ミライト・ワン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミライト・ワン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミライト・ワンは東京証券取引所プライム市場に上場し、通信インフラや環境・社会イノベーション事業を展開する企業です。直近の業績では売上高が前期比で増加し、営業利益や経常利益も大きく伸長する増収増益を達成しています。従来の通信インフラ建設から未来の社会インフラ構築へと事業構造の転換を力強く推進しています。


※本記事は、株式会社ミライト・ワンの有価証券報告書(第16期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ミライト・ワンってどんな会社?


通信インフラの建設・保守を基盤とし、ICTソリューションや街づくりなどの環境・社会インフラ事業を展開しています。

(1) 会社概要


2010年10月、大明、コミューチュア、東電通の3社が経営統合し、共同持株会社として設立されました。その後、日設、TTK、ソルコム、四国通建、西武建設などの子会社化を通じて事業領域を順次拡大しています。2022年7月には主要子会社2社を吸収合併し、事業持株会社へと移行して現在の社名へ変更しました。

従業員数は連結で17,709人、単体で3,589人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同じく資産管理を行う日本カストディ銀行(信託口)、第3位には事業会社の住友電気工業が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.00%
日本カストディ銀行(信託口) 6.42%
住友電気工業 4.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役社長は菅原英宗氏、代表取締役会長は中山俊樹氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
菅原 英宗 代表取締役社長 NTTコミュニケーションズ代表取締役副社長等を経て、2024年に同社代表取締役副社長執行役員に就任。2025年6月より現職。
中山 俊樹 代表取締役会長 NTTドコモ代表取締役副社長等を経て、2018年よりミライト(現同社)代表取締役社長に就任。2025年6月より現職。
遠竹 泰 代表取締役専務執行役員 西日本電信電話常務取締役等を経て、2019年に同社取締役に就任。2024年よりキャリアウエストカンパニー社長等を務め、2025年6月より現職。
髙屋 洋一郎 取締役専務執行役員 NTTコミュニケーションズ取締役等を経て、2020年に同社取締役常務執行役員に就任。2024年よりソリューションカンパニー社長等を務め、2025年12月より現職。
脇本 祐史 取締役常務執行役員 NTTドコモ企画調整室長やmmbi代表取締役社長等を経て、2016年に同社執行役員に就任。2022年に総務人事本部長等を務め、2023年6月より現職。
三ツ矢 高章 取締役常務執行役員 西日本電信電話四国事業本部長等を経て、2017年に同社執行役員に就任。2022年に財務経理本部副本部長等を務め、2023年6月より現職。
高岡 宏昌 取締役常務執行役員 NTTデータ取締役やNTTドコモ常務執行役員等を経て、2024年に同社常務執行役員に就任。2025年6月より現職。
瀬尾 真二 取締役監査等委員 大明電話工業(現同社)に入社後、同社取締役常務執行役員等を歴任。2022年に常務執行役員安全品質統括本部長に就任し、2024年6月より現職。


社外取締役は、山本眞弓(弁護士・政府審議会委員等)、瓦谷晋一(日商エレクトロニクス元社長等)、塚﨑裕子(大正大学教授)、早川治(元関東管区警察局長等)、水谷翠(公認会計士・税理士等)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ミライト・ワン」「ラントロビジョン」「TTK」「ソルコム」「四国通建」「西武建設」「ミライト・ワン・システムズ」「国際航業」および「その他」事業を展開しています。

ミライト・ワン

環境・社会イノベーション事業、ICTソリューション事業、通信インフラ事業などを幅広く展開しています。通信キャリア向けの設備構築に加え、企業向けのDX支援やクラウド、データセンター関連事業も行っています。

通信キャリアや一般企業、官公庁からの工事請負代金やシステム構築・保守運用によるサービス利用料を主な収益源としています。事業の運営はミライト・ワンが行っています。

ラントロビジョン

アジア圏を中心に、急拡大するデータセンター需要を取り込んだICTソリューション事業を展開しています。情報通信設備の設計や施工、保守管理に加え、関連機器の販売やコンサルティングサービスを提供しています。

