腐化や、ランサムウェア等の高度なサイバー攻撃による大規模なシステムダウン、情報漏洩が発生した場合、放送業務の継続が困難となり重大な影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。