テレビ東京ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テレビ東京ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場し、地上波・BS放送事業を中核にアニメ・配信や通販事業を展開する認定放送持株会社です。2025年3月期の連結業績は、アニメ部門や配信ビジネスが伸長し売上高は1,558億円と増収を確保しましたが、番組制作費の増加等により経常利益は83億円と減益になりました。


※本記事は、株式会社テレビ東京ホールディングス の有価証券報告書(第15期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テレビ東京ホールディングスってどんな会社?


地上波放送事業を中核として、BS・CS放送、インターネット配信、アニメ、通販などを総合的に展開する認定放送持株会社です。

(1) 会社概要


2010年にテレビ東京、BSジャパン、テレビ東京ブロードバンドの経営統合により設立され、東証一部に上場しました。2011年に地上波放送の完全デジタル化を完了し、2018年にはBSジャパンをBSテレビ東京へ商号変更しました。2022年の市場区分見直しを経て、現在はプライム市場に上場しています。

同グループの従業員数は連結で1,651名、単体で98名です。筆頭株主は事業上の関係を有する日本経済新聞社で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。第3位には同じく信託銀行の日本カストディ銀行が名を連ねており、メディア企業や機関投資家が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日本経済新聞社 32.99%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.63%
日本カストディ銀行(信託口) 6.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は石川一郎氏です。社外取締役比率は31.3%です。

氏名 役職 主な経歴
石川 一郎 代表取締役社長 日本経済新聞社専務取締役を経て、2016年テレビ東京ホールディングス専務取締役、BSテレビ東京社長などを歴任。2020年6月より現職。
新実 傑 代表取締役副社長 日本経済新聞社取締役、日経BP社長を経て、2019年テレビ東京ホールディングス専務取締役CIO。2024年6月より現職。
川崎 由紀夫 専務取締役 1987年テレビ東京入社。アニメ局長、執行役員等を経て、2022年テレビ東京ホールディングス専務取締役。2024年4月より現職。
吉次 弘志 専務取締役 日本経済新聞社を経て、テレビ東京報道局長等を歴任。2021年テレビ東京ホールディングス常務執行役員、2024年6月より現職。
長田 隆 専務取締役 1987年テレビ東京入社。編成局長、常務執行役員等を経て、2024年6月より現職。
小沢 武史 専務取締役 日本経済新聞社を経て、BSテレビ東京取締役等を歴任。2021年テレビ東京ホールディングス常務執行役員、2024年6月より現職。
平岡 利介 常務取締役 1988年テレビ東京入社。営業局長、常務執行役員等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、岩沙弘道(三井不動産相談役)、澤部肇(元TDK代表取締役会長)、奥正之(三井住友FG名誉顧問)、佐々木かをり(ユニカルインターナショナル社長)、長谷部剛(日本経済新聞社社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「地上波・BS放送事業」、「アニメ・配信事業」、「ショッピング・その他事業」および「その他」事業を展開しています。

地上波・BS放送事業


テレビ東京グループ各社による放送事業です。地上波放送のテレビ東京、BS放送のBSテレビ東京が、教育・教養・娯楽・報道の各ジャンルを調和させた番組を企画編成し、視聴者に提供しています。また、制作した番組を他の国内地上波放送、BS放送、CS放送向け等に販売する国内番組販売も行っています。

主な収益源は、広告主に対するタイムセールス(番組提供)およびスポットセールス(番組間広告)による広告枠の販売収入です。また、他放送局への番組販売による収入も得ています。運営は主に株式会社テレビ東京、株式会社BSテレビ東京、株式会社テレビ東京メディアネットなどが行っています。

アニメ・配信事業


テレビ東京が持つコンテンツを活用し、放送による広告以外に収入を上げるライツ事業や、グループ会社が行うアニメのCS放送、音楽関連ビジネス事業です。放送番組の二次利用権を活用した動画配信、商品化、イベント開催、映画出資などを行っています。また、CS有料チャンネルへのアニメ番組提供も含まれます。

収益源は、動画配信プラットフォームへのコンテンツ供給による配信料、商品化権の許諾によるライセンス料、イベントのチケット・グッズ収入、CS放送の視聴料などです。運営は主に株式会社テレビ東京、株式会社テレビ東京コミュニケーションズ、株式会社エー・ティー・エックスなどが行っています。

ショッピング・その他事業


テレビ通販やEコマース、グループ全体のサポート事業です。テレビ東京ダイレクトが核となり、テレビ通販番組の企画運営や、パソコン・モバイル端末を利用したインターネット通販事業を展開しています。また、ゴルフ関連商品のインターネット通販なども手がけています。