クラウド事業者等の顧客から受け取る工事請負代金や管理・保守サービス料が主な収益源です。シンガポールに拠点を置くラントロビジョンおよびその子会社が事業を運営しています。

TTK

東北エリアを地盤とし、通信インフラ事業、ICTソリューション事業、環境・社会イノベーション事業を展開しています。光ファイバーやモバイル基地局の構築、太陽光発電関連の設備工事などを行っています。

通信事業者や一般企業から受け取る通信設備の工事請負代金や、保守運用サービス料を主な収益源としています。事業の運営はTTKおよび同社の子会社が行っています。

ソルコム

中国エリアを中心に、通信インフラ事業やICTソリューション事業、環境・社会イノベーション事業を展開しています。通信網の整備やシステム構築、インフラの維持管理業務などを手掛けています。

通信キャリア等の顧客からの設備工事請負代金や、情報処理機器の販売・保守による代金を主な収益源としています。事業の運営はソルコムおよび同社の子会社が行っています。

四国通建

四国エリアを基盤に、通信インフラ事業からICTソリューション事業、環境・社会イノベーション事業まで幅広く展開しています。学校向けのICT環境整備案件なども手掛けています。

通信キャリアや自治体、一般企業からの通信工事代金やシステム導入に係る請負代金を主な収益源としています。事業の運営は四国通建が行っています。

西武建設

土木、建築、リノベーションを中心とした建設工事全般の総合建設事業を、環境・社会イノベーション事業として展開しています。道路や上下水道などの社会インフラ整備や民間施設の建設を行っています。

官公庁や民間企業などの発注者から受け取る建築工事・土木工事の請負代金を主な収益源としています。事業の運営は西武建設が行っています。

ミライト・ワン・システムズ

システムインテグレーションやソフトウェア開発、ITインフラ構築などのICTソリューション事業を展開しています。企業のDX推進や新技術を活用したソリューション開発を手掛けています。

顧客企業から受け取るソフトウェアの開発請負代金や、システムの運用保守サービス料を主な収益源としています。事業の運営はミライト・ワン・システムズが行っています。

国際航業

空間情報コンサルティング事業を環境・社会イノベーション事業として展開しています。地理空間情報を活用した脱炭素化支援やインフラ維持管理DX、防災・減災に向けたソリューションを提供しています。

官公庁や自治体、民間企業からの測量・コンサルティング業務の受託代金や、データ提供によるサービス料を主な収益源としています。事業の運営は国際航業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けており、着実な事業規模の拡大が伺えます。経常利益は一時的に落ち込む時期があったものの、直近2期間は連続して増益となっており、収益性の改善が進んでいます。事業領域の拡大とコスト効率化の取り組みが業績に貢献していると言えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4704億円 4840億円 5184億円 5786億円 6024億円
経常利益 342億円 224億円 187億円 275億円 365億円
利益率(%) 7.3% 4.6% 3.6% 4.7% 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 144億円 680億円 46億円 98億円 124億円

(2) 損益計算書


売上高が順調に伸びる中で、売上総利益と営業利益もともに増加しています。利益率の指標となる売上総利益率および営業利益率も前期と比較して上昇しており、売上の拡大だけでなく、事業運営の効率化や不採算案件の抑制などによって収益基盤が強化されていることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5786億円 6024億円
売上総利益 849億円 930億円
売上総利益率(%) 14.7% 15.4%
営業利益 280億円 343億円
営業利益率(%) 4.8% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が254億円(構成比43.2%)、減価償却費が43億円(同7.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