収益源は、テレビ通販やインターネット通販を通じた一般消費者への商品販売代金です。また、グループ会社に対するシステム企画・管理や施設管理運営業務などのサポート業務による収入も含まれます。運営は主に株式会社テレビ東京ダイレクト、株式会社リアルマックス、株式会社テレビ東京システムなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、直近の2025年3月期は1,558億円と過去最高水準となっています。利益面では、経常利益は2024年3月期まで90億円台で安定していましたが、直近では減益となりました。当期利益は変動が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,391億円 1,481億円 1,510億円 1,486億円 1,558億円
経常利益 53億円 92億円 94億円 96億円 83億円
利益率(%) 3.8% 6.2% 6.2% 6.5% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 23億円 19億円 35億円 81億円 62億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益率は低下しました。売上総利益率は概ね横ばいで推移していますが、営業費用の増加が利益を圧迫している傾向が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,486億円 1,558億円
売上総利益 457億円 483億円
売上総利益率(%) 30.8% 31.0%
営業利益 88億円 78億円
営業利益率(%) 5.9% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、代理店手数料が177億円(構成比44%)、人件費が96億円(同24%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで前期比増収となりました。「アニメ・配信事業」は増収ながら減益、「ショッピング・その他事業」は増収増益となりました。「地上波・BS放送事業」も増収増益を確保しています。全体として売上は拡大しましたが、アニメ・配信事業の利益率低下が全体の利益率に影響を与えています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
地上波・BS放送事業 948億円 987億円 37億円 41億円 4.1%
アニメ・配信事業 445億円 469億円 60億円 43億円 9.1%
ショッピング・その他事業 159億円 172億円 3.0億円 7億円 4.0%
調整額 -66億円 -70億円 -11億円 -12億円 -
連結(合計) 1,486億円 1,558億円 88億円 78億円 5.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で稼いだ資金を使って投資を行い、借入金の返済や株主還元も進めている「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 65億円 76億円
投資CF -47億円 -20億円
財務CF -34億円 -41億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、パーパス(存在理由)として「心を温かく、時に熱く。一人ひとりに深く届け、 ちょっといい明日へ。」を、ミッション(果たすべき使命)として「『あたりまえ』に挑み、 まだ見ぬ『おもしろい』を共に創る。」を掲げています。

(2) 企業文化


同社グループ各社はそれぞれバリュー(行動指針)を制定しており、例えばテレビ東京では「ふかく」「ちかく」「おもしろく」「信頼を築き」「超えていく」を掲げています。独自の視点で視聴者に深く届けるコンテンツ作りや、挑戦し続ける姿勢を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


2025年度に策定した長期ビジョン「テレ東VISION2035」に基づき、2035年に向けて「グローバルIPメディア」としての第4の創業を目指しています。経営指標としては、2020年代後半に以下の数値を目標としています。

* ROE(自己資本利益率):8%
* 配当性向:連結ベースで30%を目途、中長期的には安定して35%

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として、アニメ・経済報道・独自IP事業を一段と強化し、IPを国際的に展開することを目指します。アニメを中心にコンテンツのグローバル展開を加速させるとともに、AVODやSVODなどの配信ビジネスを底上げして収益源を多様化します。また、新規事業の開発や最先端テクノロジーの利用促進にも注力します。

* 成長投資枠:200億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「挑戦・成長を続ける社員が安心して長く活躍できる会社」の実現を掲げ、2025~2027年度を「人的資本強化の集中投資期間」と位置づけています。採用強化、リスキリング、処遇制度の見直し、健康支援に注力し、グローバル・AI・データ・IP領域の即戦力人材の配置を進めるとともに、人材の多様性確保を推進します。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.0歳 19.0年 13,642,358円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.5%
男性育児休業取得率 55.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.7%
男女賃金差異(正規雇用) 82.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 68.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用比率(45.7%)、健康診断受診率(100%)、ストレスチェックの受検率(79.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) テレビ広告収入について


グループの総売上高の約6割をテレビ広告収入が占めています。国内の少子高齢化やメディアの多様化、ネット広告の拡大等により、テレビ広告収入は減少傾向にあります。経済動向や広告市況の変化により広告収入が大幅に縮小した場合、経営成績等に影響を与える可能性があります。

(2) 視聴環境の変化について


通信環境の進化やデバイスの普及により、動画配信サービスの利用やタイムシフト視聴が増加し、視聴スタイルが多様化しています。ユーザーの可処分時間の奪い合いが激化する中で、リアルタイム視聴率の獲得は引き続き重要であり、視聴動向に想定外の変化が生じた場合、経営成績等に影響を与える可能性があります。

(3) アニメビジネスにおける海外展開について


アニメビジネスを重要な収益の柱として海外展開を進めていますが、進出先の法制度やコンテンツ産業政策の変更等によるリスクがあります。計画通りにコンテンツの制作や販売等ができない場合、経営成績等に影響を与える可能性があります。

(4) インターネット動画配信事業について


「ネットもテレ東」や「TVer」、「テレ東BIZ」などの動画配信事業に取り組んでいますが、競争環境が厳しく、事業が想定通りに進捗しない場合や市場環境が大きく変動する場合には、投下資本の回収が困難になり、経営成績等に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。