ミライト・ワンはNTT事業の堅調な推移により増収増益を達成しました。ラントロビジョンはアジア圏でのデータセンター需要を取り込み大きく利益を伸ばしています。四国通建やTTKもICT事業や通信インフラの好調により利益率が向上しています。一方で西武建設は大型案件の反動で減収となりましたが、工事採算の改善により増益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ミライト・ワン 3022億円 3048億円 153億円 181億円 5.9%
ラントロビジョン 343億円 443億円 14億円 27億円 6.1%
TTK 377億円 443億円 24億円 34億円 7.7%
ソルコム 333億円 371億円 14億円 14億円 3.8%
四国通建 251億円 378億円 30億円 40億円 10.6%
西武建設 712億円 581億円 13億円 16億円 2.8%
ミライト・ワン・システムズ 253億円 263億円 20億円 20億円 7.6%
国際航業 495億円 496億円 15億円 18億円 3.6%
調整額 - - -4億円 -8億円 -
連結(合計) 5786億円 6024億円 280億円 343億円 5.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フローとなっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 180億円 241億円
投資CF -94億円 -112億円
財務CF -64億円 -67億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、Purpose(存在意義)として「技術と挑戦で『ワクワクするみらい』を共創する」を掲げています。また、Mission(社会的使命)として「お客様の期待にお応えし、豊かな社会の実現に貢献する」「常に技術とビジネスモデルを磨き、高い付加価値を創造する」などの5項目を定義し、社会の課題解決に取り組んでいます。

(2) 企業文化


サステナビリティとコンプライアンスを重視し、社会の信頼に応える姿勢を大切にしています。また、多様な社員がいきいきと働く「魅力的な企業グループ」であり続けることを目指しており、未来の社会インフラを「創り・守る」信頼ある企業として、パートナー会社と協力しながら安全第一を最優先する組織風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


2026年度を最終年度とする第5次中期経営計画を推進しており、事業の持続的な成長と企業価値の向上を目指して以下の客観的な数値目標(KPI)を掲げています。

* 売上高:7,200億円以上
* みらいドメイン比率:45%以上
* 営業利益(率):6.5%以上
* EBITDA(率):8.5%以上
* ROE:10%以上
* EPS年成長率:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


従来の通信基盤領域から、街づくりや企業DX・GX、グリーンエネルギー事業、ソフトウェア事業、グローバル事業などの「みらいドメイン」へと事業構造の転換を加速しています。「人間中心経営」を柱とした働き方改革やリスキリングの推進、AIを活用したデータインサイト経営による生産性向上、そしてグループ各社の事業シナジーを生み出す「掛け算の連結経営」を通じてトップラインの拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「超・通建」としてフルバリューで社会に貢献する未来実装企業を目指し、「人間中心経営」を基軸とした人材戦略を推進しています。社内大学「みらいカレッジ」を活用した戦略的な学びの環境を整備するとともに、JOB型等の新しい人事制度の創設やマルチスキル化の促進、さらに多様で柔軟に働けるスマートワークライフスタイル改革に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.9歳 17.8年 7,726,016円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 73.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 73.1%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 58.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職数(68人)、新卒採用の女性比率(27.5%)、年休取得率(72.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定取引先への依存と事業構造の転換リスク

同社グループはNTTグループをはじめとする通信事業各社への売上依存度が高く、これらの企業の設備投資動向に業績が左右される可能性があります。そのため、通信事業からソリューション事業への転換や、「みらいドメイン」へのシフトを急いでいますが、新分野での想定外のリスク発生が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 安全・品質および重要な情報の管理リスク

インフラ構築に関わる事業特性上、重大な事故や品質問題の発生は取引先の信用失墜に直結します。また、業務を通じて技術データや個人情報等の重要情報を取り扱うため、情報漏洩や悪用が起きた場合も同様に損害賠償責任等が生じる可能性があります。これを防ぐため、統合マネジメントシステムやISMSを活用し、徹底した管理を行っています。

(3) 資材の調達・価格上昇リスク

世界的な地政学リスクや感染症流行、自然災害等により、建設資機材や原材料の供給難、価格高騰が発生した場合、工事の中断や遅延、コストの上昇が生じるリスクがあります。さらに、発注者による投資抑制が起きる可能性もあり、これらに対しては契約条件の見直しや綿密な工程管理を通じてリスクの低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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